虞美人、後輩の息子を育てる   作:イサシ

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皆様、1日ぶりです! 


虞美人、後輩の息子を揶揄い、そして、通報する

……こっわ!!! 人間こっわ!! え? いつからわたしの日常はジャパニーズホラーになったのよ!? どう見てもあの娘、そっち系の案件じゃない!恋する乙女が一番怖いってテレビで言っていたけれど、あれは真実だったのね!? あの娘の気配だけで酔いが醒めたわ! 

 

 慌ててドアを閉めたので、ひょっとしたら、息子もわたしがこっそり様子を覗いていたのに気づいたかもしれないが今はそんなのはどうでもよかった。一刻も早く、あの娘から離れなければ何をされるかわかったものではない。 

 

 わたしはリビングに戻り、恐怖に負けるまいとビールを飲み干す。確かな苦味とそこにある大人の旨味がわたしを酔いの世界へと連れ戻してくれる。そう、先のは夢だ。精霊であるわたしがあんな小娘に恐怖するはず……

 

『……ドアの陰でこっそり、覗いている、お母さん? 

 

あなたのことですよ……?』

 

 思い出すだけでゾッ、と背筋が寒くなる。まじで何者なのあの小娘!? サクラ顏の連中の血が濃すぎない!? 父親の血が薄すぎるんだけど!?

 

 恐怖を紛らわすためにミミガーだけでなく、お土産のちんすこうまで貪り食う。

 

「あ〜美味しい〜〜! やっぱこのしょっぱいのと甘いのを交互に食べるのは最高ね〜〜!」

 

 誰に話しかけるでもなく、わたしは喋り続けた。

 

✳︎****************************

 

20分後、息子がリビングへと緩みきった笑みを浮かべて戻ってきた。全く、ヒトの気も知らないで……

 

「ぐっちゃん、ちょっと出かけてくる……って……!? 何してんの!?」

 

 入ってきて早々、息子が素っ頓狂な声を上げる。どうやら、恐怖を紛らわすためわたしが逆立ちしながら片手で腕立て伏せしているのに驚いているみたいだ。わたしは何だかむかつくので、息子へとすさかずつっかかる。

「何よ、別に何しようがわたしの勝手じゃない!」

「昼間から親がリビングで酒飲みながら片手で逆立ち腕立て伏せしてたら誰だって驚くよ!?」

 ほら、やめなよ、と息子が止めようとするがわたしは構わず腕立て伏せを続行する。

「うっさい! 鍛えてんのよ! 見なさい! この割れた腹筋を!」

「うん! 割れてないよ! 綺麗なお腹だけど!」

「見てんじゃないわよ! 変態!」

「見ろって言ったのぐっちゃんじゃん!?」

 

 このままではらちがあかないと判断した息子はハァ、とため息をついじゃあて出かけてくるよ、とリビングを後にする。

 

「ちょっと、どこ行くのよ?」

「はぁ……衛宮さんと散歩してくるよ」

 しぶしぶといった感じで振り返る息子。呆れ顔を浮かべながらもなんだかんだ相手をしてくれるこの子も大概、お人好しだろう。

 

「……あの娘、大丈夫……?」

「え……? 何が?」

「いいえ、なんでもないわ」

 

 どうやら、あの殺気のようなものはお邪魔虫にのみ発動するようだ。現に息子はわたしの質問に何の事だ、と怪訝な顔を浮かべている。まぁ、わたしも項羽さまとの逢瀬を邪魔するものには容赦しないし、そう考えれば先ほどの小娘の気配も納得できる気がしてきた。

 恋とは魔性。正の力にも負の力にも何にでもなる。正しい方向にその力が行くなら喜ばしいことだが、それが少しでも負の方向に向かってしまえばそれは周りを巻き込んでとんでもないことなる。わたしの経験上、とくに乙女の恋ほどろくなものはないということを断言しておく。

 

「今日は何時に帰ってくるの?」

 逆立ちをやめて、息子を見送るべく玄関に向かう。こうして並んでいると息子が本当に大きくなったのだなと実感できる。

「20時までには帰るよ、ご飯、一緒に食べるって約束したし」

「そ、じゃあ久しぶりの満漢全席作って待ってるわよ」

「やった」

 靴紐を結ぶために座る息子を見下ろす。高校の時は坊主頭だったが今は生意気に髪を伸ばし、一丁前に色気付いている。もう18歳なのだから、当たり前と言えば当たり前だが。

 

「……あの娘と結婚するの?」

「ぶっ……!? え……!? な、なに……!? 何て言ったの!?」

「何よ、別に変な事言ってないでしょ」

「いや、十分変だよ!? け、け、結婚なんて!? まだ早いというか、恐れ多いというか……!?」

 もう18歳なのだから、早いことないだろう、というのは古い考え方だろうか。わたしの時代であれば当たり前の事だったのだが。時代が変われば常識も変わっていく。それに文句を言うほど野暮ではない。

 

「嘘おっしゃい。やることやってる癖に」

「やってない! やってないってば! まだキスまでしか……あ……!?」

「ププッ……語るに落ちたわね」

 

 わたしがそう言ってからかうと見る見るうちに顔を赤くしていく息子。18歳になってもキスしかしてないなんて初心すぎやしないだろうか。

 だが思えば、藤丸とマシュも二十歳を超えて漸くといったところだったから先ほども言ったように今はそういう時代なのだろう。

 

「うっさいなぁ!! 全く……!! 行ってきます!!」

「ちゃんと避妊はするのよー」

「うっさい!! 彼女に聞こえたらどうするんだ!!」

 

 そう言って勢いよく息子は家を出て行った。あの調子じゃ当分、孫の顔を見ることもないだろう。全く、困ったものである。

 

 やれやれ、と玄関を後にする。あの調子だと20時に帰ってくるかは怪しいが料理の準備をしなければ。最後の晩御飯になるのだし、久々に気合を入れて作ってあげよう。

 

 そう思って、リビングに入ると、ありえない光景が目に飛び込んだ。

 

 リビングにいたのだ。信じられない人間が。

 

 具体的にはキリシュタリアが。

 

 わたし達の家のリビングでくつろいでいたのだ。

 

「やぁ、久しぶり」

 

 呑気なキリシュタリアを尻目にわたしはスマホを手に取り、一言。

 

「もしもし、お巡りさん?」

 

 ピーポーピーポーとやかましいサイレンが住宅街に鳴り響いた。

 

 〜次回へ続く〜

 




読んで頂きありがとうございました!!

今更ですがこの間の星5配布は誰を貰いましたか? 自分はもちろん項羽様ですけどね!! 
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