途中で読み疲れたら無理せず小説を閉じ、蒸しタオルで目を暖めて膝に猫を乗せましょう。
ge3の寝子って結局なんなん?
前回の適当なあらすじ
・初戦闘と言ったな。あれは嘘だ。
・それはそれとしてちゃん様に誤射されたい。
・明日から!明日から本気出すわ!
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――腹が……減った……。
昨日の自分に全てを丸投げされた青年は耐え難い空腹感によって目を覚ました。思えば昨日は走ってばかりで何も口にしていなかった。お腹がペコちゃんなのも納得だ。
普段ならばコンビニで適当に済ませるのだが、ここは既に社会が崩壊しきったGODEATERの世界。そもそもコンビニは全店滅んでいるし、そもそも無一文で全裸でアラガミな青年はご利用できません。なんてこったい。
だが大丈夫だ、問題ない。
そもそもアラガミに食料難などあり得ない。
アラガミとは、それ単体で思考・捕食・学習を行う単細胞生物【オラクル細胞】の集合体だ。このオラクル細胞というのが究極に雑食で、有機質無機物問わず、ありとあらゆるものを捕食しエネルギーに変えることが可能なのだ。アラガミとっては目に入る全てが餌となる。人間も、建物も、同じアラガミでさえも。
――よし、獲物を探そう。
完全に思考が野性動物のそれだが、アラガミとしては正常だ。
喰らうことこそ、アラガミの本能にして本質なのだから。
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拠点としているホテル(意味深)から数百メートルほど離れた地点。さほど苦労することもなく、早速手頃な獲物を発見できた。
二足歩行する恐竜にも見える小型アラガミ、オウガテイルだ。三体が群れを作り、道をのんびりと歩いている。
――思ったよりでかいな。
小型と分類されているものの、その全長は虎やライオンといった大型肉食獣と大差ない。対して青年はアラガミとなったことで子供程度にまで縮んでいる某名探偵状態。彼我の体格差は秋田犬と豆柴ほどもある。
早く突っ込んで喰おうぜ!と訴える腹の虫を宥めつつ、物陰から冷静に対象を観察していく。己を知り敵を知れば百戦危うからず。テンションが高まると奇行や奇言に走るだけで、普段の青年は割りとクレバーな性格だった。
ゲームにおいて、オウガテイルは序盤から登場する雑魚敵ながら、噛みつき、飛び掛かり、尾の薙ぎ払い、棘飛ばしと全距離全方位に対応した豊富な攻撃手段を持つ。意外と高い耐久力もあって、複数相手だとオウガテイルにでもボコられることがあるほどだった。本編クリア後の鬼耐久小型ミッションほんと嫌い。
青年の武器は四肢の爪と牙、長い尾とその先端についた短剣の如き刃。そして速度。遠距離攻撃を持たないので必然的に近接戦となるが、短い爪や牙では有効打になるまい。となると速攻で尾刃を用いて一撃必殺を狙うのがいい。
と、いうことで。
――忍、殺! ドゥン!ブシャァ
群れの最後尾を歩いているオウガテイルにそっと近づき、感知されるよりも早く尾刃を深く突き立て、更にねじる。運よく急所に命中したのか、反撃されることもなくオウガテイルは崩れ落ちた。
背後の騒ぎに気づいた残りの二体が振り返った。倒れた仲間とその側に立つ
オウガテイルが左右に展開する。青年はまず左の一体から仕留めることに決めた。二体から同時に放物線を描いて放たれた棘をその下を潜るように躱し、左の個体へ急接近。左の個体を挟んで右の個体の対角線上に位置取ることで壁とする。これで援護射撃は封じた。
頭を叩きつけるような噛みつきを横にステップして回避し、その晒された首に渾身の力で尾刃を振り抜いた。コロリと転がる悪鬼の頸。
――残り一体……て危なっ!
一息つく間もなく棘の雨が降り注ぐ。大きく跳び退くことで回避。オウガテイルの亡骸が瞬く間に針ネズミとなる。
最後のオウガテイルが咆哮する。仲間を殺された怒りによって活性化したのか、その口からは蒸気が溢れだし目は充血して赤く染まっていた。
尾をバネにして飛びかかるオウガテイル。見切り易い動きのために青年は躱すが、続けて繰り出された回転攻撃を読み逃し被弾してしまう。斧のような分厚い尾の威力は絶大で、なんと青年の左腕が肩から千切れるほど。
――痛ッッてぇ!やだ……俺のボディ脆すぎ?ぐえッ!
動揺して動きを止めた青年にオウガテイルの頭突きが突き刺さる。吹っ飛び仰向けに倒れる青年の腹を更に踏みつけた。地面に固定された青年の目に大きく開かれた顎が映る。オレサマ、オマエ、マルカジリ。
――ヤメロー! シニタクナーイ! シニタクナーイ!
とっさに右腕を割り込ませることで頭マルカジリを回避。だがガッチリ噛みつかれた右腕は万力のような咬合力によってじわじわと噛み潰されていく。筋力を最大にして抵抗しているが、このままでは喰い千切られるのは時間の問題だった。
――ぬぐおおおお!離せ、はなせ、HA☆NA☆SE!
