惑星Zi西方大陸戦争録 【Zi-EX天神 ゾイド二次創作小説再掲(2002~2010)】   作:むげんゆう

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第3章 第3話 悪鬼覚醒

 ロブ基地にP.K.師団が奇襲攻撃をかけてから約1時間、基地内は完全に"魔女の大釜"と化していた。

 

 あちこちで火災が発生したうえその炎は他の建物に次々燃え移り、もはや収拾のつかない状態になっていた。

 そしてその混乱を見逃すような事をするP.K.師団ではなかった。第1目標の撃破を完了した彼らは、さらに戦果を拡大すべくさらなる攻撃に出たのだった。

 これを向かえ討とうとする連邦軍部隊もあったが、その多くは基地内の混乱のためP.K.師団に近づく事すら困難であった。

 

 

 ここ第17格納庫も他の施設同様、混乱の坩堝の中にあった。

 迎撃のため、あるいは脱出のため格納庫内にあったゾイドを出撃させようとするものの、ハッチの外側の混乱と、誘導員不在のために多くのゾイドが格納庫の中に閉じ込められたままになっていた。

 

 格納庫の奥に待機していたアーサーとブレードライガーもこの混乱の中でまったく動けずにいた。

 

「クソッたれ!これじゃあ発進する事もできねえのか!」

 

 毒づきながらアーサーは通信回線を開いていたが、流れ込んでくるのは混乱しきった状況を示す雑音と、飛び交う罵声だけだった。

 

「ヤバい、ヤバすぎるぞ。こんなところをもし攻撃されでもしたら・・・・。ええい、こうなったら周りのゾイドをぶっ飛ばしてでも!」

 

 そうアーサーが呟いた瞬間、格納庫の天上が勢い良く突き崩れた。

 そして姿を現したのは今の彼らにとって最悪の敵にしてP.K.師団が誇る最強ゾイド、アイアンコングP.K.であった。

 

「ふん、連邦軍の最重要拠点といっても脆いものだな」

 

 アイアンコングP.K.に乗るハンナ・ハンナ少佐はすべてを見下すように呟いた。と同時に左腕に装備していた電磁砲が火を吹いた。

 アーサーの恐れていた事は現実となっていた。格納庫のなかで動く事もままならず、同士討ちを恐れて反撃できない連邦軍ゾイドは一方的に破壊されていったのだ。

 

「ハハハハ!なんて簡単な仕事だ。たった一度の攻撃で5、6機のゾイドが撃破できるのだからな」

 

 時間にして僅か数分程度の間に、格納庫にあったゾイドの半分以上がただの鉄屑に変えられていた。

 そしてその残骸を押しのけてアイアンコングP.K.は前進していく。

 このゾイドに搭載されていた特殊センサーが、巨大な熱量を持つゾイドの存在を感知していたからである。

 

「ほう、厳重に封印されていたところを見ると、ここに連邦の重要兵器が眠っているわけだな」

 

 強固な鋼鉄製の扉がP.K.コングの力でこじ開けられた。そしてその中にあったのはゴジュラス・ジ・オーガであった。

 

 ハンナ・ハンナは直ちに特殊センサーを使って詳細にオーガをスキャンした。

 

「なるほど、ゴジュラスにオーガノイドシステムを搭載したわけか。我が軍でさえまともな制御が困難なシロモノを奴らが使いこなしているとも思えんが、念の為に破壊しておくとしよう」

 

 P.K.コングは右肩に装備している大型ビームキャノンを鎮座しているオーガの心臓部に押し当てた。

 

「オーガノイドの再生能力も、コアを破壊してしまえば役には立つまい!」

 

 次の瞬間、P.K.コングは真横から衝撃を受けて大きく跳ね飛ばされた。

 

「何っ!」

 

 彼女が驚いたのも無理はない。この格納庫のなかで動けるゾイドはいなかったはずだからだ。

 

