惑星Zi西方大陸戦争録 【Zi-EX天神 ゾイド二次創作小説再掲(2002~2010)】   作:むげんゆう

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第2章 第7話 大戦略会議、そして

 ZAC2100年4月、戦火の続くエウロペ大陸のはるか東方に位置する中央大陸は、戦時体制へと移行していたものの、いまだ戦争とは無縁の空気に包まれていた。一般の市民たちにとっては西方大陸での戦争ははるか異国での出来事だと感じられていたからである。

 

 ここヘリック連邦の首都、グローバリーシティでも一部の政府や軍の関係者を除けば、皆同じような意識であった。

 

 ヘリック連邦大統領、ルイーズ・エレナ・キャムフォードは朝の礼拝をすませると身支度をすませ、大統領官邸から辺りを見渡した。

 

 グローバリーシティ、ここはヘリック共和国とガイロス帝国との戦いを集結させた大異変以後に建設された都市である。今からおよそ70年前、この場所に地球からの開拓移民船グローバリーⅢ号が不時着したことからこの名がつけられたのだ。

 

 その後、大多数の地球人はこの星に残ったが、このグローバリーⅢ号はこの星に関する多くの資料と、帰還を望んだ地球人、そして好奇心と勇気に溢れる数十名のこの星の人を乗せ地球へと帰還した。現在この街にはグローバリーⅢ号のコンテナの一部が残され、モニュメントとなっている。そして大統領官邸は、この街を見渡せる高台に位置しているのだ。

 

 朝食を済ませたルイーズ大統領は、連邦軍国防本部へと車を走らせた。この日、連邦のこれからの戦略を決定する会議が行われるのだ。

 

 

 ルイーズが席につくと同時に会議が始められた。出席したのは陸海空の各司令官のみならず、参謀総長、内務大臣までもが出席していた。

 

 ルイーズ大統領は話を切り出した。

 

「皆様方に集まってもらったのは他でもありません。神聖ガイロス帝国との戦争に関して、この戦争を如何にして終結させるか、その事について決定するために集まっていただきました。はじめに、ムロタカ参謀総長、これまでの経過についてご説明願います。」

 

 ムロタカ・アーウェン参謀総長がこれまでの戦争の経過について説明を始めた。開戦からの帝国の快進撃、オリンポス山を巡る戦闘、北エウロペ大陸東岸での戦局、そして西方ガイロス帝国の建国等についての解説が続いた。

 

「・・・以上がこれまでの経過であります。南エウロペ大陸におきましてはルドルフ・ツェッペリン殿下を中心として西方ガイロス帝国が建国され、その事によって北ガイロス帝国が振り向ける戦力が二分される形にはなりましたが、依然として西方大陸派遣軍が不利な状況には変わりありません。」

 

「わかりました。緒戦においては我が国の敗北とみなければならないようですね。しかし、大切な事は言うまでもなくこれからです。私個人としては一刻も早くこの戦争を終結させ、三つの大陸全てに平和をもたらさねばと考えています。」

 

「ですが、和平と言うものは相手が望まなければ成立する事はありません。ここに居られる皆さんのほとんどは北ガイロスの首脳、ハインリッヒ皇帝が和平交渉のテーブルにつくことはないとお考えだと思います。ですが私は和平という道を捨てるつもりもありません。彼を交渉のテーブルにつかせるためには、彼に軍事力に訴える事の無意味さを教えなければなりません。」

 

 一呼吸置いて彼女は続けた。

 

「その為には北ガイロス軍に打撃を与え、彼等を西方大陸から完全に撤退させなくてはならないでしょう。そのためには我が軍も戦力を惜しむわけにはいきません。十分な人員、物資、そして兵器が必要です。そこでジューネフ内務大臣、国内の支援体制について報告をお願います。」

 

 メガネを右手の中指で上げるとジューネフ内務大臣は発言した。

 

「来るべき反攻作戦にそなえての国内の準備状況について説明します。まず最も重要な要素、人員に関してですが兵員募集を開始してから1年半が経過しましたが、これまでに約200万人が募集に応え、現時点で約5分の2の約80万人が配属されています。」

