拙い文章ですが読んで戴ける嬉しいです。
外は満開の雪の花。
今日は12月25日のクリスマス。
つまりホワイトクリスマス。
世間ではそういうことになっているが俺には関係ないことだった。
彼女いない歴=年齢。おまけに高校生だが一人暮らし。
友達?察してください。
学校には一応行っているが俺は休み時間。いや、授業中も。つまり学校にいる間ずっと小説を書いているか本を読んでいる。
中学2年の時に書いた小説が大賞に選ばれ、今ではプロの作家ということになっている。
俺の書く小説はバトルものが多く、大賞に選ばれた作品もバトルものだ。
その作品はそれなりに売れ、今こうして一人暮らしができているのもその作品のおかげだ。
「あの…神子戸さん?大丈夫ですか?」
俺は不思議そうに覗き込む少女の声で現実に戻される。
「……あ、ごめん。えっと…なんだっけ俺の小説が見たいって話だよね。一応これが俺のデビュー作。」
俺はそう言って旅行鞄から出した小説を少女に渡す。
「…てん…ゆみの…?」
流石に小学生には難しい漢字だったか。
「そう書いて『天弓』(てんきゅう)って読むんだよ。」
「へー…簡単な漢字なのに読み方は難しいんですね。漢字は奥が深いです。」
少女は目をキラキラとさせている。
俺の名前は神子戸(みこと) 湊。
苗字が珍しいからペンネームも本名を使っているが、未だ学校でバレたことはないという悲しさ。
俺の代表作は『天弓のパライソ』。
厨二感溢れる名前だが、書いたのが中学2年の時だからね?
まあ、アニメ化、コミカライズとそれなりに有名にはなった。
バトルものだから難しい設定とかはあるが、一応中学生でも読めるような内容で読みやすかったというのも売れた原因だとかSNSでは言われてた。
しかし、それからは全滅だ。
何度か本にもなったが全くと言っていいくらい売れない。
高校3年生だから進路を考えないといけないが、小説家への道は正直厳しくなってしまった。
成績はそれなりだから大学からは何校か呼ばれてるんだけど。
担当編集には「お前には癒しが必要だ。」とか言われ、この『冬月旅館』へと来た。
この旅館は有名な温泉地にあるため露天風呂が最高らしい。
春には満開の桜、夏は花火大会、秋は紅葉、冬は銀世界と四季が楽しめるのも人気の理由だとか。
実際この旅館は知らなかったが、俺もニュースでこの温泉地の話はよく耳にした。
ちなみに俺の隣にいる少女はこの旅館の女将の1人娘の冬月 幸ちゃん。
小学5年生ながら既にこの旅館のお手伝いをしているらしく、緑色の着物に少し長めの黒髪を短く後ろで束ね、動きやすくしている。
俺のような若い人が泊まるのは珍しいらしく、泊まってからは毎日朝昼夜と部屋に来てくれる。
本はよく読むらしく、俺が小説家であることを話した時には目を輝かせていた。
と、その時部屋の襖が突然開けられ、制服を着て金色の髪が目立つ女子高生が入ってきた。
「また幸はこんなとこに来て…お前、幸を泣かせたらただじゃすまねーかんな。」
「一応言っとくけど俺、お前より2歳年上なんだけど。」
こいつ…失礼、この人の名前は五月雨 和樹。
男の子っぽい名前だが、バリバリの女子高生だ。
金髪の見た目で分かるとは思うがいわゆるギャルというやつだ。
これで高校1年生。末恐ろしい。
彼女も冬月旅館の従業員だ。幸ちゃんのことを溺愛しており、突然現れた俺を凄いライバル視してくる。解せぬ。
「和樹さん…神子戸さん今日で帰っちゃいますからもう少し仲良くしてくださいよ…」
幸ちゃんがそう言うと五月雨は悔しそうな顔をして、それ以上何も言えずにいる。
ぷぷっ…小学生になだめられてやんの。
と、まあ俺もこんな感じで対抗心をね?
