Fateで学べないギリシャ神話   作:水泡人形イムス

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ヘラクレス星座RTA

 ※この作品は英霊が生きていた当時そのものではなく、当時の再現ドラマを英霊当人が演じるものです。再現ドラマなので多少の誇張や差異はあるかもしれません。ご了承ください。

 

 

 

 ギリシャ神話に謳われる大英雄ヘラクレス。

 十二の試練を踏破した彼の武勇はギリシャ最高峰である。ヒューッ、かっこいー。

 そんな彼にも冒険に出る前の平和な日々があった。

 まだヘラクレス(ヘラの栄光)の名を授からず、人間アルケイデスとして妻子と共に仲睦まじく暮らしていた、平和な日々が……。

 

 という訳で時系列的にはアルケイデスと表記するのが正しいのですが、再現ドラマを演じるのはバーサーカーとして召喚されたヘラクレスなので、ヘラクレスと表記させていただきます。

 

 さて、ヘラクレスが生まれたのはテーバイという国。様々な教育を受けてエリートとして育ちつつ、ちょっと頭がヒットして音楽教師を撲殺したりもしましたが、若くしてライオンを狩ってその毛皮をコスチュームにしたり、ちょっとオルコメノスって国と戦争して無双したり、英雄ムーブに余念のない英雄でした。

 

 おかげさまでテーバイ王クレオンの娘、メガラと結婚して三人の子宝にも恵まれました。

 それとヘラクレスには双子の弟がおり、これまた三人の子宝に恵まれていました。

 

 で、そいつら全員が次のエピソードに関わってきます。ちょっと人数多すぎて、ギリシャ神話初心者の方々は混乱してしまいますね。

 そこで分かりやすくまとめました。

 

 

 

 メガラ――ヘラクレスの最初の妻。

 テリマコス――ヘラクレスとメガラの息子。長男。

 クレオンティアデス――ヘラクレスとメガラの息子。次男。

 デイコオン――ヘラクレスとメガラの娘。末っ子。

 

 イピクレス――双子の弟。Fateでは妹になっている。

 イオラオス――イピクレスの息子。ヘラクレスの甥に当たる。

 子供A――イオラオスとは腹違いの弟。名前が分からない。

 子供B――同上。

 

 

 

 覚え切れない方のためまだ秘策があります。

 そしてこんな大勢の人物が登場する理由は、ヘラクレスの家にこれだけ集まって和気あいあいと過ごしていたからです。多分ホームパーティーって奴です。

 そこに帰ってきたのがみんなの主役、ヘラクレス。

 

「■■■■――――ッ!!」

 

 バーサーカークラスでの出演なので、腰巻き一枚の益荒男です。

 端正な顔立ちは盛り上がった筋肉によって化け物みたいになってるし、肌も鉛色になってて化け物だし、言語能力も喪失して獣のように唸るか吼えるかしかできない化け物だし、化け物です。

 そしてこの後の逸話も含めて――ご家族にバーサーカーと化したヘラクレスさんを会わせるのは倫理的問題があるとの判断につき、代役を用意しました。

 

 

 

「おかえりなさい、ヘラクレスさん!」

 

「…………■■■■――――ッ!?」

 

 

 

 FGOとプリズマ☆イリヤのコラボの産物!

 キャスタークラスで召喚されたイリヤスフィールちゃんだー!!

 月光のような美しい髪と、プニプニほっぺの愛らしい小学五年生の少女。今日は穂群原学園の制服でも魔法少女のコスチュームでもなく、古代ギリシャらしいキトンをまとっての登場です。ほらあの真っ白い布を羽織ったような衣装。キトン。

 まさかのイリヤにヘラクレスさんはビックリ仰天。

 その慌てた様子を見て、イリヤはミスに気づいて慌ててしまう。

 

「あっ――ご、ごめんなさい。おかえりなさい、お父さん! でした」

 

「……………………■■■■■■■■――――――――ッッ!?」

 

 ますます混乱するヘラクレス。

 台本は渡してあるはずだが、バーサーカーなので読めているのか、理解できているのかは、謎。

 

「えっと、今はテリマコス役と、クレオン……テ……クレンディアス役と、デイオコン……じゃないや、デイコオン役を、兼任してのセリフです!」

 

 ややこしい名前をカンペで確認しながら、イリヤはそう言いました。

 ギリシャ人名を現代日本人が暗記するのは手間かかるからカンペは仕方ないね。あ、プリヤのイリヤは日本育ちの日本人です。外国語がどこまで話せるかは不明。

 

 さて――――ぶっちゃけヘラクレスの子供三人、揃って同じ目に遭うから、全部イリヤに兼任してもらう事になりました。

 なので子供三人分の名前を覚える必要はないです。覚えたい人は自習してください。

 

 ちょっと風通しのいいキトン姿にテレテレしながら、イリヤは張り切った様子で告げる。

 

「本当はクロやシトナイにもお願いするはずだったんだけど、伝達ミスでお願いできなかったみたいで……あの、でも、わたし一人でも一生懸命がんばりますから!」

 

 神話の内容をちゃんと知ってる二人には伝達ミスである。安心!