 

「経済に関してですが、こちらも戦時体制化に移行して1年半が経過しましたが、一部の工業製品の生産が落ち込み、品薄になってきていますが、その他に関しては問題のない状況です。農業生産に関しては平年通りとなっており、こちらも安定した供給が可能です。武器弾薬や兵器部品、船舶等の生産もほぼ当初の予定通りになっています。戦闘用のゾイドに関してもこれまでの保護政策もあって一部の種類を除けばほぼ予定通りに配備できています。」

 

「国内に関しては、ほぼ問題なく準備が出来た、そう考えていいわけですね。」

 

「はい、そう理解して頂いてよろしいかと。」

 

 次にルイーズ大統領は中央大陸から西方大陸にかけての地図を出すように指示した。と、同時に会議室の中央ディスプレイに巨大な地図が出現した。

 

「さて、国内の状況に問題がない事はわかりました。ですからこれからが本題です。我が軍は北ガイロス帝国に対してどのような戦略をとるのか、進撃ルートはどうするのか、それらの事を決定せねばなりません。陸海空軍、それぞれの準備状況についてお聞かせ願います。はじめに海軍総長、海軍の状況についてお願いします。」

 

 フリードマン海軍総長が発言した。

 

「現在西方大陸には、ウルトラザウルス20隻を中核とする第4、第7艦隊が派遣されています。彼らの活躍によって海上ルートからの帝国の進軍は食い止められているわけですが、反攻作戦を行うにあたって制海権の確保は補給線を考えても最重要課題と言えるでしょう。また、敵軍に対する抑止力としてもきわめて重要です。」

 

「海軍はこれからの戦局を考え、第1から第3、そして第5艦隊までの4個艦隊を派遣する計画です。合計すれば6個艦隊が西方大陸に派遣される事になります。」

 

「また、出現が予想される帝国の海戦ゾイド、シンカーやウォディックに対抗するための新型海戦ゾイド、ハンマーヘッドの配備も進めています。これまで海軍には近代戦に対応した潜水戦闘ゾイドが存在していませんでしたが、この新型機はこの両機種に対抗する性能を持っています。」

 

「わかりました。次に空軍の説明をお願いします。」

 

 ファン・テム空軍総長が発言した。

 

「制海権と同様に制空権の確保も重要な問題です。遺憾ながらこれまでの空軍の戦力では、帝国のレドラーに対して圧倒的に不利な戦闘を強いられており、ロブ基地防衛の為にゼネバス公国からレドラーの提供を受けなければ対処できない状況でした。現時点でもレドラーに対抗できるレイノスの確保が順調でないため、ごく一部しか配備できない状況でした。」

 

「ですが、この度ゼネバス公国技術陣の協力もあり、ようやくレドラーを圧倒する新型機、ストームソーダーの開発に成功しました。この機種の原種は大異変以降、数を増やしていた種を使用しており、現時点で150機以上の配備が完了しています。」

 

「空軍としてはこの新型機を中心としてエウロペ大陸の制空権の奪回を図るつもりです。そして制空権を奪回してしまえば帝国の補給線を叩く事が容易になります。ご存知のように帝国軍は非常に補給線が延びており、補給を断つ事に成功すれば敵は戦わずして無力化することになります。」

 

 

「では、陸軍の状況についてお願いします。」

 

 モルト陸軍総長が発言した。

 

「現在西方大陸には第3次増援部隊も含めて7個師団の兵力が投入されています。対する北ガイロス側は少なくとも50個師団もの兵力を投入しているのは間違いないとの事です。前線の将兵たちは圧倒的な敵軍に対して一歩も引かず善戦してきましたが、敵の本格攻勢が予想されている現在、彼らの善戦にばかり期待する事にも限界があります。そこで我が軍の本格攻勢を前に第4次の増援を予定しています。兵力は4個師団を投入するつもりです。」

 

「各軍の状況に関してのご説明ありがとうございます。では我が軍が如何にして帝国軍を西方大陸から撃退するのか、この最も重要な戦略についてムロタカ参謀総長、ご説明願います。」

