元柱で現上弦な鬼殺隊士のお話   作:揚げ物・鉄火

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今年最後の投稿です。
今回は、戦闘シーン無し。ひたすら喋るだけの回です。
輪廻さんは、煽りの呼吸を使えるのでひたすら黒死牟を煽っています。
個人的には黒死牟は、縁壱さんの事で煽られると怒るイメージがします。
あとちょっとだけ口調が変になってると思います。

それでは、どうぞ。ごゆっくり!


第十話

「…乾杯」

「ふん…」

私が手に持つ酒の入った盃を持ち上げると上弦の壱である黒死牟も盃を持ち上げた。

酒の席でこの行為は、始まりを意味する…らしい。

 

取り敢えず飲み会(?)が始まったので狐のお面を外し盃を傾けて酒を少しだけ口に含める。

水のように透き通った清酒を口の中で味わう。

果物とは一味違う米特有の甘味。鼻腔を刺激する酒特有の香り。

そして喉に流し込むと同時に感じる清酒のコクと喉の奥を刺激するような辛味。

最後に胃から身体全体に広がる心地良い熱さ。体の内側から熱を発して行き、その熱が脳天まで到達してから一つ息を吐く。

「ふぅ…」

 

美味い。

この一言に尽きる。

お酒に詳しい人やお酒の味を知っている人だったら、もっと気の利いた感想を残せるだろうが生憎私はそこまで詳しくない。

柱時代に月を観ながらお酒を飲むか、柱合会議の後で他の柱達にお酌して貰いながら飲んだのが精々だ。

それも月に一度あるかないか程度の周期(ペース)で飲み、出張任務の終わりにその土地の酒場に行って嗜む程度に飲んでいたが昔の話だ。

 

「ふむ…悪くない…」

「そうですか?それは良かった」

黒死牟さんの呟きに反応して答えた。

 

「………」

黒死牟さんがこちらを一瞥してから盃に残っていた酒を全て喉に流し込み口を開く。

 

「それで…貴様の…目的は…なんだ?」

「目的ねぇ…」

目的と聞かれても正直返答に困る。

死ぬ前にやりたい事がいっぱいあるし出来れば結婚もしたい。

結婚して妊娠して子供を産んで幸せな家庭を築きたい。

他には、‟ぷりんあらもーど„とか言うハイカラな食べ物も食べてみたいし若様…じゃなかった。お館様と久しぶりにお茶を飲みながら楽しく談笑したい。後は…

 

「貴様はなぜ…鬼でありながら…鬼狩りの…味方をする?」

死ぬ前にやりたい事を考えていたらもう一度を質問してきた。今度の質問は、なぜ鬼でありながら鬼狩り…即ち鬼殺隊の味方をするかを聞いて来た。

 

「何故って言われてもねぇ…私が鬼殺隊の元柱だったから?とかじゃあ駄目かな?」

「それが…理由では…無いだろ?…本当の…理由は…なんだ?」

元柱だから…確かにこれが理由とは思えない。説明できないが体の内側で何か違和感を感じる。

 

う~ん、理由?

そう言えば私が鬼殺隊に入った理由ってなんだっけ?

確か…猗堝座を自分の手で倒す事だったけど今となってはその目的も達成された。

じゃあ柱だった頃に決めた目標は?変わらず猗堝座を倒す事だ。

それが終わったら何をしようとしていたんだっけ?確か…結婚したかった。

結婚する理由は?普通に女としての幸せを得るため。だが…果たして女としての幸せはそれだけか?他にももっとあるだろう。

じゃあ今の私が鬼殺隊に味方する理由は?縁壱さんに協力するため…じゃないし、鬼を皆殺しにするため?でもない。

理由、理由…理由。そうだ!思い出した!私が鬼殺隊に味方する理由は…

 

「私を鬼にした全ての鬼の首魁である鬼無辻 無惨の頸をこの手で撥ねるためかしら?」

「ほう?せっかく…鬼に…成れた…のにか?」

私の答えに黒死牟さんが見当違いの質問をしてくる。

その質問に対して内心笑いながら空になった盃に酒瓶から酒を注ぎ足した。

「せっかく鬼に成れた~、とか言ってますけど、私は別に成りたくて鬼に成った訳じゃないですからね?鬼無辻に無理矢理血を注入されて強制的に上弦の弐に成っただけだから、あいつに忠誠を誓う気も従う理由や協力する理由が一切見当たりません。殺すべき理由は、すぐに見つかりましたけど」

「……」

一呼吸でそこまで言い切ると黒死牟さんが六つの目を開いて驚愕の表情を浮かべていた。

 

