元柱で現上弦な鬼殺隊士のお話   作:揚げ物・鉄火

11 / 11
皆様お久しぶりです。

上弦同士の対決を書いてたらいつの間にめっちゃ長くなりました…本当に申し訳ありません。
今話は、いつもの倍の8000字!まさかの8000字です。
しかもギャグが一切無しのドシリアスな戦闘シーン。
ギャグ要因が居ないだけでこんなに変わる物なんだな、と思い知りました。

それでは、どうぞ!ごゆっくり!


第十一話

「参る!」

そう言って黒死牟に斬り掛かった直後、胸に激痛が走った。

 

「クッ…!?」

何事かと思い数歩下がって胸元を見ると刀で斬られたような裂傷が再生し始めていた。

どうやら目に見えない速度で刀を振り私の胸に傷をつけたようだ。

(危なかった…もし上弦の弐の肉体じゃなかったら確実に殺されていた。これが上弦の壱…十二鬼月最強の鬼の実力。正直嘗めてたわ…)

心の中で呟きながら再び二振りの刀を構える。

 

(こいつ(黒死牟)を相手に手加減は一切不要。一瞬でも油断したら確実に負ける…常に気を張って戦いに挑まなくてはならないわね。縁壱さんとの模擬戦以上に集中しないと…)

「ふぅ…」

一つ息を吐き両手の日輪刀を強く握り締める。

 

「参る!!」

言うが速いか二振りの日輪刀を同時に振るい黒死牟に斬り掛かる。

今度は先程と違い反撃の一太刀を右手に持った日輪刀で防いだ。

 

「ほう…?」

黒死牟が関心している隙を狙って左手に持った日輪刀を振るうが右手の日輪刀を弾いた刀で左手の刀を弾いた。

ならばと右手の日輪刀逆手に持ち左回転を加えながら斬り掛かる。

 

「天の呼吸 壱の型・改 天輪 無間!」

「むっ…!」

黒死牟の頸を狙った一刀目の軌道を読まれ避けられたが勢いを付けたままの回転で左手の日輪刀も連続で使って斬り掛かる。

一度避けられたら二度。二度避けられたら三度。三度避けられたら四度。躱されるのであれば相手に当たるまで何度も何度も攻撃すれば良いだけ。

それが「天の呼吸 壱の型・改 天輪 無間」

縁壱さんとの修行で身に着けた『天の呼吸 壱の型 天輪』から派生させた新たな技。

鬼の肉体だからこそ出来る究極の無茶。この技を普通の人間が使おうとしたら高確率で失敗して大きな隙を晒すことになる。

この技の一番の特徴は、相手に反撃する隙を与えず途切れることの無い怒涛の連続攻撃。縁壱さんによると『この技を防げる者は、恐らく片手で数えられる程度だろう』との事だ。

 

ただし弱点もある。

それは…

「ふんっ!」

「うあっ…!」

回転速度以上の速度で攻撃の隙間を縫い反撃されると踏ん張りが効かないこちらとしては、大きな隙を晒すことになる。

 

案の定、連撃の合間を縫って反撃を成功させた黒死牟の刀が地面に転がされた私の頸を狙うように振り下ろされる。

その攻撃を地面をゴロゴロ転がり紙一重で躱して先程の椅子代わりにしていた岩の近くまで移動し跳び上がるように立ち上がる。

 

「ふぅ…!ふぅ…!」

「…」

連続攻撃を防がれた上に殺されかけ息を切らす私と違い、黒死牟は六つの目で静かにこちらを見つめている。

 

「はあっ!」

今度は鬼の身体能力を活かし一気に近付き、人間には到底不可能な速度で日輪刀を連続で振る。

一太刀目…防がれる。

二太刀目…防がれる。

三、四、五太刀目…防がれる。

十太刀目…防がれる。

速度を上げる。

二十、三十、四十、五十太刀目…全て防がれる。

さらに速度を上げて日輪刀を振る。

百、二百、三百、四百、五百………千。

全て防がれる。

 

やがて日輪刀を振った回数が万を超えた頃。

遂にそれが起こった。

 

バキンッ!

