脳を雑巾のように搾りあげて3000文字弱。
相変わらずの急展開。
書いててわかる、やっぱ他の作者さんすげえわ……。
前回の適当なあらすじ
・突撃!お前が朝御飯!
・シニタクナーイ!シニタクナーイ!
・オウガテイルは強敵でしたね(震え声)。
@ @ @
青年が拠点のベッドに辿り着いた瞬間寝落ちしてからざっと二〇時間が経過した次の日の朝。
怪我の具合を確かめてみると、結合崩壊した右腕の傷はほぼ埋まり、尾の刃もヒビの痕がうっすらと残るのみ。
そして肩から千切れたはずの左腕が既に肘の辺りまで再生しているのには流石の青年もドン引きです。アラガミの回復力恐るべし。もしかすると青年が異常なのかも知れないが。
――それはそうと、腹が……減った……。
おじいちゃんそのネタは前回やったでしょ。
たが道理ではある。オウガテイル1体を丸ごと捕食出来たとはいえ、腕を失い腹を潰し、それを一晩で六割回復するという荒業をやってのけたのだ。某海賊王志望の二〇代男性だったら餓死しているレベルだ。早急に栄養を補給する必要がある。
アラガミを捕食するのが最も効率がいいのだが、今の彼はとても戦えるような状態ではない。高速回復の代償としてとてつもない倦怠感と脱力感に襲われ、ベッドから起き上がるのも億劫なほどだ。もしアラガミやゴッドイーターと遭遇すれば、攻撃すらできないまま瞬殺されてSSS+がリザルト画面に輝くことだろう。
しかし喰わねば治るものも治らない。
Q.ではどうするか。
A.狩猟クエストに行けないなら採取クエストで稼げばいいじゃない。
――よろしい、ならば拾い食いだ。
場所は変わってホテルの裏手にある路地。全身筋肉痛になった時のようなぎこちない足取りで進んだ先には放棄された工事現場があった。周囲を建物によって囲まれ薄暗いそこは、ホテルを発見した際に軽く周囲を探索して見つけた穴場だっだ。
アラガミとはあらゆるものを喰らう超生物。人が消え大量の資材や作業機械が放置されているそこは、アラガミとなった青年にとって食べ放題のバイキングにも等しい。
慎重に先客がいないことを確認し、手始めにちょうど足元に落ちていた一口サイズのネジを拾い上げる。雨風に曝され赤錆まみれになったそれを食べた経験はもちろんない。でもほら、ずっと見てるとココアパウダーがまぶされたチョコに見えてこない?どっかのお土産で工具型のチョコあったよね。見えない?知ってた。
だが青年も無我夢中だったとはいえオウガテイルの踊り喰いを達成した猛者。今さらネジ一個を喰らうなど造作もないわ!
――これはチョコ、これはチョコ、これはチョコ……いざ!
意を決して口に放り込まれるネジ。そしてバリボリと咀嚼し……うん、おいしい!
意外とイケる。食感は正しく硬めのチョコレートのようでむしろクセになる歯触り。アラガミは味覚が鈍いのか、味はよくうっすらと鉄の風味がするだけでよく分からないが、それが逆に異物感を抑え食べやすくなっていた。
一度喰ってしまえばこちらのもの。すっかり抵抗が消えた青年は、意気揚々と次なる鉄屑へと手を伸ばすのだった。
@ @ @
黙々と食べ続けること暫く。鉄、アルミ、チタン合金、コンクリート、プラスチック、ガラス、石、土、草ァ!などなど辺りにあった素材を一通り食べ尽くし、青年は思う。
やっぱ肉喰いてえな、と。
理由としては二つ。
一つは単純に治癒に必要な栄養として求めているため。
頭を使えば糖分を欲し、筋トレをすればプロテインを欲するように、肉体の損傷を修復する手っ取り早い手段としてアラガミのオラクル細胞が適切であるために欲している。
そしてもう一つは、青年は自覚していないが、本能的にアラガミを最優先捕食対象に定めているためだ。
雑食極まるアラガミにも「これは食べるがこれは食べない」という一種の好みが存在し、これを『偏食』と呼ぶ。つまり青年は「アラガミを好んで捕食する」というアラガミとしては珍しい偏食傾向を持っているわけだ。偏食傾向に合わない通常の素材を食べ続けたことで、本能が本来捕食するべき対象へ青年を誘導しようとしている。
つまり、
怪我してるんだから肉食ってさっさと治そうぜ!
