旅館の若き女将と小説書き   作:抹茶のぷりん

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コロナウイルスの影響で思ったよりも早く書き終わりました…
いいのやら悪いのやら…
いや、悪いよ。
今回は前回よりも少し長めです。
なので、誤字もいつもより多くあると思いますがよろしくお願いします。

少しだけプロローグと1話の誤字修正しました。


第2話 美少女の笑顔は最高の報酬

「神子戸くん。冬月旅館で働いてくれないかな。」

「「えっ?」」

雨宮さんの言葉に思わず声が出てしまったのは俺と五月雨。

「いや、こいつは無理でしょ雨宮さん。なんたって作家っすよ。それに幸を狙ってるし。」

五月雨の俺に対する評価は幸ちゃんのストーカーみたいな感じらしい。

前泊まった時から分かっていたけどね!

「別に幸ちゃんを狙ってる訳じゃないんだけど。普通にこの旅館が好きなんだけど。………まあ、五月雨の言う通り作家って言う仕事は意外と大変な時もありますから。それに家からじゃここまで通えないですし、こっちに引っ越すお金も無くは無いですけど厳しいと思いますよ。」

近々パソコンやら家電やらを丁度新調しようと思っていた。それやめれば余裕で引っ越せるけど。

「それに旅館の仕事とか言われても一から学ばないといけませんし。コンビニでバイトくらいはしたことありますが…」

俺は正直なところ冬月旅館で働くことになってもいいと思った。

大学も別に目的があって向かう訳でもないし、就職もお金があるうちは考えていなかった。

我ながらなんてふわふわとした人生なんだろう。

まさに地に足がついてないってやつ。

ただ俺は幸ちゃんが心配だった。

「私は神子戸さんに働いて欲しいです。男手が欲しいというのもありますが………」

ここで初めて幸ちゃんが自分の意見を言う。そして、何かを言おうとしたが雨宮さんは手で止める。

「幸ちゃん。そこはまだ言う時じゃないよ。」

「えっ⁉︎雨宮さんもしかして…」

「私だって伊達に40年以上生きてる訳じゃないからね。そのくらいは気付くよ。」

雨宮さんがそう言うと幸ちゃんは頬を赤く染め下を向く。

俺と五月雨は顔を見合わせ首を傾げる。

「と、とにかく私は神子戸さんに働いて欲しいです。給料も多めに払いますから。家は…用意できるまではここになってしまいますけど…」

幸ちゃんは涙目で俺を見る。

男ならこれには勝てないだろう。

だが、ここは俺の優柔不断さが勝ってしまった。

「幸ちゃん。1日だけ考えさせてくれない?」

 

場所が変わって冬月旅館の部屋の中。

俺は雨宮さんと話していた。

俺には1つだけ気になることがあった。

「なんで俺に冬月旅館で働いて欲しいって言ったんですか?」

俺1人が冬月旅館に入ったとしても何が変わるのだろうか。

しかし、雨宮さんには確信があるように見えた。

「なんでだと思う?…って言うのはやめとこうか。正直冬月旅館の人手は足りないことはないんだよ。人は少ないとは言え幸ちゃんと和樹ちゃんがいれば大抵はどうにかなるし、料理長と経理の人は残ってくれてるらしいからそこらも大丈夫なんだよ。私もたまに掃除に来ているし。」

聞いている感じだと確かに大丈夫のような気がする。足りないところもあると思うが、規模を小さくすれば難無く経営できるだろう。

「でも、無理ってことは人手以外に理由があるんですよね?」

俺の質問に雨宮さんは頷く。

「それは幸ちゃんの気持ちだよ。幸ちゃんは今、お母さんが亡くなってしまったショックの上に冬月旅館をどうするかという問題もあるからね。その影響からかげっそりしてるし。とにかく幸ちゃんには心の支えが必要なんだよ。」

それが俺だと言うことか。

でも、五月雨や他の従業員では駄目なのだろうか。

俺よりも断然長い時間を一緒に過ごしているはずだ。

「和樹ちゃん達は支えになってないって訳ではないんだよ。神子戸くんに期待してるのは別の部分での心の支えだから。まあそれは幸ちゃんに聞いた方が私の口から言うよりはいいでしょうね。」