「は?えっ!?」

刀を酷使し過ぎたせいで金属疲労により右手に持っていた日輪刀の刀身が折れた。

 

 

「月の呼吸 弐の型――」

その僅かな隙を突くように黒死牟が刀の向きを変えて斬り上げの構えを取る。

「チッ!」

「朱華ノ弄月」

その一刀を防ぐ為に折れて空中に飛んでいた日輪刀の刀身の鎬を黒死牟の刀ごと右足で踏みつけて技を発動を防ぐ。

 

「なにっ…!?」

私の予想外の行動に黒死牟が一瞬だけ六つの目を見開いたが、すぐに落ち着きを取り戻しもう一度刀を振った。

 

「月の呼吸 陸の型 常夜孤月・無間」

「天の呼吸 伍の型 八尾比丘尼」

刀を一振りするだけで無数の斬撃が縦横無尽に放たれたが、その悉くを絶対防御の八尾比丘尼で防ぐ。

 

斬撃を全て防いだが近接戦を不利と考え、残された一本の日輪刀を高く持ち上げる。

「天の呼吸 陸の型・改 志那都比古 神風」

お返しとばかりに日輪刀を高速で振り竜巻の様に回転し相手を切り刻む飛ぶ斬撃を四つ生み出す。

それと同時に力強く踏み込み黒死牟に日輪刀の切っ先を向けて突きの構えを取る。

 

「月の呼吸 参の型 忌月・銷り」

「嘘…でしょ?」

有ろう事か四つの飛ぶ斬撃を一瞬で相殺して私の呼吸に合わせてあちらも切っ先を突き出して来た。

 

「天の呼吸 漆の型 毘沙門天!」

「はっ!」

上弦の鬼同士の全集中の呼吸を使った全力の一突きの衝突で周囲に鉄がぶつかり合う甲高い音が響く。

 

技が衝突した衝撃でお互いに後方へと跳んだ。

「ふむ…貴様…中々強いな」

「チッ!随分と余裕そうね」

こちらは最初から全力で戦っているのに、あちらはまだまだ余裕が感じられる。

まさかここまで実力差があったとは思いもしなかった。

 

だけど…

(縁壱さんに比べれば大した事無い。いや、あの人が可笑しいだけか…)

心の内で自嘲気味に呟きながら日輪刀を鞘に仕舞う。

 

「貴様…勝負を捨てたか?」

私の行動に黒死牟が眉を顰める。

 

「勝手に変な解釈しないでくれませんか?今からちょっとした面白い物を見せるので期待してて下さい」

「ほう…?面白いものか…ならばこちらも…何か見せなければ…不作法というもの…」

私の言葉に黒死牟が少しだけ微笑んで刀を幾つにも枝分かれした見た事ない物に変化させた。

 

「ふぅ…」

刀を構える黒死牟に対し私は自分の日輪刀を地面に突き刺す。

「いざ、参る!」

そのまま徒手空拳で黒死牟の下に走った。

 

(何を考えている?)

「月の呼吸 漆の型 厄鏡・月映え」

黒死牟が疑問に思いながらも地面を斬り裂きながら突き進む斬撃を飛ばす。

 

「チィッ!!」

自分に迫る斬撃を両腕で何とか防ごうとするが、防ぎ切れず両腕と両脚に裂傷が走り血が地面に飛び散る。

「ハァッ!!」

傷を修復させながら黒死牟に飛び蹴りを食らわせるふりをして股下を滑り抜けて後ろ側に回り込む。

更に立ち上がる勢いで黒死牟の後ろ髪を掴んで力の限り引っ張りバランスを崩させる。

 

