代理人大好きエリザちゃん!   作:答えてくれドルフRO

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いつもありがとうございます

今回はいちゃいちゃ! 


またイベントが始まりましたね……個人的にはグローザと40が手に入るっぽいのが嬉しいです
(相変わらず関連人形は不在)

そして待機画面! ハンバーガー片手にしかめっつらするエリザちゃん可愛い!!!
※お前は何が見えているんだ

でも代理人は……

 ド ー ル ズ フ ロ ン ト ラ イ ン 





5.エリザちゃんの夜

「ぐっすり眠っていらっしゃいますわね……」

 

 代理人はエリザを寝室へ運び、ベッドに横たわらせていた。

 規則的な呼吸を繰り返す少女を見て、浮かべるのは薄暗い笑み。

 

「ふふ……あなたは鳥籠に囚われた鳥なのですわ、ご主人様」

 

 時刻は日も沈み、夜に差し掛かっていた。

 

「絶対、絶対に手放すものですか……」

 

 少女の前髪を除けて、頬を撫でる。掌から伝わる柔らかな肌触りに、より深く口角が歪むのを感じる。自分だけのお姫様、自分だけの()()、自分だけの■■■、自分だけの────────

 

 

「相変わらず、気持ち悪い顔してるのがわかるわ、アンタ」

 

 

 背後からの声に、代理人は振り向いた。

 

「ドリーマー。…………いつから?」

 

「さっきよ」

 

 腕を組み、壁に寄りかかっていたのは夢想家。その表情には嘲りとも侮蔑とも取れる表情が浮かんでいる。

 

「許可なく入室することは認めておりませんが」

 

「そんな怖い顔しないでよ……何、自慢の可愛娘ちゃんが取られるとでも心配しちゃった? でも安心して欲しいわ。そんなちんちくりんを欲しがるのはあなたくらいなものだから」

 

「始めから疑っておりませんわ。ご主人様を愛しているのはわたくしだけです。ご主人様が愛していらっしゃるのもわたくしだけですわ。他の誰かに靡くなどありえませんの」

 

「そうね、壁に()()()()()()()()を飾るくらいだものね? あんなので喜ぶなんて御目出度いわ」

 

「わたくしは、ご主人様から賜ったものをありがたいと感じられない人形こそ如何なものかと思いますわ」

 

「…………」

 

「…………」

 

 数秒の沈黙。先に声をあげたのは夢想家。 

 

「ほんと、イカれてるわあんたたち」

 

「でも、付いて来てくれるのでしょう?」

 

「ふん……貸したままなのが気に喰わないだけよ」

 

「あなたらしいですわね……それで、ここに来た用は?」

 

「それは────」

 

 夢想家が口を開きかけると。

 

 

「ぁ……ぃ、ぁ……」

 

 

 ベッドで眠る少女がうめき声を上げて、苦しみ始めた。額からは汗があふれ出している。

 

「えー、じぇん……と……」

 

 掠れるような声で呟くエリザが虚空へ伸ばした手。

 

「はい、いつもお側に」

 

 代理人はその手を暖かく、両手で包み込んだ。

 すると、エリザの表情が柔らかくなる。

 

 

「やっぱり」

 

 夢想家は安らかな寝息を立てる少女を横目に見た。

 

「計器が妙な挙動を見せたから来て見れば。そろそろといったところね」

 

「…………」

 

「あとはあなた次第よ、エージェント。準備は出来ているのだから」

 

 夢想家が部屋を出ていく。

 

「ええ、わかっていますとも……」

 

 

 

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 

 

 

 

 しばらくして、エリザが目覚めた。

 

「こんばんわ、ご主人様」

 

「うん……もう夜?」

 

「はい。お夕食に致しますか?」

 

「ううん……すこし、ヌメヌメして気持ち悪いからシャワー浴びたい」

 

「かしこまりました。タオルとお着替えをお持ち致しますわ」

 

 

 

 

 

 併設された更衣室へと移動した。

 

「うんしょ……」

 

「はい、これで最後ですわ」

 

 衣擦れの音が静かな更衣室に満ちる。

 

「エージェントも、脱がせてあげる……」

 

「ありがとうございます、ご主人様」

 

 生まれたままの姿になった2人。

 お団子ヘアーを解いた代理人の、膝下まで届く長い髪が揺れた。

 

「足元にお気をつけください」

 

「わかってる」

 

 手を引いて、引かれて、一緒にシャワールームへ。

 

