心操君戦まではほぼ原作通りの展開とします。
※今作に犯した失敗については、とりあえず最後まで突っ切ることにしました。
6/21:品種改良の所が変だったので修正
雄英高校の体育祭。
それは、一年に一回行われる国民的大イベントである。
同日程学年毎に分けられ、その様子は全国でテレビ放送される。
『せんせー。俺が一番になる』
テレビに映される1-A爆豪少年の、挑発的すぎる選手宣誓。
盛り上がる熱気、溢れる若気。
少年たちが汗水かいて暴れまわる姿は何とも様になることだろう。
その様子を、叢雲はボックス席から観戦していた。
手には漫画、耳にはiPodのヘッドホン。
明らかに集中してませんとばかりの姿でソファに座っている。
傍らにはメイドのシェフィールドが静かに佇んでいる。
『あの。指揮官様ぁ。もしかしなくても、雄英体育祭に興味がないのかしら?』
甘ったるい声が、傍らの式神から聞こえてくる。
二年の会場に居るアカギの声をこちらへと伝えているのだ。
その声が媚びる、不安のある調子を示している。
「安心しなさい。貴女の活躍は見るわ」
『ありがとうございます』
叢雲の居るVIPルームは三台のテレビが設置してある。
それぞれが別々の会場の様子を示していて。
体育祭の様子を贅沢に味わえるのだ。
『ヴィランの襲撃を受けたにも拘わらず、鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星! ヒーロー科! 1-A組だろぉぉ!?』
叢雲の浮いた耳のアレが、本人の無表情のままぴくんと跳ねる。
一年を対象とする放送の中に潜んだ、わずかな違和感に気づいたのだ。
『―それにしても。VIPルームでテレビつけながら、衛府の七忍なんか読んでよお。随分偉そうじゃないか』
実況の声のままで、明らかに視聴者を見透かすような言葉が告げられる。
その声にはっとしたのか、シェフィールドは慌ててモデルガンを構えた。
「よ」
「全く。ノックぐらいしなさいな」
プラズマテレビから電気がほどばしり。
そこからパキケファロサウルスの幽霊に抱きかかえられた狼女が出てくる。
電気と一体化する、”レッド・ホット・チリ・ペッパー”のスタンド能力だ。
「何聞いてんだ? ウェザー・リポートのウェザー・リポート? それもジャコ・パストリアスが完全にイカレちまう前のやつか。趣味が良いな」
何事もないかのようにテレビから出た女は、叢雲に慣れ慣れしく近づく。
そんな彼女にメイドはBB弾の洗礼を撃ち込んだ。
「イテテ。悪かったって」
スタンドでガードしているのでダメージは無いが。
うっとおしくてたまらんと言ってひとまず距離を取った。
「遊びに来たってわけじゃないでしょうね」
「おう」
狼女は叢雲に何かをほうり投げた。
ヘッドホンをずらし、回転するそれをキャッチしてみると。
それはクリアフォルダだった。
中には沢山の折りたたまれた紙が入っている。
「ほい。追加の脳無と、あと雑多なゴロツキ共。まだまだかっぱらえるが、ひとまずはこんなものだな」
「一応、礼を言うわ」
折りたたまれた紙の数々は、スタンド”エニグマ”の産物だろう。
それら全ての紙は、それぞれが紙に封印された人間である。
彼女は叢雲からの依頼でヴィラン連合の中に潜入していて。
そこから拉致する形で幾らかの人間を引き抜いたのだった。
「しっかし。よく何の利益にもならん奴を救おうと思えるな」
「だからこそよ」
「すげえ。尊敬はするけど真似はできんよ」
拉致された犯罪者たちは、叢雲が面倒を見るつもりだった。
悪を自称する彼女だが、まあそう悪い事にはならないだろう。
「じゃあ、ああいう少年は救ってやらないのかい?」
指した先には、一年の体育祭を映したテレビ画面。
顔の半分を境界として非対称になっている少年が、ドアップで映っている。
「顔半分が焼けたような、あの子?」
「この国でNo.2のヒーロー・エンデヴァーのお子さんだとよ」
彼の名前は轟焦凍。
氷と炎の両方を操る、『半冷半燃』という強力な個性の持ち主だ。
「強い個性を生み出すための結婚。”個性婚”で生まれた子供さ」
「へえ」
彼はより強い
『個性』が重視される社会においても、親の考える事はそう変わる事ではないということか。
個性社会の闇を象徴するような存在である。
「あまりそそらないけど。興味深いわね。私たちとやりたい事は真逆だけど。人間の品種改良は私たちの長期的な目標の一つよね」
彼に対して、叢雲はというと。
怒りでも哀れみでもない。
やはりというか、観測者の目を向けている。
「個性の品種改良ですか。ご主人様を疑う訳ではありませんが。そんなこと、できるのですか」
「できる」
人間だって、所詮は家畜だしね。
