惑星Zi西方大陸戦争録 【Zi-EX天神 ゾイド二次創作小説再掲(2002~2010)】 作:むげんゆう
何かが山頂で起ころうとしていた。得体の知れない何かが。
西方大陸最高峰オリンポス山、標高8000mを超えるこの山は古くから信仰の対象として周辺部族のみならず、西方大陸のすべての部族から崇められる山である。と同時に学者の間では、謎の多い山として有名だった。
この山はプレートの衝突によって形成されたものと一般には言われているが、詳しい事はまだわかっていない。何らかの力によって大地が隆起して誕生した事は間違いないのだが、不自然な事にメルクリウス湖は陥没現象で形成されていることが調査で判明していた。
また、オリンポス山自体の形成もここ数万年ほど前に誕生していることも最近の調査で判明しており、地質学的にも謎とされていた。周辺の部族の言い伝えでは神の力によって山が持ち上げられ、土がなくなった場所が湖になったと言い伝えられていたが、これまでの調査ではまさにこの言い伝えを裏付ける結果になっており、様々な分野で話題になっていた。
そのため本格的な調査が求められていたが、この戦争が始まるまではこの山は管理していた部族によって聖域とされていて、山に立ち入っての本格的な調査はまだ行われてはいなかった。
また、山頂に古代遺跡があるということも上空からの調査で判明はしていたものの、考古学者たちの入山は認められておらず、何故標高8000mもの場所に建造物があるのか、まったくの謎だった。
とにかく謎の多いこの山に関して一つだけ確実にいえる事、それはこの山は火山ではないということ、それだけだった。
ハルフォードは一気に山頂まで駆け上る事を決めた。山頂で何かが起ころうとしているのだ。もはや一刻の猶予もない事を悟った彼らは態勢を整えると全力で山頂めがけて走り出した。
セイバーからの連絡が途絶えた事で帝国軍に存在を悟られるのは時間の問題だった。ならば連中に迎撃する準備を行う時間を与えず一気に決着をつける。ここまで山頂に迫っていればたとえ連絡されても十分な準備はできないだろう。その確信が彼らを走らせていた。
そして数時間後、哨戒部隊のイグアンとヘルキャットに遭遇したが、反撃する間を与えず一撃で叩き伏せたのだった。
一方、古代遺跡に配備されていた帝国軍防衛司令部、特に司令官は狼狽していた。古代遺跡の制圧を終えてわずかに1週間しか経っておらず、さらにこの場所が8000mもの高地であった事もあったため、資材の運搬が進んでおらず、センサーやトーチカなどの設備が十分に整っていなかったのだ。
また肝心の防衛用のゾイドも山裾に展開しているものがほとんどで、山頂の防衛用にはまだ十分な数が回されていなかった。応援を頼もうにも、山頂まで上がってくるのにはヘルキャットやセイバータイガーをもってしても丸2日はかかってしまうだろう。空からの援護も連日の連邦軍の空襲のため出動できない状態だった。さらに基地の周辺にまで敵が来たのであれば、同士討ちの可能性まであったのだ。
さらに司令官を焦らせていたのが遺跡の事である。昨日ようやく起動実験にこぎつけた帝国の最重要機密がこの遺跡の内部に存在しているのだ。敵に山頂まで侵入された時点ですでに大失態である。その上、もし破壊されるような事になってしまえば、左遷どころか責任を問われ処刑されかねない。
彼は基地の死守を副官に命じると、遺跡へ急いだ。内部の防衛にあたっていたP.K.に出動を依頼するためだ。ここでP.K.の力を借りる事は失態ではあったが、最悪の事態を招いて処刑されるよりはマシである。彼の首の皮をつなぐ頼みの綱はP.K.から派遣されていた新型ゾイド部隊だけであった。
合流から丸1日をかけ、ついに高速機動隊は山頂へ到着した。遺跡の詳しい状況はすでに偵察に当たっていたダブルソーダによってもたらされていた。
報告によれば、連邦軍の想像以上に遺跡周辺の防衛施設は完成していなかった。肝心の遺跡でさえ重要と思われる箇所以外は防護幕で覆われてさえいなかったのだ。
