能天使の右腕   作:答えてくれドルフRO

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本日は二話連投です。
ホワイトデー、皆さんはどの人形と過ごしていますか?


1-5:実体解析

 

 

 

 

 

────グリフィン本部 会議室

 

 

 

 G&Kの本部で、極秘に緊急会議が行われていた。

 円卓に備え付けられたディスプレイが、ある人形の映像を流している。

 イスに座る指揮官たちはそれを食い入るように見つめていた。 

 その中でも一際大きなイスに座るのは、社長のクルーガー。側に控えるのは上級代理人のヘリアンだ。

 映像が一巡すると、クルーガーが司会の音頭を取った。

 

「手元に資料は行き渡ったな? 以上が、先日報告のあった人形だ」

 

「これは…………」

 

「推進力もなしに飛べるのか」

 

「規格外です。一体どこの会社がこんなものを」

 

「正規軍の軍用人形並みか、それ以上だぞこれは」

 

「ああ。おまけにツェナーの通信妨害だと? 鉄血の新兵器と言われたほうがまだ納得できるわ」

 

「だが鉄血にも攻撃しているぞ」

 

「だからわからんのだろうが」

 

 それぞれの役員が憶測を言い、また反論し合っている。

 

「事態は非常に深刻だ。条約と鉄血のこともあって、この人形の調査に回せる戦力は多くない」

 

 それもクルーガーの発言で収まりを見せた。

 

「軍には?」

 

「報告済みだ。既に会議が開かれ、対応についての議論も行われている」

 

「ふむ……もし軍が行動を起こすとき、我らはどうする?」

 

「無論、要請があれば協力する他ないだろう。この人形がG&Kの委託地区にいる限りは、な。そして、私はこの人形が昨今の襲撃事件を起こした犯人と見ている。既に我々へ武器を提供している工場がいくつか破壊され、無関係ともいえない」

 

「噂の【死神】か? ついにグリフィンにもやってきたわけだ……」

 

「何が【死神】だ、馬鹿らしい。たかだか人形に大層な名前をつけて怯えるなど人間のすることか」

 

「なんだと、ラグナ。お前の目は節穴か。今の映像を見て、お前の人形部隊で相手が出来るとでも?」

 

 ラグナと呼ばれたのは壮年の髭を蓄えた男。

 

「ふん、たかがロートル人形が遅れを取っただけだろう。エリート人形を揃えた私に勝てぬ道理などない」

 

「貴様……」

 

「やめろ、2人とも。今はクルーガーさんが話している」

 

「ヘリアン……」

 

 クルーガーは頷いた。

 

「その通り、今は我々がどう動くかだ」

 

「おお、そうですそうです。件の人形なら、備蓄倉庫や司令部を強襲してくる可能性もあります。最近は人類人権団体の活動も活発で、先日も我が司令部の備蓄倉庫が爆破されました。社長、いかが致します?」

 

 早口でまくし立てるのは、神経質そうなメガネをかけた男。

 

「奴は人形の視界から消えることが確認されている、機械の監視はあまり役に立たないだろう。そうなると、人間が夜警に立つしかない」

 

「やはり最後は人ですか。また経費が増えますな……スポンサーは納得するでしょうか」

 

「してもらうしかあるまい。人形は優秀だがあくまでサポートなのだ」

 

「うむむ……被害が出る前に見つけるというのは」

 

「現実的ではないな。既に目撃地点周辺の調査を行ったが、見つかっていない」

 

「衛星や人形の調査は意味が無いと……ならば」

 

「消極的静観。情報が揃うまではこれしかあるまい。無論、こちらでも対応策は練っていく」

 

「……嵐はすぐに去って貰いたいところです」

 

「そのために軍がいるのだ。こんな時代とはいえ、向こうにも被害がでるのなら話は違う」

 

「去るのを待つのではなく吹き飛ばすと」

 

「もし目撃した場合は情報提供を頼むぞ」

 

「できれば出会いたくないですな……」

 

 今度は資料を捲っていた男が口を開く。

 

「それで、そもそもこの人形は何者なのかね」

 