そう彼女は肯定する。
「そうね。競馬でより速い馬を作り出すには、どうしたらいいと思う?」
より速い馬に限った話ではない。
より可愛らしい犬を、より美味な畜産を、あるいは都合の良い人間をとも言うべきか。
そういう物生み出すためには、我々はどうするべきだろうか。
「話の流れからして、血統を重視するとか?」
「昔ながらの鉄板ね」
望ましい性質の者を選択し、そうでないものを淘汰する。
そこからドーピングやら躾で調教し、寿命を削り、さらに望ましく矯正していく。
そんなおぞましいことが平然と行われ、それが今も社会の一部として根付いている。
「しかし、データサイエンスは馬の心臓の左心室の大きさが勝率に大きく関係すると暴いた」
最近の科学によって、さらにそれは発展していっている。
より効率よく、そしてより残酷に。
「個性を制御するのは、個性因子とかいう漠然としたものではない。科学で突き止められる確かなものがあるはずよ。それが分かれば、もっと人間はより良く品種改良できる」
「流石です、ご主人様」
その方法をもってすれば、この社会から個性というものを無くせるのかもしれない。
そこには幸せになる人間と、そうでない人間がいることだろう。
多くの悲劇をもって、少数の悲劇がなくなるのだ。
「ま、頑張りなよ」
狼女は、それに対してやや冷ややかである。
まあ否定しないだけアレでもあるが。
「頑張りなよ、ねえ。ずっと気になっていたけど。貴女は何しにこの世界に来たの?」
「急に何だよ」
冷笑する狼女に対し、叢雲はじっと目を向ける。
「私たちを肯定もするし、邪魔もする。どっちつかず中立のまま宙ぶらりん。何がしたいの?」
「わかってるかと思ってたんだが。わかってないのか?」
中立と言えば聞こえはいいが、結局はどっちつかずだ。
敵でも味方でもない以上、何か別の価値観を持っているはずだ。
まさか彼女程の人物が、つまらない冷笑家や事なかれ主義者ではあるまい。
「ええ。この際だから教えて頂戴。私と同等ぐらいの力を持った、この世界の頂点に立てる個人。そんな貴女が欲しいのはなあに?」
そういや言ってなかったな。
隠す程でもないが、と前置きして彼女は語りだす。
「私の目的は大きく二つだな。一つはパートナーを見つける事。もう一つは仲間を見つける事さ」
「パートナーって、配偶者?」
良い男、つがいを見つける、とも言える。
暫く、叢雲は沈黙していたが。
やがて、あーと頷いた。
「成程ね。貴女、個人としては”強すぎる”のか」
「そういうこった。狼なのに群れないのは身体に悪いんよ」
彼女の悩み、それはあまりに強すぎることだろう。
それ故に同格の仲間やパートナーに恵まれない。
つまりは彼女は孤独に悩んでいるのだ。
孤独は死に至る、不摂生より深刻で重大な病である。
強いが故に孤独とはなんとも贅沢な悩みではあるが、これは強者の苦痛ということだろう。
「パートナー探しは、この世界では難しそうだなとは思ってる。お前が男だったらなー」
「ふん」
へらへらと笑っている狼女であるが。
叢雲としては、彼女の弱さを見た気分だった。
こうして自分につるむのも、単に寂しいからと言えば説明できるわけで。
ただ孤独に関しては自分も思うところがあるので、彼女を笑う気には成れないのだが。
第一、彼女は強いだけでなく強かでもあるのだし。
「だがまあ、仲間については順調だな。お前からもらったセイレーン技術の御蔭で、大分進展があった」
へらへら笑いをやめ、獰猛な笑みを浮かべた。
「出久少年をゲットできなかったのは。まあまあ痛かったがね」
「そればっかりは早いもの順でしょ」
叢雲にとって、緑谷出久は守るべき仲間であり自分たちの所有物だ。
欲しいからといって、譲れるものではない。
「とはいえ、貴女なら後出しでも十分に間に合うと思うけど」
「さあにゃあ。どうじゃろうね?」
しかし、それもどうとでもなるものだと彼女は知っている。
ジョジョのスタンド能力DISC群と、アズールレーンのセイレーン技術。
そのどちらか片方だけでも、世界を好き勝手滅茶苦茶にできるものなのだから。
**
「ああして見てみると。あの子は本当に元気になったわね。嬉しいわ。私と会うまでは本当に酷かったもの」
テレビに映ったローンの皮を被った緑谷少年の姿を、叢雲はうれしそうに見つめる。
それは今でこそ雄英体育祭でも活躍できる程活発になっているが。
そう、かつての少年は本当に酷かったのだ。
「孤独で無個性で精神を病んでいると聞けば、さぞ観る人の哀憫を誘ったでしょう」
彼女たちの仲間となる前の少年の姿は、哀れなものだった。
無個性故に同じような仲間を持てないで孤立していた。
アレでは何か夢を持っていても、何もやる気が起きなかっただろう。