「敵の迎撃準備はまだ整っていないようだ。この隙に一気に敵基地を叩く!ベアファイター隊は火力支援をたのむ。コマンドウルフ隊、そしてシールドライガーは基地に突入する!」
雪崩を打つように駆け下りるライガーとウルフ、そして砲撃を加えながら後を追うベアファイター。この攻撃の前に十分な準備の整っていなかった基地守備隊は、なす術もなく撃破されていった。
敵の第一陣を苦もなく突破した高速機動隊に、ようやく準備を整えたハンマーロック部隊が襲い掛かった。だが小型ゾイド最強のパワーを誇るハンマーロックとはいえ、勢いに乗る彼らの敵ではなかった。
コマンドウルフの攻撃は次々とハンマーロックを打ち破っていった。ハンマーロックを援護をしていたトーチカもベアファイターによる正確無比の砲撃の前に次々と沈黙していった。
守備隊のほとんどをわずか10数分で片付けた高速機動隊は集中攻撃で基地施設を葬ると、ついに遺跡の入り口に突入を開始した。
その時だった。真っ先に突撃をかけようとしたレイカー中尉のコマンドウルフが一撃で弾き飛ばされたのだ。弾き飛ばされたウルフの耳は鋭い刃物によってきれいに削ぎ落とされていた。驚く一同。次の瞬間姿をあらわしたのは見た事もない小型ゾイドだった。
「敵の新型か!?だが、何てパワーだ!」
レイカー中尉が驚きの声をあげた。
キース大尉のライガーが分析を開始した。敵の新型はヴェロキラプトル型と推測された。大きさはゴドスやイグアンサイズであったが、新型の動力増幅機関を搭載している事は間違いなく、そのパワーは明かに並みの中型ゾイドを凌駕していた。
これこそが帝国の新型ゾイド、レブラプターである。この遺跡を守備するために完成したばかりのこの機体が配備されていたのであった。遺跡の入り口から7機、さらに彼らを包囲するように合計20機ものレブラプターが出現した。
「隊長!奴らは私が相手をします!」
副官のキースは自ら進み出た。
「あの新型は危険です!ベアのタズとバーンズ、ウルフのトムとレイカーとハリーで時間を稼ぎますからその間に突入してください!」
ハルフォードはうなずいた。遺跡の奥からはあいかわらず不気味な気配を感じる。その何かを一刻も早く突き止めなければならなかった。
彼らは一斉に入り口の新型に攻撃を集中した。吹き飛ぶ敵の新型ゾイド。だが攻撃から逃れたものは、驚くべき速度で彼らに襲い掛かった。その格闘速度は彼らの想像を超えるものだった。そして敵の新型のパワーはベアファイターにこそ劣るものの、コマンドを上回るものだった。
ベアファイターが腕の一撃で新型を1機を叩き伏せれば、他の機体がその腕を切りつけた。闇雲に射撃を加えてもかわされて懐に飛び込まれる。次々と傷つき倒れる部下たち。だが突入するメンバーは誰一人として後ろを振り返らなかった。彼らの犠牲を無駄にするわけにはいかないからだ。
敵の防衛部隊を蹴散らし、遺跡内部への突入に成功したのは、ハルフォードのシールドライガー、トミー、ジェフ、サンジら三中尉のコマンドウルフ、そしてリー、カズンら二少尉のベアファイターだった。
遺跡の構造は帝国軍によって整備されていたせいか、たいして複雑でもなくほぼ一本道だった。
突き進むハルフォードたちに防衛用に配備されていた機銃が火を吹く。それに対してシールドはエネルギーシールドを張りながらの突撃を加えた。瞬時に弾き飛ばされ、機銃は次々と沈黙していった。元々稼動数が少なかった事もあり、まもなく抵抗は止んだ。
今度は真上から待ち受けていたハンマーロック数機が襲い掛かってきたが、彼らが着地するより早くハルフォードは背部のビーム砲を浴びせ、これを撃破した。さらに奥で待ち受けていたヘルキャットが果敢にも抵抗を試みたが、後続のウルフはこれをあっという間に蹴散らした。そしてベアファイターの砲撃が遺跡の中心部の隔壁を吹き飛ばした。
中心部へ一気に突入するハルフォードたち。だがそこで彼らは想像を絶するものを目にしたのであった。
初出 2002年3月7日