惑星Zi西方大陸戦争録 【Zi-EX天神 ゾイド二次創作小説再掲(2002~2010)】 作:むげんゆう
第1章 第1話 開戦
戦闘開始から僅かに3時間しか経過していなかった。にもかかわらず完全に戦局は決しようとしていた。
「味方はどこだ!?前も後ろも帝国軍しかいやしねぇ!おい!マーチン、ハースト、返事をしろ!!」
蟻のように群がるイグアンの群れを蹴散らしながらジン大尉は無線機に叫んだ。しかし周りには部下のゾイドはおろか、味方さえほとんど残ってはいなかった。余りにも数が違いすぎたのだ。
ジン大尉の駆るゴジュラスの周囲は帝国の小型ゾイド、イグアンの大部隊によって包囲されようとしていた。鬼神のごとく奮戦するゴジュラスも続々と押し寄せる軍勢の前に次第に追い詰められようとしていた。
戦争の発端はZAC2098年6月にガイロス皇帝が死去した事だった。次の帝位には遺言により幼きルドルフがついたのだが、それを良しとしないガイロス皇帝の次男にしてルドルフの叔父のハインリッヒが正統後継者を名乗ってガイロス帝国を分裂させたのだ。そしてルドルフの奪還を口実としてハインリッヒはエウロペ大陸に進攻したのだった。
その彼の行動に呼応するかのごとく、ルドルフが滞在していたエウロペ大陸の都市ガイガロスにてクーデターが発生し、ルドルフは行方不明となってしまったのだ。
しかし帝国の移住地域の平定だけで事は終わらなかった。当初より西方大陸の完全制圧、そしてデルボイ大陸(中央大陸)への侵攻を目的としていた新皇帝ハインリッヒはヘリック連邦が自分の帝位を承認しなかったことを理由に宣戦を布告したのである。
帝国の動きは素早かった。親ルドルフ派の残党勢力を南エウロペに封じ込めるや否や、返す刀でエウロペ大陸最高峰オリンポス山へ向けて進撃を開始したのだった。その間わずかに2ヶ月。驚異的な進撃速度だった。
この帝国軍の行動に対して連邦軍の動きは余りにも鈍かった。確かに開戦に先立つ事1年前から連邦軍は北エウロペ大陸へ軍勢を派遣していた。
しかしそれも小規模な紛争に備えての兵力しか派遣しておらず、とても帝国全軍を迎え撃てる戦力ではなかったのだ。さらにエウロペ大陸西部の鎮圧にはまだ時間がかかると考えていた連邦軍は準備を整えるのに時間がかかり主力部隊の投入が大幅に遅れていた。
本来ならば本国からの増援部隊が到着するまでの間、連邦居住地域近辺に防衛線を張って時間稼ぎをするべきだっただろう。しかし連邦諜報部から参謀本部にもたらされた情報はエウロペ大陸方面軍をあえて危険にさらして攻勢に出なければならないほどの重大な情報だったのである。
かくして開戦から2ヶ月がたった98年8月、北エウロペ大陸中央に位置するレッドラスト(赤い砂漠)にて両軍の大規模な会戦が行われたのだった・・・・。
ヘリック連邦軍にとって戦局は一方的に不利だった。帝国軍15万の兵力に対して連邦軍はわずかに4万、連邦軍兵士たちは士気も高く奮戦したものの、日が昇りきった時点で勝敗はすでに決していたのだった。
ジン大尉は根を上げようとしていたゴジュラスを奮い立たせた。ゴジュラスが自分に言い聞かせるかのような雄叫びを上げると、周囲に残っていたわずかな味方たちが集まり始めた。
「これ以上は支えられん、完全に包囲される前に脱出しなければ」
これ以上の戦闘の続行が無謀である事は素人目にも明らかだった。ゴジュラスを先頭にした共和国の残存部隊は、イグアンの大部隊をかき分けながら撤退を開始した。しかし味方はゴドスを中心とした部隊、なおかつ損傷も激しいため思うように速度が上がるはずもなかった。
