アラガミ転生 猿神が征く   作:凍河の氷

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第十三話 逃げない為に逃げる

はい……どーも、ワタシ事コンゴウでーす……

 

この身体しかろくに動かないタイミングでリンドウさんとエンカウントかー……ワタシ。この世界にどんな迷惑掛けましたかね?アラガミとしての存在がって言われたら何も言い返せない。

 

(考えろ。思考しろ。頭を回せ。状況打破になりそうな事を探し出せッ!……ワタシに今出来るのは左手はバラ撒きとバランス型位の弾発射のみで腕力はさっきの雷撃でかなり落ちてる。パイプは空気を取り込んでるけどこっちも当たる相手じゃないし当てる為の手立ても現状無い。)

 

自身のオラクル細胞も補給したばかりであり、まだヴァジュラ戦でのダメージは残ったまま。そして対するはあのリンドウさんだ。ぶっちゃけどーやってスサノオやウロボロスなんかをソロで挑んで主人公達が帰投する前に帰ってこれたりしたのか?回収用の部隊が回収してリンドウさんは討伐とコア抜きだけって事?って今はそんな事気にしてる場合じゃない!

 

こっちの事情何てお構いなしにリンドウさんが突っ込んでくる。咄嗟に左手からバラ撒き弾を使って時間を稼ごうとするが、そうは上手く行かないのが世の無常。流石、大ベテランだけあってか弾を最小限の動きで避けるし直撃弾はしっかりジャストガードで防いでこっちに迫ってきている。

 

「報告通りのパターンだな。こんなん食らってベット送りは嫌なんでねぇ!」

 

(情報共有速すぎるよ!って、しまっ!?)

 

ヴェノム弾幕を潜り抜けてとうとう肉薄にされ、ユウ以上の速度で振られるブラッドサージ。本能と知識が大警報を鳴らす。あんなの今喰らったら死ぬ!無茶も無茶だけど活性化!

 

「ありゃ?まぁこの身のこなしも報告通りだしな。」

 

ブラッドサージはただ空を切るだけ終わった。ワタシはギリギリ間に合ったバックステップで距離を取れたが即座にこちらに詰め寄り攻撃の手を休めないリンドウさん。何度かバックステップを繰り返すが正直距離が全く変わらない。苦肉の策だが、貯めていた空気を大放出してワタシを中心に暴風を起こす。それすら即座にシールドで防ごうとするリンドウさんにシールド目掛けて左手のキャノンを構えてバランス型を放ちシールドにぶち当てる。

 

「ッ!?やっぱりバラ撒き以外の種類もあったのか。」

 

(どうする!どうするどうするどうする!?空気のチャージ量を使い切っちゃったしリンドウさんのスピード的に仮に扇弾が撃てても隙にしかならない。右手が無いからバランスも取りにくいし、左手も撃ちすぎてるからかちょっと痛くなってきた。何よりあの時みたいに頭が重くて眠気まで……どうする、ワタシ……)

 

左手も痛いがとにかくリンドウさんの足元狙いで必死にバラ撒き撃ちを続ける。状況打破にはならないがこちらに来れない様にしているが、あちらはどちらかと言うか様子を見てるのか攻撃の激しさに為か現状ガードを固めて足を止めている。選択の時間はもうここしかない。

 

(ビルに逃げる?ダメだ、左手一本で登るのは無理、背中を見せたら死ぬ!竜巻に飛び込む?不確定要素しか無いしリンドウさんが逃がしてくれるとは思えない、それに別のアラガミが居たら喰われてお終い!前もダメで横もダメ……賭けるしかない。ワタシが食べた細胞を模範するなら、模範してると信じてぶっつけ本番で試すしかない!)

 

 

少々恐怖があるのだがそんな事は言ってられない。ゆっくりとだが後退する足ちょっとだけ普段より重いがどうしよもない、どの道もう退路は後ろの崖にしかない。気候変動の結果で嘆きの平原での視認出来るこのマップ外には湖状になっている……っと思いたい。外洋に出るかも知れないし、単純にここが深い湖になってるかどうかなんてこれから確認する。

 

(じゃあね、リンドウさん!ワタシは戦術的撤退はすれど、絶対帰ってきますかねー!)

 

遂に足を踏み外して、視界が雨雲いっぱいに変わる……っと思ったら視界になんか口みたいモノが迫って……ちょっと待って!まさかこれって!

