惑星Zi西方大陸戦争録 【Zi-EX天神 ゾイド二次創作小説再掲(2002~2010)】   作:むげんゆう

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第2章 第10話 デルダロス海護衛戦

 ZAC2100年5月末、北エウロペ大陸東部での制空権の確保に成功した連邦軍は、ついに大規模な反攻作戦に打って出ようとしていた。

 中央大陸全土から集められたヘリック連邦軍30個師団、およそ60万人にもおよぶ大兵力が中央大陸西部の港という港に集められ、西方大陸へ派遣されようとしていた。

 

 この大部隊の輸送手段は大きく2つあった。一つは連邦軍が誇る巨大飛行輸送艇ゾイド、ネオ・タートルシップによる航空輸送。もう一つは、体のほとんどは船舶そのものだが動力機関にゾイド生命核を使用し船全体を支える竜骨に組織を組込み、僅かながらにゾイドとしての意識を持たせた、文字通りの船舶型ゾイドによる海上輸送があった。

 

 なお、これまで西方大陸への輸送手段はそのほとんどが航空輸送によるものであった。こちらの方が迅速にかつ比較的安全に兵力や物資の輸送が行えたからである。

 だが今回予定されている30個師団にもおよぶ大兵力の輸送には航空輸送では限界があった。航空輸送の主役であるネオ・タートルシップは現在最優先で建造されていたものの、その数には限界があったからである(連邦軍は基本的に専守防衛を戦略の基本としていたため大型輸送艇の大量生産はなされていなかった)。

 

 そこで今回の西方大陸への兵力派遣の主役として選ばれたのは海上輸送であった。船舶型ゾイドはその構造からも分かるように、動力用のゾイド生命核さえ用意ができれば連邦の誇る強大な工業生産力で大量生産が可能だったからである。

 しかし、海上輸送は危険も大きかった。航空輸送と比べるとどうしても速度が遅く、敵に補足されやすかったからである。そのためデルダロス海の制海権の確保は極めて重要であった。

 

 連邦海軍はデルダロス海の安全のためシーザウロを中心とする大規模な護衛艦隊を組織し常に哨戒活動を怠る事は無かったが、それでも広大なデルダロス海の全域を完全に守りきれるわけではなかった。特に飛行も潜水も可能なシンカーは補足の困難な強敵だった(空を飛べる分ウォディックよりも対処が困難だった)。

 ただシンカーには弱点があった。航続距離が短いため長期の活動が困難なうえ、デルダロス海に進出可能な補給拠点が先の連邦軍の攻勢で連邦軍の勢力下に落ちていたのだ。そのためこの海域での作戦行動が非常に困難になっていた。

 

 連邦軍はこの点を考慮し輸送作戦の成功には自信を持っていたが、その自信を打ち砕く事件が1ヶ月ほど前に起きていた。

 西方ガイロスへの援助物資を搭載した輸送船と、その護衛艦隊がシンカーの航続距離外から、しかも大量の数の敵機に空海同時攻撃を受け壊滅してしまったのだ。しかもこのような被害はただ一度だけではなく、その1ヶ月間だけでも3回も同じような被害が報告されていた。

 

 この事件に大きな衝撃を受けた連邦軍は直ちに調査を開始したが、具体的な事は何も分からないままだった。だがカームズ諜報機関から不確定ではあったが、一つの情報がもたらされていた。それは帝国海軍は潜水母艦としてホエールカイザーを改造して使用しているらしいとの情報であった。

 この報告は帝国軍の立場を考えれば大いにありえるものといえた。元来海中戦闘用ゾイドは航続距離はともかく居住性には限界があり、数日程度の作戦であれば可能であったが長期間の潜伏を余儀なくされる通商破壊作戦はパイロットへの負担がかかりすぎるため不可能であった。

 

 その欠点を補う方法は一つ、パイロットに十分な休養が与えられ、なおかつ長期間の潜伏が可能な施設を用意する事。すなわち潜水母艦を用意する事であった。

 しかも帝国軍の主力輸送船ホエールカイザーはすでに大量に建造されており、これらが全てでないにせよシンカーや出現が予想されるウォディックを使った通商破壊に回されるとすれば大いに脅威であった。ホエールカイザーの航続距離は広大で、理論上西方大陸はおろか中央大陸にまで作戦活動が可能だったからである。

 この小型海戦ゾイドとホエールカイザーの組み合わせによる新たな脅威を前に、連邦軍は対策を立てねばならなかったが、具体的な対策はなかなか浮かばず当面は護衛艦隊に、より強力な航空援護を付ける以外に方法はなかった。

 

 しかし今回のような大規模な輸送作戦への脅威が減るわけではなかった。それに大規模な航空支援が行えるゾイドの数はそれほど多くはなかった(シンカーの大群を相手にしようとすれば、最低でも空母型ウルトラの護衛が必要となったが、ウルトラザウルスそのものの数が不足していた)ため完全防御は不可能。