その表情(かお)を酒の肴に盃に新たに注ぎ足した酒を一気に煽る。

やっぱり自分より上の者や強者の驚いた顔を肴にして飲む酒は格別に美味い。

10年位前に槇寿郎さんに「相手を見下し泣かせて絶望させてから、その表情を酒の肴にする奴より(たち)が悪い」って言われたけど相手は鬼だ。遠慮無く酒の肴にさせて貰おう。

 

「無理矢理…だと?」

まるで有り得ない事を聞いたように戸惑いを隠せない黒死牟さん。

「ええ、そうですよ。あれ?もしかして…」

 

「自分から進んで鬼に成ったんですか?」

「…っ!!」

私の質問に唇をギリィと噛み締め僅かに口から血を垂らした。

(あぁ、その表情も堪らなく愛おしい。自分が長い間積み上げて来た物を別のヤツにあっさりと抜かれたと理解した時の表情…更に追い詰めに追い詰めて私だけに依存させたい。私なしで生きられない状態にしてやりたい)

「それで?どうなんですか?」

思考が完全に暴走する前に空の盃に酒を注ぎながらもう一度質問を投げかけた。

 

「私は…自分の意志で…鬼に成った…全ては…弟を…縁壱を…超えるため…。そのために…地位を…名誉を…家族を…仲間を…全て捨てた」

「それで?超えられたんですか?己の技以外を全て捨ててまで貴方の弟を超えられたんですか?」

苦悶の表情を浮かべて自分が捨てた物を語った。その上でさらに質問した。

「………無理だった」

「へぇ…?」

予想通りの答えに納得も驚きもせず、興味がないような反応を示した。

こうすれば相手が勝手に続きを話すと天元くんに教わった。まさか上弦の壱を相手に使うなんて思わなかった。

そして案の定、聞いてもいない事をベラベラと語り始めた。

 

「私と縁壱は…双子だった…武家の家系に…双子が生まれると…縁起が悪い…特に縁壱は…生まれつき…額に炎のような…痣が有った…縁壱はそれで…忌み子として…扱われた。…父は縁壱を…殺そうとしたが…母が猛反対した。結局…十歳になったら…寺に出す…という条件で…生きる事を許された。その後は…物置のような…三畳の部屋で…軟禁生活を…送っていた。私はそれを…哀れんで双六や…凧揚げ等の…遊びを教え…手作りの笛を作った。それが父に気づかれ…頬を殴られた。さらにそれが原因で…父と母が喧嘩した…だが我ら兄弟の…交流は続いた。そしてある日…私の剣の指南役だった男が…戯れで縁壱を…稽古に誘った。私は止めようとした。私ですら…今まで一太刀も…浴びせる事が出来なかったからだ。しかし縁壱は…いとも簡単に指南役の男を…目に見えぬ速度の…攻撃で三太刀食らわせた。その出来事をキッカケに…我々の立場が…逆転した。私は物置小屋のような部屋に…閉じ込められ…縁壱は私が今まで…受けていた待遇を受けた。それからしばらくして…母が病で死んだ。これを契機に…縁壱は継国家を去った。しかし去る直前…「いただいたこの笛を兄上だと思い、それだけ離れていても挫けず、日々精進致します」と言って…何処かへと立ち去った。それ以降…私の前に現れなかった」

そこで一旦話すのを止めて盃を傾け酒を煽る。

 

「それでそれで?その後はどうなったんですか?」

「うむ…」

中身が少なくなってきた酒瓶から酒を注ぎながら続きを話すように促すと、一つ頷き酒を一口だけ飲んでから口を開き説明を続ける。

「その後…私は成長し…家督を継ぎ…立派な武将として…戦場で華々しい…戦果を築いた。しかし…私の率いる部下…たちは一匹の鬼を…相手に全滅した。そこで私を助けたのが…鬼狩り、鬼殺隊に入った…縁壱だった。思いも依らぬ…再開だった。鬼を狩る(すべ)を持った…鬼狩りの力を得るため…私も鬼殺隊に入った。そこで縁壱に呼吸法を…教わり柱にまで…登り詰めた。私と縁壱は…鬼殺隊士として活躍した。向かう所敵なしだった…痣を発現し…透き通る世界にも入門した…。『天の呼吸』を作った男にも…修行を付けた。…だが痣が発現した代償として…25歳までしか生きられないと…知った私は絶望し同時に考え始めた。「このまま私の剣の道を途絶えさせて良いのか?このままでは私は何も残せず死んでしまってもいいのだろうか?縁壱に全く近づけずに死んでしまう」そう考えたら…何もかもがどうでも良くなった。その時期に無惨様に出会った…無惨様は…私に鬼に成れば…悠久の時を生き…無限の時間を使い…修行が出来ると…言って下さった。そうすればいつの日か…縁壱を超えられる…と思った…私はそれを受け入れ…鬼に成った…鬼に成ってから…修行を続けさらなる力を得た。自分でも…自覚出来る程に…強くなった…そう思っていた」

