「到着しました。芥さまはこちらへ。おぼっちゃまは……ペペ様、お願い致します」
「はいは〜い! じゃ、芥ちゃん、おチビちゃんは私に任せて、ゴルちゃんのところにいってらっしゃい!」
車が到着すると、外からメイドのような格好をしたホムンクルスがドアを開け、私たちに出るよう促す。どうでもいいが、メイドの格好はゴルドルフの趣味だろうか。
ペペなら大丈夫だろうと、息子を彼に任せて私はメイドの格好をしたホムンクルスについていく。館には高そうな銅像やら壷やらが飾ってあって、当主の趣味がを明らかにしていた。
「お待たせしました。こちらです」
ホムンクルスが立ち止まったのは一際大きなドア。この部屋の中にゴルドルフがいるという。ドアノブが高すぎて、私、というか、人類ではこのドアを開けたり閉めたり不可能だろう。
「これ、どうやって開けるの?」
「中の人間が認めた人物が前に立つと自動で開く仕組みになっております。今、当主に連絡を入れますのでお待ちください」
そう言って、備え付けの電話を取るホムンクルス。暫くすると、ドアが開きだす。電話を置くとホムンクルスは、それでは、と長い廊下を行ってしまった。
ドアが開くまで待っていると、思わず欠伸が出る。このドアいつになったら開くのかしら……
「ハハハッ! 精霊様の欠伸なんて滅多に見れるもんじゃねぇな!」
「……ベリル……」
ベリル・ガット。私たち、クリプターの一人。だが、彼はキリシュタリアやオフェリア、カドックのような純粋な魔術師ではない。もっと血生臭く泥臭い、裏社会の中でもさらに奥底に眠る何かだ。もちろん、私は大嫌いだ。
「そんなあからさまな顔しないでくれよ、さすがに俺だって傷つくぜ」
「ふんっ……よく言うわ。何も思っていない癖に」
こいつの笑顔は本当に嫌いだ。笑っているのに笑っていない。薄気味悪くて仕方ない。
「いやいや、実際、心配してたんだぜ。昨日、大変だったみたいじゃねぇか」
「……あんたの差し金じゃないでしょうね?」
「そりゃねぇぜ、芥! 俺はまぁ、お世辞にも善人とはいえねぇが筋は通す男だ。これでも、補欠の藤丸は買ってたつもりだったんだけどな……」
「……」
どこか寂しげな顔をしているが、大方、おもちゃをなくした程度にしか思ってないのだろう。事実、顔を抑えた手の下でにやついた顔が見えた。
「もう行くわ……ゴルドルフが待ってるから」
「そうかい……お前、随分変わったよな……まるで、人間みたいだぜ」
そう言われた瞬間、私は我慢できず、ベリルの胸ぐらを掴んで壁に叩きつけた。
「愚弄するのも程々にしろ、人間! 貴様にはこの姿が人間に見えるか!?」
「ヒャー、怖ぇ! いや悪い、悪い、お前がまだそんな顔できるとは思わなかった! あぁ、俺が悪かった! 俺が間違ってたぜ! お前は立派な化け物だよ!」
「ッッッッ……!!!!」
明からさまな挑発に頭に血が上り、思わず片手を胸ぐらから離し、彼の顔を殴りつけようと拳を振りかざす。
「ちょっと、待って!! 待ちなさい!! タイムだよぅ!! 君たちぃぃい!!!」
だが、突然、飛び込んできた妙に太い影にその拳は阻まれる。突如もたらされた重たい圧に私とベリルは吹き飛ばされる。
「……何で!! 何で、君たちは出会って5秒でバトルしてるんだい! 君たち、昔は仲間だったじゃない! 仲良くしなさいよ、全く!!」
飛び込んできたのはゴルドルフ・ムジーク。カルデアの所長だった男だ。今はその後進の組織でリーダーを務めている男だ。相変わらずの太い身体をブルンブルン揺らしながら、ゼェゼェと息を吐く姿はどこか動物じみていた。
「……ハハハッ! いやいや、喧嘩なんかしてねぇぜ、所長さんよ! ただ、昔のよしみで戯れ合ってただけだよ。なぁ、芥?」
「……」
未だにふざけた調子のベリルを無視していると肩を竦め、立ち上がる。
「芥くんはこんな感じだが?」
