そこは、幾度も世界の終わりを迎えた場所。
一人の女性が二つの巨大な試験管の表面を撫でる。
「また、世界は終わりへと到達してしまったわね…。越えるべき年度を、今回も越えられなかった…」
女性は傍らの機械に手を伸ばす。パソコンのようなキーを軽快に叩きながら──
「とはいえ、私もこのまま諦められるほど『神様』相手に従順ではないのよ。きっとどこかに『神様』を倒す世界があると私は信じているわ」
試験管の中には男女が一人ずつ。身体にいくつもの管が繋がれていて、目は閉じられている。
「本当なら私が世界を渡りたいのだけど、私にはその素養はなかった。けれど、貴方達にはその素養が備わっていたわ。ただ死ぬだけよりは他の世界へと渡って人類が到達するはずの『未来』へ、その足を歩いていってはくれないかしら?」
試験管の二人は応えない。口元から気泡がわずかに漏れるだけ。
女性が見ていたモニターに『工程完了』の文字が表示される。次いで時間が表示された。『あと300秒』
「さて、貴方達ならきっと今度こそ『神様』を討ってくれると願うわ。私の古い古い、本当に古い勇者様はあの『神様』を追い払った本当の勇者様なのだし。貴方達にはその血が流れている。だから──きっと大丈夫」
別に備え付けられたモニターからアラートが鳴り響く。女性は一瞥するもすぐに視線を試験管に戻した。
「あら、さすがは『神様』。ようやく気がついたようね。まあ、もう遅いのだけれど…。じゃあ、ね。二人共。私の大切な──娘と息子…」
試験管が強く輝いたかと思うと試験管の中にいた二人の姿は消えていた。
遅れて女性の後方にあった扉が吹き飛び、異形が姿を現す。それは蠍のような尾を持ち、蜻蛉のようにも見え、無機質な天秤のようにも見え──到底生物には見えない異形だった。
「残念でした。私の小さな賭けは間に合ったわ。はは、アハハハハハ!『神様』!お前達に私達は絶対に屈しないわ!それは今も昔も変わらないわ!いつかきっと、あの二人がお前達を討ってくれる!私はそれを信じてる!」
異形はゆっくりと巨塊にしか見えない腕を振り上げる。
「私には素養はなかったわ。でも、あの子達がきっと神討を成すわ!だって、あの子達は──『勇者』なのだから!」
異形の腕が女性へと振り下ろされ──
───そうして、一つの世界は終わりを告げた。
☆
そこは、何も無いような世界に見えた。そこには一組の男女が浮いていた。
「いよいよ、か」
「お母、さん…」
「泣くな。これから俺達が行く場所は一緒とは限らない。でも、きっと会おう。時間軸がずれることは無いはずだ」
「…うん。時間って、どこに出るんだっけ?」
「西暦の終焉の年から少し前。ただし、幾多の世界の
「うん…。じゃあ、きっとまた会おう、兄さん」
「ああ。今度こそ、みんなで神を討つぞ」
二人の視界が白く染まる。そして、二人はそこへとたどり着く。
───全ての可能性が交差する、