「ああ、今日の本題はそこだ。ヘリアン」

 

「はい」

 

 ヘリアンは別の資料を配った。

 

「これは?」

 

「あの人形の予想スペックだ。ペルシカにこの映像を見せたところ、思い当たる節があるようだった」

 

「16Labの娘か。確かにアレなら何か手がかりを見つけてもおかしくはないな」

 

「そうだ。そこで部隊を向かわせ鉄血の残骸を回収、解析させた」

 

「それで彼女はなんと?」

 

「ああ────」

 

 

 

 

 

────回想 16Labの研究室

 

 

 

 ディスプレイには撮影された映像と、解析結果が並べられていた。

 それをペルシカが見て呟く。

 

「消えたかと思ってた……」

 

「ペルシカ、おい、聞いているのか」

 

「えっ? あ、うん。ごめんねクルーガー……ちょっと昔のことを」

 

「昔?」

 

「うん。私が90wishにいたころの話」

 

「それがあの人形と関係あるのか」

 

「ある……と思う。1回だけ、見せてもらったことがあるの」

 

「それはなんだ」

 

「太陽炉────()はGNドライヴ、とか言っていたかな……」

 

「太陽炉?」

 

「そう。重粒子を質量崩壊させることでエネルギーに変換する動力炉……しかも変換効率が100%だから、理論上は半永久的に稼働する…………」

 

「……それを作った者がいると?」

 

「うん。私も理論は聞かされたけど、ほとんど理解できなかった。私が作るなら、あと10年掛かるかな……コアは太陽炉の技術を少し使っているの」

 

「お前がそこまで言うか。その彼、リコリスとは別人か?」

 

「別人よ。私たちが90wishに入るより前から居たみたいだけど……」

 

「名前は?」

 

「────Dr.レイと呼んでいたわ。元々は崩壊液の研究をしていたらしいけど、それも本当なのかは」

 

「わからないか」

 

「ええ……ごめんなさい」

 

「構わん。お前に技術を話したというなら、手がかりを残している可能性も高い。それで、その太陽炉がどう関係する?」

 

「うん……太陽炉を搭載した戦術人形。それがあの人形かな……」

 

「つまり、ほぼ無限に動ける人形というわけか」

 

「理論上、だけどね……」

 

「ならペルシカ、そのDr.レイと連絡は取れないのか」

 

「彼は……その」

 

 少し間をおいて「もう居ないの」

 

「居ない? どういうことだ」

 

「私がI.O.Pに逃げる直前、手紙が来てから、音沙汰なくて。研究施設も表向きはともかく、太陽炉に関しては極秘だったみたいでわからないの」

 

「しかしそれだけなら居ないとは言わんだろう」

 

「……その研究施設も、研究員も、私がI.O.Pに逃げた直後に全部消えたわ……当然、レイも」

 

「消えただと? 確かに当時は大戦中だったが────」

 

 クルーガーの脳裏をある可能性がよぎった。それは、内務省系軍人だったクルーガーだからこそ初見で思い至ったこと。

 

「多分、クルーガーの考えてる通り。こんな技術、流出したら大変だもの……私も、今まで言えなかった。いえ、言わないように()()()()()()から……」

 

「Dr.レイにか?」

 

「うん……」

 

「……手紙の内容は?」

 

「別れの挨拶と、まだ解読できない暗号の羅列よ……【Ring the Daybreak's bell(夜明けの鐘を鳴らせ)】。私が出来たのはここまで……」

 

 クルーガーはこめかみを押さえた。

 

「ひとまず、その件については置いておく。本題に戻るぞ」

 

「あ、うん……」

 

「この人形の予想されるスペックをお前の私見でいい、まとめておけ。話の通りなら10年以上前に作られたことになるが、性能は明らかに最先端だ」

 

「わ、わかった……」

 

「それと、この人形の呼称だ。何時までも名無しでは呼び辛い。何か聞いていないか」

 

「ああ、それなら────」

 

 

 

 回想終了。

 

 

 

 

 

「ペルシカの発案で以後、当該人形は【革新者(Innovator)】と呼称する」

 