「神子戸さん。どうでしたか?この旅館は。いいアイデアとか浮かんだでしょうか?」
幸ちゃんは上目遣いに聞いてくる。
可愛い。いや、ロリコンではないけど何かくるものがあるよね。分からない?
「どうだろう?でももし書けたらその時はこの旅館宛に本を送るよ。」
正直なところ何も思いつかなかった。
いや、景色は素晴らしいし、すごくいい旅館で日頃の疲れもだいぶ取れた。
だが、何かが足りなかった。それが分かるまでは小説を書けないかもしれない。
「楽しみにしてます!それとこの本貸していただいてもいいでしょうか?後で郵便で送りますので。」
「なんならあげるよ。家にももう一冊あるし。」
「えっ、いいんですか?ありがとうございます!お荷物バスまで運びますね!」
そう言うと幸ちゃんは俺の荷物を持って嬉しそうにロビーへと向かう。
その後ろから俺と五月雨はついて行く。
「おい、今の幸すげー可愛くね?」
「確かに可愛いな。」
俺は正直に答えたがこう言うと…
「お前…ロリコンか?」
五月雨は引き気味に言う。
「何度目だよこのやり取り!」
ここまでテンプレというやつである。
大抵はこの後「うるせー。」とか言われるのだが、今回は下を向き黙ったままだ。
「ん?どうした五月雨。」
俺が聞くと五月雨は顔を上げ、
「ありがとな。幸と遊んでくれて。私も女将もずっと働いているから幸と遊んでやれねーんだ。もし、また来たいと思ったならまた幸と遊んでくれねーか?」
なんだこいつ可愛いとこあるじゃん。
「俺もこの旅館は気に入ったしまた来るつもりさ。今回みたいに長い日にちは取れないかもしれないけどな。」
卒業式の後とかなら時間がありそうだし。
「それときつく言い過ぎて悪かった。昔から幸のことになるとこうなるから気をつけてんだけど無理ぽだから。」
「なんだ?デレてんのそれ?」
俺がからかうと五月雨は顔を赤くし、持っていた木刀を俺に向け…
いや、なんで女子高生がそんなもん持ってんの?
「やっぱりお前はうぜぇ!これでもくらえ!」
振り下ろされた木刀を避け、俺は幸ちゃんの方へ逃げる。
「おっかねぇな!幸ちゃん助けて!」
「おま…それはずるいぞ!」
名前を呼ばれた幸ちゃんは振り向き、
「また和樹さんは…でも、喧嘩するほど仲がいいって言いますからね。」
「「仲良くない!」」
不覚にも五月雨とハモってしまった。
そんな俺達を見て幸ちゃんは笑顔を見せる。
「さてと…もうすぐバスが来ます。神子戸さん、今回は本旅館に泊まっていただきありがとうございました!またのお越しをお待ちしております!」
幸ちゃんがそう言うと外に丁度バスが到着する。
「ああ、また来るよ。近いうちに。」
俺は自動ドアを潜り幸ちゃんから荷物を受け取りバスへと乗る。
バスの窓からは手を振る幸ちゃんとそっぽを向いてる五月雨が見えた。
俺はバスが出発してからも見えなくなるまで幸ちゃんに手を振り続けた。
3月1日無事卒業式を迎え、誰もいない部屋へと戻ってきた。
進路は結局保留することにした。
と言うのも少しだが、小説を書き始めることができた。
別に小説を書きながら大学に通ってもいいのだが、軌道に乗るまでは小説の方に集中したかった。
俺が誘われた大学には夏から入れるところもあるためそっちの方に入ろうと思う。
そんなことを考えながら、俺は冬月旅館へ向かう準備をしていた。
小説書くのは向こうでもできるし、部屋で書き続けるのも健康に悪い。
気分転換にあそこ以上の所はないんじゃないかと個人的に思ってる。景色もいいし。
そうだ。多めに本を持って行こう。幸ちゃんも喜ぶと思うし。
旅行鞄の3分の1くらいの本、着替え、ノートパソコン、その他必要な物を詰め、支度を終える。