 

「統合作戦本部としては、神聖ガイロス帝国を完全に打倒するためには西方大陸に展開している敵軍以上の戦力を投入せねばならないと結論付けています。ですが長年この戦争を見越して、着々と準備をすすめてきた北ガイロスと比べれば、現時点の我が連邦全軍の戦力と言えども及ばないと言うのが現状です。後1年もあれば戦力的に北ガイロスを圧倒する事も可能ですが、北ガイロスの技術力は我々の想像以上であることは今までの戦闘においても証明されております。その北ガイロスが西方大陸を完全に掌握してしまえば、我が連邦の全力をもってしても食い止める事は非常に困難になってしまう事でしょう。ですので、我々は急がねばなりません。そのためには一刻も早く西方大陸の同胞たちに援軍を送らねばなりません。それも大兵力を、です。」

 

「しかし大兵力を投入するとなると帝国軍の目を欺く事は出来ません。投入される事を察知すればもてる兵力を全て用いてでもロブ基地の制圧に掛かるでしょう。また投入する兵士たちを運ぶ輸送船団に対しての空と海からの攻撃も十分すぎるほど考えねばなりません。」

 

「そのためには西方大陸における制海権、制空権の確保が最も重要な課題になります。その為には西方大陸派遣軍のみならず、本土からの新鋭機の投入を行わねばならないでしょう。そして西方大陸の制海権、制空権の両方の確保に成功した場合、直ちに持てる兵力の全てを西方大陸に投入する必要があります。」

 

「ムロタカ参謀総長、それはつまりこの中央大陸を防衛する軍のほとんどを派遣する、ということですね。」

 

「おっしゃるとおりです、大統領閣下。すなわち本土防衛のため配備されている30個師団分の戦力を西方大陸に派遣する計画です。確かにこれは賭けであります。失敗すれば多くの兵士たちの命を異郷の地で果てさせる事になります。ですがここで手をこまねいていても事態が進展する事はないでしょう。」

 

「了解しました。その責任は全て私が持ちましょう。そしてその増援の際には大統領親衛隊の戦力もお使いなさい。」

 

 この発言に、出席した閣僚のほとんどが驚きの声を上げた。だがルイーズ大統領は続けた。

「確かに親衛隊まで派遣する事に対して、皆さま方が苦慮なさることは分かります。ですがはっきり申しておきましょう。いま大統領親衛隊というお飾りが、ここに残っていて何になります!彼らの存在を飾り物にしないためにも、前線の兵たちを救うためにも親衛隊の派遣は当然の事です。」

 

 語気を荒げた大統領の言葉に閣僚の誰もが圧倒されていた。

 

 場が静まるとムロタカ参謀総長が挙手をして発現を求めた。

 

「我が軍が反攻に打って出る為には、もう一つ必要な事があります。それは友邦である西方ガイロス帝国への物資的、人的な援助、並びに援軍の派遣です。先ほども申しました通り、現状の我が軍だけでは北ガイロスの撃滅は困難です。ですが西方ガイロスの協力があれば敵の軍勢を大きく二分できます。我々も西方ガイロスも個々の戦力では北ガイロスに太刀打ちできませんが、両国が協力し合う事で勝機を見出す事が出来ます。」

 

「すでにカームズ諜報機関等を通じて戦費、兵器の支援や西方大陸の有望な人材の教育なども行われていますが、これからの戦局を考えますと今まで以上の支援が必要となるでしょう。」

 

 ルイーズ大統領が発言した。

 

「支援に関してはゼネバス公王より、ゼネバス公国軍を義勇軍として派遣したいという打診を受けています。ゼネバス公国は我が軍の一部ではありますが、使用しているゾイドは旧ゼネバス帝国からのゾイド、すなわち現在両ガイロス帝国で使用されているものと同じです。援軍としては最も相応しいといえると私個人は思っています。」

 

 ムロタカはうなずくと話を続けた。

 

「ゼネバス公王からのお話は直接小官にもありました。我々としてはこの提案をありがたく受理したい所存です。」

 