肉食動物が草食べたって満足できねえぜ!
という訳だ。
多少空腹が満たされたのも合わさり、急に鉄やコンクリートの食事が味気なくなってきた青年。オウガテイルを貪った時の高揚が思い出され、自然と口から唾液がじゅるり溢れ出すじゅるり。
――でもまだまだ本調子じゃあないんだよな。
恐るべき速度で回復したアラガミボディではあるが、未だ左腕は肘までしかなく、結合崩壊した部位も表面上の傷が埋まっただけで中身は絶賛修復中だ。メインウエポンの尾刃も皹が完全に直った訳でなく、攻撃力の低下はどうあっても免れない。素材を捕食したことで倦怠感が殆ど消えているのが救いか。
今の状態を表すならば、攻撃力低下、防御力低下、移動速度微低下、スタミナが微減少。狩りゲーであり狩られゲーであるこの世界でこれほどの縛りプレイは死に直結する。
食欲をとるか、安全をとるか。実に、実に悩ましい。
いっそ都合良く瀕死のアラガミでも来てくれたらいいのだが……。
ほんとに来た。
――マジか。
それは、青年が歩いてきたホテルとは反対方向の道から、殆ど地面を擦るような低空を飛んできた。
卵型の本体に、女体を模した舌、口から覗く牙は翼にも見え、何よりも目立つ巨大な一つ眼を持つその小型アラガミの名はザイゴート。オウガテイルと同じく初代無印からゲームに登場し続ける最古参の一角だった。
そして正しく瀕死の様子。本体の殼はあちこちが割れて肉が露出し、女体部分には幾つかの切り傷が刻まれ、眼は殆ど閉じかけており、それらの傷からは結合を維持できなくなったオラクル細胞が黒い煙のようにたなびいている。
とうとう力尽きたのか、青年の目前数十センチにべちゃりと墜落してしまった。
なんというラッキー!早速捕食しよう……とはならない。
ザイゴートをここまでボロカスにした存在が近くにいるという事実。何よりも、その存在が仕留め損ねた獲物に止めを刺しにくるだろうという予感。
果たして、その予感は的中した。
「先輩!ザイゴート発見しましたよ!ってあら?」
「まったくこんなとこまで逃げてくれちゃって。さっさと喰われとけってのよ。……何よあれ、アラガミ?」
――よっしゃ逃げろ風のように!
バカでかい武器を担いだ二人組が道の奥から現れた瞬間、青年は速やかに行動を起こした。ザイゴートの舌を根本から切断して引っこ抜き、肩に担いで全力疾走する。この間僅か三秒。
体が本調子でないとか荷物持ったらスピード落ちるだろとか言っている場合ではない。喰わねば治らぬ、逃げねば喰われる。アラガミは食欲に生き、食欲で死ぬのだ。そうだね、意味不明だね。
後ろからは話し声こそ聞こえるものの、追跡の気配はなし。あくまでミッションの目標だけを達成する主義なのか、それとも単に面倒なだけか。
念のため路地をジグザグに逃げたり遠回りをしたりと逃走経路を撹乱し、拠点へと帰還した青年。
ほっとしたのもつかの間、ザイゴートの舌が半分ほど霧散しているのに気づき、慌てて齧りつくのだった。
@ @ @
「み、見逃してよかったんですか?」
「今回のミッションはあくまでコンゴウ一体とザイゴート四体の討伐よ。それにアタシはもう疲れたの。これ以上働くなんて割りに合わないわ」
「先輩、ちっちゃいですもんね。やっぱり体力も相応で……あ!?ちょっ、お尻叩かないでくださあい!」
「アンタやっぱ最近調子のってるわよねこのデカ女……!後輩のくせに!年下のくせにぃぃぃ!!」
最後に出てきたGE二人は私の性癖です。
大きい後輩と小さい先輩の組み合わせっていいよね。