 ――――思わず後ずさるヘラクレス。

 企画の趣旨を理解しているかどうかは不明だが、ここはヘラクレスがメガラとの結婚時代に暮らしていた屋敷を再現したもの。当時の記憶がフラッシュバックしている可能性は高い。

 

「おかえりなさい貴方~、メガラ役のアイリよ~」

 

 そして、さらに、イリヤのお母さんがそのままお母さん役で登場だ。

 彼女もまたFGOとFate/Zeroのコラボによってサーヴァント化したキャスター! 別にキトンに着替えなくても天の衣姿な時点でもうだいぶ神話チックだからそのまんまでよくね? という都合により天の衣姿のまま出演です。

 

「ごああああっ!?」

「ええ、イリヤが貴方の息子&娘役で出演するって聞いたから、私も張りきらなくちゃって」

「ごあっ!? ごああ!?」

「ええ。イリヤは子役兼任なの。負担が大きいから母親として私が支えなくっちゃ!」

 

 ここでFate情報。

 ヘラクレスは「ごあごあ」って鳴く場合もあるぞ!

 アイリさんはヘラクレスのごあごあボイスを解読できるぞ!

 ソースはどっちもタイガーころしあむ。

 

 さて――家族に迎えられたヘラクレスに声をかけたのは、その四人(イリヤ、イリヤ、イリヤ、アイリ)だけではなかった。

 炉に薪を焚べながら、炎の揺らめきに顔を照らされる二人の男。

 

「…………おかえり、兄さん。イピクレス役のエミヤだ」

 

 彼もまたFGOとFate/Zeroのコラボでサーヴァント化した、アサシンのエミヤだ。

 FGOの舞台カルデアにおいてはイリヤやアイリをストーキングするのが趣味の怪しい男だぞ。

 そして彼の座る椅子には、古代ギリシャに相応しくない自動小銃が立てかけられていた。イリヤの体重より重たいそれはまさしく人間の文化が生み出した殺意の結晶。それもこれもプロメテウスが人間に火なんか与えるからこうなったんだ。

 ヘラクレスの双子の弟、イピクレス役エミヤ(アサシン)は、趣旨を理解しているのかいないのか妙に剣呑な眼差しをヘラクレスに向ける。そしてどこか心配そうにメガラ役アイリとテレマコス役クレオンティアデス役デイコオン役イリヤを見つめる。

 

「…………おかえり、伯父さん。イオラオス役のエミヤだ」

 

 そしてもう一人、アーチャーのエミヤがアサシンのエミヤの隣に座っていた。その両手には古代ギリシャには不釣り合いな中華刀、干将莫耶が握られていた。その刀身に炎の揺らめきを映して何やら重苦しい雰囲気をまとっている。

 

 ヘラクレス一家というか、ただの衛宮一家だった。

 

「ごっ……ごああっ……」

「あらあら。キリ……じゃなかった、イピクレスもイオラオスも、もっとちゃんと挨拶なさい」

「ごああ」

「いいのよヘラクレスさん、じゃなかった、貴方。これも家を預かる妻の努め! …………ああ、そうだったわ。イリヤ、貴女も挨拶しないと。ほら、あっちの方で」

 

 メガラ役アイリに言われ、息子&娘役のイリヤはハッと思い出してヘラクレスに頭を下げた。

 

「えっと、お邪魔していますヘラクレス伯父さん。イピクレスお父さんの子供二人も兼任しているイリヤです」

「ごああああーっ!?」

 

 ヘラクレスの長男のテリマコス役と次男のクレオンティアデス役と長女のデイコオン役と、イピクレスの子供多分二人役、合計五人一役のイリヤスフィールです。

 なので、この後ヘラクレスと冒険を共にするイオラオス以外の名前を覚えるのはもっとギリシャ神話に馴染んだ後で結構です。

 

 五人一役にしちゃってシナリオは大丈夫なのか? 原典再現はできるのか?