 

 こうして半日にも及んだ会議は終了した。会議が終了した直後、ルイーズ大統領はムロタカ参謀総長と別室で会談した。

 

「ムロタカ参謀総長、形式上大統領が連邦軍における最高司令官ですが、正直な所、私は軍事に関してはまったくの素人です。ですから現場に関してあれこれ口をはさむ事は極力避けたいと思っています。ですが、一つお願いがあります。私はこの戦争をなるだけ犠牲を出さす、しかも短期間で終結させて欲しいのです。そのためには出来るだけ早く講和に持ち込みたいと考えています。そのことを憶えておいてもらいたいのです。」

 

「大統領閣下の心中お察しいたします。我々としても出来る限りの努力を行う事は言うまでもありません。ですがいくつか残念な報告もせねばなりません。」

 

「と、言いますと?」

 

「ひとつは神聖ガイロス皇帝ハインリッヒに関することです。彼がクーデターを起こして皇帝の座をなぜ手に入れようとしたのか。普通に考えれば権力欲から起こしたと考えるのが妥当でしょう。ですが彼は権力を掌握するとすぐに西方大陸を制圧する行動に移りました。考えられる理由は一つです。」

 

「それはつまり、はじめから戦争する事そのものが目的だった、ということでしょうか?」

 

「ええ、そうとしか考えられません。それを裏付けるような事実もいくつか判明しております。この話は西方ガイロス帝国国防軍の最高司令官ハイデルベルク大将からの話なのですが、どうも4年前のメルクリウス紛争でハインリッヒとガイロス皇帝の間に一悶着あったらしいのです。その際ハインリッヒらは西方大陸の制圧を主張し、事実各地で挑発行動を仕向けていたらしいのです。ですが、その事がガイロス皇帝の怒りに触れ、ハインリッヒは謹慎処分、プロイツェンも一時的に降格されていたらしいのです。」

 

「それらのことを考えるとガイロス皇帝が死去したことをきっかけにハインリッヒが自身の野望、すなわち西方大陸の完全制圧のみならずこの中央大陸をこの星の全てを掌握する野望を実行に移した、と考えるのが妥当だと思われます。」

 

「・・・・ということはハインリッヒを講和会議の席につかせるのは容易ではない、ということなのですね。」

 

 悲しげな表情の大統領に対して瞑目しつつもムロタカは続けた。

 

「さらにもう一つ、これは大統領閣下にとっても重大な問題なのですが、ハインリッヒの腹心、宰相プロイツェンの出自に関しての問題があるのです。」

 

「それは、プロイツェンがゼネバス公王のご子息である可能性が非常に高いということなのです。」

 

「!・・・・それは本当の事なのですか!?それでお父様、いえゼネバス公王は何と。」

 

 ルイーズ大統領が驚いたのも無理はなかった。彼女の名前はルイーズ・エレナ・キャムフォード、エレナの名前が示すように彼女はゼネバスの娘である。

 

「すでにゼネバス公王陛下にはこの件に関して報告を致しておりますが、お話ではその可能性は否定できないとの事です。」

 

「・・・・何と言う事でしょうか。その事が事実だとすればプロイツェンは私の異母姉弟ということに。では、プロイツェンの目的とは。」

 

「恐らくはゼネバス公王、ひいては我が国への復讐が目的かと思われます。」

 

 2人の間にしばしの沈黙が流れた。

 

「わかりました。ですが、いかなる事情があるにせよ私の意思は変わりません。それではムロタカ参謀総長、後の事はお願いします。」

 

 ムロタカは一礼すると退席した。ルイーズ大統領の心中を察するに余りある話である。国家を統べる者として、耐えてもらわねばならない試練だとしてもあまりに辛いものだと。

 

 

 かくして連邦の方針は決定した。だが、大軍を送り込むための前提条件である制海権、制空権の確保を果たす事が先決である。ムロタカら参謀本部はすでに奇策を立案し、すでに制空権確保のための準備を開始していた。果たしてその作戦とは如何に?

 




初出 2002年8月4日
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