「そして同時にヒーローになりたがる夢見がちな無個性と聞けば、さぞ観る人の軽蔑を誘ったでしょうね」
何よりも不幸だったのは、ヒーローになりたいという夢を持っていたことだろう。
親しい人間たちから残酷な現実を突きつけられ、それでも夢を諦めきれなかったのだから。
その姿が、周囲からどう扱われていたなんて想像に難くない。
「第一話の爆豪は正しかった...?」
初期の爆豪少年は大概酷い性格をしていたのだが。
それでも、彼の発言は的を射ていたのだろう。
そう、世の中で正しい事を言うのはいつだって悪い奴なのである。
「いや。しっかし、それでもあの改造はねーよな。結局、どうしてローンなんだ」
まあ、緑谷少年を改善するにしても。
もっといい方向性がなかったものか。
「さあ?」
「さあ、ってなおい」
悪っぽい感じが、結構似合っていると思うのに。
叢雲はそう独り言ちる。
「改造したのは私の責任。だけど、あの子の悪はあの子自身が招いた結果よ。私はただ、結び目を解いただけ」
何の艦娘になるかは、叢雲は選んでいないと主張する。
「じゃあ選べたとして、貴女達は他に良い選択ができるの?」
「今更だな。無意味な過程だろ」
「いいじゃない。楽しいでしょ? それとも言えないっていうの?」
そうだなあ、と狼女が唸る。
その姿が中々様になる。
「明石とか?」
そこで艦船の修理を行う工作艦の名を出した。
ちなみに、アズレンの明石は背が低くて猫なKAN-SENである。
「明石かあ。確かに、ヒーラーはオンリーワンだろうけど。一番は取れなさそうね」
「いいじゃんよ。夢は見ている時が一番幸せさ」
他人を癒せる『個性』は大分貴重な人材だ。
工作艦の能力をもってすれば、良いヒーラーに成れるだろう。
ただ、腕力が無いのでトップヒーローは少々厳しい所。
「トップヒーローなんか目指すの程々にしてよ。いつまでも”先輩、好きッス!”とか言ってるのが少年にとって幸せだぜ」
「成程ね」
狼女の言ってることは意味不明だが、何となくニュアンスは伝わってくる。
「アカギ。今聞いてるよね? 貴女ならどう?」
せっかくなので、KAN-SENを良く知っているだろうアカギに振ってみる。
『計画艦であれば。伊吹、駿河が適切かと』
「面白くねー回答。加賀とか天城さんって言えば良いのに」
『黙りなさい』
「何だよ。病弱系ヒーローとかってアリだろ」
「いや、無いでしょ」
と、どうでもいい方向に会話が行っていると。
偶々テレビに目を移していた叢雲が、それに気づいた。
「ん。あれ? 心操君?」
テレビには人間騎馬に乗った、陰気な少年の姿が。
彼は雄英高校一年、心操人使である。
「知ってるのか」
「彼の個性の関係で、面識があるのよ」
彼の個性は『洗脳』。
人の心を操るという、分かりやすく凶悪な個性の持主である。
もっとも、それを悪用するような子ではないと彼女たちは知っているのだが。
「最近は見てなかったけど。体育祭に出てたのか。彼は確か普通科に進学したのだっけ」
叢雲グループは福祉活動の一環として特定の個性を持つものに支援を行っている。
彼は自身に障害となる個性を持っていたため、グループと関わる事があったのだ。
「だけど彼、何か。変」
よくよく叢雲は彼に目を向ける。
「テレビ越しで良く分からないけど。彼、私の知らない物質で構成されている」
ソファから立ち上がり、耳に触れて関係各所と連絡を取り出す。
そうして振り返り、狼女をじっと見つめる。
「何かした?」
「いえーす」
謎の原因はあっさりと白状する。
「面白そうな人材だったんで、取引をした。”未来”を対価に力を与えたぞ」
・叢雲
人間を愛している系のラスボス。
成功したシックス。
第二・第三形態もあるよ!
人間を悪に堕とそうとする姿は混沌・悪の来訪者らしくある。
ちなみに、彼女のテーマである”人間を超える生物”は割と現実的な話になってきているらしい。
まあ、我々がその恩恵を受ける事はなさそう。
・フォックスハウンド
メスガキLv.120。
前世はゴローちゃんに憧れて輸入商をやっていたらしい。
アーク・ロイヤルを護衛していた駆逐艦とは特に関係ない。
アミバタイプの秀才。
生意気な態度の裏腹に、実際の性格はやや慎重派。
リスクを恐れるが許容はできるのでギャンブラーとしては一級。
・アカギ
セイレーンの実験の一環で、艦これ世界に産まれたアズレン赤城。
つまりは彼女もまた量産型の駒に過ぎないのである。
艦これ提督にフラれた後、ヒロアカ世界に流れ着いた。
現世では叢雲を指揮官と慕っている。
愛が重いのは変わらずだが、失恋した性で精神的にやや打たれ脆い。
本人も相当な才女のはずだが、超越者の相手は荷が重いか。