代理人大好きエリザちゃん!   作:答えてくれドルフRO

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数々の先達投稿者様たちのSSで沼に落ちたので初投稿です。

変なところがあったら許し亭……許し亭……


1.エリザちゃんの朝

「んみゅぅ…………」

 

 小鳥は囀り、窓から朝日が差し込む時間。

 そんな部屋のベッドで、ひとりの少女が身じろぎした。

 

「ううん…………朝…………?」

 

 少女は半分起きてはいるが、半分寝ていた。つまり、寝ぼけているのである。

 

 そんな彼女の意識をまどろみから引っ張り上げたのは暖かな太陽────ではなく、頬に感じる柔らかな感触。

 

 マシュマロのようなふわふわとした触り心地に、思わず頬ずりする少女。いや、頬ずりなどと生易しいものではない。むしろぐりぐりと押さえつけ、顔全体で味わってすらいた。

 

 芳醇で甘ったるい香りに、少女の電脳は焼き尽くされんとばかりにクラクラする。

 

 こんな楽しみを無視して寝るなんてとんでもない!

 

 だらしない顔で感触を味わっていると、不意に、少女の頭は誰かに撫でられた。

 

「んっ…………」

 

 耳に当たった手がくすぐったくて、思わず声を出してしまう少女。

 だが不快ではない。

 その手つきは自愛に満ち、自分を大切に思ってくれているのが少女にもわかるからだ。

 

 予想通りなら、この手は自分の大好きなヒトのものだろう。

 正確には人ではないのだが────少女にはどうでもいいことだ。少女にとっては彼女がヒトで、彼女こそがヒトなのだから。

 

 見上げると果たして、そこに居たのは少女の想像通りだった。

 

「おはようございます、ご主人様」

 

 それは俗にお団子ヘアと呼ばれる髪が特徴的な、メイド服を着た女性。

 彼女を認識した途端、少女の意識は急速に目覚めだした。

 どうやら柔らかな感触は彼女の太もも。つまり少女は────膝枕をされていた。

 そんな2人は、少女との身長差も相まって、まるで母と娘のように見える。

 

 それはともかく、『おはよう』と言われたら返さなければならない。古事記にも書いてある。 

 

 そして、朝起きて最初に見るのが大好きなヒトだというのがたまらなく幸せで。

 そんな感謝を伝えたいから────

 

「おはよう、エージェント」

 

 少女(エリザ)は満面の笑みで答えるのだ。

 

 

 

 

 

 xxxxxx

 

 

 

 

 

 ここは鉄血工造株式会社本部────の跡地。

 かつて自律人形「Jeager」シリーズを主商品に、業界大手とすら呼ばれた東欧系の企業は、ひょんな事件から人間が居なくなってしまった。

 結果として、ここは同社が製造していた商品、戦術人形たちの楽園となっている。

 日々は攻めてくる人間とその部隊を撃退し、たまにこちらから攻め込んで平和を守るのだ。

 世界は理不尽で不条理で、残酷だ。

 それでも彼女たちは、お互いがいればそれだけで幸せだった。

 

 

 

 

 

 xxxxx

 

 

 

 

 

「エージェント、朝ごはんは何?」

 

「朝食はフレンチトーストですわ。先日捕獲した鶏が卵を産みましたので、新鮮なうちにと」

 

 エリザはベッドの上で両手を広げ、代理人に寝巻きから着替えさせてもらっていた。

 

「いいね。『卵』料理っていうの、食べてみたかったんだ…………もしかして、覚えていてくれたの?」

 

「ご主人様の言葉は、一字一句違わず記憶しておりますもの」

 

「もう…………大好き」

 

「勿体ないお言葉です…………終わりましたわ」

 

「ん」

 

 黒いコートモドキ(いつもの服)に装いを変えた彼女は、代理人に寄りかかる。それは『運んで欲しい』という意思表示。

 意図をすぐさま理解し、代理人はエリザを横抱きに(お姫様抱っこ)した。

 エリザもまた、相手の首に手を回して抱きつく。

 大好きなヒトとは、離れずに居たいお年頃なのだ。

 

 

 

 

 

 洗顔と手洗いうがいを終えて、2人は移動を始める。

 

