惑星Zi西方大陸戦争録 【Zi-EX天神 ゾイド二次創作小説再掲(2002~2010)】 作:むげんゆう
遺跡の最深部に到着した彼らは信じられないものを見た。
中央部に上半身のみの姿ではあったがその巨大なゾイドは、ゼネバス公国博物館でしか見た事のない伝説的なあの巨大ゾイドにしか見えなかった。
「デスザウラー・・・・。」
メンバーの全員が言葉を失った。
デスザウラーとは旧大戦においてゼネバス帝国によって開発された、ゼネバス帝国が誇る最大、最強のゾイドである。その戦闘力は当時の戦闘ゾイドの常識を覆すものであり、強大なパワーはゴジュラスでさえも玩具のようにほおり投げ、最強の武器である荷電粒子砲は地図を書き変えたといわれたほどの威力であると言われた。
このデスザウラーの出現によってヘリック共和国は首都を落とされ、共和国は滅亡寸前に追い込まれたほどであった。
だがデスザウラーや同等の戦力を持つゾイドはすべて大隕石の衝突によって活動を完全に停止していたはずだった。それがなぜここに?いぶかる部下たちであったが、ハルフォードはこの魔獣を見たとき全てを理解した。これが古代遺跡の力なのだと。
西方大陸の神話では、はるか古代に現在の文明を上回る古代ゾイド人の存在が語り伝えられていた。オリンポス山はその頃誕生したとも言われている。その彼らが残したとされる古代遺跡、それにこだわる帝国と共和国、さらに目の前のデスザウラー。
その点の全てが繋がった。にわかには信じがたい事ではあったが、オリンポス山を地殻変動でうみだした古代遺跡、その遺跡の力がデスザウラーに注ぎ込まれていたとすれば!
「全員デスザウラーに攻撃を集中させろ!あれを完成させるな!!」
この場に居合わせた高速機動隊の生存者の一人、トミー・パリスは後にこう語っている。
「その時、俺のコマンドはビビっていた。どんな大部隊が相手でも、あのセイバーとやりあった時だって、逆にはやりたっていた奴が、こうクーンと鼻を鳴らしたんだ。それでわかったんだ。化物だって。」
突入した機体の全火器が一斉にデスザウラーに撃ち込まれた。遺跡内部が爆炎に包まれる。だが、その攻撃が凶獣デスザウラーを目覚めさせてしまったのだ。
「なぜだ!?何故あれが動くのだ!?あれにはパイロットどころか、まだコンバットシステムさえ搭載されていないのだぞ!誰か、誰でもいい。あれを止めろ!止めてくれ!!出なければ私は、私は・・・・。」
絶叫する帝国軍司令官。だがその叫びをかき消すように、覚醒したデスザウラーは凄まじい咆哮を上げた。次の瞬間デスザウラーは拘束を引きちぎると遺跡と直結したパイプを引きずったまま突入部隊めがけて襲い掛かったのだった。
振り下ろされたハイパーキラークロウは守備していた味方のハンマーロックもろともトミー・パリスのコマンドを一撃でただの鉄屑へと変えた。押さえつけようとしたベアファイターは2機まとめて叩き潰された。荒れ狂うデスザウラーは暴走を食い止めようとする帝国ゾイドでさえ見境なく叩き潰していったのだった。
不完全なまま起動したデスザウラー。それは、金属生命体の自己防衛本能による暴走だったのだろうか。それとも遺跡の強大な力によって引き起こされたのだろうか。あるいはその両方か。だが今はそんな事はどうでも良かった。とにかく目の前の怪物を止めなければならない。
「奴の腹に集中攻撃をかけろ!」
ハルフォードが叫んだ。デスザウラーの腹部にはまだ装甲が施されていない。そこにはゾイドの急所にして生命核そのものの、ゾイドコアが剥き出しになっていたのだ。
突撃をかけるコマンドウルフ。だがその時、デスザウラーの首筋にいくつもの稲妻が走り、大きく開かれた口から巨大な光の塊が放たれた。デスザウラーの最強兵器、荷電粒子砲が放たれたのだ。その威力は想像を絶するものだった。
その頃、遺跡の外での戦闘は決着の時を迎えようとしていた。生き残っていたのはシールドとコマンド2機とベア1機のみ。最後のレブラプターをシールドが爪で仕留めたその時だった。あたり一面が光に包まれたのは。