「おのれ、何者だ!」

 

 瞬時に体勢を立て直した彼女の目の前には、1台のグスタフが映し出されていた。

 

「オーガに手出しはさせるかよ!!」

 

 P.K.コングを跳ね飛ばしたのは、ジンライのグスタフだった。

 この夜、彼の所属する輜重部隊は第17格納庫の近くで駐屯しており、なおかつ彼のグスタフは整備が終わっており活動する事が可能だったため、隊長から格納庫護衛の命令を受けてこの格納庫に駆けつけたのだった。

 

 整備したての彼のグスタフは軽快かつパワフルだった。P.K.コングが立ち直ろうとしているのを見て取ると、猛烈な勢いで再び体当たりをかけ、P.K.コングを格納庫の外に叩き出したのだ。

 

「グスタフふぜいが、なめるな!!」

 

 P.K.コングは背中のバーニアに点火すると、大きく跳び上がった。そしてグスタフの真上から電磁キャノンを雨あられと撃ち込んだ。

 

「クソ!!」

 

 とっさの判断でジンライはコクピットを装甲の中に収めた。と、同時に中型ゾイドなら瞬時に鉄屑にしてしまうであろう砲弾がグスタフの上に降り注いだ。

 たちまちにして外装のレーダーや機銃が吹き飛ばされていったが、グスタフの外装は思いのほか強固で、多少凹みやひびが入ったりしたものの、至近距離からの電磁キャノンの砲弾を全て弾き返していた。

 

「あいちちち・・・。何とか助かったか」

 

 そう言ってジンライは辺りを振り返ったが、そこにP.K.コングの姿はなかった。センサーの画面を覗きこんだものの、レーダー等のセンサー類は先ほどの攻撃でスクラップになっており、画面は何も映し出してはいなかった。

 

「奴は一体どこに・・・・?」

 

 その時、ジンライは背後から強烈な殺気を感じ取った。慌ててアクセルを吹かし、方向を変えようとしたその時、強烈な光が彼の頭上を通過した。と、同時に彼は愛機もろとも大きく跳ね飛ばされた。

 

「ザコの分際でこの私をてこずらせおって!」

 

 P.K.コングは背後から零距離で大型ビームランチャーをグスタフに叩き込んだのだった。如何に強固な装甲を誇るグスタフといえども、この攻撃には耐えられるはずもなく、一撃で打ち倒されたのだった。

 

 グスタフを始末し終えたハンナは、再びオーガを破壊すべく格納庫に入っていった。

 

「オーガノイドのゴジュラスめ!今度こそ仕留めてくれる!!」

 

 彼女がトリガーに指を掛けたその時、背後から何かが近づいてくるのが分かった。

 

「まだ生きていたのか!?このグスタフは!」

 

 機体に大穴を空けられながらも、グスタフはパイロットの思いに答えるようにP.K.コングに向かってきたのだった。

 

「ええい、気持ちの悪い!二度と動けぬように今度は粉々に吹き飛ばしてくれる!!」

 

 

 P.K.コングがオーガに背を向け、砲門をグスタフに向けたその時だった。

 無人で、全てのシステムが切られたままの筈だったゴジュラス・ジ・オーガが突然動き出したのだった。

 

 オーガは轟音を立てて拘束具を振りほどき、引き千切り、弾き飛ばすとP.K.コングに襲いかかった。

 

「馬鹿な!アレは無人ではなかったのか!?」

 

 ハンナは言葉では驚きながらも、冷静にオーガに向けて大型ビームランチャーを発射した。

 至近距離からの攻撃にさしものオーガの装甲も打ち抜かれてしまったが、オーガの金属細胞は信じられない速度で再生を開始し、ものの数秒のうちに修復を完了していた。

 

「このバケモノが!!」

 

 ありったけの火器を撃ち込んでオーガの動きを止めようとするハンナだったが、その攻撃をものともせず近づいたオーガは尾の一撃でP.K.コングを格納庫の外へ弾き飛ばした。