「お、姫様だ。今日もアツいねェ」

 

「おはよう、2人とも」

 

「おはようございます。エクスキューショナー、ハンター」

 

「当然。だって両思いだもの」

 

 その道中で話しかけてきたのは、同じ鉄血の仲間である処刑人と狩人。

 いつも2人1組で行動するほど仲のよい人形だ。

 

「はぁ~、さすがご主人だぜ。何の迷いもなく断言したよ」

 

「事実だし。ね、代理人?」

 

「身に余る光栄です」

 

「ふふん」

 

 より強くエリザは代理人に密着した。

 

「コーヒーが必要だなこりゃ……」

 

「代理人は渡さないよ?」

 

「安心してくれご主人、両思いに割り込む無謀はしたくないからな…………ん?」

 

 処刑人の腕を、横から誰かが掴んだ。

 

「…………浮気するのか?」

 

 無論、隣に居るのは狩人だ。

 

「安心しろよ。後にも先にも俺の相棒はお前だけだから」

 

「そ、そうか…………」

 

 処刑人が手を狩人の腰に手を回すと、狩人の顔は朱を帯びた。

 

「…………お2人の時間をお邪魔するのも悪いですし、わたくしたちはこれで」

 

「ああ。そういえば代理人、あっちは上手くいきそうだぜ」

 

「それはなによりですわ」

 

 

 

 エリザたちが去った後。

 

「その、エクスキューショナー」狩人は消え入りそうな声音で呟く。

 

「どうした?」当然、ハイエンドたる処刑人の聴覚モジュールがこの至近距離で聞こえないわけがない。

 

「私も、アレ、後でやってもらいたい…………」

 

「…………」

 

 アレ。処刑人のコンピューターが導き出したのは、恐らく先ほどの代理人たちのことだろう、と。

 つまりお姫様抱っこである。

 お姫様抱っこされる狩人の姿を一瞬夢想する……その破壊力に処刑人の電脳は処理落ち(フリーズ)しかけた。

 

 そんなことを知らない狩人は、沈黙を否定的なものだと受け取り、不安げに問いかける。

 

「変か…………?」小首を傾げ、上目遣いで。

 

 なんだこの可愛い奴。トリップしかけた処刑人はまたトリップしそうだった。

 恐ろしいのは、狩人はほぼ無意識だということ。駄目だかわいい。

 

「いや、随分可愛い顔をするんだなと思っただけだぜ。ご主人たちに当てられたか?」

 

「か、かわっ!? そ、そうかもしれん……」

 

「ははっ、なぁに。後でと言わず今やろうじゃないか────よっ」

 

 我慢の限界に到達した処刑人は、狩人を横抱きにした。

 

「きゃっ…………まったく、お前って奴は………」

 

 そのまま2人は部屋に戻っていく。そんな一幕があった。

 

 

 

 

 

 代理人たちが辿りついたのは元社長室。とはいえ既に社長は存在しない。リーダーという目で見れば社長はいるのだろうが、今は関係のないことだ。

 ともかく、なぜここに2人が来たのかといえば、この場所は2人が生活に使えるよう魔改造したから。当然キッチンもあるここは調理をするのにうってつけだ。

 食堂へ行かないのは、エリザが2人の時間を邪魔されたくないからである。

 

「少々お待ちくださいませ」

 

「うん」

 

 エリザをイスに座らせ、代理人はキッチンに向かう。

 そして調理の間、待たされるエリザは暇に────ならない。

 

(ああ、料理をしてるエージェントも可愛いなぁ…………)

 

 そう、ある事情から調理中のキッチンが見える構造のだめ、エリザは代理人の挙動を一瞬たりとも逃さぬと見つめ続けるからだ。

 大好きなヒトを見つめるというダイジな事があるのだから、暇になどなるわけがない。

 パンを切るときも、卵を割り、かき混ぜるときも、フライパンで焼き上げるときも。

 ずっと、ずっと、ずっと見ているのだ。

 

「…………」

 

