BRAVE HISTORY-勇なる物語-   作:揺れる天秤

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第11話 第二次四国侵攻

 次の日。念のためにと言われた精密検査に来ていた奏はその足で通常病室へと移った友奈の見舞いに来ていた。

 

「元気そうだな、高嶋さん」

「御剣さんも元気そうですね」

「まあ、お互いにしぶといよなぁ」

 

 お互いにベッドに座り笑いながら拳を合わせた。

 

「なんていうか、拳を合わせるっていう行動はなんだかんだと勇者達と楽しくやってる気がするな」

「…だって御剣さん。あいさつする時は必ずと言っていいほど拳を向けてくるじゃないですか」

「…ああ、これもクセなんだな…」

「クセ、ですか」

「ああ。戦友達とお互いの健闘を讃える時は拳を合わせるようにしてたからな。いつの間にかクセになってたんだ」

 

 掌を見つめながら思わず懐かしさに浸っていると友奈は不安げにこちらを見つめていた。

 

「なに?」

「御剣さんってこういう時に辛そうな顔しますよね」

「まあ、な。戦友のことはほいほい思い出したくはないんだよ。なんだかんだ、妹を除けばみんな死んじまってるからな」

「…未来に帰る時ってどう帰るんですか?」

「うん?ああ。予定では神様との戦いが始まる前の時代に帰る予定だから戦友も生きているはずだよ。過去を変えるなんていう大それたことをする予定だから、もしかしたら未来に変化を生んでいる可能性はあるかもしれないけど…」

「けど…?」

「あっちは俺と一緒に戦ってきたことは頭から消え去ってるからな。覚えてるのは俺と妹だけだ」

「あっ…」

 

 しばらくお互いに沈黙する。

 

「あの、ぐんちゃんに聞きました。ぐんちゃんと杏ちゃん、タマちゃんも未来に行くって」

「ああ。大侵攻止めてからな」

「私も、行っていいですか?」

「来てくれるのは嬉しいよ。俺としても、勇者達に来てくれるのが一番頼もしいし」

「じゃあ、決まりです。みんなと同じように次の大侵攻を止められたら、未来に行きます!」

「なんというか、高嶋さんは一度行く道を決めたら一直線って感じだな」

「友奈!」

「うん?」

「友奈って呼んでください。私も御剣さんのこと、奏さんって呼びます!」

「…本当に、勇者達は一直線だよなぁ」

「…?」

 

 キョトンとした表情で首を傾げる友奈の頭を奏は全力をもって撫でる。

 

「なんでもねーよ、友奈!」

「か、かか奏さん!首が取れますっ!?」

 

 目を回している友奈を見ながらも奏は撫でる(振り回す?)ことを止めない。その顔は晴れやかに笑っていた。

 

 病室から出て、奏は病院の屋上にいた。街並みを眺めていたが、不意に病院前の庭からこちらを見上げている存在に気がついた。

 

「乃木さん…」

 

 その表情は数日前、勇者のみんなから叱責されて落ち込んでいたものとは別物だった。瞳に火が入り、何かを決意した表情からもただ立っているだけのはずなのに、覇気が漲っているように見える。

 彼女はこちらに気づいているのか、口パクで何かを言っている。

 

「『待っていてくれ』…か」

 

 彼女はゆっくりと病院の中へと入っていく。まもなくこちらへと来るのだろう。

 

「なんというか、今の彼女と対峙するのは怖いな…」

 

 扉が開き、彼女が姿を現す。ゆっくりとこちらへと歩いてくると数mの距離をあけて立ち止まる。

 

「なんていうか、見違えるな。数日前の気の抜けた風船みたいな雰囲気が完全に鳴りをひそめたようじゃないか」

「ああ。みんなに渇を入れてもらったからな。今の私は数日前とは別物だ」

「それはいいな。いつ大侵攻が来ても今の乃木さんなら負けないだろうさ」

「そう言ってくれると嬉しいな。…御剣さん、私の力は未来に必要か?」

「必要か不要かの話をすれば当然必要だ。俺から見ても乃木さんの強さは頭一つ抜けているようだし…。まあ?この前みたいにメンタル的には弱いところもあるようだけど」

「うっ…。それは、少しずつでも克服していくつもりだ」

「そうか。じゃあ、他の勇者とも約束しているんだ。次の大侵攻を止めることができたら、未来に来てほしい」

「…わかった。必ず、大侵攻を止めよう!」

「ああ。全力を賭して戦おう」

 

 お互いに不敵な笑みを交わして若葉は扉から先に出ていった。奏は一度、空を見上げ──

 

「必ず、大侵攻は止めてみせる。そのためにも…早く来いよ、愚妹が…」

 