 

 

 

 

 シャァァァァァァァァ────。

 

 

 シャワーヘッドから溢れる水は床を打ち、白い湯気が立ち昇りだした。

 代理人が手で水温を確かめる。

 

「……よし。ご主人様、如何でしょうか」

 

「うん……いい感じ」

 

 人肌に調節された温水がエリザの体を伝う。先ほどまで感じていた不快感は洗い流されていき、静かな刺激が肌をうった。

 数分、身を任せる。

 

 

 

「ねぇ、ここは誰も見てないよ?」

 

 代理人に背中を預けていたエリザが、目線は前に向けたまま語りかけた。

 

「…………」

 

「呼んで欲しいの……」

 

 眼下で何かを期待する少女に、代理人は言葉を紡ぐ。少し、気恥ずかしさを覚えながら。

 

「……エリちゃん」

 

「うん、エージェントのエリちゃんだよ」

 

 小さく、エリザは笑みをこぼした。

 

 

 

「いつもの、頼んでもいい?」

 

「勿論ですわ。お任せください」

 

 お湯を一旦止め、代理人はシャンプーを手に取る。

 その間にエリザは隅からイスを出して座った。

 

「それでは失礼致しますわ……」

 

「お願い」

 

 膝立ちの姿勢になり、代理人はシャンプーをエリザの頭部に馴染ませる。

 

「ふわぁ……」

 

 10の指がエリザの頭部を這っていく。

 爪は立てず無理に力を込めているわけでもない、丁度いい指圧に思わず声が漏れた。

 

「力加減は如何ですか?」

 

「あー、いいよぉ……」

 

 指たちは腹の部分で、まるで弧を描くように頭皮を刺激する。

 優しく、ゆっくり。

 

「あぁぁぁ……」

 

 コリコリ、スリスリ。洗髪というよりマッサージのようだ。

 

「エリちゃん、かゆいところはございませんか?」

 

「ちょっと、みぎのほう……」

 

「ここでしょうか?」

 

「しょ、しょこぉ……」

 

 頭に感じる圧力が、緩急をつけて揉み解していく。

 

「ぁー、あぁ……」

 

 しゅわしゅわ、泡のはじける音が耳を満たす。

 

「気持ちいいでしょうか?」

 

「うー、うー……」

 

 数秒もしないうちにエリザの脳は極上の刺激に溶かされてしまった。

 

「んぁぁ……」

 

 先ほど眠ったばかりだというのに、意識が朦朧としてくる。

 

「ふふっ。エリちゃんの目、トロンってしてますわよ」

 

「らってぇ、きもひぃ……」

 

 正面に置かれた鏡で自分の顔を見る余裕などもうない。

 

「ありがたいお言葉ですわ。ここなんて、如何でしょう」

 

「あひぃっ……」

 

 頭皮のツボを刺激され、余計にエリザの意識は薄れていく。

 

「っと……もう少しですわ」

 

 少女のふらふらする頭を支えながら、代理人はシャンプーを続けた。

 

 

 

 

 

「エリちゃん。お湯をおかけしますので、目を閉じていてくださいませ」

 

「うん……」

 

 言われた通りにするエリザ。

 直後に頭上からシャワー音が聞こえ、頭に付いた泡は洗い流される。

 そして頭部が終われば当然、次に洗うのは体だ。

 

「お背中もお流しいたしますわ」

 

「よろしく……」

 

「すべすべで……綺麗なお肌ですわ」

 

「んっ……エージェントが、いつも洗ってくれるから……」

 

「光栄ですわ。しかしエリちゃんのお肌がもともと上質なのです……わたくしはよい素材を引き立てているにすぎませんもの」

 

「ありが、と……」

 

「ですから、わたくしもエリちゃんの体を洗うのに気合が入ろうというものですわ」

 

「ぉっ……そ、こは……」

 

「ええ、気持ちよいのではないでしょうか。擬似神経が肌に近い部分ですので……こんなことも」

 

「んにゃっ……!?」

 

 ぼんやりとした頭のまま、エリザは体の隅まで洗われていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 エリザの体を洗い終え、落ち着くまでシャワーを浴びていた2人。

 当然次に洗うのは代理人の体なわけで。

 

「じゃあ、今度はわたしが洗うね」

 

「はい……」

 

 代理人がイスに座り、エリザはその後ろに立つ。丁度、頭の高さが重なった。

 

「それじゃあいくよ」

 