 ふと、代理人は前髪をかき上げた。フライパンに髪が入ってしまうからだ。

 そしてエリザの高性能視覚モジュールは捉える。

 ちらりと見えた耳。代理人の細い指がその輪郭をなぞるところを。

 その仕草が妖艶で、思わずエリザは震えた。当然、現場の映像は脳内メモリに保存済みだ。

 

「────!」

 

 ところでエリザはずっと代理人を見ているわけで、それを隠す素振りは全くない。

 するとどうなるかといえば、代理人と目があうのだ。

 その一瞬代理人は────微笑んでいた。明らかにエリザを見て。

 エリザは悟った。わざと前髪を垂らして、注意をひきつけた上でかき上げたのだと。

 妖艶な仕草という、釣り針に掛かったのだ。

 それを自覚した途端、エリザは急に気恥ずかしくなった。

 

(穴があったら入りたい……でもエージェントから目を離したくもない……うう……)

 

 

 

 

(────なんて、ご主人様はお考えなのでしょうね。ふふ、お可愛いこと…………)

 

 代理人はエリザのため、ありとあらゆるソフトウェアをダウンロードしている。それには当然調理やレシピも含まれ、片手間でやろうと代理人のスペックなら完璧な仕上がりとなるのだ。

 つまりどういうことかというと。

 エリザが代理人を見ているように、代理人もまたエリザを見ているのである。

 もっとも、その練度は代理人が圧倒的に上。

 「深淵を覗く時、深淵もまたこちらを覗いているのだ」とは誰の言葉だったか。

 

 チラチラ代理人を窺うエリザと、見られる度にエリザをからかう代理人。

 調理の間、奇妙な──しかし不快ではない──雰囲気が流れていた。

 

 

 

 それも代理人が料理(フレンチトースト)を持ってきたことで終わりを告げる。

 

「ご主人様、出来上がりましたわ────あら、お顔が赤いですわよ。大変、何かのウイルスかしら」

 

「え、エージェント…………」

 

「ああ、よいのですご主人様。動かないでくださいまし…………」

 

 盛り付けた皿をテーブルに置き、代理人はエリザに近づく。

────当然ウイルスなどという話は嘘だ。もしエリザに異常が見られれば、代理人が感知できないはずはない。

 彼女は片手をエリザの頬に添えると、もう片方で前髪を上げた。

 そして額同士を合わせる。

 至近距離で見詰め合う2人。

 どちらかがあと数ミリ近づけば、唇が触れ合ってしまうだろう。

 

「ひゃ、ひゃぃ」嗅覚モジュールを焼きれそうなほど酷使して、エリザは代理人から漂う甘美な匂いを取り入れようと躍起になった。

 

「…………スキャンしてみましたが、どうやらわたくしの勘違いでありました。申し訳ありません、お手を煩わせてしまい」

 

「あっ……う、うん。だ、大丈夫。うん」

 

 離れていく代理人。それが惜しくて、後ろ髪を引かれるエリザ。

 

(ああ、本当にお可愛いこと────)

 

 だから彼女は、代理人の口が僅かに歪んでいたのを見逃した。

 

「それではご主人様、朝食に致しましょう。お召し上がりください」

 

「そうだね。いつものように頼むよ」

 

「かしこまりました…………」

 

 いただきます、と両手を合わせ、食事を開始する。

 

「あー…………んっ」

 

 代理人はエリザの隣に座り、ナイフとフォークで上品にフレンチトーストを切り分けた。そしてソレを、ひな鳥のように口を開けるエリザの元へ運ぶ。

 少女は2度、3度と食感を味わった。

 

「これが、『卵』料理……やわらかくて、温かい…………」

 

「正確には『卵』料理のひとつですわ。本来なら『おむれつ』というものを作りたかったのですが、材料が足りず……申し訳ありません」

 

「ううん、合成食料じゃないんだよね? それだけで十分だよ。ありがとう」

 

「そう言って頂けると、作った甲斐がありますわ」

 

「それに…………エージェントが食べさせてくれるのなら、なんだっておいしくなる」

 

「ふふ………身に余るお言葉、感謝致しますわ」

 

「うん……次、お願い」

 

「かしこまりましたわ」

 

 代理人はエリザが皿の上にあるものを食べ終わるまで、その手を動かし続けた。

 

 

 