「つれねぇなぁ……じゃあ、邪魔者は行くとするよ。依頼があったら、また連絡くれ、所長さんよ」
そうして、ベリルはポケットに両手を入れ、チンピラみたいな足取りで長い廊下に消えていった。できれば、二度と姿を見たくないものだ。
「……塩、ないの、塩」
「ないよ、そんなもの。ここはキッチンじゃないんだ。さぁ、入った、入った、扉、開いてるのにこないんだもの、君。気になって覗きにきちゃったじゃない」
「悪かったわ……気が立ってた」
昨日、久しぶりに戦闘を繰り広げたせいだろう。頭に血が上りやすくなっていたところに、あの大嫌いなベリルだ。タイミングが悪いにも程がある。思わず、息子と暮らしてからは使ってなかった口調が出てきてしまった。
「……ベリルもああ見えて働く男だよ。昨日、君らの居所がバレた情報を掴んだのは彼だ。きっと、今だって君の様子を伺いにきたんだよ」
「ふんっ……」
あいつが優秀なのはわかっている。Aチームの頃のあいつは飄々としながらも、カドックや他の補欠メンバーが失敗するとさりげなくフォローをする男だった。だが、私の正体を明らかに気づいていたペペと違ってベリルの場合はどっちつかずで、とても気の許せる人間ではなかった。
ゴルドルフについていくと、大きな本棚に囲まれた部屋が見える。どうでもいいが廊下長すぎないかしら。彼はその真ん中に机があり、如何にも大物然とした態度でセットの椅子に腰掛けた。
「……仕切り直して、まずはお疲れ様だ、虞美人くん」
「えぇ、助かったわ。危うく息子を失うところだった」
「あぁ、こちらこそ、礼を言いたい。君がいなければあのボーイまでも私たちは失うところだった。本当に感謝したい」
「いいのよ……お互い様だし」
あらゆる英霊と契約をしたマスター、藤丸立香。
デミ・サーヴァント、マシュ・キリエライト。
あの子は彼らの息子だ。それが魔術的にどれ程、価値あるかは語るまでもない。当然、二人が殺されたあと、息子の身柄を引き取ろうとありとあらゆる魔術一家や組織が手を上げた。だが、それは藤丸とマシュの望むところではなかった。彼らは生前、息子が魔術と関係ないところで生きるのを望んでいたのだ。
だから、ゴルドルフをはじめとしたカルデアの元メンバーは私に息子を預けた。ゴルドルフのところでは息子を魔術師として育てる事になるし、息子を寄越せと時計塔からなんらかの指令が下る恐れがあったからだ。
一般家庭に紛れ込ませる事で時計塔からの詮索を拒絶し、追っ手も私がいれば迂闊に手出しはできない。唯一の気掛かりは教会の代行者だが、そちらもデマの情報をばら撒いてもらう事で居場所を掴ませないようにしている。
「……これから、どうするかね? もう一度、戸籍を作り直す方向で進めてしまっているが、君の意見をまだ聞いていなかった」
ゴルドルフはどこか神妙な顔持ちをしている。私が受け入れてくれるか心配しているのだろう。ゴルドルフからしたら当然だろう。面倒ごとを押し付けているという罪悪感に囚われているのだから。
でも、それは大きな間違いだ。確かに最初は私が子供を育てられる訳がないと思っていた。だがあの子と暮らすうちに彼と過ごす日常は私にとってかけがえのないものとなっていった。あの子と過ごした当たり前の日々は私の心に色を再び与えてくれた。数千年の生でも再び得る事のできなかった色を、あの子はたった数年で与えてくれたのだ。
だから、お礼を言うのはこちらの方なのだ。紛れもなくその機会を与えてくれたのはゴルドルフなのだから。
「……息子と引き続き一緒に暮したいわ……」
「そうか、そうか……それは……本当に良かったよ」
私の返答にゴルドルフは嬉しそうに頬を緩め、立ち上がり私に握手を求めてくる。その手を握り、私は彼の目をまっすぐ見据えて本心を言った。
「ありがとう、あの子といさせてくれて」
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「……なにしてんの?」