 自分がされたように、指の腹で優しく頭を洗い始めるエリザ。

 

「どう?」

 

「あぁ、お上手ですわ……」

 

「ほんと?」

 

「ええ、遠くないうちにマスターできるはずですわ」

 

「ふふ、やった」

 

 多少おぼつかない部分はあるものの、代理人としては満足できる内容だった。

 もっとも、服従すべき存在が自分に奉仕するという、倒錯的な感情に影響されていないわけではないが。

 

 

 

 泡をシャワーで流し、今度はボディソープを絞るエリザ。

 いったいどんな力加減で洗ってくれるのだろうと、代理人は少し楽しみにしていた。

 しかし。

 

 

 ぴとっ。

 

「…………?」

 

 すり、すり。むにゅ。

 

「あの、エリちゃん……?」

 

「どうしたの?」

 

 代理人の背中に触れたのは、あまりにもやわらかい感触。

 何かが妙だ。

 

「タオルは、如何しました……?」

 

「嫌」

 

「嫌、とは……」

 

「エージェントの綺麗な肌を汚したくない」

 

「いえ、洗うためにボディソープがあるわけでございますの……」

 

「つけてるよ。ちゃんと」

 

「そうではなく……」

 

 この状況に、代理人は鼻血を必死で抑えていた。予想通りならまずい、これはまずい。とても眼前の鏡など見られない。

 そんな心境をわかってか、エリザは代理人を追い詰めようとする。

 

「見ちゃったの」

 

「な、なにをですか」

 

「検索履歴」

 

「……っ!?」

 

 それはパンドラの箱。開けてはならない地獄の門だった。

 動揺が顔に出てしまう代理人。

 

「エージェント、好きなんだよね……こういうの……」

 

「え、エリちゃん……」

 

「んしょ……裸のオンナノコに自分の体で洗ってもらうの」

 

「うぅ……」

 

 背後から掛かる吐息交じりの言葉に、代理人は答えられない。主人の言葉を否定できるはずがないし、さりとて肯定もしたくなかった。ささやかな抵抗にうなり声のようなものを上げるしかない。

 確かにエリザのことは大好きだし体の全てを許せるが、羞恥心はある。もはやあってないようなものであるが、恥ずかしいものは恥ずかしいのだ。特に、代理人の自意識はエリザの母親という部分がある。現在、娘に趣味がばれた母親のような心境だった。できるなら不貞寝したい。

 

「好きじゃないの……? なら、やめようかな……」

 

「ァ"ッ"……」

 

 普段出さないような悲鳴を上げる代理人。

 

「ごめん、嫌だったよね……」

 

「そ、そのようなことは」

 

 代理人は暖かい体温が離れていく感覚を惜しく思い、しかし言葉に詰る。

 これは駆け引きなのだ。安易な隙を晒せばその瞬間に食われ────

 

「ほんと……?」

 

「…………」

 

「うぅ……どう、なの?」

 

「だ、大好きですわ……」

 

「だよね……♥」

 

 肩を撫でながら、背後より上目遣いで近づく捕食者(エリザ)には勝てなかった。

 

 

 

「でも、わたし以外にこうしてくれる人がいたら、誰でもいいんじゃないの? 例えば……デストロイヤーとか」

 

「そんな、こと」

 

「ほんと? わたしと同じ位の体格だよ。声を似せたらコロッと行っちゃうんじゃない?」

 

「ありえませんわ。わたくしはエリちゃんだけを────」

 

「『ねぇ、エージェント! あたし頑張ってこういうの覚えたんだけど、どうかな? 気持ちよければいいんだけど』……って」

 

「……っ」

 

「あ、ちょっと揺れたでしょ」

 

「く……」

 

「ふふ……大丈夫、声真似をしてるのがわたしだからだよね? デストロイヤー本人が声真似をしても靡かないよね。わたし、信じてるから……

 

「も、もちろんですわ……」

 

 首に這い寄る細い腕と幽鬼のような雰囲気を出すエリザ。ゾクリ、と代理人の背筋が凍る。

 しかし、それもすぐに霧散した。

 

「だよね。わかってる、わかってるからね……」

 

 

 

 

 

 背中の()()()が終わり、やがて場所は前に移る。

 

「エージェントのって、大きいよね……着やせするタイプ」

 

「なにを……ぁっ」

 

「やわらかいし……おいしそう」

 

「ふわっ……え、エリちゃん!? あんまりつよ────あぁっ!」

 

