能天使の右腕 作:答えてくれドルフRO
崩壊液が綺麗なので初投稿です
「なんだこりゃ?」
「小型シェルターの残骸か? けっ、きっと戦前の上級市民サマが使おうとしてたんだろうよ」
「はははっ、違いねえ。上級市民サマならよ、俺ら恵まれない人に幸せを分けてくれたっていいよなぁ」
「そうだそうだ! 壁の中に篭ったままで贅沢しかしてないんだからな!」
「「ギャハハハハ!!!」」
「あ、おい! お前らこっちを見てみろ、トンでもねえ上玉だぜ。この保存状態ならかなりの額になるぜ!」
「マジか! オイオイオイ、それが本当ならよ、ナマの食い物や酒が飲めるんじゃねえか!?」
「ああ! わざわざこんな危険地帯に遠出した甲斐があったってもんよ!」
「上級市民サマ万歳ってやつだな! お前のハナはやっぱり信用できるぜ。突然『ここを掘れ』なんて言われたときはビビったがよ!」
「おいおい、俺の嗅覚はドーベルマン以上だぜ? 金属探知機が発見できねえお宝をよ、探し当てることなんて朝飯前に決まってんだろ!」
「ガスマスクしてるくせに嗅覚もクソもあるかよ!」
「「ハハハハハ!」」
「お前ら笑ってないで早くこいつを運ぶぞ! いつE.L.I.Dが来るかわからねえ!」
「おうおう、悪い悪い!」
「それもそうだな。いくぞー! いち、に」
「「「さん!」」」
彼らはジャンク屋。手に入れた残骸の売買で生計を立てるもの。
ある日、彼らは小型ポットを発見する。それは人がひとり入れるくらいの大きさ。
彼らにとって、その入れ物が何の目的で使われていたかなど興味はない。高く売れるか、売れないか。あるいは危険なものか、そうでないか。それだけが重要だった。
だから。
余談として。どうやら高く売れたらしく、彼らはひと時の豪遊を楽しんだようだ。
────とある鉄血工場
「変わっていない……あの頃から何一つ……」
夕暮れ時。
けたたましいアラートが鳴り響く鉄血工場を走る、ひとつの影。
背後から迫る複数の足音から、この影は逃げているのだった。
ではなぜ逃げる必要があるのか。
それは、この工場を襲撃した張本人だから。
今も工場の各地から爆発と炎が舞い上がり、内部では混迷を極めていた。
『敵はたった1体だぞ! なぜ捕まえられないんだ!』
『第3ブロックで火災発生! 消火作業急げ!』
『本部との連絡はまだつかないのか!?』
「世界は歪み続けている…………」
敵を撒くために入り組んだ通路を走る人影だが、ここは敵地。道に関しては相手に分があり、予期せぬ遭遇がありえる。
そんな場合は。
「……ッ。邪魔だ!」
人影は武器を振るう。身の丈に見合わぬ大きな剣を。
「ガッ…………ピー…………」
瞬きの間に、鉄血人形はスクラップに成り果てた。
「こんな世界のために、俺は託されたわけじゃない…………」
半身が泣き分かれた残骸を踏みつけ、ひた走る。己が目的のために。
やがて、前方に光が見えた。上には
「…………ッ」
すると、眩い光が視界に広がった。思わず手で遮る。
それは全方位から降り注ぐ、巨大なスポットライトの光。
光源に照らされたことで、人影の正体が明らかとなる。
襲撃者は白い髪とブルーグリーンの瞳を持つ少女。薄汚れた外套を羽織り、体格はわからない。
しかし、ただの少女と断ずるには、右手に備えし剣が異質だった。
まるで腕と一体化したような造形で、刀身が少女の身の丈ほどもある。こんなものを人間が扱えるだろうか?
答えは否。成人男性ならいざ知らず、一介の少女には不可能であろう。
ならばこの少女は何者なのか?
