アラガミ転生 猿神が征く   作:凍河の氷

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第二十一話 流れる時、変わりゆく思い

どうも。また変な命題にぶち当たったワタシ事、ヌエです。

 

いや、考えすぎなのは分かってはいるんですが一応元となったアラガミは全部捕喰してるので小さな可能性としてはあり得ないとは言い切れないのがこの身体の怖い所。

 

(第一アレは、設定上サリエルが美に目覚めたかなんかで異常捕喰を繰り返した結果であそこまでの大型化と美と醜がごちゃまぜになったんだから……ワタシも似た様な方向性にならないとは思えない。全てはワタシの考え方次第なのかな?)

 

確かにワタシもこれまで色々なアラガミを喰って来たが、記憶にある設定上のヴィーナスやアリウスノーヴァ程無差別に喰べてないと……思いたい。アラガミとして生きているワタシは喰べないとやってられないのでどーしようもないのだが。

 

(もうなるようになるしかないかな?だってこれアラガミと生きている限り避けようのない内容だし、そうならない様にする為にも何も思いつかないし……出来そうなのは『意志の力』しか今のワタシには思い付かない。……えーい!どうせ悩んでても何も解決しないしお腹は空くだけだからこれはもう考えない様にしよう!そうしよう!)

 

頬を叩き気持ちの切り替えを行う、無論これが逃避だとは分かっている。だけどワタシからしたらどうやっても解決しない問題なのだから致し方ない。

 

さて、今の時間軸的にはまだアリサの完全復帰がまだで、極東支部もまだ捜索を続けている段階だったはず。確認するにしてもアリサと神薙ユウがリハビリとした場所は嘆きの平原とここ、愚者の空母の二つだ。オマケに愚者の空母では治療完了とも言えるボルグ・カムランを討伐してめでたくアリサは現場復帰となる……ならば。

 

(とりあえず、このまま海に身を潜めつつ待ってみる?海水自体の透明度はあれどこの空母なら隠れられる場所は多いし、何なら新しく穴を開けて内部に潜んでもいいし……あれ?でも偶に正面の穴から出てきた奴も居るから、存外何処かに繋がってる?っぽいし?)

 

一時的に内部には居たがあの先は知らない……一応廃墟が橋の先にはあるが、何処かで行ってもいいかも知れない。あの先にはきっと堕天種とか大量に居そうだし。

 

そんな事を考えてつつ、海の向こうから偶にこっちに突っ込んでくるグボロ・グボロ引きちぎっては串刺して動かなくなった死骸を貪る事三日程……あの二人がやってきた。

 

 

 

 

記憶の通り、ボルグ・カムランと戦いちょっとイイ感じの空気を漂わせて二人は来た時よりちょっとだけ軽い足取りで帰っていった。よかったよかった。

 

(一応苦戦もなく討伐してたな。アリサもカムランの攻撃を誘いつつ動いてて隙を見て受け渡しもしていた。もしこれがワタシとの対決に持ち込まれた時の動きを想定するとしたら……やっぱりひたすら距離取ってチマチマ迫るのがベストかな?最初の時みたいに顔面凝視でトラウマはもうこの時位しか使えそうにないし……いっそ、ヤれるなら……!?)

 

その思考にハッ!っと頭を振るって今の考えを霧散させる。危ない、確かにそれはアラガミとしてはある種当たり前だとは言えワタシはそれを望まない、それを望んでしまったらきっとその先の結末ではワタシはワタシではなくなって消えてしまう。これは完全にワタシのエゴだがワタシはアラガミだとしても消えたくないし死にたくない。だからこそだからこそ。

 

(……今のは無し。思考を変えてさっきのを無くす……やっぱり絡め手を含めて属性はないとどっかで辛い思いしそう。堕天種と戦う時も属性あるなしだと全然違うし全属性手に入れるのもある意味面白いとは思うけど出来るかな?)

