Cランクプロダクションの日常   作:薄野

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初投稿です。色々至らないでしょうが肩の力を抜いてお楽しみください。


第一話

『アイドル』

 

華やかな衣装に身を包み歌と踊りで人々を魅了する輝きを持つ職についた人たちの事だ。

日高舞より始まったとされるアイドル戦国時代においては最もポピュラーな職業である。

そして、この物語の主人公である元Dランクアイドル斉藤信也(さいとう・しんや)

彼の所属する3110プロダクションもまた、

この時代を駆けるアイドルを世に送り出していた。

 

 

 

「――っし。一先ず目処はついたな」

 

机の書類をわきに置き小雨が降る窓を見ながら背筋を伸ばす。ぱきっ、と気持ちの良い音が響いた。

ふと腕時計を見れば現在時刻は14時20分、小さい子供であればそろそろとなったおやつの時間へとわくわくしている頃だろうか。

昼も抜きで書類を片っ端から処理していたわが身としてはおやつよりもがっつりとラーメンでも食べたい所だ。

だが、それも先ほど脇に置いたのとは逆の方向に詰まれた書類達を見れば儚い希望だと分かる。

 

我が――と、いっても俺はあくまでプロデューサーで社長は別にいるが――3110プロダクションはランクCプロダクション。

所属アイドルは6名と少数ではあるが、全員がCランク以上という実績を持ったそれなりに有名なプロダクションである。

最も、アイドル戦国時代なんて称される今日ではプロダクションなんてそれこそ雨後の筍並みに乱立しているので

ランクCプロダクションなんていうのは、それこそようやくマイナーから抜け出せたようなものであるが。

 

それでもプロダクション初のBランクアイドルとなったミステリアスな美貌と歌声を持つ高垣楓(たかがき・かえで)を筆頭に

 

今風のセンスと容姿、そしてカリスマから同世代の人気を一身に受ける城ヶ崎美嘉(じょうがさき・みか)

 

抜群のプロポーションと酪農で鍛えられた体力を発揮する及川雫(おいかわ・しずく)

 

そして熱血俺様系アイドルとして売り出し中の天ヶ瀬冬馬(あまがせ・とうま)をリーダーとし、

 

アイドル王子を異名に持つ何気にヴァィオリンが弾ける伊集院北斗(いじゅういん・ほくと)

 

アクロバット弟アイドル御手洗翔太(みたらい・しょうた)の三人ユニット『ジュピター』

 

 

以上の綺羅星達が所属する、今絶賛注目中のプロダクションと言っても過言ではないだろう。

……少々誇張が入った事は認めるが。765プロと比べるとどうしようもないという意味で。

 

 

ともあれ、我がプロは波に乗っている事は否定されないだろうプロダクションである。

 

積み上げられた書類が片付けられないなんて程に切羽詰る理由なんてないはずだが、

現状書類を片付ける手は俺と暇そうだったので電話で呼びつけた冬馬だけだ。

 

 

つまり、本来こういう事務仕事をやってくれる事務員さんというのがいないわけで。

 

 

「……人手が足りん、常識的に考えて」

「だからってアイドルに事務仕事させんじゃねぇよ! 俺オフだったんだぞてめぇ!」

 

 

ため息とともに出た言葉に、冬馬が噛み付いたのも無理は無いだろう。

オフだったのはこちらも同じなので同情はしないが。

 

 

 

 

「――で、いつこの書類地獄から抜け出す算段はつくんだ?」

「次社長が戻って来たときかな」

「つまり未定って事かよ……」

 

一先ず今日までの決済が必要な書類が全て片付いた後。

事務所の下にある自動販売機から買ってきたのであろう炭酸飲料を飲みながら冬馬が聞いてきた。

 

こちらとしても早急に事務員の募集をかけたいのは山々だが、そういった人事権を持ち合わせている社長は現在行方知れずである。 行方知れずといっても何か事件に巻き込まれているとかそういった心配は一切していない。

 

毎度の事だからだ、それでいて急に電話をかけてきたと思ったらやたら条件の良い営業の仕事を取ってきたりと本当にわけがわからない我がプロの斉藤順子(さいとう・じゅんこ)社長は今日もせっせと彼女のいう『ティン』とくる人材や仕事探しに夢中になっているのだろう、従兄弟だという高木さんと一緒に。

 

それで自分のプロダクション空けないでくださいとは何度も注進しているが一度として聞いてもらったためしは無い。

 

 

「何で俺、ここで必死に書類片付けてんだろうなぁ……俺の職業、プロデューサーのはずなんだけど」

 

「それは俺が一番言いてぇ事だ! 俺、アイドル!」

 

「事務仕事も出来るアイドルって素敵やん?」

 

「どういう売り出し方なんだよそれは!」

 

「今の時代、どんどん新しい事に挑戦していかないとな」

 

「新しいと思われる事の大半は、過去の誰かが考えて止めた事だって覚えとけ!」

 

 

俺の相手をするのに疲れたのか、冬馬は炭酸飲料をぐっと呷った。そしてちょっとむせた。

思わず笑ってしまったが、ギンッと睨まれたので笑い顔を引っ込める。

流石一流アイドルというか、整った顔をした男に睨まれると中々迫力がある。

 

「……今度ドラマとか売り込みにいってみるか?」

 

「どういう流れでその発想に至ったんだよ、こほっ。 ……ドラマだと拘束時間長めだろ、パスだ」

 

「相変わらずの現場主義というか、LIVE主義だな」

 

「アイドルだからな、歌と踊りで勝負しなくてどうすんだよ」

 

「そりゃごもっとも」

 

