Cランクプロダクションの日常   作:薄野

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なぜCuアイドルがいないかというと、作者の事務所にいるSR縛りだから。
……しまむらさんほしぃ。


第三話

 

 

――我が3110プロダクションにおいて最も有名なアイドルを挙げよ。

 

 

そう問われた場合、現状では高垣楓一択だろう事は容易に想像できる。

何故現状なんて頭につけてるのかと問われれば、そうしないと冬馬がすねるからだ。

だが、あいつの向上心というか才能自体はそれを一笑の元で切り捨てるようなものではなく可能だとプロデューサーとしては思う。

 

 

とはいえ、それはあくまで未来での話。

現状ランクCアイドルを五人抱えているとはいえ、やはり知名度という意味ではランクBアイドルの高垣楓には誰も及ばない。

楓さんの碧と蒼のオッドアイと女性としては高身長でスレンダーな体型は彼女自身が持つミステリアスな雰囲気を高め他の追随を許さず。

また楓さんと俺とで口説き落とした有名作曲家に直に書き下ろしてもらったデビューシングル「こいかぜ」は新人アイドルの売り上げとしては歴代四位についている。

アンチなどからは『アイドルらしからぬ』なんて評価をうけるデビューシングルだが、そもそも元がモデル経験のある彼女なのだ。

キュートな元気さで売っていく正統派アイドルではないなら、彼女の持ち味を最大限に生かすプロデュースをするのがフロデューサーというものだろう。

 

 

――とまぁ、最大限俺の知る楓さんを持ち上げてみたが。

 

 

「ぷろでゅーさー、花恋慕まだですか~」

「楓さん、貴方の横に転がっている一升瓶が恋の果てですよ」

「う~ん、酔った楓ちゃんもキュートだね☆」

 

 

居酒屋でぐでんぐでんになっている所を目の前にして持ち上げてみても空しいだけであった。

あと北斗、一応その人年上だから。俺と同い年だから、全く見えないけど。

 

 

 

 

先日の特典付きCDが無事に販売され、オリコンチャート6位入賞のお祝いが行われた。

今回のCDにはそれぞれのアイドルが持つファンの共有という狙いがあった為に、この入賞は非常に販売を考える俺としてはありがたい事だった。

 

普通、アイドルプロダクションというのは男性アイドルか女性アイドル、どちらかに絞って売りに出す。

これは男性と女性とで獲得するファン層が全く変わってくる為に、会社としてもどちらかに絞った方がこの先を考えるとノウハウが溜まりやすいからだ。

 

ウチのプロダクションも社長と俺がプロデューサー兼任であった頃は女性アイドルに絞って売りに出していた。

 

と、いってもその頃は雫しかアイドルはいなかったし、ほとんど下積みの営業とレッスン回しでそもそも碌にアイドル活動なんてしてなかったのだけど。

 

それから社長が冬馬を拾ってきた為に、男性アイドルの売り出し方を考えるにあたって()()()()()()()()になってみたりしたから、ウチは両方の売り出し方を持つプロダクションとなったのだ。

そして、それが持つ大きな効果がプロダクションでまとめたCDを出す際ファンの共有なのだ。

これにはアイドル戦国時代において急激に普及したカラオケの効果を考えた上での事だったりする。

 

いくら熱心に異性のアイドルのおっかけをしていたとしても、カラオケで歌うのはキーの合う同姓の曲だろう。

そこで同じプロダクションのアイドルの曲を、こうした合同CDに収録すれば……一つでも気に入ってくれたならその子は潜在的なファンとなり、カラオケでその歌を歌ってくれるだろう。

もしかしたら次のCDを買ってくれる客に変わるかもしれない、そういう効果を見越した上でのプロダクションCDだったのだ。

 

と、6位で喜んでいいのかなーという顔をしていた翔太、美嘉、冬馬―こいつだけは喜んじゃいけねぇって感じだったが―に説明すると納得して共に喜んでくれた。

 

そうして全員納得したところで祝勝会と相成ったわけだ、例の如く社長不在だったわけだが。

とはいえ、未成年だらけの祝勝会なのでチキンやピザなどは注文してもお酒の類は無しでお茶やジュースでの乾杯。

ついでに家族でも祝いたいのと門限の事ともあって午後八時には解散となった。

そして、飲み足りない様子の楓さんとこれまたノリが良い北斗とで二次会としゃれ込んだわけである。

……美嘉と翔太はぶーたれそうだけどな。お前等が大人になったら散々に連れまわしてやるから覚悟しとけ。

 

 

 

そして居酒屋でお酒解禁による楓さん無双が始まったわけだが……最初に言っておくと俺はザルだ。

一度お正月でもらった樽の米酒を一日で飲み干してもほろ酔い程度ですんだという記憶がある。

 

また、北斗は自分がどこまでなら酔わないのかというラインをしっかりと見極めている。

これは普段天使達と遊んでいる時に覚えたのだと北斗から聞いた。

実際アイドルやっている北斗が泥酔して何か問題行動起こされると一気にジュピターごと干されてしまうのでありがたいスキルだ。

 

となると、問題は楓さんなわけだが……彼女も強い。強いことは強いんだが酔うのは一瞬だったりする。

なので、こうしてちょっとアイドルとしてどうなの? といった感じになっているのも仕方の無い事だったりするのかもしれない。

ちなみに現状の楓さんは一升瓶を体育座りの足で挟んで左右にぶらぶらしている、どこに出しても恥ずかしい酔っ払いスタイルだ。

 

 

