批判はメンタルに響くのでホドホドにお願いいたします。
とある平々凡々な大学生2年生の『青年』。彼はいつもの布団ではなく、固く埃っぽい地面で目を覚ました。
違和感を感じて体を起こせば、そこは荒涼とした廃ビルの一室であった。壁紙は朽ちてコンクリートが露出し、かつて置かれていただろうデスクは派手にひっくり返って壁際まで押しやられている。窓際の壁には大穴が空き、床には割れたガラスが散乱していた。所々に既に色褪せた赤黒い染みが広がり、さながら爆弾で吹き飛ばされたテロの現場のような惨状だった。
更に異変は環境の激変だけに留まらない。青年の肉体そのものが、人間とは大きく異なる怪物へと変貌していたのだ。
柔軟なプラスチックのような黒い皮膚に覆われた、背丈1メートルもない小柄な体躯。細い手足には短くも鋭い鉤爪。腰からはひょろりとした尻尾が生え、その先端には短剣のような刃が備わっていた。頭部は獣を模した仮面のような甲殻となっており、額から伸びる二本の角と鋭い牙が生え揃う口が謎の存在感を放っていた。
まるで物語に登場する獣人か悪魔のような外見。
ここはどこだ? この姿はなんだ? ペタペタと顔と角を触り、意のままに動く尻尾を見やる青年。その動作からは驚愕と混乱が滲み出ていた。
無理もない。変わりない日常を過ごしていたにも関わらず、このような意味不明理解不能な状況に放り出されてしまったのだ。常人の精神ではとても堪えきれず、たとえ喚き泣き叫ぼうとも仕方のないこと。
だが、日々ラノベや二次創作を読み漁り、日夜妄想に耽るお気楽現代っ子は格が違った。
――ははん、これが巷で言う異世界人外転生というヤツなのだな?
ちょっとは慌てろお前。
げに恐ろしきはラノベゲーム脳。転移変身なんのその。
状況把握を一瞬で済ませ、『操作の確認をしよう!』と脳内チュートリアルに従って歩き回ったり、走ったり、ジャンプしたりと活発に動き回る。その挙動は素早く軽やかで、まるで野生の獣さながらだった。あなたさっきまで人間だったんですよね?
一通り体を動かして移動に支障がないことを確認すると、おもむろにファインティングポーズをとると、虚空へ向けてパンチや引っ掻きを繰り出し始めた。どうやら脳内チュートリアルが攻撃アクション系に移ったらしい。
ワンツーコンビネーション。左右引っ掻き。噛みつき。ジャンプして拳を叩きつける。尻尾回転攻撃。ブレス(不発)。
ゲームで見たことのあるモンスターの動きを参考に暴れ回る元大学生二年生。もう完全にノリノリである。
――そろそろタイミング的にモンスターとか出てきそうだな! 初戦闘きちゃうかもなコレ!
何処へともなくうぇるかむかもーん!と挑発する青年。彼には喧嘩の経験すらないハズだが、興奮のあまり眠っていた闘争本能(笑)が呼び覚まされているのだろうか。昂るあまりマックのうち!マックのうち!アイムラヴィニイット。と見よう見まねのシャドーボクシングをしていた、その時。
轟音と共にナニかが壁を突き破り、青年の真横数センチを掠めて砲弾のように着弾した。
思わず硬直していると、着弾したナニかが起き上がりながら言葉を発した。なんと、それは巨大な武器で武装した少年だったのだ。
「痛ッてぇ……! すまんせん油断しました!」
『マサキさんバイタル危険域です。さっさと回復して戦線に復帰してくだい』
「やっぱ俺に対して当たりキツいっすよね!? 回復したらすぐに戻りま……って何だコイツ」
……青年はその少年こそ知らなかったが、その装備にはものすごく見覚えがあった。
側面に装甲ついた身の丈を超える大剣。その根本には琥珀色に光る球体が埋め込まれ、そこからコードのような繊維が伸びて、少年の手首にある金属製の腕輪に接続されている。
それはとあるゲームに登場する武器。荒ぶる神を喰らう人類の牙。
即ち、
――ア、アイエエエエエ!?
「こちらマサキ、見たことねえ小型
青年は全てを理解した。
この世界について。自分の正体について。そして何よりも、この状況がどれだけマズイのかも。
妄想が湧く限り続きます。たぶん。