そう言った冬馬の言葉には自負と自信が溢れている。

量産型アイドルなんて言葉もあったりするぐらい、とりあえずアイドルを目指す子が出てきている中で

この冬馬のアイドル根性というか、プロ意識というものは珍しい。

だが、こういう意識を持った奴だけが、これから先のトップアイドル達との戦いを勝ち抜いていけるのだとも思う。

 

 

「――だからこそ、俺もプロデューサーとして全力が出せるんだけどな」

 

「あ? 何か言ったかプロデューサー? それより、何で俺以外の奴呼ばないんだよ、北斗もオフだろ」

 

「あいつ、オフの時は仕事用のケータイここに置いてんだよ。 で、プライベートの方は連絡先知らん」

 

 

中々のプレイボーイな北斗らしく、今頃はどこかの女性達に愛を囁いているだろう。

女性は皆天使と言い切る北斗ならではの休日の過ごし方とも言える。

プロダクションとしてもそういうキャラだというのは世間も理解しているので特にお咎め無しだ。

女性アイドルであればもう少し気にする所だが、まぁ男だし。

種まきのような行為をしているのであれば問題だが、そういったわけでもなくホントに遊んでくるってだけみたいだしな。

 

 

「プライベートの方の連絡先知らんとか……え、仲悪くねーよなお前ら?」

 

「いや、家近いから何かあったら家訪ねればいいんだよ。 それにオフに呼び出しかけるのも可愛そうだからな」

 

「じゃあ俺はどうなんだよ!」

 

「仕事用の方で出なかったら呼ばなかった、だが出たので遠慮しない事にした」

 

「……絶対次から出ねぇ」

 

「他にも翔太はこういうのやれる奴じゃないし、美嘉はレッスン。 雫は酪農のCM撮りだし……ぶっちゃけマジ感謝してるぞ冬馬。

 この後二人の迎えもあるから」

 

「このプロダクションカツカツすぎんだろ……楓さんはどうなんだよ」

 

「あの人自分の分終わらせた後ずっとこっち見て頬ツンツンしてくるから……その後で『さびしいので構ってください』って言ってくるし」

 

 

楓さん、飽きもせずにずっとやってくるんだよな……横で温泉雑誌広げながら。

仕事自体は終わっていて、こっちの仕事は終わってないのでどうにも無視して続けるより他がないのだが、ちょうど開いてた所が実家の近くで実際評判が良かったので薦めてみたら俺が案内する事になってたし。

まぁ、楓さんとオフが被ることはまずないのでその約束がいつ履行されるかは神のみぞ知るところであるが。

 

 

「あー……あの人ならやりそうだな」

 

苦笑いする冬馬からも楓さんが如何に不思議系な女性なのかという事が分かる。

謎の電波を受信している感じの不思議系ではなくて、こう……ミステリアスな女性の色気も持ち合わせている。

それが高垣楓というBランクアイドルだ。 中身は少々ダジャレ好きな女性と少々残念でも。

 

だが、アイドルとしての力量は本物だ。

歌唱力と自身の持つ雰囲気とを歌に混ぜてステージを演出する表現力はなったばかりのBランクにおいても……いや、

たとえトップアイドルたちのいるAランクであっても随一のものだと思う。

冬馬さえ、そこは認めているからこその楓さん呼びなんだろう。

 

 

「ま、そういうわけであと少し付き合ってくれ。 その後でついでだしちょっと打ち合わせもやっていいか?」

 

「……まぁ、オフつぶれたのは午後だけだったしな。 この書類だって俺らのステージの資料まとめとかだし、ここまでやってんだから最後まで付き合ってやろうじゃねえか」

 

「お、冬馬がデレた」

 

「デレてねぇよ! で、打ち合わせってなんだよ」

 

ずいっ、と近寄ってくる冬馬。終わった後でだというのに、やはり自分達の仕事に関係するからだろうか

先ほどまでの疲れ顔から真剣な顔に早代わりする。

 

「今度のステージ、入りでバイク使って登場ってのはどうかって演出から来てるんだけど」

 

冬馬たちジュピターは基本的に女性向けの歌唄いである。

だからこそ、ステージ演出は女性受けするような類が多くなるものなのだが……

 

「バイク? 俺と北斗は免許持ってるが、翔太はどうすんだよ」

 

「どっちかと二人乗りでって話だけど、それなら普通にスモーク炊いて唄いながらでいいと思うんだよなぁ、これだと翔太のアピールが弱くなりそうでさ」

 

「それなら後でフリーのダンス部分作ってそこで目立たせてやればいいじゃねぇか。 最も、俺が一番目立つだろうけどな」

 

「それをやるとまた曲の繋ぎが問題になるんだよ……現状長時間のライブだとカバーに頼ってるから」

 

「だったらこうすれば……」

「それならもっとこうしたほうが……」

 

 

 

 

 

――――結局、軽くなんて出来ずに真剣に話し合った。

そしてその結果、迎えに行くのが遅れてふくれ顔の美嘉と苦笑いの雫にひたすら謝ることになったのは、

時間厳守が出来なかった自分への罰として受け止めよう。

 





モバマスお気に入りの子達の可愛いがやりたかったのに気が付いたら冬馬と駄弁って終わっていた。な、なにを(ry
アイドル戦国時代だから多分Cランクアイドルはかなりの数いると思うので、
3110プロの知名度は高垣楓の所属している所とか、そんな感じ。
ジュピターは961社長の前に3110社長がティンときて確保され、下積みやってる間に765プロがトップに立ったという設定。
大体アイマスSPからのデレマスに繋がった世界観だと思ってくれれば幸いです。
つまりあずささんは人妻。
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