 そして敵は必ず連邦側の隙を突いて輸送船団に攻撃を仕掛けてくるだろう。そうなれば多くの兵士たちがゾイドが戦場に辿り着く前に海の藻屑となってしまうことになる。

 その懸案に対して海軍は一つの策を練った。完全に敵の脅威がなくなるわけではないであろうが、成功すれば当面の安全が確保できるであろう策を。そして連邦軍の空前の輸送作戦は開始された。

 

 

 6月1日、連邦軍の派遣部隊の第1陣がユビト港から出発した。第1陣には連邦軍最強兵団と呼ばれた大統領親衛部隊をはじめとした最精鋭の部隊が含まれており、まさに連邦の虎の子であった。

 

 この事は極秘とされていたが完全に隠し通すことはできず、帝国軍の知るところとなった。この情報を入手した帝国海軍は、これまでの汚名返上とばかりに直ちに攻撃部隊を編成させデルダロス海に向かわせた。

 その兵力はホエールカイザー30隻にシンカーおよそ200機。通商破壊作戦に投入される戦力としては前代未聞の大規模な戦力だった。帝国海軍はその内の3分の1の数を偵察に向かわせ、同時に諜報活動により輸送艦隊の所在地とその航路を割り出す事に成功した。

 そして懸命な偵察隊の活動により輸送艦隊を補足した帝国海軍潜水艦隊は、直ちに襲撃地点を決定するとその海域に集められるだけの戦力を集結させた。そして輸送艦隊の到着が間近に迫るとシンカー部隊を発進させ、海底に待機させ手薬煉を引いて攻撃の時を待った。

 

 同月9日、ついに輸送艦隊がシンカー部隊の攻撃可能圏内に到達した。前線指揮用のホエールカイザーからついに攻撃命令が下された。

 

「A隊並びにB隊は海中より敵艦隊に攻撃を開始!CからE隊は敵の混乱に乗じて上空に上がり航空攻撃をかけ敵艦隊を撃滅せよ!」

 

 命令は直ちに実行に移された。潜伏していたシンカー部隊は敵に音を探知されない、かつその範囲での最大戦速を出し輸送艦隊に肉薄した。

 そして接近と同時にソナーから情報を得る。輸送艦隊はまだシンカーの接近には気付いていないようだった。すぐさまA隊とB隊は輸送艦隊を緩やかに包囲する形で布陣した。

 

「全機攻撃開始!1隻たりとも逃がすな!!」

 

 その号令と共にA隊B隊あわせて70機のシンカーから高性能魚雷が輸送艦隊を包囲する形で発射された。四方八方から迫り来る高性能魚雷を洋上の輸送艦隊はほとんど回避することは出来ず、次々と巨大な水柱をあげていた。

 

「よし、航空攻撃隊ただちに上昇を開始!上空の航空輸送艇ならびに生き残った輸送船を殲滅せよ!!」

 

 C隊からE隊までのシンカーおよそ120機は海中から勢い良く飛びあがった。確認して見ると洋上の輸送船はそのすべてが炎に包まれ、半数以上が船体を海中に没しかけていた。洋上輸送船団はすでに壊滅状態になっていたのだ。

 洋上艦隊の壊滅を見て取った彼らは直ちに上空のネオ・タートルシップに攻撃を行おうとした。だが、D隊の隊長機が異変に気がついた。

 

「飛び亀のハッチがすでに開いているだと?!」

 

 そう彼が呟いた瞬間、上空から逆落としに彼の機体に銃撃が降り注いだ。コクピットを一撃で打ち抜かれ爆発し、四散するシンカー。他の機体にも同様に機銃やミサイルが降り注いでいた。

 かろうじて第一撃を逃れたパイロットは絶叫していた。

 

「何でこんなところにプテラスどもが大勢居やがるんだ!!」

 

 

 今回の輸送作戦の実施にあたって最大の脅威だった潜水艦隊に対して、対処するべく策を練っていた連邦海軍が出した結論は、完全防御は不可能と言う悲痛なものだった。

 航空防御に関しては前述した通りだが、さらに問題となったのは敵の母艦の補足が困難だと言う事だった。シンカーを発進させる際、敵が必ず浮上しなければならないのであれば対処は簡単に行えたであろう。

 

 だがシンカーは潜水可能なゾイドであり、ホエールカイザーも水中からの発艦には何の問題もなかった。その為、事前に発見しようと思えばソナーで発信音を拾うか、事前に通信を傍受するしか対処法がなかったが、シンカーが事前に待ち伏せていた場合、予兆すらつかむ事はできないであろう。

 仮に追い回せたとしても一目散に母艦へ引き上げるわけではないから、やはり母艦の補足は困難である。ましてホエールカイザーは飛行も可能な万能艦であるから、海峡に聴音機を備え付けていても無効化される可能性は大きい。

 

