能天使の右腕 作:答えてくれドルフRO
描写忘れてますが、前話の3人以外にも一応ちゃんと人形は居ます
それと字の文で数を数えるときは人間⇒人 人形⇒体 にしています
スコーピオンを会話にいれるとギャグ調になりません……?
────カルパチア山脈付近の鉄血偵察拠点
鉄血司令部強襲作戦は、さしたる障害もなく順調に進んでいた。
「…………よし、通信システム起動! 指揮官、聞こえる?」
『問題ない、聞こえているぞスコーピオン。第1フェーズは上手くいったようだな』
「うん。これから作戦は第2フェーズに移行! 作戦目標を復唱するよ。【敵司令部に集結しつつある鉄血部隊の殲滅、及びボスの撃破】だよね」
『その通りだ。鉄血はトップダウン型の指揮系統、先に頭を抑えればなお楽になる』
「了解! それと、データベースを探したら確かに輸送部隊が往来してた記録が見つかったよ。データを転送しておくね」
『わかった。他に報告することはあるか?』
「うーん。気になるのは、輸送部隊が数の割に輸送している物資の数が少ないことかなぁ」
『その輸送部隊、規模はどのくらいだ?』
「えっと、どうだっけStG44」
「一般的な鉄血輸送部隊と同じ規模ですわ。1回で運べるものを2、3回に分けているのでしょうか」
『確かに妙だな…………何を運んでいたかわかるか?』
「うーん、あたしたち電子戦にそんな強いわけじゃないからね~。まあ、やれるだけやってみるよ…………StG44が!」
「やっぱりわたくしなのですね……」
「だって1番上手いじゃん。頼むよ!」
「はぁ……任されましたわ」
StG44がコネクタを繋いでデーターベースに侵入する。
「どう? 見つかる?」
「少しお待ちになって…………ん、何かありますわ」
『どうした?』
「これは……【AUW】? 何かの略語でしょうか」
『聞いた事がないな……こちらのデータにもなしだ』
「新型の何か……指揮官の言ってた、妨害装置だったりする?」
「深部に何かありそうですが……すみません、わたくしはこれが限界ですわ」
『そうか……付近のマップは?』
「ええ、取得できましたわ。指揮官に渡されたのとおよそ
『なら作戦通りで問題ないか…………敵司令部の偵察はどうだ?』
「ペーペーシャたちがやってるよ! そろそろ戻ってくるんじゃないかな」
複数の足音が入ってきた。
「戻りました」
「お帰り~」
『いいところに。どうだった?』
「スケアクロウは司令部に居るみたいです。指揮を執ってる様子が確認できました」
『そうか…………他に妙な行動は見られたか?』
「遠距離からの偵察なので大雑把ですけど……特におかしなところは見られませんでしたよ」
『なら……引っかかるところはあるが、事前の打ち合わせの通りにいくぞ』
「「「了解!」」」
…………通信終了。
「よーし、第3部隊はStG44とここで待機。第1部隊はあたし、第2部隊はペーペーシャに着いて行ってね。それじゃあやるよ!」
「ええ、やりますわよ」
「行きましょう同志!」
こうして話は冒頭に戻る。
xxxxx
────GNシステム、リポーズ解除
xxxxx
「よし、なんとか凌いだ!」
「指揮官の
小隊は無事にボスであるスケアクロウを撃破した。したのだが。
「わかってるってそんなこと。だから隙を窺ってるんだよ、今!」
「突撃癖のあなたが防戦に回るのも、中々見ていて面白いですけどね」
「どっちの味方なのさ!?」
「勿論指揮官のです!」
司令部を制圧した途端、鉄血がどこからともなく出現し、攻勢を仕掛けてきたのだ。悪いことは重なり、司令部と思われていた場所はハリボテで、防御力はほぼ皆無。瓦礫の山と化すのも時間は掛からず、結果部隊は散り散りになってしまった。ここにいるのはVz.61とPPSh-41の2体とダミーだけ。
おまけに戦力差は歴然。このまま篭城していても磨り潰されるのが目に見えていた。
「はぁ……それより、こっちで残らなくても良かったのに。ペーペーシャは」
「急ですね……嫌なんですか? 私が残ったら」
「そんな訳ないじゃん! むしろ心強いよ」
「当たり前です。スコーピオンの尻拭いを誰がやってきたと」
「あはは! 感謝してるよ」
「……まあ逃げ遅れただけですけど」
「えっ、嘘!?」
「さぁどうでしょうか」
「ねぇ、今そう言うのやめてくれないかな!?」
「…………冗談です」
「…………はぁ」
「…………それで、勝算は?」
「……よくて2割かなぁ。今回ばかりは
