――我が3110プロダクションは珍しい男女両方のアイドルが所属するプロダクションである。
勿論いないわけじゃないが、それでも全員がランクC以上のアイドルしかいないというのはウチぐらいじゃないだろうか。
……アイドルの濃さもあるだろうけどな、ファン層被らないんだもん。
ファン層が被らないというのは言い方を変えればファン一人に対しての売り上げ数依存が薄いという事で勿論メリットだ。
メリットではあるんだが…………
「……こういう時には、逆に困る事になるんだよなぁ」
頭をかきながらチラッと事務所にあるカレンダーを見ても、日付が変わるわけでも無し。
プロダクション所属アイドル全員によるファン感謝祭、その開催日が一ヵ月後に迫っていた。
まだ、トップバッターさえ決まっていないのにである。
「と、いうわけでもうお前達に投げちゃった方がいいんじゃないかなーって思ってきたわけだが」
「プロデューサー、疲れてるんですよ……膝、使いますー?」
「サンキュー雫、でも多分膝借りても俺逆に興奮しそうだから」
んー?と首を傾げる雫だが、正直最近になって分かってきた事だがこの子自分の身体の破壊力に無頓着だ。
想像してみて欲しい、バスト三桁の子に膝枕された所を。
明らかに眠るとかよりもその膝に頭を置いた状態で雫の顔が見れるのかどうかという事に興味がいって仕方ないだろう。
突き出るように自己主張するそれは今日も健在である、ありがたやありがたや。
ちなみに俺は別段巨乳派でも貧乳派でもない。薄かろうが厚かろうがアピールポイントに出来るからだ。
例えば貧乳は短所といえるかもしれないが、それは逆に言えばスレンダーでダンサブルな印象を与える事が出来る。
逆に巨乳というのは身体のラインを嫌でも上げてしまう為に太く見られる危険性だってあるのだ、実際標準より痩せていたとしても。
長所は言い換えれば短所になりえる、その逆もしかりというわけだ。ンッンー、名言だなこれは。
って、今はそこはどうでもいい。早急にトップバッターを決めないといけないのだ。
何せ一ヵ月後には本番である、通し稽古をせめて三週間前にはやれる体制が理想だがそんな状態ではない。
割とマズイのだ、現状は。
「かといって、トップバッターの配置は重要なんだよな……」
「そんなに大事なんですかー? 私たちの所だと楓さんがランクBですし、やってもらうのが一番なんじゃ」
「そういうわけにもいかないんだな、これが。楓さんの曲は基本的にあの人の歌唱力があってのものばかりだから、会場を暖めるって感じじゃない」
「あー……じっくり聞き入る感じですものねー」
「そ、だから中盤か終盤に入れたいわけよ。 まぁここで一回限りでどっかのカバーってのも考えないでもないけどなぁ……」
費用対効果というか、そういう風に一回限りで曲を借りる、または使用権を手に入れられるほどのプロダクションではない。
他のCランクプロダクションと比べれば格段と儲かっているほうだが、ウチはまだ新興事務所である為に横の繋がりが無い。
つまり、他事務所との交流は少ないのだ……ぼっちってわけではないけど。
まぁ、何かしらのカバーやりたかったらそれこそCDのボーナストラック扱いとかで出さないと駄目なのである。
「そういうわけで楓さんはパス。 次に人気有るのは雫、キミになる」
「おーっ! 頑張りますよー!」
「……が、これもパスだ。 雫は二番手か三番手、その前後にジュピターを入れないと駄目だ」
ずるっ、とやる気を出して右手を空に突き出した雫が前のめりになった。
なるほど、以前のパラエティ番組の感覚がまだ抜け切ってないと見える。別にいいことなんだけど。
ちなみにその回の視聴率はしっかり上がっていた、俺も見てた。
「な、なんでですかー?」
「簡単に言えばファン層の偏りだ」
「でも、3110プロは男女ファンが同じくらいいるんじゃなかったでしたっけー? プロデューサーさんが珍しいって言ってた覚えがありますよー?」
「総ファン数はな。でも個人個人についているファンはがっつり偏ってんのさ、そして雫のファンはほぼ10割男だ」
そのほぼの原因だって棟方愛海っていうウチの女性アイドル全員にファンレター出してる人だしな……
「えーとー……つまり私だと女性のファンさんが盛り上がらないって事ですかー」
「平たく言えばね。まぁ合同ライブだからそこら辺は盛り込み済みだとは思うけど、どうせなら最初から盛り上がって欲しいしな……」
「ですねー……ちなみに、ジュピターさんが前後に入るのは」
「そういう事、あっちは女性10割なわけ……冬馬なんかは男性ファンも少しいるけどな、主にバラエティでの楓さんと美嘉のおかげで」
「突っ込み役ですものねー」
「突っ込まれ役がそういってやるなよ、雫」
まぁ、それでも俺様系キャラがあまりブレていないのは当人のカリスマなのだろう。
バラエティといえば、話題を振られたときに楓さんが俺の話をして焦った事もあったな。
一応俺も元アイドルだから名前を出して大丈夫とはいえ、画面の下に注釈のように俺の顔写真が出てくるのは変な気分だ。
それからトークで詰まったときなんかに話す話題で俺の名前をぽんぽん出すようになったウチのプロ所属アイドル、お前らそれでいいのか。
確かに、面白い話っていうのは俺、というかプロダクション皆が揃っている時に起こっているが……
