テセウスの魔棲物   作:倉木学人

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―アカギの訓練はこれで終い。とにかく動けるようにしておいたわ。後は社会で学びなさい。

―ひとつ、アカギが教えれないことを伝えておく必要があります。アカギたちは人よりもあらゆる面で強いですが、それは人の上に立つということを意味するものではありません。

―アカギたちKAN-SEN・艦娘、そしてヒーローは誇らしき御主人様(ニンゲン)に仕える健気で哀れな(サーヴァント)なのだから。このことを忘れないように。

3/29 ちょっと修正。
4/2 後半の展開をがっつり修正。これでもっと良くなったかも。


第8話 Wahrheit

 ヒーロー学基礎の授業、戦闘演習。

 

 ヴィラン側のお茶子を探していたヒーロー側の飯田だったが。

 彼女を探すのはそう難しいことはなかった。

 

 二対二のタッグバトルで、ヒーローの目的は爆弾の奪取。

 防衛側の一人が攻めに来ているならば、もう片方は爆弾を防衛していると考えるだろう。

 個性にもよるが、防衛の二人が両方攻めに来るのはかなりリスキーなはずだ。

 

「! 飯田くん!」

「やはり、か!」

 

 当然の飯田の読みは的中。

 相手の目的は未だ良く分からないが、目的は目の前。

 それさえ確保してしまえば、自分達の勝利だ。

 

 しかしその場を目にした途端、彼はある感覚に襲われる。

 

(足場が、凄く悪い!)

 

 爆弾が設置してある部屋は、物凄く移動しにくかった。

 大量にばら撒かれたガラスの破片、黒ずんだ油、とげのついた怪しい球体、そして明け透けな落とし穴。

 ご丁寧に壁も触れないように汚している始末だ。

 

(やられた! これは明らかに僕の個性を狙い撃ちしている。ローン君が爆豪君を分断したのはこのためか!)

 

 爆豪の”爆破”なら、この程度の障害物など吹き飛ばして終わりだろう。

 だが、彼の個性はそうはいかない。

 

 飯田天哉、個性”エンジン”。

 足についた器官から、エネルギーを放出する。

 それによってジェット移動を可能とする個性である。

 

 彼は個性の性質上、攻撃力の殆どをその足に依存している。

 ジェットを使った間合い取りやジェットを使った蹴りなど、入試ではその個性が遺憾なく発揮された。

 しかし足を使っても彼がトップを取れなかったように、その力を常に活用できるという訳でもない。

 その力を最大限に生かすには快適な”足場”が必要なのだ。

 

「だが、その程度で僕が止められると思うな!」

 

 勿論、この程度で止まる飯田少年でもない。

 彼が選んだ選択は、撤退。

 

 なんてことは無い。

 ここで無理をする必要はないのだから。

 一度引いて爆豪に加勢し、ローンを撃破した後に二人で向かえば解決する。

 

 彼はこの授業の目的を真面目にこなそうとしたのだ。

 

「駄目! 動いたら、この爆弾を爆発させるよ!」

 

 しかし、それもヴィラン側の計算通りである。

 

「は?」

『え?』

『えぇー?』

 

 その場を見ていた全員にフリーズがかかった。

 いや、理解はできる。

 何せ、この社会ではよくある光景だから。

 いわゆる、人質だった。

 

「ごめん! 私、やっちゃったわさ! ローンちゃん!」

『お、先生。あれってアリなの?』

 

 お茶子は爆弾の模型を人質に取ったのだ。

 確かにヒーローの目的が爆弾の奪取である以上、爆弾の破壊はヒーローの敗北だ。

 ただ、個性を使うための演習としてはどうなのだろうか。

 それは、爆弾の死守が目的であるヴィランたちの負けでもあるのだ。

 

『アリだ! ただし、今回だけだぞ!』

 

 当然、人質を取るヴィランというのはそれなり以上に存在する。

 ヒーローはその時の対応も考えなければならない。

 追い詰められたヴィランは、何を仕出かすのか分からないのだから。

 

 とはいえ、次の対戦からもそれをされるのは授業の先生として凄く困る。

 本来の授業目的は、個性を使った戦闘訓練にあるのだ。

 

 そのシチュエーションからはちょっとズレているが。

 この状況は生徒への教訓として残すべきであり、一回だけ認めざるを得なかったのだ。

 

(この状況はマズイ! どうしたらいい! 考えろ! 僕!)

