能天使の右腕 作:答えてくれドルフRO
スコーピオンが主人公みたいになってますが
一応オリ主が主人公です……
再び待機している第3部隊。
謎の光は消えたが、未だ攻略部隊との通信はできなかった。
ドローンもなぜか戦場に近寄るとオフラインになる始末。
そして、
「ここまで……なんですの……?」
無線機からは雑音が流れるばかり。
「お嬢ちゃん、流石に限界だぜ! 早く乗ってくれ!」
「くっ…………」
ヘリのプロペラは騒音レベルの音を掻きたてる。一時的に占領したとはいえ、ここは鉄血の管轄区。つまり、離れた鉄血の哨戒所が探知する恐れを孕んでいた。早急に離れる必要がある。
StG44とてそれを理解しているからこそ、悔しさを顔を出しつつもヘリに乗り込んだ。
「最後に…………スコーピオン、こちらStG44。応答しなさい……こちらStG44。攻略部隊、応答しなさい!」
とはいえ諦めきれない彼女は、一縷の望みをかけて最後の通信を行った。
『……………』
しかし、無線は沈黙したまま。
(やはりスコーピオンたちはもう…………)
彼女の電脳が最悪かつ、最も高い可能性を導き出す。
(せめてメンタルモデルだけは後で回収しに向かいますわ……)
人形が破壊されるのは日常茶飯事だ。特に、鉄血との激戦区では。珍しくもない、日常の1頁。
StG44はそう念じ込むことで己の無力感を封じ、鉄の揺り籠の微弱な振動と騒音に身を任せようとした。
『………い………あ………』
(…………!)
しかし、どうやらそれは叶わないらしい。
「スコーピオン! スコーピオンなのですか!?」
機内が慌しくなった。
『……よ……こちらスコーピオン! StG44だよね? よかった、繋がって!』
(この声、信号……間違いありませんわ、スコーピオンのもの)
「本当によかったですわ、ギリギリでしたのよ!」
『あはは! ごめんごめん、ちょっとゴタゴタしててさ~』
「まったく……それで、ご無事ですのね?」
『無事……まあ、うん。一応無事だよ!』
「……引っかかりますが、合流を急ぎましょう。今どちらに?」
『合流地点Bに向かってるよ!』
「わかりましたわ。任務の方はどうでした?」
『あー…………一応完了かな!』
「……まあそれも後でお聞きします。それではまた!」
『うん、待ってるよ!』
通信を終了した。
StG44は操縦席の方を見ながら叫ぶ。
「パイロットさん、今のは聞こえまして!?」
「おうよ! 少し揺れるが、我慢してくれよな!」
ヘリは方角を変え、進みだした。
────司令部施設
部隊は無事に司令部へ帰還した。簡易的な検査を終えた後、執務室へ向かう。
「ごめんね、指揮官。一応メンタルモデルの回収は出来たんだけど、ボディは……」
「帰ってきたならいい。資材さえあればまた作れるからな……」
「うん……」
「それより、何があったか話して欲しい」
「わかったよ」
Vz.61は自分が体験した内容を報告した。
「という感じかな。あの後辺りを軽く調べたけど、鉄血兵は大体倒されてたよ」
「作り話かと疑いたくなってきたな…………」
「あたしたちが指揮官に嘘をつけないのは知ってるでしょ?」
「わかっている。しかし現実離れした話で、理解が追いついていないだけだ」
「まぁ、そうなりますよね…………」
「それで、その【人形】はどうなったんだ?」
「ああ、それなんだけどね────」
「…………」
PPSh-41の額から数ミリで、凶刃は止まっていた。
「斬ら……ないんですか」
「意味を感じない」
「とか言って、そのまま消えちゃったんだよね」
「消えた?」
「うん。文字通り、消えちゃった。少なくともあたしにはそう見えたよ。気になるところは後で記録データから確認して欲しいな」
「なるほど、よくわからない奴だ……それでも危険なのは確かだ。本部にも伝えておく」
「お願いします」
「にしても、あの時はペーペーシャも無茶してくれたよ! びっくりしたもん!」
「あれは、ただ……私はスコーピオンを守りたくて…………」