心の支えの別の部分とはなんなのか気になったが、雨宮さんはそれには答えてくれなかった。

「雨宮さん。幸が呼んでるっすよ。聞きたいことがあるらしいっす。」

しばらく沈黙が後、続いた部屋に入ってきたのは五月雨だった。

「それじゃ神子戸くん。まだ時間はあるから考えておくんだよ。」

そう言って雨宮さんは五月雨の横を通り過ぎ部屋を出ていく。

五月雨はそんな雨宮さんを不思議そうな顔で見る。

「雨宮さんと何話してたんだ?」

五月雨は俺へと顔を向ける。

「大した話ではないよ。いわゆる世間話ってやつさ。」

五月雨には雨宮さんの話はしない方がいいと思った。

彼女は幸ちゃんのことを第一に考え行動しているように思える。

そんな彼女が自分では幸ちゃんを救えないことを知ってしまったらショックを受けるに違いない。

「ふーん。興味もねーし言わなくてもいいけどさ。……正直お前はここで働きたいのか?」

五月雨は躊躇いがちに聞いてくる。

「どうなんだろな。俺が入って解決するのかどうか分かんないし、色々問題もあるからさ。将来の目標とかもないし、大学も行かなくてもいい気がするし。それならばここで働く方がいいかな。幸ちゃんを助けることもできるし。」

なんて適当な人生なんだろう。五月雨もそう感じたのか溜息をついた。

「私はお前が働こうが働かまいが興味はない。だけど、そんな適当な感じなら働かないでくれ。そのままじゃ働いたとしても幸に迷惑しかかけねーぞ。お前もそれは望まねーはずだろ?」

五月雨は分かっていたのだろうか。五月雨の言ったことが判断を遅らせた理由だ。

俺は幸ちゃんのためになるのであれば働きたい。しかし、決意というには程遠いものだった。

俺には何も言い返せない。そのまま自分が思っていたことなのだから。

俺が数十秒黙っていると五月雨はどこか悲しげな顔で部屋を出て行った。

どうしたものだろうか。五月雨からの評価は完全に悪い。

それを理由にして帰ろうか。そんな最低なことを考える。

バックから徐にノートパソコンを取り出して立ち上げる。

冬月旅館のことはきちんと考えなければならないのだが、俺は小説活動へと逃避することにした。

さてと…今書いているのはもちろんバトルもの。

ていうかそれしか書けないんじゃね?

昔、恋愛小説にも手を出してみたけどもさっぱりだった。

圧倒的に経験値が足りない。友情ものも同じく。

こういう時ばかりはもうちょい青春しとけばよかったなとか思ってしまう。

友達同士はどこへ出かけるのか。彼女との初デートの場所といえばどこなのか。部活?何それおいしいの?

もしそれらをやったとしても結局小説のためだけになるから続かなそうだけど。

カタカタとキーボードを叩く音だけが部屋の中に響く。

今この旅館には客が俺以外に全くいない。

俺も客かどうかは怪しいところだ。お金は払うけども。

しばらく小説を書き続けたが全然集中できず、ほとんど進まなかった。

ノートパソコンを閉じ、リモコンを手に持ちテレビをつける。

夕方のこの時間には地元のローカル番組のニュースが放送されている。

小説を書いている間に随分と時間が進んだようだ。小説は進まなかったけど。

見たこともない。恐らく地元のアナウンサーが何かを喋っている。

地元の名産品の話だろうか。そう言えばここの温泉地の温泉饅頭はすごく美味しかった。

あれは絶対買おう。実家の妹にでも送ろうか。

そして、ニュースは次の話題へと移る。

……これは幸ちゃんのお母さんが巻き込まれた事件の話だろうか。

死者がさらに増えて21名になったらしい。

これは本当に大きな事故だ。

最近ここまでの事故は起きてなかっただけに、1週間前初めて事件を知ったときは衝撃だった。

幸ちゃんは俺の前では最初以外見せなかったが、相当ショックを受けて部屋に引きこもりがちだ。

俺が来たためようやく部屋から出たものの、まだ心の中は旅館のことを考える余裕はないように見える。

次の飲酒運転のニュースに切り替わったところで俺はテレビを消し、その場で横になった。

 

