惑星Zi西方大陸戦争録 【Zi-EX天神 ゾイド二次創作小説再掲(2002~2010)】 作:むげんゆう
帝国空軍がこのウルトラ艦隊撃滅作戦に賭けた意気込みは、投入された規模から見てもロブ基地への空爆の時以上であった。この作戦に投入された航空戦力は連邦の諜報機間が入手していた通りおよそ1千機。正に空前の大空爆作戦であった。
そしてこの作戦の成功を空軍の将兵たちの誰もが確信していた。如何に強力なウルトラ艦隊といえども、1千機もの飛行ゾイドからの猛爆に耐えられるはずもない。まして敵は艦載機を有しているとはいっても千機もの数が相手では丸裸も同然の状態である。勝てないはずがない。少なくとも常識的に考えれば。
第1波の先頭を行く部隊は、ついにウルトラ艦隊の姿をレーダーに捕らえた。その数は偵察機の報告にあった通りおよそ150隻。特に艦隊の中心部に大型艦が多数見受けられた。最大の攻撃目標であるウルトラザウルスに間違いなかった。
「バーニン隊長、我々は完全に連中の裏をかいたようです。」
スコルフはすでに勝利を確信していた。
「その証拠にようやく連中の護衛戦闘機が出てきたようですが、それでも50機程度、やはり予想程度の数でほとんど問題になるようなものではありません。」
それでもバーニンは冷静であった。
「スコルフ、我々戦闘機は今回の主役ではない。他の中隊にも連絡を取って、迎撃に出てくる敵の戦闘機の相手をするぞ。その間に爆撃隊が連中の母艦を沈めればいいわけだ。ではいくぞ!」
その時、上空からレドラーに立ち向かってくる機体の一団が現れた。数はおよそ50機程度。レドラー迎撃のため空母タイプウルトラから発艦したレイノスであった。
機体前面に集中的に装備された火器を使用した一撃離脱戦法を得意とし、最高速度でレドラーの優位に立つ機体ではあるが、空母に搭載されている機体だけではあまりにも数が少なすぎた。50機程度の数では爆装タイプを護衛するノーマルタイプレドラー防衛網を突破する事はできなかったのだ。
戦闘機部隊がレイノスの相手をしている隙に、攻撃隊の第1波、およそ70機が攻撃態勢に入った。目標は小物のバリケーターではなく大物のウルトラザウルスである。第1波は海面ギリギリの低空からウルトラ艦隊に殴り込みをかけた。だが、彼らを出迎えたのは、濃密にして正確無比な対空砲火の雨であった。
艦隊の護衛用に配置されていたバリケーターの上部には、新兵器四連装インパクトカノンが搭載されていた。その強力な対空砲火は、艦隊の上空付近に到達したレドラー達を発射された対艦ミサイルもろともに瞬時にして葬り去っていった。
第1波攻撃隊のほとんどは、夕立のような対空砲火の前にウルトラ艦隊にほとんど損害を与える事もできずに壊滅したのだった。
「連中の対空砲火は強力だ!外堀から埋めていけ!」
第1波の攻撃失敗の報告を受けた司令官は、攻撃方法の変更を第2波攻撃隊に命じた。
30分後に到着した第2波は、第1波から得た教訓を基に、まず艦隊の護衛ラインを引いていたバリケーターに狙いをつけた。対空砲火をより有効にする輪形陣の外輪を片付けなければウルトラへの攻撃もままならないと判断したからである。
四方からの執拗な攻撃を受けながらも奮戦するバリケーターらであったが、圧倒的な数の敵機に一度に狙われては対応できず、多くのバリケーターが沈められてしまった。
情報を種収し艦隊の指揮を取っている、旗艦ヨハン・エリクソンのブリッジにも切迫した状況を示す情報が、次々ともたらされていた。
「司令!艦隊前方を護衛していたバリケーター20機が、敵の第2波攻撃で沈められた模様です。また他のバリケーターも多くが損傷を受けた模様です!また、ウルトラザウルス各艦にもわずかではありますが損害が出ている模様です!」
敵の第2波によって受けた損害がようやく集計されて、フィリッポスに報告されていた。
「空軍の援護部隊が到着するまで、後どのくらい掛かる!?」
だが、返ってきた返事はあまり色良いものではなかった。
「現在電波状況が悪いため、航空隊との連絡が取れません!」
「ええい!電探室、敵の第3波の到達までの時間は!?」
「後30分ほどで艦隊上空に到達する模様です。」
「よろしい、全艦に通達!その間に休息を取れ!」
こうしてこの海域にしばしの静寂が訪れた。このわずかな時間にある者は配られた戦闘食をほおばり、またあるものはその場に呆然とへたり込んでいた。
だが命令が出されてから20分も経つ頃には再び敵の大編隊が姿をあらわした。刻々と迫り来る敵の大編隊の前におのおの覚悟を決める兵士たち。だがその時、敵と逆の方向から別の大編隊がその姿を現した。
「ようやく騎兵隊のお出ましか。」
フィリッポス司令の口から思わず本音が漏れた。予定から遅れる事2時間あまり、ようやく期待の新鋭戦闘機、ストームソーダーの部隊が到着したのである。
「ふう、大分遅刻しちまったが、何とか間に合ったようだな。」
先陣を切るスピアー中隊のシェイン中尉は安堵していた。彼らは真のカマドウマ作戦において最も重要な存在であったため、その存在を帝国軍に察知されるわけにはいかなかった。
その為、戦闘海域へ向かうためにも大回りな飛行ルートを通らねばならず、途中の低気圧の影響もあって到着が大幅に遅れてしまっていたのだ。
