進撃の0班ー自由の風が今ー   作:星風 銀

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第三話:向かい風

 「ふぅ・・・」

 体が軽い。一週間前のあの日から訓練を少し厳しくしてみたが、それから体がだるく重い日が続いていた。いきなり訓練を厳しくしたせいなのだろうが、良かった。これなら壁外調査に支障は出なさそうだ。

 

 ドアノブに手をかけた時、いきなりノックされて急にドアが開いた。もちろん、私はドアノブ握っていたため、ドアに引っ張られるように持っていかれ廊下に突っ伏すような形になってしまった。

 少々、呆然としている頭でドアを開けた奴を見ようと顔を持ち上げると、そこにはリランとぺトラがいた。もう、呆然を通り越して唖然だ。嫌な空気を掻き消すように一言を放つ。

 「・・・これやったの誰?」

 二人は、ばつが悪そうに顔を見合わせた。それから、リランが小さく口を開いた。

 「ごめん、ライ。私がドアを開けたの。本当にごめんね。大丈夫?」

 その後にすかさずぺトラが続く。

 「リランは悪気があってやった訳じゃないの。ほら、ライっていつも遅いでしょ。だから、今日も遅れてるって思ってリランは開けたの。・・・でも、ごめん。怪我してない?」

 内心、とても痛いけど・・・と思いつつ話を続けた。

 「なるほど・・・私にも非があるね。理由がわかったからもう怒ってないよ。それに怪我もしてないか大 丈夫。じゃ、厩に行こうか。」

 「うん。私も今度からノックした後待つから返事してね。」

 「了解。これから早起きがんばるかな。二人とも忘れ物ない?」

 「ないよ。」

 「大丈夫。」

 「さ、始まりだね。行こうか。」

 

 

 

 ――――これから起きる恐怖など知る由もない朝だった。

 

 ~シガンシナ区、門の前~

 

 

 特に理由は無いが、空を見た。・・・晴天といったところか。天気は変わることが無さそうだ。私達新兵は一班二人の組み合わせで、比較的安全と言われている中衛に配属された。私とリンミィ、リランとガイル、ぺトラとオルオという組み合わせ。今回、私達は初陣のため、あくまでも行って帰って来るのが最優先といわれた。

 そんな事を一通り考え、空から目を戻した時だった。観衆の二人――――父さんと母さんと目が合った。少し頭を下げ、もう一度見ると父さんが、「生きろ」と言っていたような気がした。

 

 

 ~壁外~

 

 

 門が開き、調査兵団は壁外へ出た。壁外に出てしばらくした時、私達の班の班長が口を開いた。

「前衛だろうが後衛だろうが中衛だろうが関係ない。これだけは何があろうと絶対に忘れるな。ここが壁外である事に変わりないんだ。絶対に油断するなよ。」

 そうだ、ここは壁外なんだ。人類の考えなど通用しないであろう残酷な世界だ。

 「はい!」

 そう一言言った直後・・・先輩の一人が叫んだ。

 「・・・巨人だッ!」

 「あのスピード・・・奇行種だ。距離が近すぎるな・・・。仕方ない!戦闘態勢に入れ!」

 黒の煙弾が打たれるとほぼ同時に奇行種が突っ込んできた。幸い、馬でよける事ができたが、掠っただけでもあれは大怪我だったろう。さすがに身の危険を感じトリガーに手をかけると班長の指示が耳に入った。

 「お前達は前方にある森に入れっ!これ以上ここにいては危険だ。無事たどり着けたら紫の煙弾を打て!」

 「・・・ですが班長。ここから新兵のみで動くのはリスクが高すぎです。」

 リンミィがそう言いながら周りを見る。つられて自分も見ると遠くにだが巨人を数体確認できた。

 「ああ。それを知っていての上で指示を出している。早く行くんだ!」

 この人は今賭けに出ているのだ――――なら私達もそれに応えなければならない。

 「リンミィ・・・私の命あなたに預けたからね。」

 「・・・ああ、預けられた。だから俺の命を預かってるのはライだからな・・・。」

 

 「皆さん、ご武運を祈りま――――!?」

 後ろなんて見なければよかった。バキバキと何かが砕ける嫌な音とともに真赤な液体が宙に舞う。見てしまったのだ。答は何か――――そう、それはさっきの奇行種に先輩が捕食されたのだ。あの先輩は骨を噛み砕かれ、真赤な鮮血を飛び散らせ・・・自分の命の炎を消されたのだ。つまりそれは――――

 

    どうしようもない『死』だった。

 

 「もう時間がない・・・早く行けっ!後ろを向くな!」

 今私が取るべき行動は?

 「これは命令だっ!」

 班長の命令に従う事か?

 「・・・っ。」

 このままここで戦う事か?

 

 ――――答は出た。私は・・・

 

   『班長の命令に従う。』

 

 前方の森に向けて馬を走らせた。その間にも先輩がまた一人、腕と足をもがれ悲痛な叫び声を上げながら、真赤な鮮血を宙に舞わせ消えていった。

 私が最後、後ろを見た時の景色。それは、死にゆく兵とそれで良いんだと言うように笑う班長と――――『巨人』だった。

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