「強くするとどうなの?」

 

「ど、どうとは……ただ、んっ……そんなに力を込める必要はありませんの……」

 

「別に、普通だよ。それとも痛いの?」

 

「……いえ、そのようなことは」

 

「ならいいよね。それに、大きい人って下のほうが痒くなっちゃうんだよね? エージェントは綺麗で居て欲しいから……ちゃんと洗ってあげる」

 

「っ……ふっ……ぅ……」

 

 エリザの指はまるで生き物のように独立して動き、代理人の胸部を這って行く。

 時に撫で、時に揉み、時に掴む。

 代理人の口から吐息が漏れた。

 

「エージェント、ココ弱いもんね……」

 

「ひぃっ!? エリちゃん、しょこ、しょこだっ!?!?!?!?!?」

 

 チカチカする代理人の電脳。

 エリザのイタズラが始まった。

 

 

「ねぇ、エージェント……鏡を見てみて」

 

「か、ひゃみ……?」

 

 代理人が瞳を鏡に向けると、映っていたのはだらしない顔を晒す女。

 それを認識した瞬間に虚ろだった意識は吹き飛び、カッと頬が熱くなる。

 

「すごく可愛いよ……」

 

「いや、いやでしゅわ……」

 

「隠さないで……ほら、こっちはどう?」

 

 ゆっくりと下りていくエリザの手。

 反時計回りに、やさしく腹部を撫でる。

 

「んひっ!?」

 

「ここも、好きなんだ……」

 

「あっ……んっ、ぇぁ……」

 

 ぐるぐる、ぐるぐる。渦を巻くように。

 

「えいっ」

 

「あぎゅっ!?」

 

 時折、激しく掴んで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まったく……お戯れが過ぎますわ」

 

「うー、ごめん。怒ってる?」

 

「そうではありませんが、ご主人様のために来たのですから……」

 

 2人はシャワールームを出て、更衣室で服を着始めていた。

 

「でも、期待したよね?」

 

「…………」

 

 僅かに頬が赤くなる代理人。それを見てエリザは微笑む。

 

「ふふ、可愛い……」

 

「……はい、次はこちらですわ。お手を上げてくださまし」

 

「わぷっ……あ、怒った、怒ったでしょ」

 

「ありえませんわ。わたくしがご主人様に怒りを覚えるなど」

 

「ねぇ、ならどうして雑に、んんっ!」 

 

「知りません、知りませんわ」

 

「もうっ……」

 

 心なしか、少しだけ。ほんの少しだけ、代理人の服を着せる手が乱暴だった。

 

 

 

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 

 

 

 

 夕食を取り、諸々済ませ。

 2人は就寝までの短い間、寄り添いながら吹き抜けより覗く夜空を見上げていた。

 

「エージェント……」

 

「どういたしました?」

 

 ふと、エリザが呟く。

 

「わたしたち、『結婚』って出来るのかな」

 

「……結婚、でございますか」

 

 視線は輝く星々に向けたまま。

 

()()は好きな相手とずっと一緒に居たい、って思ったら結婚するんだよね?」

 

「必ずというわけではありませんが……そうですわね。人間は繁殖行動と別に、社会的信頼のため男女間で誓約を結ぶそうです」

 

「えっと……するんだよね?」

 

「……はい」

 

「女の子同士はできないの?」

 

「出来ないことはありませんわ。ただ、全体から見ると小数ですの」

 

「ふーん……」

 

 一瞬の沈黙。

 

「わたし、わたしはどうなんだろう……人形は……駄目なのかな」

 

 消え入りそうな声音で紡がれたのは、少女が(がいけん)相応に表した不安。

 

「わたくしはきちんと、ご主人様が女の子だと認識しておりますわ」

 

「わかってる……エージェントがわたしをちゃんと、人らしく扱ってくれてるのはわかってるの……でも、でも……」

 

 小さく縮こまるエリザ。

 

「こんな、わたし、今幸せでいいのかなって……へ、変な夢みたからかな、すごく怖い。怖いよ、エージェント……」

 

「夢、ですの?」

 

「うん……エージェントが、どこか遠くに行っちゃう夢…………ねぇ、エージェントはどこにもいかないよね? わたしの側に居てくれるよね? ずっと、ずっと一緒だよね? わたしいい子だよね? いい子だから愛してくれるよね?」

 

 自分でも処理しきれない感情をエリザは吐き出していく。それでも吐き出せば吐き出すほど悲しくなって、隣に誰もいない夢を思い出す。泣きたくなる。縋りたくなる。

 