「思ってた?」

「ああ…ある赤い月の夜だった。信じられぬ物を見た。(よわい)八十を超す枯れ木のような老体。それでも尚…全盛期以上の覇気を纏っている縁壱に出会った。私は一切油断せず…殺す気で刀を構えていた…が、一瞬で頸を斬られた。瞬時に後退出来なければ…完全に負けていた。あと一太刀…追撃が入ったら…私の負けだった…だが丁度その時…縁壱は寿命を迎えて死んだ。結局一度も…縁壱に勝てないまま…終わった。縁壱の亡骸を斬った…脆かった。死んだ男に勝っても…なんの意味も無い…何一つ縁壱に勝てず…我々の勝負は終わった。私は…何も残せなかった…縁壱は…己の想いと意志を残し…初代天柱は…己の技術を残した…私は…全てを捨てても…あいつのようになれなかった…私はただ…あいつを…縁壱を…越えたかった。…いや…少し違う…私は…縁壱…お前に成りたかったんだ」

黒死牟さんが離し終えるのを待ってから、盃を傾け残っていた酒を飲み干して口を開いた。

「黒死牟さん…貴方の行動は、捨てたじゃなくて逃げたって言うんですよ?」

「何…?」

私の言葉に黒死牟が睨みながら盃を置いた。

 

「だってそうでしょ?努力しても埋められない差があるなら更に努力すれば良いだけ。貴方の弟は自分よりも才能があった、けど貴方はそれを才能の差として諦めた。痣が発現する代償も克服不可能なら潔く諦めて私のご先祖様みたいに自分の技術を、剣技を後世に残すため何冊もの書物を書き残し己の持つ知識、技術、剣技、全てを残し私の代まで繋がりました。弟の方が才能があると言いましたがそれは私も同じです。私も弟の方が天の呼吸への適正が高かったです。ですが努力でそれを補って、正式な天の呼吸の35代目継承者になりました。努力は実を結ぶって言葉知ってますか?努力すれば必死に努力すればいつの日かそれが為になるって意味ですよ。貴方も努力をしたかも知れません。だけど努力が足りなかったって事ですよ。時間が無いなら無いなりに工夫して何かを残せばよかったのではないでしょうか?まぁ、何よりも…」

ひたすら持論を語り終えて酒瓶の中身を全て盃に入れてから黒死牟さんを指差す。

 

「ねぇ黒死牟さん。貴方………長男の癖に我慢出来なかったんですか?」

「っっっ!!?」

煽りを含めた質問を投げかけた瞬間、私の盃を持つ右腕が斬り飛ばされた。

人間態で斬り飛ばされた右手の盃から酒が地面に零れて地面に染み込む。

「結構痛いですね…」

「抜け…」

「は?」

「刀を抜けと言っている!」

隊服で右腕を圧迫止血していると幾つもの目の模様が入った刀を私の顔の前に突き出した。

「断ったら?」

「このまま殺す。だが…せめて剣士として…敬意を表し…殺してやる」

「そうですか…血気術解除」

黒死牟さんの言葉に頷き血気術を解除し上弦の弐に戻って斬られた右腕を生やす。

 

(鬼殺隊士として上弦の壱との殺し合い…それとも上弦同士として殺し合い。どちらを取るべきか?こいつ(黒死牟)は、隊士達を殺したから私には鬼殺隊士として戦う建前がある。はぁ~、やれやれ…とんだ貧乏くじを引いてしまったわ。今ここで逃げたら元柱としても天の呼吸継承者としても恥。人生最大級の恥。お館様やお爺様、()にも面目が立たない。それは他の(隊士)たちに対しても同じ事)

「はぁ~っ、本当!最悪!!あんたの勝負受けるしか無いじゃない!いいわよ…」

少し考え事をしてから腰に帯刀してある日輪刀を二本とも抜いて構える。

 

「天の呼吸 35代目継承者、そして元天柱として…お相手願います。天空時 輪!参る!!」

「黒死牟…参る!」

名乗ると同時に黒死牟に斬り掛かる。

瞬間、胸に激痛が走った。




戦闘シーンは、次回です。
次回は、再生力と実力が桁違いの上弦同士の殺し合いです。
激しい戦闘になるはずですがちゃんと書けるか分かりません。何とか頑張ってみます。
では、また次回!
よいお年を。

輪廻が天柱だった頃の過去編(?)みたいな話を読みたいですか?

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  • どっちでも
  • 時間があればで良いよ
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