 

 

**

 

 

 一方、はるか下の階で行われている爆豪とローンの戦い。

 飯田が足止めを喰らっている中、爆豪は苦境に立たされていた。

 

「流石に、有効打が与えられませんね」

 

 彼女の身体から出たアンカーが、ガラスの破片が、換気扇が。

 重力なんぞ知ったことかとばかりに宙を舞って襲い掛かる。

 そうした攻撃は、いずれも余裕をもって避けられたり爆破される。

 

「クソがぁ!」

 

 爆豪は爆風によって、急速に間合いを詰め。

 そのまま相手を爆破する。

 

 しかし、それを受けたローンに傷は一つもない。

 そして次の一撃が来る前に大きく間合いを取った。

 

『あの爆豪の攻撃を何度も喰らって平然としてやがる』

『スタミナお化けか』

『爆豪がヒーローっぽく見える日が来るなんて』

『アレ、どうやったら倒せると思う?』

『物理が駄目なら、芦戸さんの酸や上鳴さんの電気などの属性攻撃ならどうです?』

 

 彼女の傍らで目を焼く強さのアーク光が走り、ゆっくりと壊れた艤装を結合していく。

 壊れた部分の修理もそろそろ終わりのようだ。

 

 爆豪は技量で猛攻を凌ぐ一方。

 彼はフィジカルで完璧に猛攻を凌がれていた。

 

「このままだと、勝つのは私でしょう。ただ、そうもいかないのですよね」

 

 有効打を与えられないという視点だけ見ればローンも爆豪も同じではある。

 ただし、両者には決定的な違いが存在している。

 艦船であるローンには高い継戦能力を持っているが、爆豪にはそれがない。

 この状況による消耗が続けば、勝つのは彼女だ。

 

 ただ、そう容易く勝てる男でもないと彼女は確信を抱いていた。

 この戦い、思ったほど勝利には程遠い。

 

「ここで私がされると困るのは、飯田君と合流されることですが。それは選びませんよね? まさか、この私から逃げようと思っているんですか?」

「舐め、るな。クソったれが。お前はこの俺がぶっ殺す」

 

 爆豪克己はいじめっ子である。

 彼は優れた個性と頭脳・身体能力を持ち、その才により欲しいものは何でも手に入れてきた。

 親に虐待されていたとかヴィランに襲われたとかそういった不幸は一切なく。

 期待の星だ天才だと周囲にもてはやされ、そのまま成長して雄英まで来たのだった。

 

 彼はまだ、挫折というものを知らない。

 それは彼がまだ発展途上にあるということでもある。

 

「あれほど遠かった貴方が、ここまで近く感じるとは。成程。これが慢心、ですか」

 

 対するそれは、”格下”と戦ったことはない。

 戦ってきたのはいつも、格上だった。

 

 つまり、挑戦者であってもチャンピオンの立場に立ったことはないのだ。

 

「じゃあ、禁手の一つですが。こういうのはどうでしょう」

 

 彼女の背後にドラム缶のようなものが装填され。

 それが、敵に向けて大きく山なりに発射された。

 

『何だあれ』

『あれは、爆雷?』

『知ってるのか、八百万』

 

 それは時限式の爆弾である。

 艦の船尾から水中に投下され、潜水艦を駆逐するのに用いられた。

 対潜魚雷が用いられる今でも、アスロックの一部として用いられることがある。

 

 彼女のそれは時限式で、対象を確実に爆破するであろう。

 

「カスが! 子供騙しがよ!」

 

 その技の性質まで見切った爆豪は、全力で突撃し。

 怒りに任せたまま、自慢の拳でそれを迎え撃つ。

 

 ただし爆発を伴わない、ただのパンチで。

 

「へ」

 

 個性ばかりに目が向くが、爆豪は普通に身体能力も高い。

 とはいえ、普通は個性を使って迎え撃とうとするだろう。

 そうすれば爆雷は誘爆し、爆発の耐性を持つ爆豪でも大ダメージは避けられない。

 