「なっ…!ぐっ!」

しかしやはり十二鬼月最強の鬼、肉体に力を入れて持ち堪え瞬時に立ち上がった。

「貴様!」

「水の呼吸 壱の型 水面斬り!」

案の定こちらを振り向いたので、それに合わせて先ほど殺された隊士の日輪刀を使って黒死牟の頸を狙うが簡単に防がれる。

「効かん!月の呼吸 捌の型 月龍円尾」

「クッ!グゥッ!?」

お返しとばかりに返って来た斬撃を後ろに跳んで躱すが思った以上に射程距離が長く射程内にあった左脚が斬り飛ばされ右脚と肩に裂傷が走り周囲の木々や草むらに血が飛び散る。

 

「さすがと言うべきか…何と言うべきか。信じられないほどの人外染みた攻撃ね」

「ふむ…褒め言葉として…受け取って置こう」

「皮肉のつもりで言ったんだけど…」

片足立ちで左脚が再生するまで待ちながら水の呼吸の剣士の日輪刀を握る。

 

(日輪刀の色は藍色…水の呼吸で間違いないわね。これから使う型との相性は最悪だけど幸い、日輪刀があと二本残って…ん?いや、全然幸いじゃないわ。隊士が死んだのよ?なんで幸いって考え方が出来るの?やっぱり思考が鬼に近づいているのね…早く決着を付けないと思考が完全に鬼化してしまう。縁壱さんも何処に行ったのよ。さっきから救難信号を出してるのに一切返事が無いし…)

「ふぅ…ホント最悪ね」

思考の変化に焦りながら完全に再生した左脚と右脚に力を込めて腰を深く落とし左脚を後ろに右脚を軽く曲げる構えを取る。

さらに両目に意識を集中させて透き通る世界の精度を上げる。

それに呼応するように左頬の痣が広がり色も濃くなっていく。

 

「むっ…!それは…まさか!?」

「天の呼吸 肆の型・改 神速・伊邪那岐 百捌連!!」

私の動きに気づいたようだがもう遅い。

人間の時ですら目にも止まらない速度での高速斬撃、それが鬼化して速度が上がり更に108回も頸を狙って斬る。

普通の鬼なら一太刀目で頸を飛ばせるし上弦の肆の半天狗ですらこの型で倒せた。だけど黒死牟の場合は、108回でも足りないと思う。

 

「やはり…半天狗を…仕留めた技か」

残像が生まれる速度で頸を狙って攻撃しているはずなのに、その悉くを刀一本で防がれる。

「月の呼吸 拾肆の型 兇変・天満繊月」

さらに反撃して来る余裕まで持っているのか何処からでも対処出来るように三人の隊士を相手に放った全方向への超広範囲の斬撃を放ちこちらの攻撃を防ぐ始末。

 

「痛っ!マズイわね…かなりマズイわ」

この型の特性上攻撃の軌道がどうしても直線的になってしまう。

そのせいで次の攻撃の軌道が読まれ黒死牟の飛ばす斬撃に自分から突っ込む形になってしまう。

 

(だけど…そのおかげで準備(・・)が終わりそう。あと少し、あともう少しだけ血を流せば…)

心の中で呟きながら斬撃の隙間を縫うように走り抜け、大小の切り傷を大量に負いながらも108回目の斬撃が黒死牟の頸に日輪刀が届いた。

「来た!」

 

が…

「流石に…反則でしょ」

肩や胸から生えた刀が頸に届いたはずの最後の一太刀を防いでいた。

 

「残念だったな…月の呼吸 拾の型 穿面斬・蘿月」

「ウアァァッ!!」

そして私の今までの攻撃を嘲笑うかのように円を描くような太刀筋に三日月上の斬撃が(のこぎり)の刃のような見た事も無い攻撃で私の体を切り刻んだ。

 

そのまま数回地面を弾みながら椅子として使った大岩にぶつかる。

「カハッ!?…アッ、アァァ…ガフッ!」

岩に叩き付けられた事で肺の空気が全て強制的に吐き出され、同時に肺が破裂し吐血する。

(だ、駄目だ…この化け物には、誰も勝てない。今まで戦って来たどの鬼とも規格が違う…童魔(上弦の弐)猗堝座(上弦の参)半天狗(上弦の肆)なんかと比べ物にならないくらい強い。も、もう逃げるしか…)