 

正直、現状グボロ・グボロ食べてはいたがワタシが欲しかった能力としては水中での活動を前提に食べていたので属性っぽいのは使えない。食べてたのは原種なので水と溶解液がメインになっているので多分属性はない……そしてここから先のストーリーを思い出してみる。

 

(ヴァジュラ討伐依頼から暫くしてシックザール支部長が出張に行ってその間にシオちゃんが見つかってそのまま極東入りして……つまり、寺院方面に行ってもアラガミは居ないし第一部隊や他の部隊に見つかる可能性が高い。……ある意味、この先に行くのにはいいタイミングなのかも知れない……極東での情報が全く手に入りそうに無いのだけは痛いけど、この先に居るかも知れない数多の接触禁忌種達を喰うには。)

 

それに向こう側なら多少暴れても、現状リンドウさんが欠けた極東には指定範囲外への出張は流石にないと思いたい……別の支部から来られたらその時は諦めて尻尾を巻いて逃げてやろう。目撃情報が共有される可能性があるのは困るけど、この先に何が居て何が居ないかなんて行ってみないと分からない。良し!なら今から行ってみよう。

 

ヘリのローター音が遠さりつつあるのでワタシは海面から飛び上がり、そのまま空母に空いてる穴を入り奥へと進んだ……穴の先には確かにゲーム上では一部表示されていたその先の高速道路がそしてその先に寂れているビル群が広がっていた。

 

(鬼が出るか蛇が出るか……どっちにしろ出るのは同じ神様なんだろうけど、今までも無計画だったけどとにかく気持ちだけは強くして行かないとね!)

 

未知への一歩はある意味これが本当に初めてだ。ここから先はこれまで以上に理不尽が押し寄せてきて見えない恐怖もあるが、それでもどこかワクワクしてる自分も居る。変な気持ちになりながらもワタシはユウ達を乗せたヘリとは逆の景色へと進んでいく。

 

 

 

「……!?」

 

「ど、どうしたんですか!」

 

外を眺めていたユウの顔が急に険しくなりヘリの入り口から身を乗り出しを見て私は慌てた。幾らGEと言えどこの高度から落ちたら流石に無傷では済まないと思い、ユウの肩を掴んで停止させてそれからほんの少しして彼はようやくヘリの中に戻ってくれた。

 

「……ゴメン。見覚えのある形が見えたからつい。」

 

「ついって、何が見えたんですか?」

 

「多分……ヴァジュラっぽいのが空母の中に入っていくのが、見えた。」

 

その言葉にゾッと身の毛がよだってしまった。もしかしたらカムランだけでなくヴァジュラまで相手にしてたかも知れないと思うと身体が震えてきた。

 

「とにかく、この事は後で俺から竹田さんと榊博士に言っておくよ。……見間違いならいいんだけど。」

 

振るえる私を諭すようにそう言った彼にコクコクと頷いた。正直まだ怖い、あのアラガミと何時かは戦わないと行けないのに……でも、もう逃げたくはないサクヤさんにもリンドウさんにも、そしてここまでつきあってくれた彼の為にも。

 

でもまだ身体の震えが止まらない。私はその時になったらちゃんと出来るだろうか……パパ、ママ。

 

少しだけ軽くなった心と身体だったが、まだ何かが足りない。分かりたくても瞼の裏に焼き付いたあの顔が私を縮めこませる。

 

時間が止まって欲しいと願ったがそれは叶わない。ヘリは極東支部へと時は先へと、ただただ進んでいく。




今まで休んでいたすみませんでした。

モチベが底まで落ち込んでしまってなんとか書ける程度にはなったのでちょっと短いですが書いてみました。

箸休めみたいな感じになりましたが、一応先の展開は頭にはありますのでちょこちょこ書いていこうと思います。

頂けましたら感想など書いてもらえますとモチベが上がります。

二十一話をご観覧ありがとうございました。

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