 出来る、出来ます。

 五人とも同じコトされるから全然大丈夫です。

 

 さて。

 家族一同勢揃い、さらに弟も子連れでやって来た。

 とても賑やかで平和な光景です。

 英雄ヘラクレスにとって幸せの絶頂は、この瞬間かもしれません。

 そして、不幸と絶望の底も――――。

 

 ヘラクレスはゼウスの浮気で生まれた子供である。

 アルクメネという女性の夫に変身して、ゼウスはやらかしやがったのである。

 おかげで正妻のヘラは怒りのあまりヘラクレス暗殺未遂や嫌がらせに余念が無くなりました。

 神々はホント最低だな……。

 

 さて今回ヘラがお送りする嫌がらせは、ヘラクレス発狂電波である。

 これを浴びたヘラクレスは狂気に呑まれて、我が子達を炎に投げ込んで殺してしまうのである!

 ――これが彼がバーサーカー適正を持つ所以のひとつである。ひとつでしかないのは、今後もヘラからヘラクレス発狂電波を浴びせられて友殺しとかさせられるからである。

 神々はホント最低だな……。

 

 という訳で、ヘラクレスにヘラクレス発狂電波が送信されました。

 分かりやすさを優先+出演者への合図のため、ヘラクレスの頭上がピカーっと光った。その演出は神代の魔術によるものである。

 

(ヘラクレス……ヘラクレス……今、貴方の脳内に直接語りかけています)

「ご、ごあ?」

(この一件とまったく、全然、ちっとも関係ないけど…………裏方のメディアよ。演出や薬の提供で協力させてもらっているわ)

「ごあっ……?」

(さあ、このくだらない企画をとっとと終わらせるため、子役のイリヤスフィールを炉に投げ込みなさい)

「ごっ……ごああああーっ!?」

 

 

 

 おお! 何たる悲劇、何たる仕打ち!

 女神ヘラの嫉妬パワーによりヘラクレスはなんと、愛する我が子三人と、イピクレスの子供二人までもを炎に投げ込んで殺してしまうのだ! みずからの手で!

 

 

 

 ジャキン。イピクレス役エミヤ(アサシン)が自動小銃を持ち上げる。

 ジャキン。イオラオス役エミヤ(アーチャー)が夫婦剣を持ち上げる。

 グッ。子供兼任しまくり役イリヤは両腕をヘラクレスに向かって大きく広げる。

 

「えっと…………ここで()()()()()()()()()()()んですよね?」

 

 違う。掴み上げられて炎に投げ込まれるのだ。

 台本ミスでその後のシナリオが伝わってないのでイリヤはとってもほがらかムード。ただのホームパーティーの延長だと思っているので、娘っぽく振る舞おうとスマイル全開。

 あんな風に甘えられたコト僕は無いぞとイピクレス役エミヤ(アサシン)が眼差しを暗く淀ませている。あんたの子じゃないでしょ。いや五役中二役はあんたの子か。

 

「…………? ヘラク……お父さん、どうしたの?」

 

 この後どうなるのか知らないイリヤの無垢な問いかけが、ヘラクレスのハートを深々とえぐる。

 抱き上げられるのを素直に待つイリヤ。まだかな、なんて思って首をちょっと傾ける。クイッとする。可愛いなこの生き物。

 

(ちょっとヘラクレス、早くしてくれない? その子にはちゃんと、昔イアソンに使った火除けの薬を塗ってあるから――――)

 

 さらにヘラクレスの脳内に響くメディア・ボイス。

 ただでさえいっぱいいっぱいだったところに刺激を与えたもんだから、風船が破裂するようにしてヘラクレスは叫んだ。

 

 

 

「■■■■■■■■■■■■■■■■――――――――――――――――――――ッッ!!!!」

 

 

 

 叫んで、叫んで、叫んで、叫び尽くして、ヘラクレスは火のついた薪を束で鷲掴みにすると、唐突に駆け出した。

 炎に放り込むべき愛しき少女の前から逃げ出すように。

 

「あれぇぇぇ!? ヘラクレスさん待ってぇ~~~~っ」

 

 慌てた様子で追いかけていくイリヤだが、残念、バーサーカー・ヘラクレスの敏捷ランクはA!

 筋肉=速度ッ!!

