ふと、何かの拍子に目が覚めた。
いや、違うこの耳を貫く程の騒音で意識が覚醒してしまった。
(あぁ、何この音……工事音?それにしたって大きすぎる。何々……)
耳に手を当てながら身体を起こし、ゆっくり目を慣らす様に開ける。
正直な話、この時見た衝撃はこれからも忘れないモノになるだろう……なんて言ったって。
「……ガアァ?(……はぁ?)」
目に映った光景は錆れてまるで咀嚼されたかの様な凹みだらけのビル群と風が吹けば砂埃が立ち込める乾いた大地、これだけならワタシが見た光景は現実味の無い出来事なのだが無いのだが。
元々は窓枠だった所に残っていたガラス片に映ったその姿を見て、ワタシは唖然とし言葉と思考を少々の間失った。
映っていた姿は金剛力士像を少々小さく丸めて猿人の要素を足した様な姿、紛れもなくGODEATERシリーズに出てくるモンスターの一種……アラガミである通常種のコンゴウの姿だったからだ。
(……え?コンゴウだよね、この猿っぽくて背中から生えてるパイプ状の管に丸太の様な前足は……)
ガラス片に映る姿を確認するかのようにペタペタと顔面部分を触ったりしゃがんで背中の管を確認し腕を見つめては掌を開閉させてそれらを終えたワタシは思考の海に落ちていった。
(……こうなる前の記憶が全く思い出せない、ワタシ自身の名前もそれに関する記憶も何もかも……思い出せるのはなんでか分からないけどGODEATERの世界観とそれに出てくるキャラクターやストーリーばっかり。なんでなんでなんで……)
頭を抱えながら思い出そうと必死に記憶を探る、しかし幾ら頭を捻っても絞っても出てくのはここの地形が贖罪の街と呼ばれる何処かで、更に引っ切り無しに様々な音を拾ってくるこの聴覚の良さがワタシ自身をアラガミだと証明する事しか出来ずにいた。
そして、その聴覚が自身に向かってくる何かの音を拾ったのは当然の事でワタシはどうしようもないがそちらに視線を向けると。
ゴルルルル……
視線の先には下顎から伸びた二本の牙が特徴でまず知っている通りならば全てのゴッドイーターが最初に対峙するアラガミになるであろう、オウガテイルが三匹ワタシに唸り声を上げながらこちらに迫ってきた。
どう見てもこっちを喰らう気で迫ってきている、そして頭で考えが纏まる前に身体が意思とは無関係に臨戦態勢へと移れと全身の細胞が訴えかけてくる、喰らえと……喰わらねば喰われるぞ。
そう、ここがワタシの記憶にあるGODEATERの世界であるはずならばここでは喰うか喰われるかが全ての世界、どうあれこちらに迫るオウガテイル達をどうにかしなければそこでワタシは貪られて終わるのだろう……しかし、頭の中で一つの考えが出しゃばる。
(……逃げればいいのでは?少なくともこの危機は逃げればいいそして……そしてどうする?そのままずっと逃げるのか?今ワタシはこの世界では人類の天敵であるアラガミの一体で、仮に今を逃げ切ったとしてもその先で絶対にぶつかる他のアラガミとの接触やゴッドイーターにだって追われる。それで今を逃げたワタシに何が出来るの?絶対何処かで惨めな終わりにしかならない……)
嫌だ。こんな何一つ分かってない状態で終わりたくない、終わってたまるか!ワタシは……喰う!
例えそれが間違いだったとしても生きたい、生きてワタシはワタシを探すのだ。どんな事があったも!
ワタシは己に言い聞かせて両腕を地面に叩きつける、コンゴウ種の戦闘態勢に入る構えだ。そしてはワタシは覚悟と生き抜く為に戦う事を決めた。
もう30mもお互いに距離はない、オウガテイル達はドスドスと足音を立てながらこちらに向かってくる。ワタシもナックルウォーキングでオウガテイルとの距離詰めて、まずは……右腕で先頭に居るオウガテイル力任せに殴る。
ゴキャ!
一匹がいい音で左側へと吹っ飛ぶが、殴り終えたその右腕に残りの二匹が牙を立てて噛みついてくる。
……ガァァァウ!(……痛ったいな!)
振り払う様にワタシは身体を丸めて勢い良く回転しながら前進する。これでまずはオウガテイルを振り払い、次の動きに繋げる為だ。一匹は弾いたがもう一匹はまだ地面に擦りつけられながらもまだ牙を立ててワタシを喰らおうとしている。
(だったら、その顎を!)
ドゴン! ギギギギギ……ブチィ!
回転終えてもまだ噛みついているオウガテイルを裏拳の要領で腕ごと壁に叩きつける、ようやく腕から外れたその口を上下にこじ開くように手を突っ込んで思いっきり引きちぎる。
動かなくなった元オウガテイルをその場に落とす様に捨てて、回転で弾いた奴を視界に入れる。
何故か見慣れているダウンモーションのままだったオウガテイル、反撃の機会を摘むためにワタシは飛び掛かりオウガテイルを押し倒して何度も殴る。
ゴッ!ゴッ!ゴッ!ゴッ!ゴッ!
殴り続けたこいつの反応もほぼ無くなった所で意識を最初に殴り飛ばしたオウガテイルへと視線を移すと既に体制を整えてソイツは尻尾を自身より高く上げており。
バシュ!
オウガテイル唯一の遠距離攻撃である尻尾からの針を飛ばしてきた、避けられそうに無いので仕方なく両腕で顔面をガードする。
(噛みつきに比べたら痛くないけど…そっちが飛び道具で来るならこっちだってね!)
グォォ! バシュ
上半身を持ち上げて自然な動きで空気中のオラクル細胞と空気を自身に取り込み、それを背中のパイプへと伝わせて圧縮した空気弾をオウガテイルへと撃ち放つ。
ゴシャ!
空気弾はそのままオウガテイルの上部分に当たり抉れる様に空気弾は貫通、下半分しか残らなかったオウガテイルは声すら上げられずにその場に倒れた。
ゴルゥ…(勝ったんだよね…ワタシは。)
勝利の余韻とは言っていいのか分からない余韻に浸りながらワタシはボソッっと呟いた。
だがその問いには誰も答えてくるモノは居ないが確かに今この場所で生き残っているのはワタシ、コンゴウだけだ。
こうして、ワタシは自分が何なのかすら分からないまま戦って勝ったのだ。
そして勝者は敗者を喰らう……これがこの世界のシンプルなルールだ、そうしなければ生き残れない……生きなければこの先はないのだ。
ワタシはワタシに言い聞かせて、倒したオウガテイル三匹を拾い集めて喰う事にした。食べなければ生きていけぬのだから……
(あ、以外と淡泊で美味しいかも。)