惑星Zi西方大陸戦争録 【Zi-EX天神 ゾイド二次創作小説再掲(2002~2010)】 作:むげんゆう
レッドラスト会戦から10日が過ぎた。ここヘスペリデス湖東岸に設営された陣地にてヘリック連邦軍は本国からの第一次の増援部隊を迎え入れていた。第一陣として派遣されたのはコマンドウルフやシールドライガー約2個大隊分と歩兵部隊だった。
しかし増援部隊が到着したとはいえ帝国軍との兵力差はまだまだ大きく、前回の敗戦で受けた痛手も直ったとはとてもいえない状態であった。
ヘスペリデスの司令部に集められた将官たちに作戦の説明が行われていた。
「エウロペ方面軍は全力を挙げて高速機動隊のオリンポス山突入を援護せよ」
おおまかに言うとそのような内容だった。偵察部隊からの報告によると、すでに帝国軍はメリクリウス湖岸のほぼ全域を制圧し、一部の部隊がオリンポス山の制圧に向かっている、との情報がもたらされていたのだ。
当初連邦軍はオリンポス山の制圧を目標としていたが、戦力差、敵の制圧状況等を考えると、制圧は困難と判断し、高速機動隊による偵察ならびに山頂に存在すると思われる施設の破壊という作戦に変更したのだった。
作戦の主役である高速機動隊、すなわち独立第二高速戦闘大隊はこの作戦の為に急遽本国より派遣された部隊で、隊員は極めて優秀であること、そして高速ゾイドの運用に関しても評価が高く、連邦軍でも屈指の精鋭部隊と言われていた。
だが、その命令を受けた高速機動隊の指揮をとるハルフォード中佐は、言いようもない気分だった。
幼い頃から古い遺跡に興味を持っていた彼は、軍人としての勤めを無事終えたなら、考古学を目指そうとしていたからだ。
事実、士官学校を出てすぐにエウロペ大陸に配属された時は、休暇の度にエウロペの古代遺跡について資料を集めており、暇を見ては研究論文を書き上げたりもしていたほどだった。
そんな彼の耳にエウロペ大陸最高峰にして、諸部族たちの最大の聖地とされていたオリンポス山に古代遺跡があるらしいと言う話は当然耳にしていた。
はるかな昔から、オリンポス山への立ち入りは何人たりとも許されておらず、山頂に何があるのか実際に目にしたものはいなかったが、伝え聞いた伝承ではかなり大きな遺跡があるらしいと言う事は容易に想像できた。
帝国が何故遺跡を狙うのかはわからなかったが、帝国は遺跡から大変なものを発掘し、研究しているらしいという噂も広まっている。もしそれが事実だとすれば、帝国軍の動きも、無謀にも思える連邦軍の今度の作戦も大きな意味を持っていることになる。
しかし、本来ならばこの惑星Ziに住むものたちすべての共有財産であり、これからも守り通していかなければならないはずの遺跡を、自らの手で破壊しなければならないという戦争というおろかな争い、そのむなしさを彼は感じていた。
だが自分は軍人であり部下たちの命を預かり任務を達成しなければならない、自らの勤めを果たす事こそが自分に架せられた使命である事も十分理解していた。
部隊に戻ると部下たちはすでに準備を整えていた。編成は自分と副官のシールドライガーが2機、主力のコマンドウルフが12機、そして支援用のベアファイターが8機という部隊編成である。
ハルフォードは部下たちを集合させると、作戦の説明をはじめた。
「今度の作戦について説明する。目標はオリンポス山山頂の帝国軍施設の情報収集、及び破壊だ。我々の突入を支援するためにここに集結している我が軍は帝国を叩くのだ。」
「つまり今回の作戦は完全に我々が主役だ。期待にこたえるためにも何としても作戦を成功させなければならないのだ。」
全員に緊張がみなぎっていた。
「説明は以上だ。質問のあるものは?」
一人が手を挙げた。コマンドウルフの若きパイロット、トミー・パリス中尉だった。