自分と相手の実力差を改めて理解させられ、敵前逃亡の文字が頭に思い浮かんだ。

 

 

 

 

「ふざけんな!!」

ちょうどその時、自分の頭を地面が割れる程に強く叩き付けて気合を入れ直す。

 

(彼我の実力差?圧倒的な格上?規格外?それがどうした!!そんなのあの化け物(縁壱さん)に比べれば鬼なんて全て三流以下!それ()を相手に敵前逃亡を図ろうとする私はそれ以下!もはや天の呼吸の継承者や元天柱としてなんか関係なくこの道(鬼殺隊)を選んだ者として最低限の誇りすら失ってしまう!鬼殺隊士に鬼からの敵前逃亡などあり得ない!いや!あってはならない事よ!!)

「ふんっ!!」

改めて覚悟を決めて、日輪刀を自分の膝に突き刺し気合を入れ直して立ち上がる。

 

「お見苦しい物をお見せしました…改めて名乗らせて貰います。我、天の呼吸の35代目継承者にして鬼殺隊の元天柱、天空時 輪。本意(もとい)、上弦の弐 輪廻と申す者」

「ほう…?」

私の改まった名乗りに黒死牟が刀を降ろしたまま感心したような声を上げた。

 

「改めて貴方に勝負を挑みます。受けて下さいますか?」

日輪刀の切っ先を向けて黒死牟に問うと笑みを浮かべ口を開いた。

 

「上弦の壱…黒死牟。その勝負…受けて立とう!!」

そう答えて変化したままの刀を構える。

 

「上弦の弐 輪廻」

「上弦の壱 黒死牟」

二人とも刀を上段に構え、透き通る世界を発動させ、全集中の呼吸による身体強化を行い同時に踏み込む。

「「参る!」」

 

 

 

 

「「参る!」」

その宣言と共に二人が同時に駆け出し輪廻の持つ日輪刀と黒死牟の刀が真正面から衝突した。

 

「水の呼吸 捌の型 滝壺!」

「むぅ!!」

高威力の振り下ろし攻撃により赫刀化した日輪刀が黒死牟の刀をジュクジュク溶かしながらじわじわと浸食して行く。

 

「くぅ!!さっさと折れなさいよ!天の呼吸 捌の型・改――」

「月の呼吸 伍の型 月魄災禍」

黒死牟の刀を折ろうとより高威力の攻撃をしようと両腕を持ち上げた瞬間、黒死牟の放った技が輪廻の隊服と肉体を切り裂いていく。

 

「ガッ!グッ…グゥッ!!」

歯が砕ける程に奥歯を噛み締め切り裂かれる痛みを堪えた輪廻は、血を撒き散らしながら日輪刀を叩き落す。

「武御雷 十握(とつか)の剣!!」

「なにっ!?クッ!」

赫刀化した日輪刀を上弦の弐の筋力で振り下ろした結果、黒死牟の持つ刀を圧し折り左腕を斬り飛ばす事に成功した。

 

「ヒヒッ…やっと入りましたね?」

「やるな…」

斬り飛ばされた腕を再生させながら日輪刀を構える輪廻に対し黒死牟も自分の刀を再生させて構える。

 

「天の呼吸 陸の型・改――」

「月の呼吸 玖の型―――」

両者共に己の得物を持ち上げ同時に振りかぶった。

 

「志那都比古 神風!」

「降り月・連面」

四つの切り裂く竜巻が黒死牟に迫り、無数の複雑な軌道の三日月状の斬撃が輪廻に迫る。

 

「月の呼吸 拾陸の型 月虹・片割れ月」

黒死牟が刀を振って六つの斬撃を生み出し四つの竜巻を消滅させ、残る二つの斬撃を輪廻の頭上に降らせる。

 

「天の呼吸 参の型・改 伊邪那美 獄ノ門 牛頭馬頭!」

一方の輪廻は、無数の三日月状の斬撃と頭上から迫る斬撃を巨大な炎の渦で巻き込み相殺する。

 

(そろそろね…)

「水の呼吸 玖の型 水流飛沫・乱」

輪廻が手に持った日輪刀の耐久値を確認し周囲の木々を使って跳ね回る。

 

(なんのつもりだ?)