 

「逃がすかよ!」

 

神機の形態の一つである捕食モードのお口さんが顔面に迫る中、本能的に左腕を突き出してその口に噛み付かれた。

 

「クォッ!流石に、重いな……」

 

(痛い!痛い!痛い!痛い!腕が!細胞が!千切れるーーー!)

 

そのまま腕を捕食されながらワタシはリンドウさんの性で宙吊り状態になってしまい、リンドウさんは落ちる筈だったワタシの全体重を神機で支えて、ワタシは絶賛初めて食らう、喰わていく感覚に奪われていくエネルギーに物理的な痛みが一斉に来て感情が大暴走中。

 

何とか残ってた理性と思考を暴走する感情の片隅で対処を模索する。

 

(……ッ!くぅ、捕食され、るってこんな、感じなの……ねッ!……こ、れしか……ない!?腹を括れ!ワタシ~!)

 

絶え間なく続く激痛の中でワタシはこの状態で取れるであろう、生きる事から逃げない為に、この場を切り抜ける為だけにワタシは自身の口を大きく開けた。

 

 

 

 

「うおっと!」

 

ブチリと何かが千切れる音がしたと思ったら突然、神機に掛かっていた重さが無くなり軽くなった反動で尻餅をついてしまったリンドウ。さっきまで例のコンゴウに噛み付いていた相棒を見つめる。そして雨の音に紛れて聞こえた下の方で何かが水に落ちる音……どうやらこの特務の結果は決まったようだ。

 

「……チッ、逃がしたか。あれで逃げれるとは思わなかったが。」

 

防水性も自慢の制服に付いた泥を払いつつ、崖下の湖を覗き込んでみる。まだ残っていた波紋は次第に小さくなり、雨で新しく作られる波紋に埋もれてしまってもはや例のコンゴウの痕跡の確認と追跡は不可能の様だ。

 

(サクヤ達の言ってた通り、妙なコンゴウだったな。まるで殺気がなかったのも気になるが全身にあった焦げ付いた跡に無かった右手……ここで何かと戦って勝ってた所に俺と会敵って所だろうが……)

 

崖から離れて相棒が捕食したモノ達を見てみる。逃がしたモノは仕方ないっと思考を変えて戦利品の方を調べてまだデータに無いアイツが何だったのかを探ってみる。

 

(猿神大鎧に猿神骨、思ったよりデカい奴だった……ん?なんだこれは。)

 

相棒が食べたのは間違いなく多少の差異はあれどコンゴウの筈だし、今回喰わせたのはコンゴウだけ。だからこそこの手に入った素材に最近は無縁になってきたと思っていた疑問と恐怖が出来た。

 

(なんだって、荒砲体と騎士針片がコンゴウから取れるんだ?……いや、あの銃撃がこの荒砲体でやってたってのなら話は繋がる……だけど、なんだってボルグ・カムランのが出てくる?報告にあったヤツが居た地域で消失していたアラガミは最大でも中型だったはず。)

 

一つのピースは繋がるが同時に出てきたのは全くの異物の情報。元々こう言った考え事は苦手なのでしたくはないのだが、これから根掘り葉掘り聞かれるであろうあの博士の好奇心とどっかでぶつかるかも知れない他の奴等の為に頭を使っていると、ある事に行き当たった。

 

「確かソーマが言ってた、腕の中にあるって言ってた金属製の物体が……この騎士針片だったって事か。」

 

ならば納得がいく、あのソーマが切り落とす気で振るった一撃を防いだのがこう言った裏があったのならば腑に落ちる。しかし、それでもまだ胸に残る違和感にもう一度さっき覗いた湖の方に視線を向ける。

 

(色々と気になる事ばっかりだが。まぁ、例のコンゴウに対しての新しい情報が手に入っただけでも仕事はしたか。今度は確か……ロシア支部からまた新しい新型が来るんだったかな?)

 

相棒を肩に担いで、秘匿回線でヘリを呼ぶ。逃したモノを追っている暇は無いのだ。どうせ生きてるならまたどっかで鉢会うだろうと奇妙な予感を覚えるが、それを雨に溶かしつつ煙草が吸えないこの天候に嘆きながらヘリを待つことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リンドウが立ち去り数時間が過ぎた事。幸いな事にアラガミも居なかった湖ではコンゴウが落ちたであろう場所に気泡がボコボコと不規則に上がりボンヤリとだが稀に発光までしている。

 

まるでその二つは新たな神を生む為に、儀式の様に、母の様に……湖の底にはまるで繭の様なモノがいずれその殻を破り、その新たなる神の誕生の瞬間をゆっくりと待っていた。

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