荷電粒子砲の巨大な光はオリンポス山を一気に駆け下りた。救援信号を受け救援に向かった帝国ゾイド部隊はその光に飲み込まれ、瞬時に分子レベルにまで分解された。雪崩れ込んだ光の奔流は麓の基地を跡形もなく消し飛ばし、ついには湖にまで届き、湖を真っ二つに引き裂いたのだった。
光が去った後のオリンポス山頂は、まさに死の世界そのものだった。辺りに転がるのはどろどろに溶けた鉄屑と化した両軍のゾイドの残骸ばかりだった。
ハルフォードのシールドライガーはとっさにシールドを張って回避しようとしたものの、これほどの威力の荷電粒子砲ともなると、近づいただけでもすさまじい熱量を持っている。E-シールドは何の役にも立たず易々と貫かれ、半身を失っていた。ゾイドコアは致命的な損傷を受け、機体は停止する寸前だった。だがそれでもシールドは最後の気力を振り絞って立ち上がった。
ハルフォードは朦朧とする意識のなか、目の前に信じられない物を見た。
「な、なんだと・・・・。」
目の前のデスザウラーに、いや遺跡全体に異変が起きていたのだ。デスザウラーと遺跡をつないでいた部分から強烈な光が放たれた瞬間、山全体が大きく揺れ動いた。そしてデスザウラーが恐ろしい速度で遺跡を取りこみ始めたのだった。
遺跡の側面の金属壁は不気味に変形し、足元のパイプは生き物のように脈打ちはじめた。そしてデスザウラー本体にも異変が生じ始めた。突然体を覆っていた装甲が吹き飛び、爪は巨大化し腕は何倍にも伸びた。その姿はもはやゾイドでさえなかった。
あまりの光景に絶句するハルフォード。こんなバケモノが動き出せばもはや止められる者は誰一人としていないだろう。もはや彼に打つ手は残されていないように思われた。
その時、ハルフォードの目にキャノピーに貼り付けられていた家族の写真が飛び込んできた。家族は妻と子供が男の子と女の子の2人兄妹。兄の方には出撃前に、何かあった時には家族を守るように伝えていた。
ハルフォードはある事に気がついた。それは魔獣のゾイド生命核が剥き出しのままになっていたことだった。ゾイド生命核はすべてのゾイドの生命の源であり、そして最大の弱点である。あの魔獣が生命核の防御が施されていない今が、魔獣の息の根を止める最後のチャンスであった。
彼は生き残っているかもしれない部下たちへ、そして自分自身に言い聞かせるようにして命令を下した。
「私が新兵の頃、兵士は国のために殉ずることが仕事であり使命だと教えられた。私はそれを諸君らに言った事はない。人は信念のために死ぬべきだと思うからだ。だが今、あえて言う。諸君の愛機が指一本でも動くなら、這ってでも進め!そして奴のコアを噛み砕くのだ!!」
ハルフォードはこのチャンスに全てをかけた。これ以上の魔獣の進化を許すわけにはいかない。半壊したシールドライガーは最後の力を振り絞り、魔獣の剥き出しの生命核めがけて最後の突撃をかけた。
魔獣は急激な成長で身動きがほとんど取れなかったことが幸いした。懐に飛び込んだシールドの牙がデスザウラーのコアを捉えたのだった。
生命核に直接伝わる激痛にしゃにむに暴れ狂う魔獣。その乱暴に振り回される爪にズタズタに刻まれていくシールド。だがライガーは生命核に食いついたままそれを離そうとはしなかった。そして・・・・。
獅子の牙が発した最後の輝きと共に、ついにコアは噛み砕かれた。生命核を失い一気に崩壊していく魔獣。そして魔獣は焼け残った古代遺跡、そして使命を終え、ついに生き絶えたシールドライガーと共に、光と灼熱の炎の中に消えていったのである。
魔獣が最後の時を迎えようとしていた頃、キースはようやく目を覚ました。気が付けば自分が乗っていたライガーは全壊し、残っていたのはコクピットだけになっていた。
荷電粒子砲の爆風で大きく跳ね飛ばされた彼は、遺跡からすこし離れた地点に転がっていたのだった。