「いや、いやなの……ひとりぼっちは……」

 

 視界が歪む。涙が溢れる。

 

「うそでも、うそでもいいの。愛してるって、愛してるっていって? 絶対捨てないって……」

 

 胸が痛い。 

 

「うぅ、くるしい、くるしいよぉ……」

 

 頭が痛い。

 

「すき、すきなの。だいすきなの。おかしくなっちゃいそうなくらい愛してるの……」

 

 (メンタル)が割れそうだ。

 

「あは、あはは……おもいよね、めいわくだよね。ずっとわたしといっしょじゃなきゃいけないもんね。えーじぇんとだってやりたいことあるもんね、じゃましちゃってるよね。きえればいいよね……」

 

 喉が渇く。

 

「でも、でもわたしにはえーじぇんとだけなの……あなたしかいないの。ほかのにんぎょうじゃだめなの……わからない、わからないけど、でもあなたじゃなきゃ……う、うぅ……」

 

 服を着ているのに寒い。吐きそうだ。

 

「どうして、どうしてわたしはこんな……うまれなきゃよかったのに……」

 

 小さな手を自分の首に添える。

 

「もうしぬしか、しぬしかないよね…………ぜんぶもとどおりにするには。わたしがいなくなればみんなきずつかないですむよね。ばいばい、えーじぇんと。わたしがきえたら、じゆうにいきて…………」

 

 戦術人形の腕力は少女の細い首をへし折るなど容易い。

 ギシリ。骨格を捉えた。

 ほんの少し、力を加えれば胴体とおさらばできる。

 首をねじ切れば自分は死ぬ。不思議と確信があった。

 

 だいすき、ばいばい。

 

 意を決し、力を込めようとして。

 

 

 

 

 

「な、んで……」

 

 手を掴まれた。止められた。

 

「どう、して……」

 

 震える少女をやさしく、代理人が抱きしめた。

 

「結婚致しましょう。ご主人様」

 

 

「え────?」

 

 

 少女は信じられない、といった表情で振り返る。

 

「い、いまなんて……」

 

「結婚致しましょう、ご主人様」

 

「なんで……」

 

「わたくしはいつでもご主人様の側にいるつもりですが、それでもご不安になられると仰るなら誓いを立てるまでですわ」

 

「その、え、エージェントはいい、の……?」

 

「ご主人様の為したいことが、わたくしのやりたいことですの。ご主人様はわたくしとの結婚はお嫌でして?」

 

「そっ、そんな……そんな訳ない、大好きだから……」

 

「ふふ、光栄ですわ。それにもとよりこの身と心はご主人様のものなのですから、ご遠慮なさる必要などありませんの」

 

「でっ、でも。わたし重いし、わがままだし、悪い子だよ……迷惑にしかならないよ……」

 

「そのようなことはありませんわ」

 

「嘘だ……わたしを騙そうとしてるんでしょ……知ってるよ、プログラムだ。わたしを好きになれって言うプログラムなんでしょ……」

 

「いいえ。正真正銘、わたくしの心……意志ですわ」

 

「なんで、なんで言い切れるの……わたしたち()()なのに! ツクリモノだよ!? 設計次第で動くオモチャなの! え、エージェントのその気持ちだって……」

 

「それでも、わたくしは信じています。この気持ちが紛い物ではないと」

 

「そんな自信、どこから来るの……」

 

「あなたを、愛しているからですわ」

 

「っ……!」

 

「わたくしたちは人形です。しかし、(メンタル)があります。……始まりは紛い物だったかもしれませんわ。それでも、データを集め、経験を積み、思考を巡らせた結果行き着くものだとするならば」

 

 涙でぼろぼろの少女に目線を合わせて。

 

「そこで生まれた()()は、人間と同じ。感情であると、わたくしは考えていますわ」

 

「うぅ……」

 

「だからわたくしは堂々と、あなたに告げるのです」

 

 清清しいほどの笑みを浮かべて、代理人は言った。

 

 

 

「愛しておりますわ、ご主人様」

 

 

 

「う、あぁ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…………」

 

 母親の、姉の、恋人の温もりに包まれて、少女は泣いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すきよ……」

 

「わたくしもですわ」

 

 2人は重なる。流れ星がひとつ、煌いた。

 

 

 

 

 

 






???「ねぇ、浮気なの?」




性急すぎる……?

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