人形は基本的に死なない。自身のデータを基地にバックアップしており、破壊されても新しいボディにロードすればいいからだ。とはいえ、完全に破壊された場合は、バックアップを取ってから破壊されるまでの記憶は失われてしまう。
だとしても、1度死ねば終わりの人間と比べるなら、破格の戦力だった。
「それ、ほとんど私が矢面に立って、の確立ですよね?」
「そうなるね!」
「はぁ……まったく、世話を焼かせる女ですね」
「嫌なら来なくていいんだよ?」
「…………嫌とは言っていません」
「あはは! なんだかんだ言って着いて来てくれるところ、大好きだよ!」
「……っ!」
「さて、ここで待っていても仕方ないからね。まずは合流しなきゃ。敵中突破といこう!」
「あ、ちょっと…………まったくもう!」
銃火の中に飛び出したVz.61を、慌ててPPSh-41は追いかける。
事前に彼女たちは、作戦の遂行が不可能となった場合は撤退するように命令されていた。
しかしまだ不可能ではない。勝算が
(どうせ離れていてもあたしの弾は
Vz.61は敵の頭を撃ち抜きながら、追従してくる仲間の姿を見て、笑みを深めた。
「愚かな。この期に及んでまだ抵抗するとは…………」
部下からの連絡を受けたスケアクロウは、未だ戦おうとするグリフィンの部隊を嘲笑する。
「既に損耗率30%を超え、全滅も同義。それでも戦うと…………」
彼女は戦場に存在する自分の
「いいでしょう。人間の手足に成り下がったあなた方ゴミムシは、わたくしの手で葬って差し上げます。袋の鼠ということを思い知らせてあげますわ」
浮遊しながら移動する彼女の目は、赤く染まっていた。
「スコーピオン! 方位075・距離300、イエーガー!」
「遠すぎるって!」
「そこの残骸の影に!」
「わかってる!」
2体は廃墟の残骸に隠れる。一拍遅れて銃撃。逃げ遅れた最後のダミーが倒れる。
「合流ポイントまでもうちょっとなんだけどな~!」
弾装を交換しながら、Vz.61は敵の狙撃手を覗き見た。しかし牽制射が飛んできたため、すぐに頭を引っ込める。
2体はこうなったときのために、予め決めておいた合流ポイントへ向かっていた。
「スコーピオン、残弾は?」
「このマガジンで最後だね。ペーペーシャは?」
「私も同じくです」
「2人あわせても100発くらいかぁ……」
「弾切れも目前ですね……」
「まぁ、そうなったらそうなったで、白兵戦に切り替えるだけだよ」
「1体でも多く地獄に鉄血共を送ってあげないとですね」
「うん。それに、お楽しみの時間もあるからね!」
Vz.61が腰に吊るされた筒のようなもの────焼夷手榴弾を撫でる。
「確かに」
PPSh-41もまた、ポケットに入った手榴弾の感触を確かめた。
「それで、闇雲に飛び出して、どこがボスの居場所かわかってるんですか?」
「え? いや、まさか! わかるわけないよ」
「は?」
「まってまって、怒らないで。こっちから探せないなら、来てもらうのさ!」
「…………博打じゃないですか! まさか2割って」
「まぁ、乗ってくる勝算がそれかな?」
「このバカサソリ! 乗ってこなかったらどうするんです!?」
「大丈夫大丈夫、あっちはきっと乗ってくるよ! 一応確証もあるから安心して!」
「全然安心できません…………まぁ、今更変更もできないですし、いいですけど」
「あはは……」
「それとスコーピオン、どうするつもりですか? 射程の短い私たちでは、あのイエーガーどうにもできませんよ」
「どうしようかなぁ」
悩んでいたその時、イエーガーの頭が吹き飛んだ。
「何が…………?」
『秘密兵器の私を忘れないで欲しいよ』
無線機から聞こえてきた声。信号は味方のものだ。
「ティス! 無事だったんだね」
『秘密兵器が簡単にやられるわけないもん』
「同志ティス、助かりました! 今どちらに?」
『そこから北西100mにある建物の屋上。援護するから2人は────』
しかし、その言葉は最後まで紡がれることはなかった。
PPSh-41が目を向けた先、OTs-12の居る建物が炎に包まれたからだ。
「まさか…………」
「ティス!? ティス、返事して! ティス!」
呼びかけるも、流れるのはノイズばかり。
「そ、そんな……同志ティス……」
「…………落ち込んでる暇ないよ、ペーペーシャ。どうやら、釣れたみたいだからっ!」
『その通り。他所の心配をしている暇はありませんのよ』
無線モジュールに割り込んできた何者か。
「その声っ!」
…………ピピッ!