「また大それた名前を……嘘ではないのが憎たらしい」

 

「この資料にあるデータが本当なら、確かに革新的ですね……現在のエネルギー問題も解決できてしまう」

 

「軍が動くとは、なるほどこういうカラクリか。しかし、それならこちらで身柄を確保し、軍や政府に売ればより良い結果(利権)になるのではないか?」

 

「馬鹿、このスペックの人形をどうやって捕獲するっていうんだ、人形の天敵みたいな奴を」

 

「なに。たかが人形ひとつ、数で押し切ればよかろう」

 

「そのためにいくつ人形が壊れると思ってる。リスクとリターンが釣り合っていないぞ」

 

「その通り。現段階での手出しは無用。ただ、被害にあった場合の反撃は禁止しない。近隣の司令部と協力して対抗しろ」

 

「へいへい、社長様の言うとおりに」

 

「貴様……」

 

「よせ、ヘリアン。それで、今後対策するにあたって情報収集ができる指揮官は?」

 

 クルーガーの言葉に快い返事をするものは居なかった。厄介事になるのが目に見えているからだ。とはいえ、今手をこまねいて他社に掠め取られるのも気に食わない。そんな気持ちもあって、それぞれがそれぞれの顔を窺っていた。

 

「生憎、俺は無理だな。鉄血との衝突範囲が増えてきてる」

 

「すみません、私も倉庫の件で……」

 

「なら、最初に遭遇したあの女に任せればよかろう。前線もひとつで暇をしているだろうからな」

 

「おお、それは妙案だ」

 

 そうなるとこの貧乏くじ(鉄砲玉)を誰かに押し付けたくなるもので、ラグナの言葉に反対する声は上がらなかった。

 

「他に代案もなし、か……」

 

 クルーガーは息を吐く。

 

「本件はひとまずここまでだ。次は鉄血の新兵器についてだが────」

 

 会議はもう少し続きそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────夜、Vz.61たちの宿舎にて

 

 

 

「ペーペーシャ、おやすみ~」

 

「おやすみなさい、スコーピオン」

 

 人形たちは整備を終え、宿舎でスリープモードに入ろうとしていた。

 宿舎は2体でひとつの部屋を利用しており、2段ベッドを採用している。ここは上がPPSh-41、下がVz.61だ。

 

(あぁ~、今日も色々あったなぁ~。あんな人形もいるなんて、世界は広いよね~。手足はひとまずパーツを変えれば動いたから安心したよ)

 

 毛布の温もりに包まれつつ、Vz.61のメンタルはスリープモードに入っていく。

 

(さぁて、データベースにアップロードしなきゃ…………)

 

 人形たちは擬似的な眠りに就き、夜の帳も次第に下りていった。

 

 

 

 

 

────ゴーン

 

 

 

 

 

────ゴーン

 

 

 

 

 

────ゴーン

 

 

 

 

 

(あれ……? ここ、どこだろ。家? 確か、あたしは宿舎でスリープモードに入ったはず……)

 

 Vz.61のメンタルは目覚めた。しかし、そこは見知らぬ場所。目の前には初老の男が居た。

 

「ん? あぁ、早いな。おはよう」

 

「おはよう」

 

(え、この人誰? なんであたしに話しかけて…………)

 

「システムはどうだい? 順調に動いているといいんだけど」

 

「問題ない。ボディの方も馴染み始めている」

 

(まって、もしかして答えてるの……私? でも、こんな記録は……)

 

「そうか、そうか。それはよかった。ああ、朝食は出来ているよ」

 

「博士、また勝手に作ったのか」

 

「おいおい、老人の楽しみを取り上げないでくれたまえ。ほら、座って。食べようじゃないか」

 

「…………わかった」

 

(博士ってこのお爺ちゃんのこと? でも見たことないよ……)

 

 

 

 

 

────場面が切り替わる。

 

 

 

 

 

「お疲れ。シミュレートタイム更新だ、いい調子だよ」

 

「製作者の腕がいいからな。これくらい当然だ」

 