「中佐殿、肝心のオリンポス山までの道はどうなっているのでありますか?ここ数日は帝国軍の偵察機もちらほらと見かけられているとのことです。作戦を成功させるには重要な問題だと小官は考えているのですが。」
ハルフォードは答えた。
「地元の地理に明るい義勇軍が道案内に当たってくれるとのことだ。彼らとは出発して数時間後に合流する手はずになっている。敵に目をつけられないようにかなりの裏道を通るそうだが、精鋭と言われる君たちなら彼らに遅れをとるようなことはないだろう。他に質問はないか。」
「出発は明日の明朝、○三○○だ、各自準備を怠るな。以上で解散とする。」
まだ日が昇らぬうちの出発だった。偵察機を警戒して照明をつけるわけには行かなかったが、各機ともまったく路を踏み外すことなく進撃していった。
出発から数時間がたち、日が昇り始めた頃例の道案内との合流地点に到着した。
そこには1機のコマンドウルフ、そして蒼く塗られたヘルキャットが2機待っていた。3機ともに大きく「烈」のマークが描かれていた。
「独立第二高速戦闘大隊のみなさんですね、お待ちしていました。我々は地元義勇軍、銀牙烈風隊1番隊、私は1番隊隊長、ビリー・マクホマンです」
コマンドウルフを駆るパイロットからの挨拶の通信が入った。彼はまだ17だといい、他のメンバーも彼とほとんど年が変わらないと言う。その話に全員が驚いた。
「失礼だがその若さで義勇軍に参加しているのか?ご両親からは何も言われなかったのかね?」
副官のキース大尉が尋ねたことは部隊全員の疑問でもあった。
「残念ですが私たちの両親はすでにこの世にいません。この辺りに限らずエウロペ大陸全土では数年前からの治安の悪化で多くの孤児たちが増えています。そしてその原因はニクス大陸の一部の連中によって引き起こされていた事が我々の情報網でわかってきました。」
驚くべき回答だった。さらに彼は続けた。
「さらにその混乱を引き起こした連中が今度のガイロス帝国の内紛を引き起こしている事も間違いないようなのです。我々はそんな連中を許しておくわけにはいきません。」
「しかし我々だけではその力は足りません。ですから我々はあなた方に力をお貸ししたいのです。本当の悪を討つために。」
その言葉を聞いた大隊の全員がこの作戦の意義を理解した。我々は漠然と他人の土地で戦争をするわけではない、一刻も早くこの無益な戦争を終わらせるのだと。
高速機動隊が烈風隊の道案内でオリンポス山への路を急いでいる頃、連邦軍の主力部隊はメリクリウス湖畔の帝国軍への攻撃を開始していた。
カノントータスの部隊の砲が次々と帝国軍の駐屯地に降り注ぎ、油断していた帝国軍は完全に狼狽した。
前回の会戦とは異なり、わずか10日ほどの間に連邦軍は持てるだけのわずかな戦力から最善の作戦を取っていたためであった。集められるだけのグスタフの荷台にはカノントータスが載せられ、本来のトータスの速度からは考えられない進軍速度で戦場に届けられた。
又爆撃のためのプテラスもレーダに映らぬ超低空から飛来し、潜入していた諜報部からの信号めがけて攻撃を行い、帝国軍の行動を一時的にマヒさせる事に成功した。
深夜、高速機動隊がメリクリウス湖畔に到着した時には、帝国軍の駐屯拠点は赤く染まっていた。
「烈風隊にはここまでの道の案内に感謝する。これから先は我々の任務だ。」
ハルフォードから烈風隊への感謝の言葉だった。しかし彼らはこの先も攻撃に加えて欲しいと申し出たのだが、
「この作戦で無事に帰還できる可能性は残念ながら低いと言わざるを得ない。君たちはこれから自分たちの土地を守り、発展させると言う使命がある。その君たちをこれ以上参加させるわけにはいかないのだ。」
そういって彼らの随伴を断ったのだった。
烈風隊1番隊が見送る中、高速機動隊はメルクリウス湖の横断を開始した。
めざすはオリンポス山山頂。上陸を終えた彼らの目にオリンポス山は壁のように聳え立っていた・・・・。
初出 2002年2月22日