「ぷろでゅーさー、焼酎、うぉんちゅー……ふふっ」

「「…………」」

 

 

やはりこの人の中身はただのおっさんのようである。北斗と顔を見合わせて苦笑した。

 

 

 

「じゃあ、また明日事務所で……、チャオ☆」

「あぁ、また明日な、北斗……じゃ、楓さん帰りますよ」

「ふふっ、りょーかいですぷろでゅーさー殿」

「……微妙に酔ってるのか酔ってないのか分かりづらいんだよなぁ」

 

 

 

時刻は23時、そろそろ明日に響く時間になってきたので解散という事になった。

が、問題になるのは酔っ払った楓さんを誰が送るかという事だが、そもそも北斗が楓さんの家を知らなかったので俺という事に。

 

地味に家が反対方向なのでタクシー呼んで乗せてで終わりたいけど、万が一を考えると最後まで付いていくべきだというのは分かる。

分かるのだが……

 

 

「すいません、肩は貸すので歩いてくれませんかね楓さん」

「や、です。寒いので」

 

背負って帰ることになる理由だけはどうにも分からなかった。

というよりお酒でぽかぽかしてるでしょうよ楓さん、そんな酔ってるんだから。

 

 

 

 

「なんだか、小説やドラマの登場人物みたいです、私達」

 

 

 

北斗と別れて五分ほど、楓さんを背負ってとことこと歩いていると不意に楓さんが呟いた。

 

――――真夜中の都会を女性を背負って家に帰る。しかも女性は美人とくればそれこそ昔のドラマのワンシーンのようで風情があっただろう。

気温の低い真冬だから、俺の息と右肩からあがる楓さんの息とが白く染まって混じる光景はまさしくそんな感じだろう。

普段の俺なら考えないような事だが、後ろに感じる暖かさと柔らかさが俺を変えているのだと思う。

 

 

「まぁ、その吐く息の酒臭さで否応無しに現実に戻されますけどね」

「むぅ、ぷろでゅーさーにはロマンが足りません」

「そういう楓さんには乙女力が足りません、お酒臭いヒロインなんて斬新すぎて売れませんよ」

「新しいと、思います」

「斬新さと売れる事とに因果関係はありませんよ」

 

 

どこかでやったようなやり取りだが、真夜中の何も聞こえない自販機と街灯の光だけが照らす道では新鮮に思える。

思えばこうして楓さんを送るというのも久しぶりだからか、何気ないやりとりでもどこか面白みがある――やっぱ、少し酔っているな。

美人を肴にして飲んだお酒なのだ、普段よりも酔いが回ることだってあるのだろう。

楓さん本人には口が裂けても言わないが。生憎、事務所での俺はそういうキャラではないからだ、北斗なら似合いそうだけど。

 

 

そうして談笑しながら楓さんを送る途中、不意に楓さんがぎゅっと俺の首に回した腕に力を入れた。

 

 

「プロデューサー……」

 

先ほどまでの酔って呂律が回っていない感じから外れて、その声はしっかりしていた。

 

「なんですか?」

 

「私、Bランクアイドルになりました」

 

「知ってます、おめでとう」

 

「むぅ、プロデューサー冷たいです。もっと喜んでくれてもいいじゃないですか」

 

「三週間も前の話ですからね。むしろ事務所皆で祝ったときより喜べって言うほうが無茶があるかと」

 

「それでも、プロデューサーなら喜ばないとダメです。 はい、やりなおし」

 

「無茶苦茶いいますね楓さん」

 

やっぱまだこの人酔っているんじゃなかろうか。

 

「プロデューサーが見初めてくれた時から、遠慮しないって決めてますから」

 

「元から遠慮なかった気がしますけど……と、いうかその言い回しやめましょう、凄い誤解生みそうです」

 

「ふふっ……でも、見初めてくれたのはホントですよね。モデルの経験があっただけの、世間知らずな私をあんなに求めてくれた。

 

 ――キミと、世界を変えたい。

 

 そんな事を言ってくれたのは、プロデューサーだけでしたよ」

 

「~っ! 当時は自分で作詞作曲やってたからどうしてもそういう言い回しがですね……!」

 

くそっ、ここでそれを持ってくるとわ……一気に顔が赤くなるのが分かる。

楓さんをスカウトしたのはちょうど俺が大体の男性アイドルとしてのノウハウを学んで引退する頃だったので、ちょっとイタい言動をしていた時期なのだ。

冬馬や北斗のようにイケメンオーラが無いからスベっていると気付いたのは引退後だったけど……雫も社長も何も言ってくれないんだよなぁ。

 

 

「それでも、その言葉に惹かれたから……今の私があります」

 

囁くようで透き通った言葉が、右肩から頭へ伝わる。

 

「だから、多分。私はプロデューサーで出来ているんです、なので、遠慮はしません」

 

――――貴方と世界を変えたいから。

 

そういう彼女の声は、普段と、いつものように親父ギャグをいう声音と変わらないようでいて。

俺の心にすっと染みるようだった。

 

「……さいですか」

 

だから、こんな気の利かない返事でも返せただけ行幸なんだと思う。

きっと俺は彼女に返す言葉を必死に探して、真っ赤な顔をしていただろうから。





いちゃいちゃさせたいからある程度既に大成している設定にしてますが、逆にそれが足を引っ張っているような。
ぶつぎり気味なので次回あたり楓さんスカウトの場面やりたい。予定は未定だけど。
そして何気に主人公は有能です、アイドル当時は自作の歌一本でランクDまで来ました。
ビジュアルとダンスがアイドルとしての最低値だから、というのもありますが。
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