 

 

 ★

 

 

 

 数日後。奏達は結界の中でバーテックスの侵攻を待ち構えていた。杏は樹海化している地面に地図を広げている。

 

「では、最終確認です。バーテックスのこれまでの侵攻からみて開戦初期は星屑のみが先行して攻撃してくると思われます。これを前衛担当者の三人が迎撃。後衛から私と奏さんの二人で援護します。残り一人は疲れの見え始めた前衛と順次交代です」

「基本的には杏の説明通りだが、状況次第では俺が前衛を担当する可能性もある。幸いにも今日の精霊は『風燕(シルフィード)』のため広範囲&連続攻撃に特化している。あらゆる戦況で対応できるだろうから何かあれば頼ってくれ」

 

 奏の姿は神官のような服に腰の後ろ側に小太刀が二振り、腰の両側に銃がホルスターに1丁ずつ。肩口からライフル銃の尻が見えており、両足にはピストル型のショットガンが1丁ずつ。

 

「神官っていうよりは狩人だよな」

「珠子のいう通りなんだよな。まあ、別に装備が過多だったとしてもバーテックス相手ならむしろ不足ない方がありがたいがな」

 

 全員が円を組むように肩を組み合う。

 

「この大侵攻を抑えることが今後の命運を変えるといっても過言ではない。だが、私達は敗けられない。この背に人類の明日を背負っている以上──」

 

 若葉の視線が全員と交差する。

 

「──必ず四国を護り抜くぞ!」

「「「「「オーッ!!」」」」」

 

 返事とともに最初に前衛を担当する若葉、珠子、友奈がそれぞれの配置へと飛び出していく。

 まるでこちらの準備が終わるのを待っていたかのように結界の先から星屑の大群が姿を現し始めた。

 

「始まったな…」

「予想通り、最初に星屑しか現れていませんね」

「押し切れるなら星屑だけで押し切るつもりなんだろう。こういうところはどんな神様でも変わらない。使える駒が弱くても物量が物を言うなら押し切る戦法ほど楽なものはない」

「ところで、最初の待機組に私が選ばれた理由ってあるのかしら?」

 

 鎌をくるくる回しながらウォーミングアップしている千景。

 

「ある。一番突出しやすく、疲労を厭わない若葉をサクッと交代させられるからだ」

「ああ。そう言われると納得できるわ。乃木さんは、交代を渋るかもしれないものね」

「ですけど、千景さんとは連携について話しているみたいですから、そんな相手なら若葉さんもわざわざ交代を渋ることはしませんよね」

「なるほど。わかりやすい布陣だったわね」

 

 後方から前衛の戦況を眺めているとそれぞれの戦法に個性が出ていてよくわかる。

 

 若葉は積極的に…といえば聞こえはいいが後方から見ればやや無防備に前線の他メンバーがカバーできるギリギリまで前に出て星屑を殲滅している。

 珠子は旋刃盤としての使い方をフルに発揮し、立ち位置はほとんど変えずに右へ左へと振り回し、時には引き寄せてから再度の打ち出しで倒している。

 友奈は逆手である以上接近戦になるのは仕方ない。が、若葉とは違い突出はせずに自身の割り振られた防衛ラインを割り込んできている相手を適宜倒している。

 

 この三人が討ち漏らして防衛ラインを越えてきた星屑を杏と奏が間断なく射ち落としていく。

 

「…そろそろ若葉を下がらせた方がいいな」

「そうですね。千景さん、用意は?」

「十分。むしろ待ちくたびれたわ」

 

 千景が若葉の下へと駆けていく。しばし二人で話し合うと若葉はすぐさま後方へと下がってきた。

 

「素直に下がってきたな?」

「チームで戦うと決めたのだから自分のペース配分で勝手な真似はできないだろう。千景にも怒られる」

「そうだな。とりあえず、次に交代するとするなら友奈とだ。まずは一息つけ」

「ああ。少し休ませてもらおう」

 

 若葉は後方にある開けた場所に腰を落として座る。いつでも立てるようにはしているが、目を閉じて少しでも体力を回復させるために座った。その様子を杏と奏はチラ見してお互いに笑う。

 

「あれだけ自分勝手な行動していた少し前の若葉とはえらい違いだ」

「皆さんに合わせられるだけの強さは元から持っていましたから。ちゃんと話し合えば最初からこういった戦いができたのかもしれません」

「まあ、今はできているからいいんじゃないか?」

「そうですね」

 

 討ち漏らしを倒しながら二人は前衛の疲労状況を確認しながら、適宜指示して前衛を入れ換えて戦いを継続していく。

 

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