センサーが
「あら、今のを避けるとは。屑鉄にしてはよくやりますね」
土ぼこりの中から現れるは、鉄血のボスであるスケアクロウ。
指揮棒を携え、無数の小型ビットを操って彼女たちを苦しめていた張本人だった。
「うええ……今のはちょっと危なかったね!」
「そんな雑に褒められても嬉しくありませんよ」
「今のを褒め言葉だと思って? 皮肉ですわよ」
「こいつ…………」
地面を転がり衝撃を逃がしていた2人は、立ち上がり、背中合わせでスケアクロウと対峙する。
自らを取り囲む
「まあ……そのゴキブリ並みの戦意だけは褒めて差し上げますわ。手折る楽しみになりますもの」
「相変わらずどうして、性格悪いよね鉄血人形は。ネジが壊れてるんじゃない?」
「スコーピオン、それはありませんよ。元々壊すしか脳がないんですから」
「…………なるほど。あなた方が地獄に行きたいというのはわかりましたわ。今すぐ叶えて差し上げますからそこを動くなよゴミ屑が」
スケアクロウたちが指揮棒を振るう。すると、周囲に散っていたビットはVz.61たちを取り囲むように整列した。
「へぇ。1度あたしたちに壊されておいて、勝てると思ってるんだ?」
「ハッタリを。駆け引きのつもりですの? わざと倒されてあげたのに、それも理解せず思い上がるとは愚かな。付くならもっとマシな嘘を言うべきでしたわね」
「頭数だけは一丁前な奴に言われたくはないよ」
「それは自虐ですの? 懲りずに湧いてくるあなた方も大概ですわ」
「…………」
「…………」
「あら。お二方、だんまりで? さっきまでの威勢はどうしたのかしら」
(無線も多分盗聴されてるよね…………挑発に乗るかと思ったけど、意外と冷静な奴…………)
Vz.61は心中で毒づいた。
「ほら、早く命乞いをしなさい、グリフィンの生ゴミさんたち。そうすれば助けてあげるかもしれませんわよ?」
「…………カケラほど思ってないことをよく言いますね」
「それはあなた方次第ですわ。ここで野垂れ死ぬか、それとも…………」
(くそっ、呼びかけてるけどみんなの反応がない…………妨害の影響なのか、それとも)
やられてしまったのか────後に続く言葉を飲み込む。
「残念ですけど、私たちは鉄血に命乞いなんてしません。そして野垂れ死ぬつもりもありません」
「ならどうすると?」
「決まってます…………貴女を倒して、指揮官の所に帰るんです!」
「ふふ、弱い犬ほど良く吼える…………残念ですが、あなた方はここで終わりですわ」
ビットに光が灯る。エネルギーが充填され、スケアクロウの合図で放たれるのは明らかだ。
「…………っ」
「先ほどから小賢しく無線を飛ばしていたようですが、あなた方が最後なのですわ。それでは、さようなら────」
(これはもう、相打ちの覚悟を決めるしか────)
こうなっては仕方ない。覚悟を決めたVz 61が走り出そうとして。
同時にスケアクロウが指揮棒を振り上げ、合図を出そうとしたそのとき。
────ドーン!