またストームソーダーの西方大陸への配備、それ自体が極秘にされていた。彼らのための秘密飛行場はロブ基地の沖合いにひっそりと建設されていた上、ストームソーダーも分解され密かに運び込まれていた。そして作戦開始直前までに突貫作業で組み上げられ、努力の甲斐あって300機もの数が何とか揃えられたのだった。そして、敵レドラー部隊が行動を開始したのを見計らい、彼らもまた戦闘海域へ向けて出撃したのだった。
シェインは艦隊へ向かうレドラーの大編隊を確認すると部下たちと共に一気に切り込んでいった。
「今まで待たされていた分だ!しっかり暴れさせてもらうぜ!」
突入してくるストームソーダーの大軍に攻撃隊は恐慌状態に陥った。だが、レドラー隊は圧倒的な数である。現場の指揮官の判断でこのまま攻撃敢行を決定すると、彼らはそのまま突入してきたのだった。
「いい覚悟だ。だがその判断、後で後悔することになるぜ!」
ストームソーダーの性能は圧倒的だった。爆装していて動きが鈍っていたとはいえレドラーは回避する事もままならず、瞬時に切り刻まれて落下していったのだ。
「おのれ、それ以上はやらせるか!」
第3波の護衛に当たっていたノーマルレドラーが挑みかかったが、ストームソーダーの敵ではなかった。レドラーの切断翼は、ストームのレーザーブレードの前にまるで歯が立たず、切断翼もろともに両断され海面に叩き落されていった。
こうして第3波の攻撃隊350機はストームソーダー300機の前に280機以上を撃墜され、完全に壊滅したのだった。さらに勢いに乗るストームソーダー隊は後続の第4波攻撃隊にも襲い掛かった。
この時、第4波攻撃隊のほとんどは爆装を解除し、迫り来るストームソーダーに果敢に戦いを挑んだ。だが、彼らもまたストームソーダーの圧倒的な戦闘能力を前にそのほとんどを撃墜されて、ほうほうの呈で撤退していった。
第3、第4波攻撃隊の損害のあまりの多さに第5波攻撃隊は攻撃を断念し、攻撃を終了した第1、第2波攻撃隊と合流すると直ちに基地へ引き返した。だが、彼らの帰還すべき基地はすでに連邦軍の猛攻に晒されていた後だった。
レドラー部隊が出払った隙を突いてサラマンダー40機が高高度から特殊誘導爆弾による空爆をかけていたのだった。
特殊誘導爆弾は2種類あった。そのうちの1種は滑走路の上空に達すると積みこまれていた大量の子爆弾をばら撒いた。これによって滑走路は穴だらけになって使用が困難になっていた。もう1種は同じように滑走路の上空に達すると大量の小型地雷をばら撒いた。それを知らずに着陸したレドラーは爆発、炎上した。さらにそれらを散布し終えた特殊爆弾は管制施設に襲いかかり、基地の能力を完全に破壊した。
ここで解説を加えておくが、飛行ゾイドというものはそのほとんどが垂直離着陸能力を持っていることはゾイドに関する知識を持っている方にとっては常識であると思われる。
だが垂直離着陸が可能だからといっても、それが万能であるわけではない。垂直に飛びあがったり空中で停止する場合には膨大なエネルギーを消耗してしまうのだ。
その離着陸の際のエネルギー消費を押さえるためには、滑走によって離着陸を行った方が効率が良かった。それ故この世界においても航空ゾイドの運用には滑走路が利用されていたのだ。
そしてこの作戦でレドラーは航続距離ギリギリでの作戦を余儀なくされていたため、帰還する際にエネルギーはほとんど残っていなかった。よって着陸する際には滑走路を使わなければまともに着陸が出来ないため、この滑走路への攻撃は致命的なものになった。ようやく帰還したレドラーのほとんどは滑走路が使用不能になったため不得意な場所での不時着を余儀なくされ、帰還した機体もそのほとんどが損傷することになった。このため、帝国空軍は甚大な損害を被ることになったのだった。
この一連の戦闘で連邦軍は32機のバリケーター、18機のレイノス、そして25機のストームソーダーを失い、ウルトラザウルス7隻が小破、1隻が大破した。だが対するガイロス帝国空軍は合計して約600機ものレドラーを失い、残ったレドラーもそのほとんどが何らかの損傷を受ける結果となった。
当初、自分達の完全勝利を疑わなかった帝国軍であったが、結果は帝国軍の完敗となったのだった。
さらにこの空軍の大敗の結果、神聖ガイロス帝国は北エウロペ大陸東岸部の制空権を失うこととなった。そして空軍が敗れたことにより空からの援護が受けられなくなった帝国軍は連邦軍の猛攻を食い止めることができなくなり、アレクサンドル台地からの完全撤退を余儀なくされた。こうして戦局は、大きく連邦軍側に傾き始めていたのだった。
一方、戦闘が終わった海域では、ウルトラ艦隊による敵味方の区別のないパイロットたちへの救助活動が行われていた。旧大戦時のリンデマン提督の故事に習った救援活動をフィリッポス提督は命じていたのだ。
「よいか諸君、海に投げ出された大空の勇者たちを一人残らず救助するのだ。無論、敵味方の区別などあってはならない。この戦いで生き残った勇者たちに最高のもてなしをするのだ。」
夕日が、海原を美しく照らし出していた。まるで両軍の奮闘を称えているかのように。
初出 2002年8月18日