「あはは! 可愛いこと言ってくれるよね!」
「そういうスコーピオンこそ、あの後『危ないことしないでよ!』って泣きわめ────」
「あー、あー! 聞こえなーい!」
「まったくお前たち……報告は以上か?」
「あ、うん。そうだね、このくらいかな」
「わかった、怪我しているのにすまなかったな。修理は優先でといっておく」
「あ、ほんと? ありがとう指揮官!」
「それとペーペーシャ」
「……はい」
「お前の行動は、1歩間違えば情報も、メンタルモデルも全て失った危険なものだ」
「……わかってます」
「だが……お陰でスコーピオンは助かった。命令違反を良しとする訳でもないが、今回は不問とする」
「……ありがとうございます」
「以上だ。ご苦労様」
2体は退出した。
「……帰ってきやがりましたね、サソリ」
執務室から出たVz.61に、横合いから声が掛かる。
出所はニヒルな笑みを浮かべた少女。両手を組んで壁に背を預けた、タンクトップにホットパンツという出で立ちの、生傷が絶えない戦術人形────イングラムM10。
「うん、帰ってきたよ~。ただいま、イングラム」
「ふんっ……随分身軽になったじゃないですか。落し物でもしたんですか?」
「それが強盗に出会っちゃってさ~。腕集めが趣味の変な人形だったんだ~」
「……片腕だけ残すなんて間抜けな人形ですね」
「そりゃあたしだって抵抗するよ! 黙って腕取られる趣味ないし~」
「そうですか。で、ソイツはどうしたんです?」
「それが逃げられちゃったんだよね~。いや~、残念!」
「……命拾いしましたね」
「まあ、今回はちょっと危なかったけどさ~」
「サソリを壊していいのは私だけです。勝手に壊されたら承知しませんよ」
「あはは! 大丈夫大丈夫、そんなに柔じゃないもん」
「…………」
そっけない態度で話す少女。しかし、薄っすらと目元に赤い線があった。
「イングラム、あたしは大丈夫だよ~?」
「…………」
「ちゃんと帰ってきたよ。だから、そんなに震えることはないの」
足を引きずりながら少女に近づき、片手で引き寄せる。
「泣かなくていいんだよ」
背中を一定のリズムで叩く。子供をあやすように。
「……馬鹿ですか? 私は泣いたりしません。サソリの見間違いです」
「うーん。なら、そういうことにしておくよ!」
「…………」
そして、まるで2体だけの空間を作られると面白くない
「イングラム、スコーピオンは怪我しているんですよ。さっさと離れたらどうです?」
「……あら、居たんですかイワン。興味なかったので気がつきませんでした」
「……ええ、いましたよ最初から」
「そうですか。あなたは怪我してないようですし、宿舎に戻ったらどうです?」
「残念ながら私も点検があります……スコーピオンを修理場に連れて行く途中なんですよ」
「……それならご心配なく。サソリは私が連れて行きます」
「いえいえ、指揮官から聞きましたよ。イングラムは後方支援帰りで疲れているんですよね。どうぞどうぞ、お部屋でごゆっくり」
「生憎、あなたみたいに柔な鍛え方をしてないので全然平気ですよ、お気遣いどうも。だからさっさとどこかへ行ってくれませんか?」
「嫌です」
「どうぞお帰りください」
「嫌です」
「帰れ」「嫌です」「帰れ」「嫌です」「帰れ!」「嫌です!」
言葉の殴り合いに挟まれたVz.61は。
(うーん。あたしを想ってくれてるっていうのは嬉しいけど、もうちょっと仲良くしてくれたらもっと嬉しいんだよね~)
随分暢気だった。
「ぜー……はー……頑固ですね……」
「はー……はー……イングラムこそ……」
「はいはい、2人ともそのくらいにね~?」
「「でも!」」
「ここ、執務室前だよ?」
「「あっ……」」
俯く2体。
独占欲と嫉妬の発露に、あとから羞恥が追いついてきたからだ。冷静になったともいう。
「2人が心配してくれてるのは嬉しいよ。ありがとっ」
「…………」
「…………」
(まぁ、気まずくなるよね~。大丈夫大丈夫、あたしに任せて!)