 

「何が起きたんだ…。」

 

 ボロボロになったグスタフから這い出したジンライは、その光景を呆然と見ていた。

 するとオーガは、生き絶えようとしていた彼のグスタフと、彼の方をじっと見つめた。自然にジンライの目線とオーガの目線がぴたりと合った。

 

 その光景を、ようやく愛機と共に腹ばいになって這い出したアーサーも驚きのまなざしで見ていた。

 操縦どころか自動制御さえ拒むような強暴なオーガノイド搭載機が、まさか人と心を通わせるとは思ってもいなかったからだ。

 そしてさらに彼の想像を超えた出来事が目の前で起こっていた。

 

 グスタフから這い出し呆然としているジンライに、オーガは喉を鳴らしながら頭部を下げた。同時にキャノピーが大きく開けられていた。

 

「オレに、乗れって言っているのか…?」

 

 ジンライはオーガのコクピットに駆け寄ると、操縦席に飛び乗った。

すると全ての計器はまるで宝石箱のように光を放ち始め、システムを勝手に立ち上げ始めていた。それが終わるとキャノピーは閉じられ、オーガはゆっくりと立ち上がった。

 

「信じられねえ、まるでこいつと一つになったみてぇだ…。」

 

 そしてそれはアーサーにとっても衝撃的な事であった。

 

「オーガが、あのオーガが自分でパイロットを選んだっていうのか?!」

 

 信じられない出来事に驚くジンライ、そしてアーサーであったが、突然視界に敵の姿が飛びこんできた。

 先ほどの騒ぎを察知したのだろう。新たなP.K.コングが2機、そして多数の小型ゾイドが近づいてくるのが分かった。

 

 ジンライは感じ取った。闘争心に燃えるオーガの意思を。そして彼もまた闘志の炎が燃え上がっていた。

 

「いくぜオーガ!オレたちの基地から、土足で上がりこんできたあいつらを叩き出してやるぜ!!」

 

 彼の叫びに呼応してオーガの瞳に深紅の光が燈った。そして同時にロブ基地全てを揺るがす大音響の咆哮をあげた。それはジンライとオーガの戦いの烽火であった。

 

 オーガは前傾姿勢をとると、ゴジュラスとは思えない速度で増援のP.K.コングに飛び掛っていった。

 突然のゴジュラスの攻撃に冷静に砲撃を浴びせるP.K.コング。だが、これを瞬時にかわしたオーガはP.K.コングの懐に飛びこんだ。

 

「うおらぁぁぁ!」

 

 オーガはコングの喉と左腕を掴むとその強大な力でまるで玩具のように引き千切り、それを軽々と投げ飛ばした。

 

「なんてパワーだ!あんなバケモノを連邦軍は作っていたと言うのか!」

 

 2台のP.K.コングは、ありったけの火器をオーガに向けたが、ほとんど効果はなかった。むしろいきり立ったオーガは先ほどからの恨みとばかりにP.K.コングに襲いかかってきた。

 

「ハンナ少佐!ここは撤退してください!!」

 

 先ほどからの戦闘で損傷していたハンナ機のP.K.コングを庇うように部下のコングがオーガの前に立ちふさがったが、オーガは圧倒的な力でそれを組み伏せていた。

 

「栄光あるプロイツェン・ナイツが敵に背を向ける事などできるものか!!」

 

 半ば泣き声になりながら、ハンナは部下を援護すべくビームランチャーのトリガーを引き続けた。だが、エネルギーの残量が少なくなっていたビームランチャーはビームの収束が弱くなっており、牽制にもならなくなっていた。

 

 ついにオーガはコングを人の入り込んでいなかった空き地で捕らえた。懸命にもがくコングの両腕を押さえつけ一気に止めを刺しに掛かるオーガ。

 その時、P.K.コングの内部から強烈な光が発せられた。次の瞬間、コングはオーガもろとも巨大な火の玉と化していた。仕留めきれぬと判断したパイロットがオーガもろとも自爆したのだった。