「月の呼吸 拾肆の型 兇変・天満繊月」

一方の黒死牟は、輪廻を仕留めようと広範囲に斬撃を飛ばす。

 

(比較的予想通り)

「そこ!天の呼吸 弐の型 神隠し」

それらの斬撃を特殊な足捌きで躱しながら黒死牟に迫る。

 

「水の呼吸 陸の型 ねじれ渦!」

「くっ!月の呼吸 壱の型 闇月・宵の宮」

輪廻の放った斬撃を横薙ぎの一閃で相殺する。

 

バキンッ!

 

それと同時に輪廻の持つ日輪刀が半ばから折れた。

だがそれも予想していた輪廻は、日輪刀を持つ腕を引いて構える。

 

「水の呼吸 漆の型・改 雫波紋突き 飛将!」

日輪刀の鎺で落ちて来た日輪刀の刀身の折れた面を高速で叩き刀身を飛ばす。

その結果が耐久値が限界だった日輪刀の刀身の半分以上が砕けながら黒死牟に迫る。

 

この予想外の出来事に黒死牟が一瞬だけ反応に遅れて砕けた日輪刀の刀身に視界を阻まれ、残された日輪刀の刀身が肩に突き刺さった。

 

「月の呼吸 弐の型 朱華ノ弄月」

しかし黒死牟を相手にこの程度の痛みで動きを阻む事など出来るはずも無く肩に刺さった刀身を気にせず一度防がれた技を放った。

 

一方の輪廻は、折れた日輪刀を捨てて黒死牟に殺された隊士達が持っていた日輪刀を二本拾い呼吸法を変える。

「炎の呼吸 壱の型 不知火!風の呼吸 弐の型 爪々・科戸風!」

そして本来なら人間に絶対不可能な二種類の全集中の呼吸の同時使用を鬼の肉体で強制的に成功させ二つの技を同時に繰り出した。

 

「確かに…面白い物だな」

攻撃を仕掛けられた黒死牟は、その二つの剣技を刀一本で防ぎ切り技を出すべく構える。

 

「月の呼吸 陸の型 常夜孤月・無間」

「風の呼吸 陸の型 黒風烟嵐!炎の呼吸 肆の型 盛炎のうねり!」

黒死牟の繰り出した技に対し輪廻が繰り出したのは、どちらも前方への攻撃に特化した型。二つの呼吸法により黒死牟の放つ斬撃を打ち破った。

 

「ほう…ここまで来るか…面白い!」

「何が面白いか知りませんが、さっさとくたばって下さい!」

自分の攻撃を打ち破った事を純粋に褒める黒死牟。

それを皮肉として受け取り二本の日輪刀を全力で握り締め構えを取る輪廻。

 

「天の呼吸 陸の型 志那都比古!」

「月の呼吸 漆の型 厄鏡・月映え」

黒死牟の放った斬撃が輪廻の飛ぶ斬撃を真っ向から打ち破った。

 

「天の呼吸 漆の型・改 毘沙門天 羅刹!」

だがそれも承知の上だった輪廻は、左腕を斬り飛ばされながら右腕の筋肉を極限まで引き絞り、黒死牟の胸に最高速にして最高威力の突き技を見舞った。

その攻撃が黒死牟の刀を圧し折り、そのまま胸を貫通する。

 