 そのはずだった。

 

 殴られた爆雷は、勢いよく発射元へ向かってくる。

 そして仕掛けられていたタイマー通り、爆発を起こした。

 

『やったか!』

『やったかじゃないでしょ。馬鹿! ちょっとアレ大丈夫なの?』

 

 辺り一面に煙が立ち込める。

 

 しかしすぐにその煙の中から、人影が現れる。

 

「手加減しようとして、悪かった、よ。あー。侮るつもりはなかったのですけど。この辺りは流石というべきですか」

 

 出てきたそれは自身の攻撃を喰らい、ボロボロだった。

 服が剥がれ、血肉が流れる。

 

 だが、それでも艤装のパーツで身を隠し。

 自分の足でしっかりと歩いていた。

 

「やっぱり加減無しでいかないとですね。うん。ちゃんと殺さないと」

 

 10.5cm高角砲と20mm機関銃。

 複数の砲塔を持つそれらを多数展開する。

 

 使い方は簡単、敵に向けなさい。

 本来なら航空機を落とすために用いられるそれは、人に向けても効果を発揮することだろう。

 

『そこまでだ! 二人とも、矛を収めるんだ!』

 

 

**

 

 

 戦いを中止させられた爆豪は茫然自失としていた。

 

「俺が、負けた?」

 

 演習ルール的には引き分けだった。

 それでも彼は精神的な敗北を感じていた。

 

 解説によると、このルールはヴィラン側が明らかに有利だということ。

 何せ、目標を既に手にしているからだ。

 現実の場合も、ルールに縛られないヴィランの方が戦略に幅がある。

 そういった意味で、迂闊な行動を避けた飯田、そしてルールのギリギリを攻めたお茶子の行動は最適解だった。

 

 愚策と評された爆豪は、それでも勝つつもりだった。

 だが、勝てなかった。

 これを敗北と言わず何というのか。

 

「違う! 俺はまだ負けてねえ! こんなの認めねえぞ」

「その通りです」

 

 大分不服そうな顔をしたそれが彼に近寄った。

 

「てめ、哀れみのつもりか!」

 

 彼は強がって見せるが。

 その行動は強がりであることが明らかだった。

 

「私の場合は君をこうやって連れ出せた時点で成功ですよ」

「なんだと?」

「ほら。この場はまだ、練習ですからね。プロヒーローみたいにヴィラン退治数を競っているわけでもありません。今回は勝ち負けを気にせず、好きにさせて頂きました」

「てめえ」

 

 全く悪びれない顔で弁明する。

 そして答えも聞かず彼に背を向け。

 ボロボロの身体で外へと歩き始める。

 

「次は確実に殺す」

 

 ドスの利いた声でそう宣言する。

 

「ああ。そういうことかよ!」

 

 そこで彼も理解する。

 彼女は彼に、確実な勝利を収めるつもりなのだと。

 言い訳もしようもない程に、自分に敗北を認めさせる訳なのだと。

 

「勘違いするんじゃねえぞ、三下が。てめえが俺をぶっ殺すんじゃねえ、俺がてめえをぶっ殺してやる!」

 

 彼は自分より強い者がいることを、しっかりと認めたのだ。

 それでもトップヒーローになるのだと。

 それがオールマイトだろうと、同級生だろうと。

 彼はそれらを乗り越えてみせるのだと。

 

「楽しみにしてますよ」

 

 それを聞いて、彼女はクスリと笑う。

 彼はそれでこそ、彼が憧れたヒーローなのだから。




**

いくつかあった原作主人公改造案について

・明石
現場修理猫。
原作主人公の出番を他のキャラに回せる。
回復役がいることで、敵をパワーアップさせて遊ぶことができる。
多分この案が一番人気でると思います。

・長門
艦隊のアイドル(史実)。
味方バフでイージーモード。
ただし、バッドエンド直行。
いつかこの題材で書いてもいいかも。

・エンタープライズ
ヒロアカでなくボトムズになる。
最終的に敵味方全員死ぬ。
そしてコードGと化して指揮官を探しだす。
むせる。

・サン・ルイ
飯田君とキャラが被りまくる。
運営は早くスキンよこせください。
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