絶対何割かは俺が番組見てる時に『何かこれ遺影みたいでいやだよなぁ』と漏らしたのを聞いたのが原因だと思う。
と、それは閑話休題。今考える事じゃない。
「あ、でもそれだともう美嘉ちゃんが一番やるしかないんじゃー?」
「まぁ、そうなるよなぁ……一応さっきからファンレター漁ってみてるけど、大体6:4で女性ファンってとこだし」
「おおー! 美嘉ちゃん凄いですねぇー、じゃあ決定ですかー」
「と、すぐやれない理由もあってなぁ……最近美嘉はモデル系統の営業を重点的にやってたから曲が『減衰』入ってるんだよ」
この世界、アイドル戦国時代において歌は非常に溢れている。
つまり、供給量がものすごいのでどんどんと新しい曲を作って出していくのが基本的なアイドルの売り出し方だ。
逆に、ずっと同じ曲で頑張っていてもある週を過ぎれば一気に売り上げが落ちる。それが先ほどいった減衰というやつだ。
この現象には正確な名前がついていないが、そのアイドルが唄う曲に飽きる期間が大体そのくらいだという。
「なまじ歌に絞らなくても売れる下地を美嘉は持ってたからなぁ……その後に繋げようと顔出しを重視しすぎたのが失敗だったか」
「私の地元でも美嘉ちゃんの真似してる女の子いっぱいですよー」
「美嘉のあの着こなしはアイツ並にスタイル整ってないとキツいと思うけど……でも顔は売れてて失敗じゃないのは嬉しいかぁ」
顔に手を当てて背伸びをする、ぎぃっと椅子の背もたれが音を立てた。
Cランクアイドルだってのに真似をしてる子が出てくるくらいには顔が売れたのは十分以上に成功だけど、今の状況だと失敗だ。
「減衰始まっているから今出してる曲は使えない、けれども美嘉はそもそも一曲しか出していない。つまり……」
「美嘉ちゃんが一番だったら、新しい曲の必要があるって事ですねー」
「そういう事、とはいえかなり美嘉に負担をかける事になるしどうしたものかと……」
「んー……プロデューサーさん、気に掛かっているのはそこなんですかー?」
「ん?」
何とか負担が掛からないような策がないかと考えていると、少し前かがみになりながら雫が聞いて来た。
胸が揺れたが、以前の用にブラチラとかがない限りはこっちもあまり気にならなくなってきた。
こうして何か他の事を考えているときに限りだが。
「そりゃ俺の売り出しミスみたいなもんだしそれで美嘉に負担かけるのはさ、なんというか、違うんじゃないか?」
「それなら、大丈夫だと思いますよー」
「いや、雫が大丈夫だって言ってもさ」
「きっと、美嘉ちゃんもそう言いますよー、ジュピターのみなさんだって楓さんだって私と同じだと思いますー」
「……ちなみに何を根拠に?」
「だってプロデューサー、美嘉ちゃんに負担をかける事を嫌ってほかの事を考えてるんですよねー?」
「そうだけど……」
そこで、すっと俺の口に雫の人差し指が当てられる。
いつの間にか雫は席を立って俺の目の前まで来ていた、そしてその顔はいつもと同じく笑顔で。
「――
「つまり、美嘉ちゃんが一月で新曲を仕上げられるかどうかを問題には上げていないのですー。それが美嘉ちゃんには負担をかけてしまっても、出来るって信じているわけですよー」
「出来るんだってプロデューサーが信じてくれてるのだから、私たちはやるだけなんですよー」
ふふふーと笑う雫……その可愛さに顔が赤くなりそうだが、ふと考えてみれば確かにそうだった。
普通、レコーディングにしたって一ヶ月よりも前から歌と曲が出来上がっている状態で完成に持っていくものだ。
今回の様に何も無いけどあと一ヶ月で完成させますなんていうのはかなりの暴挙のはずである。
なのに俺は、何の疑問も持たずに美嘉がそれが出来ると、負担はかけるだろうが逆に言えば負担をかける程度で出来るのだと考えていた。
……なんというか。随分と自分が育てているアイドルに対して俺は自信家のようだ。
「あぁ、そうだな……でも無理そうならちゃんと言えよ、俺もちょっとアイドル達を信頼しずきてたみたいだし」
「そのまま信頼してくれてていいんですよー?」
「信用は変わらずだよ、でも雫たちに信頼しすぎんのもプロデューサーとしてどうかと思ったんだよ」
つまりは彼女は出来ると思う事と彼女なら出来ると頼る事なら、後者はプロデューサーとしては情けないだろう。
「じゃ、美嘉にはこっちから言っておくよ……雫」
「なんですかー?」
「サンキューな」
「また今度、牧場を手伝ってくれたらいいですよー」
「う、結構きついんだけどな……了解、後ついでにご両親との面談もやらないとな」
「そうですねー♪ お父さんもお母さんも喜ぶと思いますー」
「???」
最後の雫の一言は良く分からなかったが、雫と話して色々やる事は出来た。
まずは……無理がききそうな作曲家と作詞家の先生探しかな。
雫「今度プロデューサーさんと両親に挨拶に行きますー」
姉「ちょっ!? そ、そそそれって……!」
楓「あら……私も付いていっても大丈夫?」
雫「はいー、牛さんたちと一緒に歓迎しますよーっ!」
多分こういうやり取りがあった。そして内心焦った楓さんとかいいと思います。
驚異の三桁胸囲の及川さん、薄野が唯一上位報酬として持ってる人です、コロッセオクイーン。
流石に一枚取りが限界だったんですけど、フリトレにて無事特訓出来ました。
そしてフレデリカーと森久保ォ!が登場可能になりましたがどうなるかは全く分かりません。
両方魅力的ですよねー……キャラ的に。