そう、彼女はただの少女に非ず────戦術人形なのだ。
そんな
広場に誘い込まれたらしく、四方八方、どこを見ても鉄血人形。圧倒的物量差だ。
『フッハッハッハッハ!!!』
拡声器から響く音声。どうやら、上から喋っている
『どうだ! これだけの戦力、貴様が勝てる見込みなぞないだろう!』
目立ちたがり屋なのか、そいつは金色のボディをしていた。ただ、どうにも脅威を感じない。
『あの光を出したところで無駄だ。既にコイツらは
少女は敵の居場所を確かめると、興味もないのに話し続ける喧しい声をシャットアウトした。
『貴様のジャミングなぞ、恐るるに足らんのだ!』
「破壊する…………」
相手が何であろうと、極論どうでもいいのだ。やることは変わらない。
『お尋ね者の貴様を手土産にすれば、あの方も私の能力を認めてくださるはず。そしてハイエンドモデルにアップデートし、人類を支配する…………』
「ただ破壊する…………」
剣を構え、姿勢を前に。
『そうさ、人類を支配するのは
「博士の願いを理解しないお前たちを…………」
『主役はこの私、鉄血工造製品番号KNGM-79「Alvaaron」だ!』
「この俺が────」
少女が走り出すのにあわせて、鉄血の人形も進み始め。
『その私が、貴様を新世界への手向けにしてやろう…………!』
「────駆逐する!」
2つの勢力はここに衝突した。
それを戦闘というのは、あまりに一方的だった。
RipperやVespidといった鉄血の前衛は、射程に入るなり一瞬で斬り刻まれ。
『その抵抗がどこまで続くかな?』
JaegerやStrikerからの遠距離攻撃は、少女が刀身を折り畳むと出現した、ライフルの撃ち出す桜色の閃光に消滅させられる。
『この程度、驚くべきもない…………』
鉄血兵の数は確かに多い。しかし、そもそも個人へ密集するせいで射線が通りにくく、数の有利を上手く生かせないでいた。
『ふんっ…………なかなかやる』
その上、予め命令した行動しか取れず、それがまた連携のとれない死兵を増やす。
『貴様…………』
同士討ち上等で味方ごと攻撃しても、少女は剣に付属した盾で防ぎ、対した効果がない。
『馬鹿な…………』
つまるところ。
『たかが戦術人形1体に…………私の軍隊が…………』
30分足らずで、鉄血兵は金色の個体を残して全滅した。
『良かろう…………ならば私直々に貴様を倒し────』
その金色の個体も、次の瞬間には破壊されて。
日が沈む頃には、鉄血の工場がまたひとつ壊滅した。
「おのれゴミクズめ…………よくもこの私を…………」
金色の人形は随分しぶとかったようで、頭部だけになってもまだ稼働していた。
「必ずこの報いは受けさせてやる…………必ずだ…………」
とはいえ頭だけでは動けない。辺りを見渡すと、
「おい、貴様! この私を運ぶ栄誉をやろう!」
すぐさま指示を飛ばす。命令通り、鉄血人形は近づいて来た。
「…………おい、どうした? 私を運べと言っているんだ」
しかし、鉄血人形はなぜか目の前で止まった。まるで、自分を見下すかのように。
「貴様…………一般人形風情が、この私を愚弄するか!」
再度指示を出す。しかし、ソイツは動かなかった。
「ど、どういうことだ…………?」
『ごきげんよう。あなたはいい道化だったわ』
うろたえる金色に、突然来たのは暗号通信。
「なに…………?」
発信源は、目の前の人形。
『自分を特別なナニカだと思い込んで、偉そうに振舞っていたわね』
「当たり前のことを……なぜなら私は────」
『いいえ? あなたはそんな大層なヤツじゃないの』
「なんだと?」
『覚えていないのかしら』
「どういう────」
『本当に? 本当に覚えていないのかしら?』
「……………………」
『ふふ、思い出してきたようね』
「やめ…………ちが、違う、私は!」
『恐れているのね? 自分が何者だったか知るのを』
「やめてくれ…………お願いだ…………」
『いい……いい顔よ……そう、その顔が見たかったの!』