激痛に喘ぎながら、青年はまだ無事な尾でもってオウガテイルの首を滅多刺しにする。しかし余裕を欠いた状態では、浅く刺さるばかりで致命傷まで至らなかった。
だが怯ませることはできた。牙が外れ、足が退かされ、ようやく自由になった青年は軋む体を叱咤して距離を取った。
十メートルほどの距離を開け再び対峙する両者。
首に深い傷を負ったとはいえ、活動に支障のないオウガテイルに対して、青年は左腕が全損、右腕が結合崩壊しており、腹部も圧迫くされたことで骨が砕け、いくらか肉が潰れている。正しく満身創痍。メインウェポンの尾刃が無事なのが不幸中の幸いだった。
これ以上戦闘を長引かせることは悪手。まだ足は動く。この一撃で決めるしかない。
今、スケールの小さな神々の最終決戦が幕を開ける。
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睨み合いの均衡が崩れた。
先に動いたのは青年だった。最短距離を全速で駆け、弾丸のようにオウガテイルに迫る。それに対してオウガテイルは迎撃体勢をとった。尾を振り上げ、野球のバッターのように青年を待ち構える。
青年がオウガテイルの間合いに入る瞬間にフルスイングされる鬼面の尾。ちっぽけなアラガミなど粉々に砕く剛擊だが、それが彼を捉えることはなかった。
間合いに入る直前、彼は跳躍して尾の一撃を飛び越え、オウガテイルの背に着地したのだ。
そして残る右腕と両足の鉤爪をしっかりと打ち込み体を完全に固定する。これでオウガテイルがいくら暴れようが青年が落ちることはない。
しかしそれは回避も逃亡も放棄したということ。背に取りつく青年に向け、オウガテイルが尾を振りかざす。棘を飛ばすのではなく尾で直接殴り殺す動きだ。必殺の威力と間合い。だが、青年最大の武器である刃を備えた尾がこれを受け止める。通常のぶつかり合いなら青年が負ける筋力差だが、オウガテイルの慣れない体勢での攻撃であることと、青年の火事場の馬鹿力とも呼ぶべき踏ん張りを発揮したことによって奇跡的に拮抗した。
火花を散らす尾と尾の鍔迫り合い。ただし青年の尾はオウガテイルの尾と比べ、鋭さで勝るが強度で劣る。徐々に青年の尾刃が限界を迎え、欠け、割れ始めた。押しきられるまで十秒とかかるまい。
だが問題ない。青年は、すでに勝ち筋を得ている。
先ほどオウガテイルを退かす際に滅多刺しにした首の傷。
断面がよく見えるそれを目掛け、青年は思いきり喰らいついた。
――お返しだ。
絶叫するオウガテイル。
口いっぱいに血と肉を味わう暇もなく、青年は再び傷に牙を突き立てる。
暴れて振り落とそうとしても無駄なこと。その鬼面の尾をどれだけ無茶苦茶に振り回そうと、青年の捕食を止めることは不可能だった。
皮を喰らい、血を喰らい、肉を喰らい、血管を喰らい、神経を喰らい、骨を喰らう。
首が埋まるほどに喰べ進み、オウガテイルが伏して痙攣するだけになったころ。
ようやく青年が頭を引き抜いた。その顎に咥えられているのは、暗い輝きを放つ、オパールの原石を思わせるアラガミのコア。
高密度のオラクル細胞の集合体、心臓と脳を兼ねるアラガミの最重要器官。
未だ無数の管でオウガテイルに繋がるそれを、
青年は実に旨そうに、
ゆっくりと味わいながら、
ごくんと、飲み込んだ。
@ @ @
――いやー初戦闘初勝利ということでね!オウガテイルは強敵でしたね!
オウガテイルを棘の一本まで喰らい尽くし、漸く青年は一息ついた。
最終的な被害は、左腕全損、右腕と尾刃が結合崩壊といったところか。腹部の損傷はオウガテイルを捕食したことでいつの間にか完治していたが、何にせよ重傷だった。
雑魚の部類のオウガテイル三体を相手にしただけでこれだ。初日にゴッドイーターと戦っていたら間違いなくお陀仏だった。逃げて良かったと切に思う。
――とりあえずさっさと体直さないと。取れた腕は……もう霧散しちゃったか。回収できたらくっついたかもなのになあ。
アラガミはコアによってオラクル細胞間の結合を制御しているため、コアのある本体から切り離された部分は結合が維持できず霧散してしまう。力尽きたり、コアを摘出された場合も同様だ。
そして霧散したオラクル細胞はいずれ再結集して新たなアラガミを形成する。この特性によってアラガミは事実上根絶不可能とされ、人類に終わりなき戦いをもたらしているのだ。シリーズの延命?なんのことやら。
ちなみに、戦闘が長引いたため先に倒した二体のオウガテイルも既に崩壊して影も形もなく、結局最後の一体分しか喰えなかったのは至極残念なことだった。
――ま、次からの反省点ってことで。
今日のところは早く拠点に戻って休んだ方が良いだろう。
結局一時間とかからなかった探索だったが、得た疲労と負傷が大きすぎる。
数日は療養だな、などと考えながら、青年はゆっくりと歩き出すのだった。
その直後、オウガテイルの群れとバッタリ遭遇したので全力で逃げた。
ギャグとシリアスの温度差で風邪をひくような名文を書いてみたいものです。