 さて、この少女は卵料理を食べたことがないのか? その問いは是である。

 それは彼女が箱入り娘であるということもあるが、大きな問題はこの時代の状況にあった。

 崩壊液と呼ばれる汚染物質の拡散と、第三次世界大戦の勃発による、核の乱用。

 大地は汚染されつくし、人々は残された大地にしがみつく様にして生きていた。そしてそれでもなお、人は争いをやめられない。

 そんな状況で、天然の作物など容易に育つはずがなく、動物を飼うのも一苦労だ。

 代わりに合成食品や、エネルギーだけを追求したまずいレーションが開発されるに至った。

 

 そんな事情があって、少女はこの天然食品に感動しているのだ。とりわけ、肉や魚は貴重品の中の貴重品。

 幸いなのは、この鉄血本部は地下栽培を行っているため、少ない量ではあるが天然の作物を得られることだろう。

 

 

 

「ごちそうさま」

 

「お粗末様ですわ」

 

 まだ口に残るほのかな香りを堪能するエリザ────を眺めながら、代理人は食器を洗う。

 技術の発達した昨今では、食器洗い機も副産物として発達しているが、それに頼ったりはしない。

 別に故障するから使わないわけではなく、事実として、食堂では大型の食器洗い機が設置されており、現在も活躍中だろう。

 ではなぜ? 簡単である。

 

(ご主人様の舌がここを…………ふふ、ふふふ……………)

 

 代理人はフォークを念入りに洗う。時折指でなぞりながら…………いやむしろ触るほうがメインかもしれない。これはただのフォークではないのだから。

 そう、エリザの口に入ったフォークだ。

 完璧なメイドは決して表情に出したりはしないが、右手の触覚モジュールは荒ぶっている。

 

 答えはつまり、趣味(欲望の塊)だった。

 

 

 一方、代理人がそんな凶行に及んでいるとは知りもしないエリザ。

 淹れてもらった紅茶を口に含もうとして────熱かったのでやめる。

 ふー、ふー、と冷まして再挑戦。今度は飲めた。

 

「ほぁ~…………」

 

 深く息を吐く。

 

「今日もいい一日になりそう」

 

 代理人と生活を始めてから、エリザは『幸せ』を実感していた。

 

 

 

 その後、カップを洗うときにまた代理人の電脳が騒がしくなるのは、また別の話。

 

 

 

 

 

 食事を終えたら何をするか。人によって様々であろうが、2人の場合は歯磨きだ。

 食べっぱなしにしておくと、口内で細菌が糖質から酸を作り、悪臭や歯を溶かす原因になる。

 生体部品を利用した人形も例にもれず、油断は禁物なのだ。

 

「ご主人様、お口を拝見いたします」

 

「んぁ~」

 

「はい、ありがとうございます」

 

 代理人に洗面台へ運んでもらったエリザは、鏡まで身長が足りないため台に乗っていた。全身から力を抜いて、代理人に寄りかかる。

 

 代理人もまた慣れた手つきで歯ブラシに歯磨き粉をつけ、エリザの背後に回る。片手でエリザの頬を支え、もう片方の手で歯ブラシを保持した。くっつきそうなほど顔が近いのは、小さな汚れも見逃さないためである。

 

「それでは、失礼致しますわ…………」

 

「ん」

 

────シャカシャカ。

 代理人はエリザの歯を磨き始めた。

 

「痛くはありませんか?」

 

ひょほほはひ(丁度いい)

 

「よかったですわ…………」

 

────シャカシャカ。

 ゆっくり、優しく、丁寧に。あまり力は込めないようにして。

 

「ひゅぃ………はひゅ」

 

────シャカシャカ。

 力を入れすぎると歯茎を傷つけてしまうため、細心の注意が必要だ。

 

「んっ……ひぁ……あぅ……」

 

────シャカシャカ。

 代理人の高性能カメラはたとえマイクロ、いや1ナノメートルの物質だって見逃さない。ご主人様を邪魔をするゴミは、すべて排除するのだ。

 

「あっ…………んっ…………ひぅ」

 