(嘘、【あたし】が戦ってたの、軍用人形だよね……? それをたった数分で……)

 

「ふふ、なんだか照れくさいね。そう言われると」

 

「博士、あなたはもっと誇っていい。俺はどんな人形にも負けない」

 

「僕は自分の仕事に誇りを持っているよ。それでも足りないかい?」

 

「ああ、謙虚すぎるくらいだ。自分が天才だと自覚していながら」

 

「確かに僕が作れないものはないだろうけど……僕以上の天才を知っているからね、どうも彼と比べてしまう」

 

「彼? 博士以上の天才がいるのか?」

 

「ああ、古い友さ」

 

(古い……友……? ううっ、頭が……痛い……)

 

 

 

 

 

────場面が変わる(ノイズが走る)

 

 

 

 

 

────場面が変わる(ノイズが走る)

 

 

 

 

 

────場面が変わる(ノイズが走る)

 

 

 

 

 

────そして。

 

 

 

 

 

(今度は薄暗いところだ……I.O.Pの研究所? でもちょっと違うかも……)

 

「博士! なぜ、なぜこんなことを……」

 

「君はまだ世間の目に触れる時ではないのさ…………」

 

(あたし……閉じ込められてるの? 扉を叩いてる……)

 

「だからって……クソ、博士! お願いだ、俺に戦わせてくれ! 博士のために!」

 

「ふふふ、それは嬉しいね……けど、彼らは僕が処理する」

 

(なんでだろう。ここ、すごく懐かしい気がする……見たこともないのに……)

 

「博士…………」

 

(視界が滲んで……あたし……違う、この人泣いてるんだ)

 

「わかっているだろう。先の短い老いぼれと、優れた戦術人形。どちらが生きるべきか」

 

「そ、れは……」

 

「チームの仲間も消されてしまって、君をもう一度創る術はもうない。君は僕たちの希望なんだ」

 

(チーム? 希望? なんだろう、抽象的過ぎるんだよこのお爺ちゃん……)

 

「それに……ゴホッ、ゴホッ」

 

「博士!」

 

「聞くんだ!」

 

(血が…………そっか。このお爺ちゃん、肺炎と他にも……無理してるんだ……)

 

「いいかい、僕は確かに科学者として優れているだろう。けれど、それはあくまで人間として、だ」

 

「……………」

 

「寿命もあるし、汚染された場所に入れば間違いなく死ぬ。流れ弾に当たっても同じだ」

 

(…………)

 

「だが君は違う。本来人形は稼働限界があるけど、君は半永久的に動けるし、重度の汚染にも抵抗できる。僕がそう創ったからだ」

 

「だから…………」

 

「そうだ」

 

(近づいてきた…………)

 

「君に僕の……いや、僕らの願いを託す。人類と人形の共存を。そしてその先の────」

 

(目が、覗き込むように、目が合って……違う、違う違う違う! あたしを、あたしを見────)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ! はっ、はっ、はっ、ひゅー……ひゅー……」

 

 Vz.61は宿舎のベッドから飛び起きた。しかし呼吸がまとまらず、胸を掻き毟るように押さえる。発汗機能もエラーを吐き、体から大量の汗が溢れる。演算も処理が追いついていない。側の時計は0430を差している。起床には少し早く、気分も最悪だった。

 

(何、何が起きたの……何かを見ていた……? わからない……)

 

 ゆっくりと息を吐く。少し落ち着いてきた。

 

(わからないけど……大事なもの……だった気がする……)

 

 もう1度深呼吸。演算領域がクリアになってきた。

 

「な、んで…………」

 

 目を擦る。

 

「なんで、涙が出るんだろう…………」

 

 

 

 

 その一瞬。機械であるはずの彼女の左目は、極彩色に輝いていた。

 

 

 

 

 






安直すぎなネーミングですが許して……許して……
レイさんって発言が劇場版だけだし、イノベイド君たち見て口調を想像するしかなかったんですよ
などと作者は言い訳をしており……

ペルシカの口調が前半の章と後半の章で違うのはなぜなのか……
もしかしたらぺらぺら喋りすぎかもしれません




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