やっとの思いでモルガ部隊を振り切ったものの、大損害を受けた味方は数えるほどしか残っていなかった。
ジン大尉は脱出に成功したほかの部隊と連絡を取ったが、どこも同じような状況らしかった。どの機体も大なり小なりのダメージを受けており、無事な機体も兵士も残ってはいなかった。
このまま個別に分散していては各個撃破されてしまう、それだけは避けねばならないと判断した連邦軍は合流地点を指示し、そこに集結する事になった。
すでに辺りは夜の闇に包まれていた。今はこの闇を隠れ蓑に進まなければならない。進まなければ追いつかれてしまうだろう。だが、疲れきった兵たちの足は重かった。
「大尉、我々は連中を完全に振り切ったんでしょうか・・・・」
戦死した副官に代わって臨時に副官になっていたハースト少尉は、弱々しい声で尋ねた。無理もない。彼もまた敵の大群に囲まれて命からがら脱出してきたのだ。
彼はすでに気力も体力も限界に達しようとしていた。
「心配するな、もう追ってこんよ。さすがの奴らもこのゴジュラスの戦いぶりを見ればもはや追撃すまい。それに追ってきたところですぐに撃退して見せるだけだ。」
部下たちを弱気にさせてはならない、極限状況下でのジン大尉のせめてもの強がりだった。しかし、いかに強靭なゴジュラスとはいえここまでの戦いでのダメージは大きく、実のの所は進撃するのがやっとの状態だった。
「この状況で更なる敵の追撃を受けたら・・・・。」
不吉な考えがジン大尉の脳裏をよぎった、その時だった。
「レッ、レッドホーンだ!!」
誰かが叫んだ。そして叫び終わるや否や、レッドホーンは強烈なサーチライトを彼らに浴びせた。驚き戸惑う連邦軍兵士たち。そして戸惑う彼らに追い討ちをかけるように、周りに潜んでいたモルガの部隊も姿をあらわしたのだった。
いつものゴジュラスであれば問題のない戦力だったに違いない、だが満身創痍の彼のゴジュラスでは、もはやレッドホーンの相手も満足にはできないだろう。戦う気力も失っていた兵士たちも全員が死を覚悟した。
その時だった。彼らに襲い掛かろうとしていたモルガ達が次々と爆炎に包まれていったのだ。モルガのパイロットたちの目にはわずかな蒼い姿が映っただけだった。
その光景を目にして混乱したレッドホーンは、全身に搭載されている重火器を四方八方に発射した。が、その蒼い影は雨のような弾を一発もかすることなくレッドホーンに近づくと、易々とその喉笛を掻き切ったのだった。
レッドホーンの爆炎に照らされた蒼い機体を見て兵士たちは歓喜の声をあげた。
「援軍のシールドライガーだ!」
「ようやく援軍が到着したんだ!」
援軍の第一陣として到着した高速機動部隊の活躍により連邦軍はようやく危機を脱する事ができた。だがこの戦いで受けた損害はあまりにも大きく、やむなく連邦軍は一時的に後退を余儀なくされたのだった。
帝国の攻撃を振り切って数時間。コマンドウルフ数機の護衛を受け撤退する中、ジン大尉は考えていた。
「帝国がいかに素早く西部方面を制圧したとはいえ、完全とは言いがたかったはずだ。そんな状態にもかかわらず、連中はオリンポス山に主力部隊を向けてきた・・・・。」
「オリンポス山が戦略的に重要な地点だと言う事ぐらいは俺にでもわかる話だ。だが我々の戦力ではとても防ぎきれない事くらいは素人にも明らかなはず。」
ジン大尉は司令部から伝えられた、戦力の建て直しを早急にすませ、完了次第増援部隊と合流してオリンポス山を制圧せよ、との命令を思い出していた。オリンポス山の制圧には自分たちを助けてくれた精鋭の高速機動部隊が当たるというが、それでも無謀すぎる作戦だった。
「一体あの山には何があるというのだ!?」
初出 2002年2月22日