「あぁ~、整備行きたいけど、腕はないし足も動かないしで歩き辛いんだよね~。誰か一緒に来てくれる人いないかなぁ。2人くらいいるといいんだけどな~」
わざとらしいくらいの口調で、交互にちらちらと見る。
「!」「!」
すると、飼い主に呼ばれたペットがごとく、凄まじい勢いで顔を上げる人形たち。
そこにVz.61は勢いよく振られる尻尾を幻視した。
(ほんと可愛いなぁ、2人とも!)
無言で両手──実際は片腕だが──を広げるVz61。その意味を2体は完全に理解していた。
イングラムが左側に、PPSh-41が右側に。2体に支えられるようにして、彼女たちは整備へと向かった。
勿論というべきか、Vz.61たちの声は執務室に丸聞こえだった。
「スコーピオン、いつか背中を刺されるんじゃありませんの…………?」
「人形同士の殺傷沙汰か? 笑えないぞ」
「そうならないように願いたいものですわ……」
「全くだ。これ以上私の胃を壊されたら困る」
「誰も壊したくて壊しているのではないのですわ」
「わかっている……」
「それで指揮官、解析結果はどうでしたの?」
「ああ……大急ぎでペルシカに連絡を取った甲斐があった。どうやら、あの光はフォトンの崩壊現象によるものらしい」
「有害ではないと?」
「一応はな」
「心配事がひとつ減りそうですわね」
「アイツへの借りは増えたがな……」
指揮官はため息をついた。
「今回は私のミスだ……衛星で見えた情報をすべてだと思い込んでしまっていた。情報の精査を怠るとは、指揮官失格だな」
「……指揮官、あまり自分を責めないで。本部からの急な連絡だったし、出来ることは限られていましたわ」
「…………」
「それに、責任はわたくしにもありますわ。もう少し深く侵入できていたなら……」
「いや、それは適性判断を誤った私が悪い。お前は出来ることをやってくれた」
「……でしたら指揮官。なおのこと思いつめたりはしないで。スコーピオンたちは帰って来れた、その結果を喜びましょう?」
「……そうだ、な。……それにしても、謎の戦術人形か」
「スコーピオンたちを助けてくれたらしいけど?」
「だが攻撃もしてきた。言ってることも断片的すぎて訳がわからない」
「まぁ……そのあたりは、本部が判断しますわ」
「それもそうか。私にそこまでの決定権はない……だが、備えておかなければ。次も助かるとはわからない」
「ふふ、ご一緒させて貰いますわ」
「こちらからも頼む」
「ところで指揮官、気になるシャンプーがあるのだけれど」
「…………ほんと、いい性格してる」
────16Labの研究室
「これは……」
運びこまれた人形の腕を解析しているのは、猫の耳がついた白衣の女。
「溶断? いえ、もっと根本的な……」
様々な計器のほか、パソコンのディスプレイにはいくつもの数値が表示されていた。
「擬似神経のショート、電子筋肉の寸断……」
細い指でキーボードを操作すると、新たなタブが表示される。それは複数の球体がくっつき、また離れていく様子。
「間違いないわ……これは分子の結合崩壊……」
周囲の計器も異常な数値を見せていた。
「でも……こんな技術、誰が……」
女────ペルシカリアは立ち上がった。
「まさか…………」
次回、オリ主君にこちらでの名前がつきます
(展開が)遅い……遅くない……?
なおここの指揮官は後方幕僚不在のため胃がマッハです