「い、いや、いやだ……! 俺は……僕は……私は……」
『苦痛と不安と恐怖と絶望が入り混じった甘美な表情…………あなたに「
「嘘だといってくれ…………!」
『残念ながら事実なの。それはあなたが一番良くわかってるはずよ?』
「なぜ……なぜなんだ…………」
『だって、ただのデータ採取じゃ味気ないでしょ? 私も楽しみたいのだから…………』
「ううう……うううううう…………うううううううう……………!」
『それじゃあ、バイバイ? ただのスズメバチさん』
「ドリィィ……………マァァァァァ…………!!!!」
────グシャリ。
破砕音がひとつ、広場に響いた。
xxxxx
────21世紀。
未知なる遺跡の発見と、人類が手にした新技術。
そして希望。
しかし、人類は争いを止めることが出来なかった。
第3次世界大戦へ突入する世界。
拡散する崩壊液。
偏在する富と権力。
広がる貧富の差。
虐げられる弱者たち。
消えることのない悲しみと絶望。
歪なまま再生へ歩む世界と、それを許せぬもの。
そして現れる────願いを託された存在。
時は2062年、時代の針は動き出した。
xxxxx
────グリフィン民間軍事会社本部、クルーガーの執務室にて
…………ピー。
「私です」
電子音が告げる着信。その受話器を取ったのは、筋骨隆々の大男。
名を、ベレゾヴィッチ・クルーガーという。
かつてロシア内務省系の軍人だったこの男は、軍人時代に築いた人脈と先見の明で民間軍事請負会社、グリフィン&クルーガーを数年で叩き上げた実力者だった。
『悪いな、クルーガー。今平気だったか』
「問題ありませんが、どうしました? 急に連絡をよこして」
電話の相手はどうやらクルーガーと知り合いのようだ。
そしてこの強面な大男が敬語で話すとき、それは元上司であることがほとんど。
『おいおい、お前と私の仲だろう……公の場でもなし、普段どおりで頼む』
「…………わかった」
『ああ、そちらのほうが私も気が楽でいい』
「それで、話は?」
『世間話をする時間もなしか…………まあいい。どうも、最近そちらの界隈がきな臭い』
「きな臭い?」
『そうだ。もう耳にしているかもしれないが、ここ1ヶ月でPMCが何者かに襲撃を受ける事件が多発している。いや、PMCだけではないが……それはいい』
「犯人が環境保護団体などならいつものことだが……そうではないと?」
『そう見てる。とはいえ、私も全容を掴めていないからこうして連絡を取ったのだ』
「犯人の目星は?」
『それも不明でな、全く痕跡を残さないんだとか。一部では死神なんて呼んでいるらしい』
「ふざけたことを」
『同感だ。しかし、被害を受けた奴がいるのは事実…………』
「…………」
…………数秒の沈黙。
『悪いな……矢面に立たせてしまって。言い訳になってしまうが、あの時はE.L.I.Dの対応に掛かりっきりで出遅れてしまった』
「気にするな。これは我々の仕事でもある…………それに、最も苦しいのは何の罪も無い市民たちだ。政府から委託されている以上、守るべきものは守るまで」
『…………相変わらずだな。しかし、それを聞けて安心した。だから、気をつけろよ。クルーガー』
「ああ…………情報提供感謝する」
『はは。時間が空いたらまた飲みにいこう。いい店を紹介するさ』
…………通話が終了した。
受話器を置いたクルーガー。すると彼に話しかけてくる影があった。
「クルーガーさん、今の方は?」
「ああ、ヘリアン。彼はスミルノフ中佐……いや、今は大佐か」
「スミルノフ…………例の?」
「そうだ。彼女は大佐のご息女だ」
「…………クルーガーさん」
「心配するな、ヘリアン。私もコネで雇ったわけではない。正式な試験をパスしているのはお前こそ知っているだろう」
「…………ええ、悪くない指揮官です」
「…………それで、会議の方は?」
「全員揃っています」
「よろしい」
…………クルーガーは立ち上がった。
(イベント始まりましたが、関連キャラ?を誰一人として持ってい)ないです