俺の目が覚めたのは夜の9時。食事は幸ちゃんが用意してくれたのだろうか。コンビニ弁当がテーブルの上に置かれてある。

とりあえず部屋にある風呂へと入った。食事の前に風呂に入る派です。はい。

風呂から上がり、浴衣へと着替え、俺が弁当を食べ始めたところで幸ちゃんが部屋へと入ってくる。

その格好はいつもの着物ではなく、寝間着だった。寝る寸前だったのだろうか。

「こんばんは。神子戸さん。布団を敷きに来ました。」

幸ちゃんは押し入れの戸を開き、布団を出す。

「ありがとう。幸ちゃん。この弁当も。」

「料理長が今は食材不足でどうしようもないと言ってたのでこんなものしか用意できませんでしたが…」

幸ちゃんは布団を敷きながら申し訳なさそうにする。

コンビニ弁当とか久しぶりに食べたな。普段自炊してるし、作れない時は外で食べてるし。

そんなことを思いながら弁当を食べ終えると、丁度幸ちゃんは布団を敷き終わったようだ。

しかし、幸ちゃんは部屋を出ない。

「……神子戸さん。今日は一緒に寝てもいいでしょうか?」

「え?」

俺は思わず声を漏らす。

「私はお母さんが死んでからずっと1人で寝てきて…それがとても寂しくて…わがままを言ってるのは分かってます。だけど、今日だけはお願いできませんか?」

幸ちゃんは1週間この広い旅館に1人で暮らしてきた。

それだけに人が恋しいのかもしれない。それに一緒に寝ると言ってももう1つ布団を用意すれば問題ない。うん。外から見れば事案だけど。

「それじゃもう1つ布団を出そうか…」

俺が布団を出そうとすると幸ちゃんは俺の浴衣の袖の裾を引っ張る。

「一緒の布団がいいです…」

可愛すぎる。が、流石にそれはまずいのではないだろうか。

「ほら、俺も男だし幸ちゃんを襲ってしまうかもよ?」

すると幸ちゃんは少し笑顔を見せ、

「私の知ってる神子戸さんはそんなことしませんから。」

確かに何もしないけども。俺の引きの弱さがここで出てしまう。

それに神子戸さんなら…

幸ちゃんは小さい声で何かを言うも聞き取れなかった。

俺が電気を消し、布団に入ると幸ちゃんは俺の横へとぴったりくっついてきた。

俺は今幸ちゃんに背を向けているが、幸ちゃんの心臓の音は聞こえてくる。

幸ちゃんも緊張しているのだろうか。

「神子戸さん。私達が最初に出会った時のこと覚えていますか?」

最初というとあれか。前に泊まりに来た時のことだな。

 