「幸ちゃん元気かな。おまけに五月雨も。」
夜行バスの中、外を眺めながら呟く。
時間は12時。流石に眠たくなりそのまま俺は寝てしまった。
夜が明け、バスは冬月旅館に到着したが、降りたのは俺だけだった。
12月に来た時はかなり多かったはずなのに。
桜の開花もまだだから少ないのかと思ったが、深夜バスには人が多く、それが理由とは思えなかった。
今日は太陽の光が春とは思えない強さでそれが余計に俺を不安にさせる。
「なんか嫌な予感がするな。」
そう思う俺の目の前には休業中の札と暖簾のかかる自動ドア。
しかし、自動ドアに近づくと静かな中に不快な音を鳴らし開く。
中はほんのり明かりがついており、フロントには見覚えのある金髪ポニテがクリックボードをしかめっ面で見つめていた。
彼女は客の気配に気づいたらしく顔も上げずに、
「お客さん、今ウチは休業中なんすよ。札出してませんでした?近辺にも旅館あるんでそっちの方あたってもらえます?」
相変わらずの喧嘩腰である。
「お前、他の客にもそんな感じなのか…」
そこで五月雨は初めて顔をあげる。
「あっ!お前は確かみこなんとかとか言う名前の幸を誑かした男じゃねーか!…やべ、大きい声出しちまった。」
まさかの名前も覚えられてないとは…
接客業だから仕方ないのかもしれないが。
「誑かしてはないけどみこなんとかさんですよ。どうしたんだ?休業中って。」
俺が聞くと、五月雨は下を向き、
「お前には関係ねーよ。他の所まで案内するから今日のところは諦めてくれ。」
そう言って五月雨は俺を引っ張って外に出ようとするが、俺はそれを止める。
「待った。せめて幸ちゃんには合わせてくんない?小説の感想とか聞きたいし。」
「今お前を幸とは合わせられねー。」
即答である。が、五月雨は少し迷った表情をして、
「やっぱり会ってくれ。だけど、私の後に入ってくれ。」
そう言って五月雨は別棟の方へと向かって行く。
別棟は幸ちゃんと女将さんが普段住んでいる場所だ。
俺は入ったことはないが何度か目にしたことはある。
ちなみに五月雨は近所ではあるがここには住んでいない。
五月雨は別棟の1番奥の部屋の襖を開ける。
「幸に会いたいって言う人が来たぞ。」
部屋の中には幸ちゃんが1人暗い中電気もつけず、部屋の隅で体操座りをして顔を埋めていた。
髪はボサボサで前にあった時とは随分と違う。
「とてもじゃないけど人と会える気分じゃないです。」
幸ちゃんは顔を上げずに答えるが、五月雨さんは、
「いや、会ってくれ。幸のためにもだ。」
「だから誰とも会いたくないって言ってるじゃないですか!」
幸ちゃんは声を荒げ、顔をあげる。
そして五月雨の隣にいる俺と目が合う。
「み…こと…さん?」
幸ちゃんは俺の苗字を呼ぶと、目に涙を浮かべ、俺の方へと駆け出し抱きついてきた。
「うわぁぁぁぁぁぁん!」
俺がどうすればいいのかと五月雨を見る。
「もう少しだけそのままにしておいてくれ。声をあげて泣いたのも初めてなんだ。」
そう言う五月雨も少しだけだが目に涙を浮かべる。
ふと窓の外を眺めると桜が少しずつだが開花へ向け準備を始めていたところだった。
どうでしたでしょうか?
出来るだけ次の話を早く書きたいですが、かなり時間がかかるかもしれません。
文字数は大体同じくらいかこれより多いかだと思います。
どのくらい長くするか分かりませんが、最後まで読んで戴けると嬉しいです。
タグ付けしておくつもりですが、日常系と言いながらも恋愛要素もいれる予定ですのでご理解のほどお願いします。
それとキャラクター紹介的なのは別枠で書いておきます(随時更新)。