「はああああ!!」

「ぬぅぅぅ!」

黒死牟の胸に日輪刀を突き刺したまま突き進む輪廻を黒死牟が自分の体から無数の刃を出す事で止めようとする。

「なんのこれしき!」

が、輪廻を止める事が出来ず赫刀化した日輪刀がさらに深々と食い込む。

輪廻を足止めする事が不可能だと知った黒死牟は、輪廻の体に自分の刀を突き刺す。

 

「ならば…月の呼吸 伍の型 月魄災禍」

「グガァァアアアッッッ!!!?クッ!こ、の…クソ野郎がァアア!!」

刀を輪廻の体に突き刺したまま技を放った結果、輪廻の肉体を内部から切り刻み周囲に血が飛び散る。

輪廻が内部から体を切り刻まれる激痛に悶えて咆哮を上げるが左腕を再生させて黒死牟の背中に手を回し黒死牟の着物を掴む。

 

「やっと…捕まえた!」

「クッ!離せ!」

輪廻の拘束から逃れようと輪廻の体から刀を引き抜いて輪廻の両腕を斬ろうと刀を持ち上げた。丁度その時、輪廻が思いにもよらない言葉を口にした。

 

「血気術 血鎖繫縛(けっさけばく)!」

輪廻がその言葉を口にした瞬間、血気術が発動する。

周囲に飛び散った輪廻の血から無数の鎖が飛び出し黒死牟の腕や足、手に持つ刀などに巻き付き黒死牟を雁字搦めに拘束した。

 

「何っ!?」

その予想だにしない血気術に黒死牟は、完全に拘束されてしまった。

周囲の木々や草むら、地面や椅子として使った岩。果ては斬り飛ばされた輪廻の腕や足からも血の鎖が伸びている。

合計50を超える血の鎖。その全てが黒死牟を拘束する為にのみ発動した。

 

血気術.血鎖繫縛(けっさけばく)

発動条件が一定以上の血を流した上で拘束対象に触れている事、と若干難度が高めだがその効果は絶大。

上弦の鬼ですら簡単に逃れられない程の拘束力を有する。

それに今回の拘束は50本を超える血の鎖による拘束のため上弦の壱である黒死牟ですらまともに動けずにいる。

 

「はぁ…はぁ…やっと発動出来た。貴方強すぎますよ…もうちょっと手加減してくれませんか?」

「ぐっ!クッ!外れん!?」

拘束を解こうと藻掻く黒死牟を背に輪廻は、地面に突き刺した自分の日輪刀を回収する。

 

「さてと…死ぬ前に言い残したい事はありますか?」

「あまり…図に乗るな。こんな拘束…すぐにでも!」

日輪刀を回収し抜刀の構えを取った輪廻の余裕な態度に黒死牟が全身に力を込めて拘束から抜け出そうと奮闘する。

 

「アハハハッ!無理無理。その拘束を抜け出す方法は、鎖を発動させている私を倒すか鎖そのものを斬るしかないですから。その状態の貴方には、どちらも不可能なのでさっさと諦めて下さい。ほら、頑張れ頑張れ。では…」

輪廻は、その様子を嘲笑いながら腰を深く落とし殺意を剥き出しにしてゆっくりとにじり寄るようにして黒死牟に近づく。

「天の呼吸…零の型…黄泉…」

ゆっくりと喋りながら黒死牟にゆっくりと近づいて行くその姿は、さながら死神のようだ。

 

『天の呼吸 零の型 黄泉』

この型は、天の呼吸で唯一『透き通る世界』に入門している事を前提条件とした奥義。

透き通る世界により殺意などを一切断ち切った状態で殺意を全開放する事で本来のあるべき姿を取り戻す型。

使用者の殺意を感じて攻撃に備えようにも使用者が透き通る世界によって殺意を一切感じ取れない状態にあるので殺意を感じるが感じ取れない(・・・・・・・・・・・・・)と言う矛盾したパラドクスに陥り脳が情報処理しきれない状態のうちに対象の頸を刎ねる技。