「傘持ってきといてよかったな。いきなり降り始めるとは思わなかった。」

俺は冬月旅館に荷物を置き、温泉地を観光していたが、突然雪が降り始めた。

天気予報では雪は降らないとなっていたが念のため折り畳み傘を持ってきていた。

温泉饅頭のお店から傘をさしながら外へ出ようとした時、向かい側のお店の軒下に1人の女の子がベンチに座って空を眺めていた。

女の子は山吹色の着物を着ていて、足には片方だけ草履を履いている。もう片方の草履はベンチの上で鼻緒が切れた状態で置いてあった。

この時代に着物を着た女の子は珍しいと思いながらも女の子が心配で声をかけた。

「大丈夫?鼻緒が切れているみたいだから…これは直らないね。」

草履は俺にとって結構見慣れたもののため鼻緒が直るかどうかくらいは分かる。

女の子はいきなり話しかけてきた俺に戸惑いつつも笑顔を見せる。

「大丈夫です。なんとか歩けますから。」

そう言って立とうとするも足を挫いているのかバランスを失い倒れそうになる。

俺はそんな女の子を抱き止める。そして女の子を再びベンチに座らせる。

「足やっちゃてるなこれは。ほら、家まで送ってやるから。」

俺は女の子に背を向けてしゃがむ。

「見ず知らずの人にそこまでしてもらうわけには…」

女の子は申し訳なさそうにする。

「俺は神子戸湊。名前を知ったからこれで見ず知らずではないでしょ?」

すると女の子は声を出して笑った。

「そうですね。じゃあお言葉に甘えさせてもらいます。……えっと…私は冬月幸です。」

「それじゃ幸ちゃんでいいかな。よし。それじゃ幸ちゃん。捕まっててね。」

女の子もとい幸ちゃんは俺の背中へと乗り、俺はそれを確認して立つ。

「家はどの方向?」

「この道をずっとまっすぐ行ったところです。」

幸ちゃんが指し示す方向は丁度俺の泊まる予定の冬月旅館と同じ方向だった。

冬月?………幸ちゃんの苗字も冬月じゃなかったっけ?

気のせいかな。

俺は冬月旅館の方向へ歩き始める。

「神子戸さんはどうしてここへ?」

道中幸ちゃんに質問をされる。

「気分転換かな。そういう疲れる仕事をやってるんだよ。」

俺はそう返答するも、今は思い出しくなかった小説の話を思い出してしまい憂鬱な気分になる。

「お仕事をされているんですね。てっきり高校生かなと思っていました。」

「一応高校生だけどね。」

幸ちゃんは高校生ながら仕事をしている俺に驚いているようだった。

「高校生でできる仕事…バイト以外に思いつきません…」

「バイトではないよ。」

幸ちゃんは俺の仕事について考えるもなかなか思いつかないようだ。

そんなこんなで冬月旅館の前まで来たところで幸ちゃんに声をかけられる。

「ここです。私の家は。」

「え?」

さっきの冬月という苗字はやはり聞き間違えではなかったようだ。

俺は幸ちゃんを下ろすと、幸ちゃんは笑顔で俺を見た。

「神子戸さん。ようこそ冬月旅館へ!」

 

「そう言えば幸ちゃんあの時俺がここに泊まるって分かってたよね。」

俺の苗字は目に留まりやすいし、幸ちゃんは予約表を見て覚えていたのだろう。

「そうですね。名前を聞いた時すぐに分かりました。」

やはりそうだったのか。

「その時のことはよく覚えてるけどそれがどうかしたの?」

すると幸ちゃんは一瞬間を開けて、

「私はあの時途方に暮れていました。草履の鼻緒が切れているだけでなく足も痛くて…そんな時神子戸さんが現れて。最初は親切で優しい人なのだなと思いました。だけど、話しているうちに私は神子戸さんのその優しさに惹かれてしまいました。」

幸ちゃんは息を飲み言葉を続ける。

「私は神子戸さんのことが好きです。だから…私は神子戸さんと一緒にこの旅館でずっと…」

幸ちゃんは俺に抱きついてくる。

思えばヒントは多くあったかもしれない。

雨宮さんの言葉もそういうことだったのだろう。

俺は幸ちゃんの手を掴み、幸ちゃんと目を合わせる。

俺はある決心がついた。

「幸ちゃん。今は幸ちゃんの気持ちには答えてあげられない。だけど、俺はこの旅館で働くよ。いつか幸ちゃんの気持ちにも答えられるようにするから、それまで待っててくれるかな。」

俺はこの旅館のために。いや、幸ちゃんのためにこの旅館で働く決心をした。

「私はまだ小さいですからね。答えられないと言われても仕方ないですね…でも、嬉しいです。神子戸さんが働いてくれると言ってくれて。」

幸ちゃんは今日初めての笑顔を見せる。

俺はそんな幸ちゃんにドキッとした。

多分…いや、確実に俺も幸ちゃんのことが好きなのだろう。

今は幸ちゃんの気持ちには答えられないけれど、絶対にいつか俺は幸ちゃんを幸せにしたいと思った。

それに俺はこの笑顔のためならば俺は何でもできる気がした。

 

 

 

 

 




完 全 に 事 案
幸ちゃんは作者の理想のヒロイン的要素が強く出てるので作者もやばいやつ。
ですが安心してください。私は二次元限定ですから。

そんなどうでもいいことはおいといて、
1に手洗い!
2に消毒!
3、4がなくて、
5に換気!
これだけでもだいぶ違うと聞きました。
今は辛抱の時ですね。
コロナウイルスがすぐに収束することを願っています。
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