 そのため今回連邦海軍が取った作戦は奇抜なものになった。最精鋭部隊を囮をとして使い敵を大量に引きずり出し、これを一網打尽にする。これはかつての大戦でヘリック共和国軍がおこなった、フロレシオ海海戦で用いられた作戦に通じるものであった。

 もちろん帝国軍がこの海域に投入し得るシンカーのすべてが投入されるわけではないであろうが、それでもかなりの数が食いつく事が予想された。ここで食いついた数のほとんど全てを撃退できれば、用心した帝国軍が攻撃の手を緩めるかもしれないし、少なくとも後続の輸送艦隊の損害を押さえる事が出来るのは間違いなかった。

 

 そのためこの作戦は非常に大掛かりなものになった。出航した当初は確かに輸送艦隊には連邦軍の第1陣が輸送されていた。だが航行しながら、徐々にではあったが密かに回されたネオ・タートルシップに輸送船に乗せられていた部隊や物資は移され、この海域に到着する頃には全ての輸送船が偽りの積荷を搭載した無人船となっていた。

 またこの艦隊の上空にいたネオ・タートルシップには連邦軍の最精鋭部隊の変わりに第一線を退こうとしていた戦闘機タイプのプテラスが許容量の限界まで搭載されていた。

 プテラスはレドラーに対しては完全に分が悪いことが証明されていたが、元々旧大戦時に対シンカー用として開発された機体であったため、空中戦でシンカーに遅れを取る事はまずない。そのためノーマルタイプのプテラスの最後の役目としてこの任務が選ばれたのだった。

 

 

 空中に飛び上がったシンカーは悲惨だった。対艦攻撃用に重い対艦ミサイルを搭載したままで飛びあがったのだから、上空から奇襲を仕掛けてきた身軽なプテラスに対しては何ら有効な対処がおこなえなかった。

 

「全機に告ぐ!全機に告ぐ!!爆装を解いて海中へ離脱せよ!繰り返す、爆装を解いて離脱せよ!!」

 

 第一撃からかろうじて生き残る事ができたE隊の隊長の命令がシンカー各機に伝えられた。

 あるものは照準もつけずにミサイルを発射し、あるものはそのまま投棄して海中に逃げ込もうとしたが、ほとんどの機はその努力が実る事はなかった。襲いかかった80機以上のプテラスはシンカーを海中に逃がす前にその大半を鉄屑として海中に送り込んでしまったからである。

 また、何とか海中に逃れたシンカーも完全に逃げ切る事はできなかった。ネオ・タートルシップから発進したのはプテラスだけではなかったからだ。

 対シンカー、そしてウォディックとの戦闘をも考慮して開発された連邦海軍の新型海戦ゾイド、ハンマーヘッドがシンカー部隊に襲いかかったからである。

 

 ハンマーヘッドの性能は圧倒的だった。海中速度は65ノットにも達し、武装もAZマニューバーミサイル等の強力な武装が施され、速度においても火力においてもシンカーを凌駕していた。

 一方のシンカーはほとんどが輸送船攻撃で対艦ミサイル(並びに魚雷)を使い果たしており、ほとんどは海中を逃げ回るしかなかった。

 シンカー部隊にとって幸運だった事は、この時投入されたハンマーヘッドには初期不良が原因の故障の発生が相次いだ機体が多く(空中で音速、海中でも高速を求められたため構造が複雑になっていた)投入された35機中10機までが着水のショックで故障するというトラブルに見まわれて戦闘に参加できなかったのだ。

 そして戦闘中も一部の機体は武器を管制するシステムに問題が発生し(これはあまりにも精密な制御を要求する武装が多すぎたために発生した)、実際に戦闘に参加できた数が25機しかいなかったことである。

 

 だが、その僅か25機のハンマーヘッドが与えた損害は圧倒的だった。海中に逃れる事ができた数も合わせるとシンカーは100機以上であったが、海中でのシンカーの損害は50機にも及び、ハンマーヘッドはその圧倒的な性能を見せつけたのだった。

 特にマリン・ブルーガー曹長のハンマーヘッドは単体でシンカー5機撃破、そして補足に成功したしたホエールカイザー1隻の撃沈に成功し、マーメイド・マリンと呼ばれることになった。

 これだけの戦果が一個人によって上げられたのは、時にシステムの故障の原因となった重武装によるものだろう。

 

 この戦いでシンカー部隊は投入した190機中140機近くを失うという大損害を受けたが、母艦であるホエールカイザーは僅かな例外を除いてそのほとんどが補足される事なく撤退に成功していた。

 そのため2週間の内に再編成を終えた潜水艦隊は、後続の輸送艦隊に対して断続的に攻撃を仕掛け、連邦軍に無視できない損害を与え続けた。だが連邦軍は戦力のほとんどをその2週間の間に西方大陸まで輸送する事に成功していたため、作戦を阻止させるまでにはついにいたらなかった。

 

 そして7月、ついに連邦軍の本格的な反抗作戦が行われようとしていた・・・・。




初出 2002年8月26日
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