キースはわずかに腕の痛みを感じた。どうやら腕を骨折していたようだったが、意に解することなくコクピットから這い出た。そして生存者を求めて歩き回った。そして重傷を負っていたタズと、コクピットもろともほおり出されていたトミー・パリスの2人を発見したのだった。
その時だった。上空から危険を顧みず、彼らを回収するためのサラマンダーが舞い降りたのだった。だが、その間も遺跡の熱量は増大を続け、いつ爆発するかわからなかった。
キース大尉はタズと共に乗り込み、トミーはコクピットから脱出させる時間がなかったため、コクピットもろともワイアーで固定した。それを僅かな時間で確認した機長はサラマンダーのマグネッサーの出力を全開にして離陸。そして全速力で飛び立った。
最大戦速で離脱してから数分後、ついに山頂は火の玉と化し、大爆発を起こした。その衝撃波は全力で逃げるサラマンダーを襲い、押し出される形で弾き飛ばされた。巨大な火の玉は山頂を飲み尽くし、麓には灼熱の岩津波が襲い掛かった。
岩津波は山麓はおろかメルクリウス湖に押し寄せ、巨大な津波となって、付近に展開していた帝国軍部隊を押し流した。
爆発で生じた粉塵は空を覆い尽くし、数日間辺り一帯は夜のような闇に包まれた。また粉塵は風に乗り、西方大陸から中央大陸まで届くほどであった。爆発の威力も凄まじく、標高8000m以上を誇ったオリンポス山は山頂部をなくし、6000m程度にまで落ち込んでいたのだった。
神聖ガイロス帝国皇帝、ハインリッヒのもとに宰相プロイツェンからオリンポス遺跡崩壊の知らせが伝えられた。だが皇帝ハインリッヒは意外なほど冷静だった。
「デスザウラーのコア、そして我が軍の軍勢の多くを一度に失ってしまった事は、確かに痛手だ。だがデータは十分に手に入った。遺跡の力を使えば失われた大型ゾイドの復活が可能な事、そして遺跡の力を制御できれば強大な力を手に入れる事が証明されたわけだ。」
「ですが陛下、これで陛下のお建てになられた計画が多少遅れることになってしまいかねませんが?」
プロイツェンは尋ねた。
「構わんよ、我々は神ではない。全てを計算通りにおこなえるわけではないからな。それに何もかも緻密に練りこまれたスケジュールほど一度狂いが生じれば、全体が大きく狂っていくものだ。多少のイレギュラーは想定せねばならんし、その事を楽しむ余裕がなければな。」
玉座から立ち上がったハインリッヒは惑星Zi全体の地図を見渡した。
「オリンポス山に限らず、西方大陸にはまだまだ数多くの遺跡が眠っている事は調査済みだ。後はそれを確実に抑えていけばいいことだよ、プロイツェン。」
そう言うと、彼は遺跡があると思われる地点につけられたランプを点滅させた。
「ただ、確実にデルボイの者どもにはこの件の落とし前をつけねばならんな。」
皇帝ハインリッヒは西方大陸攻略軍司令部に直接回線を開かせた。画面には直立不動で立つ司令官の姿が映された。その表情は緊張で硬直しきっていた。
「このたびの戦闘で我が軍が受けた損害は決して軽視できるものではない。貴公並びに勇敢なる兵士諸君に命ずる。直ちにオリンポス山で命を落とした同志達の仇を討て!デルボイの者どもを殲滅せよ!以上だ。」
損傷を受けたサラマンダーは低空飛行を余儀なくされていた。東へ向かって。ミューズ森林地帯へ。ロブ平野へ。北エウロペにわずかに残された連邦軍勢力圏内へ。
眼下では爆発を免れた連邦軍部隊が撤退していく。これほどの部隊が残っているとは以外だった。
低空飛行を続けるサラマンダーにレドラーの編隊が迫っていた。これまでと思われた時、密林に潜んでいたステルスバイパーから対空ミサイルが放たれ、レドラーを撃墜した。あわてて敵は撤退していく。
多くの味方を失い、放心状態であった高速機動隊のメンバーは目を見張る思いでこの光景を見つめていた。そう、彼らにはまだ共に戦う仲間たちがこんなにもいるのだ。
初出 2002年3月14日