「ただいま! ぐっちゃん!」
「あぁ、おかえりなさい」
今日は後輩の息子の10歳の誕生日。ゴルドルフたちが誕生日プレゼントを届けてくれた。毎年、全くもってご苦労な事である。
誕生日の何が良いのか不死の私には皆目検討もつかないが、人間はやたらとそれを祝おうとする。不思議である。
「えっと……まずはムニエルさんからだね……」
ムニエル。カルデア前職員。一言で表すなら変態だ。
「……えっと、ねぇ、ぐっちゃん。何で、この男の子? 女の子かな? 裸なの?」
「見ちゃいけません!!」
瞬時に息子から取り上げ、ビリビリに破り捨てる。あの変態太っちょ。何てものを誕生日に寄越すんだ。
「あ! 手紙だ! えっと、何々…… これを読んで、色んなところを大きくしてください、だって!」
「ぶっ殺してやるわ! あのデブ! 10歳に向かって下ネタ振ってんじゃないわよ!!」
今度、会ったら丸焼きにして食べてやる。
「……ぐ、ぐっちゃん顔が怖い……え、えっと次はシオンおばちゃんからだよ」
「これ、まだやるの? 私、見てなくちゃ駄目?」
「駄目! 一緒に見るの! えっと、これなんだろう? ポーチ?」
息子の手元にあるポーチを見た瞬間、戦慄する。それが魔術を知るものであれば、一発で厄ネタだとわかる代物だったからだ。
「あ、これも手紙があるよ。これを身につけとけば間違いなし。必ず貴方を守ってくれます……お守りみたいだね」
「……そうね、身につけとくといいわ」
私は何時ぞや、持っている茶器やら家具やらをカジノで売り飛ばした時、どこぞの軍師がやたらと突っかかてきたのを思い出していた。
うん、今ならあいつの気持ちがわかるわ。
(これ一つで戦争が起きるような代物を子供に送りつけてくんじゃないわよ!)
「おチビ……それ絶対に無くしちゃ駄目よ」
「え、う、うん。勿論……ぐっちゃん、さっきから目が怖いよ……」
「気のせいよ」
その後もクリプターとの争いを生き残ったカルデアのメンバーからのプレゼントを喜ぶ息子と何が送られくるかわからないので、いちいち検閲しなければならない私とで妙なコントが始まり30分ほどが経過し、漸く最後の一人となった。所長、ゴルドルフ・ムジークその人である。
「えっと、最後はゴルドルフおじさんだね」
「……嫌な予感しかしないわ」
恐る恐る中を覗くとそれは写真のアルバムだった。
「アルバムだね……開けてみる」
「えぇ……」
そこには……思い出があった。
彼らの旅路がこのアルバムには詰まっていた。
勿論、そこには後輩とマシュも。
ゴルドルフがカルデアに入ったのはクリプターとの争いからだから、人理修復の際の写真はない。だが、そこには彼らの眩しい笑顔が確かに写されていた。
ロシア。北欧。中国。インド。ギリシャ。イギリス。南米。
その全てが困難を極めた。だが、それでも彼らは笑っていた。
どんなに苦しくてもどんなに痛くても彼らは決してその足を地に伏したりはせず、必ず、前を向き、走り抜けた。
懐かしくも輝かしい鮮やかな記憶。
ゴルドルフはその断片だけでも息子に見せたかったのだろう。
君のご両親は素敵な人だった、と。
どうしても伝えたかったのだろう。
10歳という節目の歳を迎える今日、この誕生日に。
「あ、ぐっちゃんもいる! 変わらないね!」
「……そうね」
見ると、私もいた。中国のすぐ後だろうか。とんでもなく不機嫌に顔を歪ませた私が後輩の隣に写っていた。
「あ、でも、今の方が綺麗かも……」
「あら、口が上手になったじゃない。でも、残念。今月のお小遣いは増やしませーん。こんだけ、プレゼント貰ったんだからいらないでしょ」
「え〜! そんな!? ぐっちゃんからまだプレゼント貰ってないよ!」
「でも、安心しなさい。今日の夕食は満漢全席。私からのプレゼントよ」
「本当!? 楽しみ!」
後輩とマシュは見ているだろうか。10歳になった息子を。あんなに小さかったあの子がこんなに大きく成長して、もう小学4年生だ。
あと、2年すれば卒業して、いよいよ中学生というものになるという。反抗期とかあるのだろうか。ちょっと心配だ。
それでも、私はこの子と生きていきたいのだ。
どんなに喧嘩したっていい。必ず、この子の隣にいたい。
いや、いるのだ。私は今一度決意を固めたのだった。