この究極の矛盾ともいえる型を成功させる為には透き通る世界を維持した状態でゆっくりと動く必要がある。

 

「………」

ゆっくりと近づいて来る輪廻(死神)の足音に対し黒死牟は何もせずひたすらある事(・・・)に集中していた。

 

「…やっと死を受け入れたんですね?それでは…さようなら」

「輪廻よ…」

日輪刀を抜こうとする輪廻に対して黒死牟がゆっくりと口を開く。

 

「なんですか?」

「貴様は…油断しすぎだ」

「は?」

その言葉に疑問を思ったのも束の間。

さっさと頸を刎ねようと日輪刀を抜刀した…その刹那。

「月の呼吸 拾肆の型 兇変・天満繊月」

「なっ!?ウアァァッ!!?」

黒死牟が背中に刀を精製してそれを髪に絡ませ髪を振り回す事で広範囲への斬撃を発生させた。

そしてその斬撃が輪廻の隊服と全ての血の鎖を一度に切り裂いた。

 

「嘘…でしょ?何よそれ…そんな反則技…有り?」

突如飛び出した斬撃に何とかギリギリで対応しある程度防いだものの、完全には防ぎ切れず大なり小なり全身に裂傷を負う。

「相手が…完全に死ぬまで…油断するな…常識であろう?」

血の鎖による拘束から抜け出した黒死牟が刀を振ると輪廻の両腕を斬り飛ばす。

 

「くっ!痛い…」

「さて…形成逆転だ…最後に何か…言い残す事は…あるか?」

輪廻の日輪刀を踏み折りながら黒死牟が質問する。

 

「言い残す事?ええ、あるわよ…言いたい事ならいっぱいあるわよ。でも一つだけ言うとすれば…」

「なんだ?言ってみろ」

言い残す事を決めた輪廻の様子を見て黒死牟が急かすように自分の体に突き刺さったままの殺された隊士の日輪刀を抜いて、その切っ先を突き付ける。

 

「………ふぅ」

しばしの沈黙の後、覚悟を決めたように口を開いた。

 

「後方注意よ…腐れ六つ目野郎」

「なんだと?」

その言葉に後方を振り向くと直ぐにその言葉の意味を理解した。

 

 

 

「水の呼吸 肆の型 打ち潮!」

「花の呼吸 肆の型 紅花衣!」

頬に裂傷のある宍色髪の剣士と一対の翼が描かれた絵羽模様の羽織を羽織った蝶の髪飾りをした女性剣士が同時に技を放ち黒死牟の頸を刎ねようとしていた。

 

「くっ!」

それを後方に跳ぶことで何とか回避するが完全に避けきれず頸を半分と右腕を斬られた。

 

「胡蝶。こいつは俺が相手する。お前は、そこの隊士の相手をしてやれ」

輪廻と女性剣士を守るように立った宍色髪の男性。鬼殺隊 水柱 鱗滝錆兎が黒死牟の前に立ちはだかる。

 

「分かったわ。任せて」

一方の胡蝶と呼ばれた絵羽模様の羽織を羽織った女性剣士。鬼殺隊 花柱 胡蝶カナエは、輪廻の近くで腰を落とす。

 

「さて…お久しぶりですね。輪さん」

「あはは…久しぶりカナエちゃん。もしかして怒ってる?」

「どう思いますか?」

「あ、あはははははは…そうねぇ」

カナエの言葉に輪廻は引き攣った笑みを浮かべて曖昧な返答を返した。




どうもこんにちは。
今回は、戦闘シーンばっかりでした。
一応上弦同士の戦いが終わったのでここで一旦区切ります。
これ以上書くと一万字を超える可能性があるので…文才が欲しい。
次回は、多分決着です。そうであって欲しい…切実にそう願う。

では、また次回!

輪廻が天柱だった頃の過去編(?)みたいな話を読みたいですか?

  • 見てみたい
  • 別にいらない
  • どっちでも
  • 時間があればで良いよ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。