――――渡されたのは一枚の紙と姉が着けていたはずの細かな刺繍が施された布製のブレスレット。
そして、それを持ってきた人は言った。
『12班、班長テリア・アスターは・・・戦死しました・・・』
『これだけしか持ち帰れませんでした・・・。』
『っあ・・・そんなぁ・・・』
泣き崩れる母。こんなに取り乱した母は見たことがなかった。
『も・・・う私たちの娘はあっ・・・』
父もそうだった。行かせなければ良かった。そんな感情が二人からあふれていた。
私は――――何かに、見えない何かに、つかまれたように体が動かなかった。言葉にならない恐怖に飲み込まれて、ただ呆然と見つめる事しかできなかった。
「はあっ、はあっ・・・はぁ・・・」
またこの夢だ。いつか私もあの時のようになる日が来るのだろうか。その時、父さんと母さんはどうなるのだろう・・・。ものすごく寒気がする。
――――うじうじ考えても仕方ない・・・か。そうだ、今日から私たちは調査兵団じゃないか。
しっかり前向きに。深呼吸っと。入団式がそろそろ始まるからもうすぐリランやぺトラが呼びにくるだろう。そんなことになる前にさっさと準備しなくちゃいけない。
~入団式後~
「君、ちょっといいかい?」
「はい!なんですか?」
条件反射で敬礼をしながら振り向いた私は少し驚いた。目の前に分隊長のハンジさんがいたからだ。どうやら、私に質問しに来たらしい。
「あなたの家族に『テリア』っていう人がいた?」
自然と体がふるえだす。あぁ、この人は知っているのだ。
「・・・はい。」
それしか言えなかった。でも、その声さえかすれていた。ハンジさんはそんな私のようすを見てか、さっきと違う抑えた調子で話続けた。
「ごめんね。こんなこと聞いて。あなたの名簿を見たときはびっくりしたんだよ。テリアと同じ苗字だったから。でも、入団式であなたを見たときはもっとびっくりだった。テリアにそっくりだったし、同じブレスレットを着けてたんだもの。」
「・・・ハンジさんは、姉さんと親しかったのでしょうか。」
「あぁ。そうだよ。私が言うのもなんだけどテリアとはとても仲が良かった。」
やはりそうだったのだ。
「やっぱりそうだったんだ。テリアはあなたのお姉さんだったんだね。」
ハンジさんは傍に姉さんが居るかのように、そうつぶやいた。
眼鏡の奥にある瞳を見たとき、私はなんとなくだが、今はこれ以上姉の事について質問してはいけないような気がした。
「ありがとう。あとごめんね。お詫びといっちゃなんだけど、ちょいとした事でも相談に乗っておくれよ。」
できる限り相談に乗るからさ――――そう言ってハンジさんは去って行った。
~二日後~
今、私たちが居るのは朝の食堂。
「初陣!あぁ、楽しみだなぁ!」
「おいガイル!調子乗りすぎると一発で死ぬぞ?」
「・・・ガイルもオルオも調子に乗るな。」
「おうおう、主席様が怒っちまったぞ。」
こんなに騒いでいるのは私たちの初陣が決まったからである。ある意味、訓練兵の時と変わらない光景。良いことなのか、悪いことなのか・・・。
そんな中ぺトラがふと思いついたようでこう質問してきた。
「ね、今更だけどさ、何でみんなは調査兵団に入ったの?」
ちょっと沈黙・・・。そんな空気を察してか、最初に口を開いたのはオルオだった。
「俺はリヴァイ兵士長と一緒にどんな巨人でも蹴散らしたかったからだ。」
「ぼくはそうだなぁ。外の世界が見たかったからかなぁ。自由じゃないなんておかしいじゃん。」
「私・・・自分の一族が壁に入る前住んでいたって言われている、東洋の小さな島国に行きたい。だから、巨人を絶滅させたいの。」
「・・・何かに縛られるのは嫌いなだけだ。」
「私は、姉さんにあこがれて入ったんだ。姉さんのように自分から先頭に立ってさ。そうやって生きて生きたいと思ったから。」
そしてまた沈黙が流れた。
「そっか・・・。みんな、初陣がんばろうね!」
「うん。でも、初陣でがんばる前に訓練でがんばらなくちゃね。」
リランの言った通りだ。なめてかかったらそれこそ一瞬で死んでしまうだろう。
――――初陣は一週間後。少しだけ嫌な予感がしたような気がした・・・。