 イリヤの足で追いつくのはちょっと無理があった。

 

 呆然として置いてきぼりにされたのはメガラ役アイリ、イピクレス役エミヤ(アサシン)そしてどこか満足気なイオラオス役エミヤ(アーチャー)だった。

 

 

 

 憩いの我が家から逃亡したヘラクレスは走った。

 左手に燃え盛る薪を握りしめたまま、右手で斧剣を振り回し、道中にある大木を切り倒して担ぎ上げて物凄い走った。

 そうしてオイテ山に登ると大木を並べて火葬台とし、燃え盛る薪を放り込んだ。

 …………切り立てで水気のある大木だから火の点きが悪い。

 

(…………はいはい、分かったわよ。これでいいんでしょ)

 

 意図を察した裏方メディアが魔術を唱えると、途端に火葬台は赤々と燃え始めた。

 ヨシ! ヘラクレスは迷う事なく火葬台にダイブ!

 十二の試練(ゴッドハンド)で守護られたヘラクレスの肉体は、Aランクに満たない攻撃を無効化してしまうだがしかし! この炎を放ったのはキャスター・メディアさん!

 そのステータス、実に魔力A+を誇る。

 

 よってヘラクレスの肉体は焼かれて死んだ。

 

 

 

 ――――こうして女神ヘラの狂気を乗り越えた大英雄ヘラクレスは、その功績を讃えられて昇天すると、ヘラクレス星座として夜空に刻まれたのでした。

 

 ヘラクレス星座RTA――――完!

 

 十二の試練? アルゴノーツの冒険? そんなものはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ルビー! 結界お願い!」

 

 未だ燃え盛る火葬台。そこに飛び込む小さな人影。

 それはいつもの魔法少女コスチュームをまとった魔法少女イリヤだった。カレイドステッキにより炎を防ぐ結界を張りながら、炎の中にみずから飛び込む。いやまあメディアさんから火除けの薬を塗ってもらってるから必要ないんだけど本人は知らないから。

 そして身の丈をはるかに越える大男、ヘラクレスの腕にしがみついて力いっぱい引っ張った。

 

「もー。イリヤさんの筋力でこの筋肉達磨を動かすのは無理ですって」

「だけど、ほっとけないよ!」

 

 ルビーの苦言に聞く耳持たず、炎の熱さに耐えながら一時の父を救うため、イリヤという少女は誠心誠意の全力を尽くすのだった。

 するとどうだろう、ヘラクレスの炭化した肌がひび割れ、内側から眩い光があふれてくる。

 これぞ十二の試練を踏破した大英雄に与えられた奇跡の力!

 死から蘇る規格外の宝具である!!

 

「■■■■■■■■――――――――ッ!!」

 

 バーサーカー・ヘラクレス復活!!

 彼はすぐさまイリヤを抱きかかえると、みずから火葬台から飛び出した。

 

「――――ッ! ヘラクレスさん、よかった……」

 

 助けられたのは自分だと言うのにイリヤは、助けてくれた相手の事を純粋に慮った。

 その慈悲の心が深々と沁み入り、ヘラクレスは唇の端を小さく持ち上げるのだった。

 

 

 

 それを木陰から頭だけ出して眺めている人影があった。

 メガラ役アイリ(キャスター)――満面のお日様笑顔。

 イピクレス役エミヤ(アサシン)――そのポジション寄越せとばかりにガン飛ばし。

 イオラオス役エミヤ(アーチャー)――最初からこうなるのは分かってた風なドヤ顔。

 という順で串団子のように頭を縦並べ。

 

 ヘラクレス一家の話なのか衛宮一家の話なのか分からなくなってきたので終了。

 

 

 

 CAST

 ヘラクレス役――ヘラクレス(バーサーカー)

 メガラ役――アイリスフィール・フォン・アインツベルン(キャスター)

 

 テリマコス役――イリヤスフィール・フォン・アインツベルン(キャスター)

 クレオンティアデス役――イリヤスフィール・フォン・アインツベルン(キャスター)

 デイコオン役――イリヤスフィール・フォン・アインツベルン(キャスター)

 

 イピクレス役――エミヤ(アサシン)

 イオラオス役――エミヤ(アーチャー)

 子供役A――イリヤスフィール・フォン・アインツベルン(キャスター)

 子供役B――イリヤスフィール・フォン・アインツベルン(キャスター)

 

 スペシャルサンクス――メディア(キャスター)




 よーしだいたい溜まってた妄想は吐き出せた。自己満足完了。
 SNイリヤ及びシトナイだとバーサーカーとの関係がすでに完成されてるけど、プリヤイリヤには優しいバーサーカーとの関係がカード越しなので色々と妄想の余地あります。
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