 

 だが、目もくらむ閃光の中からはほとんど損傷らしいものの見られないオーガの姿が現れた。

 その光景に両軍の兵士達が息を飲んだ。爆炎に照らし出されるオーガの姿はまさに悪鬼そのものだったからだ。

 

 その直後、ロブ基地上空に信号弾の発する紅い光が出現した。報告から十分に戦果が上がったと判断した攻撃部隊の司令部から撤退命令が出されたのだ。

 

「くっ…、これまでにしておけというのか」

 

 ハンナは唇を噛み締めて悔しさをこらえると、直ちに部下達に撤退命令を下した。

 帝国軍最強と言われるプロイツェン・ナイツだけあって、その動きは見事だった。各部隊ごとに集合した彼等は、基地の混乱を拡大させつつ撤退行動に移ったのだ。

 

 その様子を見て取った部隊長らは、直ちに追撃に移ろうとしたが、未だに基地の混乱は収まっておらず、その上司令部との連絡が取れないのでは動きようがなく、そのほとんどは敵を尻目に眺めるしかなかった。

 追撃を行おうとするジンライ。だが、彼の耳にある人物からの通信が入ってきた。

 

「オーガに乗り込んでいるパイロット!確か・・・ジンライとか言ったな!こちらはアーサー・ボーグマン少佐だ!聞こえていたら返事をしろ!!」

 

 完全に格納庫から脱出する事に成功したアーサーはジンライにそう呼びかけた。

 

「了解!聞こえています、クレイジー・アーサー殿!」

 

「ほう、上官を相手に、しかも本人に向かってその名前を呼ぶとは良い度胸だ!」

 

 するとジンライの視界にブレードライガーを先頭とするゾイドの部隊、それもまったく統一感のない、寄せ集めの部隊が現れた。そしてアーサーは笑いながら通信を続けた。

 

「まあいい、お前その行動、ちゃんと部隊長から許可は取っているのか!?」

 

「もちろんです少佐!中隊長殿から格納庫の護衛の任務を受けていました。ただし、オーガを操縦して良いとまでは言われていませんでしたが!」

 

 ジンライは横柄な態度で答えたが、アーサーは別段怒ってはいなかった。

 

「よろしい!では今からお前に命令を下す!それはこれから俺の部隊に加わる事だ!」

 

「ですが少佐、あなたに直接オレに命令を下す権限があるとは思えませんが!」

 

「細かい事なんざ気にするな!ってことだ。今は"非常時"だ。第一司令部との連絡だって取れちゃいないんだ。お前も冗談でそんなこと言っていると思うが、とにかく今は非常時ということで我慢しろ!!」

 

 確かにジンライの言う事はもっともだった。軍隊と言うものは極端なタテ社会で、階級が上だからと言うだけで、他の部署の人間に命令を下す事はできないのだ。

 

 だが今回はいつもとは事情が異なっていた。

 状況が状況だと言う事と、命令を下している人物が人物だったからだ。

 

 アーサーは格納庫の中から這い出てきながら出撃ができた者達をかき集めると、ジンライに対して取ったものと同じ方法で頭数をそろえ、即席で追撃部隊をまとめあげていたのだ。

 

「よしお前ら、これでとりあえず頭数はそろったぞ。というわけでこれから帝国への追撃を行う!」

 

「連中、俺達の家を好き勝手に荒らしてくれたからな。タダで返したとあっては連邦軍の名折れだ。野郎ども、お礼はしっかりとはずんでやろうぜ!!」

 

 私は野郎じゃないのに・・・・。と言う声も一部からは聞こえてきたが、アーサーは意識的にそれを無視し、自ら部隊の先頭に立って突き進んでいった・…。

 




初出 2002年9月29日
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