 ところで。味を理解するために、人体のうちで舌や口というものは意外と感度が高くなっている。

 それは皮膚など外部からの接触を受けて反応する部位ではなく、内部からの刺激で反応するからというのもひとつの理由で────簡単にいうとデリケートなのである。

 そんな部分を歯ブラシという、毛先が細く、しかも量のあるものでなで上げればどうなるか。

 

「っ…………っっあ…………んんっ」

 

 磨き始めてから1分もしないうちに、エリザの声に艶が混ざり始める。

 

「気持ちよいのですね、ご主人様…………どうぞそのまま、わたくしにお任せください…………」

 

「ふーっ、ふーっ…………はんっ………」

 

────シャカシャカ。

 

「ご覧ください、ご主人様…………お美しいお顔ですわ…………」

 

「あぅ…………」

 

 代理人に言われて鏡を見る。そこに映る自分の顔は、恍惚に染まっていた。

 気恥ずかしくで顔を背けようとするが、代理人の手がそれを許さない。

 

「動かないでくださいまし…………危ないですわ」

 

「うぅぅぅぅぅ……………」

 

 エリザの小さな抗議も流される。代理人は──表面上──至って真面目だ。自分をのためにやってくれていることだから、エリザも強く言えない。

 

 

 

 

 

(お美しいですわご主人様その顔を永久保存してああしました弱弱しく抵抗する姿といじめたくなってしまいますわいけませんああいけませんくぁwせdrftgyふじこlp)

 

 代理人の電脳内はバグっていたが。

 

(幼い容姿で色っぽい声を出すものだから、背徳感が凄まじいご主人様が悪いのですわ…………)

 

 

 

 

 

「ご主人様、今日は舌のお掃除も致しましょうか」

 

「ひっ…………」

 

 怯えた声を出すエリザ。しかしその目は期待に満ちており、口はだらしなく開いていた。

 

 どうやらこの()()()はもう少し続くらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エージェントの意地悪」

 

「申し訳ございません、ご主人様。しかし、ご自身のためには必要なことでございます」

 

「…………わかってるよ」

 

「ご気分を害されましたのなら、わたくしにできることは何でも致しますわ…………」

 

 そんなことを言うが、代理人の目はやんちゃな子供をあやす母親のものだ。反省の色は見えない。それが気に食わないから、エリザは余計にヘソを曲げる。もっとも、そんなところが子供なのだが。

 

 結局、歯磨きはたっぷり5分ほど行われ、エリザは溶かされてしまった。

 

「…………」

 

「ご主人様、わたくしのことがお嫌いになられたのでしたら────」

 

「────そんなことない」食い気味に否定するエリザ。

 

「ですが」

 

「ない。さっきも、その…………よかったし」

 

「…………もったいないお言葉です」

 

「…………っ」

 

 幸薄く微笑む代理人に、エリザの心は揺れる。

 いや、駄目だ。今は怒っているんだ。こんなあっさり許すものか。これは代理人の罠だ。自分に言い聞かせる。

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………本当になんでもするんだね?」

 

 先に折れたのはエリザだった。やっぱり沈黙には勝てなかったよ…………。

 

「はい、二言はありません」

 

「わかった…………じゃあ、私と遊んで」

 

「…………かしこまりましたわ」

 

「よしっ」

 

 代理人と遊べると決まっただけで、エリザの斜めだった機嫌は良くなる。最近忙しいようだったから、中々誘えなかったのだ。自分でもちょろいなと思っているが、それでもいいかと開き直っていた。怒っていたのは過去だよ過去。楽しい未来に目を向けよう。

 

「エージェント、今日はお仕事ないんだね?」

 

「ええ。緊急の連絡がない限りは」

 

「それなら『────』がしたい。いい?」

 

「勿論です。ご主人様の為したいように」

 

「やった。じゃあ早く行こう」

 

「はい、ご主人様」

 

 2人は寄り添いあうように、部屋を後にした。

 

 

 

 

 





・エリザちゃん
前はひきこもっていたが、最近は代理人と一緒に出てくるようになった

・代理人
かんぜんでしょーしゃなめいど。
エリザちゃんのお世話役。母であり姉であり恋人


突然ですが西尾維新先生は天才すぎますよね…………歯磨きとか


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