両者の間に吹き荒れる突風。
「なに!?」
近くの瓦礫が破壊されたのだ。
「いきなり壊れて……」
「ガスマスク女! わざと外して威嚇のつもり?」
Vz.61の問いかけ。
「……わたくしならあなた方の眉間を正確に、1mmの狂いもなく撃ち抜けますわ」
つまり、スケアクロウたちは動いていないということ。
「えぇ? じゃあ誰が────」
「スコーピオン、建物の上に誰かいます!」
「上!?」
PPSh-41が指差した方向、そこに見えるは人型の影。まるで始めから存在していたかと錯覚してしまうほど、自然とそこに居た。大きさは人間とほぼ同サイズ。しかし、外套を羽織っているようで、その細部まで窺うことはできない。太陽を背にしていたことも影響している。
ザッ、ザザッ…………。
(これは……ノイズ? なんで……)
『今のは威嚇射撃だ。次は当てる』
通信機から聞こえてきたのは、感情を感じさせぬ冷たい声。
予想外の乱入者に、両者は思わず動きを止めた。
「オープン回線……? あの人影がやってるの?」
「おそらく……」
「でも信号は未登録だよ……幽霊、とかじゃないよね?」
「私たちの視覚モジュールがバグを起こしていないなら、現実ですね…………」
(ジャミングの中ですわよ……? どうして無線が……まさかこちらの周波数を?)
スケアクロウを訝しげに見上げる。
そんな彼女たちの元へ、再びの通信。
『お前たちに問う。この戦闘に意味はあるのか』
「……あれ、人形だよね?」
「そうでないなら、信号なんて出さないでしょ……」
「だよね……増援だったりする?」
「そんなの聞いてませんよ……」
「というか意味を問うって……何を言ってるんだろ」
「じゃあスコーピオンが聞いてくださいよ。会話の成り立たない予感がありますけど…………」
Vz.61たちは謎の人影の登場に混乱していた。それでも鉄血への警戒を忘れたわけではない。今も包囲されている状況に変わりはないからだ。
「意味とは? 目の前に敵が居る。それ以上の理由があって?」
(全部隊に通達。あの人型に照準を合わせなさい)
一方、スケアクロウは配下の鉄血兵に命令を出しながら、人影の出方を窺っていた。
『…………お前たちも理解しないのか』
「……何を理解するというのです? わたくしたちは戦うために作られた戦術人形。戦うことこそがわたくしたちのあるべき形ですわ……あなたは違うと?」
『願いだ』
「願い……? ふふ、戦いこそがわたくしたちに望まれたこと。人間たちが、そうしたのです」
『違う…………』
「いいえ、違いませんわ。あなたも、そう作られたのでしょう?」
『違う!』
「ああ、それと。願いならわたくしたちにもありますの。人間を消し去りたいという…………願いが」
『…………理解した。お前たちも、博士の理想に反するものたちだと』
「そうだとして…………どうするというのです?」
(この程度で……随分気が短いようですわね。博士なる人物が気になりますが、動かれると厄介ですわ)
『────破壊する』
(どこの誰か知りませんが、ゴミ掃除の前に消えていただきます────風速入力、戦術データリンクよし……全体射撃、今!)
スケアクロウは指示を下した。
両者の会話を聞いていた2人。
「えっ、まさかこっちもやろうってんじゃないよね!?」
「あのガスマスク女……ちゃっかりこっちにまでヘイトを向けさせてますよ」
「なんてことしてくれたんだ…………この状況で攻撃なんてしたら」
「まあ、巻き込まれますよね…………」
嫌な予感は当たるもの。
────ドカーン!
「ああやっちゃったよ!」
「…………」
視線の先。鉄血が降らせた銃弾と砲撃の雨は人形を直撃していた。
不意打ちだったのか、人形は回避行動もとれなかったらしい。
爆発の煙と倒壊した建物が舞い上げる粉塵で、人形の姿は見えなくなってしまった。
「あっけない…………さて、次にああなるのはあなた方ですわよ」
普通に考えて、あれだけの攻撃を耐え切れるわけがない。
「今ので終わりなの……? 何しに来たんだろ…………」
「ッ! スコーピオン、ふせて!」
「えっ?」
────GNソード。目標を駆逐する
突如、黒煙を切り裂き、桜色の閃光が地に落ちた。
ティスには序盤お世話になりました……