「あら、芥ちゃん、おかえりなさい! 見ての通りよ!」
「見てわからないから言ってるのよ」
ツイスターゲームを知っているだろうか。いくつかの色を割り振られた円があり、指示された身体の部位でその円を踏んでいくのだが、途中でその指示された円からその部位が離れるのは許されないというゲームだ。普通は男と女同士でやるらしい。人間というのはどこまで色欲まみれなのか。呆れ果てる他ない。
そのツイスターゲームをカドックと息子が何故かやっていた。
「あ、こら、チビ!! もっとそっちいけ!! 踏めないだろうが!」
「カドックおじさんこそ、そっち行ってよ! 足離れちゃうじゃないか!」
同じマットの上で仲良く絡まりながら、言い合う二人。言い合いは同じレベルの人間としか起きないというが言い得て妙だと私は思う。
「次は右手、赤よ! あぁん、カドックちゃん、左足が離れちゃうわよぅ!」
「うるさい! 集中しているんだ! 話しかけないでくれ!」
「ちょっと、カドックおじさん、唾、顔にかけないでよ!!!」
指示者はオカマ。実行者は男二人。そもそも何故ツイスターゲームを始めたのか。どうせ、発案はペペなのだろうが。先ほどから通りすがりのホムンクルスが奇異の視線を送ってきているが、切にこれが普通の人間だと思わないことを願う他ない。
「あ、ぐっちゃん! おかえりなさい!」
「あ、こら! 急に立ち上がるんじゃない!……ぐへっ!?」
私が呆れ果てた視線を送っていると、漸く私がこの部屋に来たのに気づいたのか、ゲームを放り投げて私の方にやってくる。カエルが潰れたような音がしたがきっと気のせいだろう。
「今ね、ペペさんとカドックおじさんに遊んで貰ってたよ!」
「あら、良かったわね。でも、あんまり真似しちゃダメよ。ほら、見ちゃいけません」
「仕事の合間に遊んでやっていたのにその扱いは酷くないか!?」
盛大に顎を床にぶつけたらしいカドックがのたうちまわりながら、大声をあげる。そんなカドックを見て、ペペはいつもの微笑みではなく珍しく大笑いしていた。これだけ見ていると本当に世界を脅かしたクリプターの二人とは思えない。
「……で、ゴルちゃんとは何の話をしていたのかしら?」
「まぁ、いろいろよ」
暫くして落ち着いた後、私とペペは彼の入れた茶を飲み、チップスを摘みながら、話していた。ちなみにカドックと息子はポケモンをしている。あの二人、面と向かって会ったのは赤ん坊の時以来なのに、仲良くなるの早すぎやしないか。
「そういえば、あいつ、髪薄くなってたわね」
「疲れているのよ。時計塔での立ち回りやら、私たちの組織の運営とか……もう、彼、常識人だから、敵も多くて、私も大変よぅ」
そう言いながら、ペペはどこか楽しそうだ。フリーランスだった彼が特定の人物に仕えているのもゴルドルフの人柄によるもの。きっと、文句を言いつつも楽しくて仕方ないのだろう。
「キリシュタリアとデイビッドは?」
「あの二人は相変わらずよ。どこにいるか、わかったもんじゃないわ。偶に連絡はくれるんだけど、キリちゃんったらどこにいたと思う? 南極よ、南極!! ペンギンとのツーショットを送ってきたときは槍でも降るのかと思ったわ!」
「おい、ペペ、何だそれは!? 僕のところにはそんな写真来てないぞ!?」
画面に夢中なカドックがチップス欲しさにやってくる。どうやらカドックの劣勢のようだ。遠くからニコニコの息子がこちらを見ている。
「そりゃ、アナタがスマホ持ってないからじゃない。いい加減に買いなさいって言ってるでしょ! それに今は乙女の密談中! あっち、行った、行った!」
「乙女って、一人は不死身で一人はオカマじゃ、ブギャ!?」
「はいはーい、邪魔者は帰ったことだし、乙女の密談再開しましょ」
「え、えぇ……」
何やら物凄い力で息子の元まで吹き飛ばされたカドックを尻目にペペとの会話を再開する。
「アンタは相変わらずね」
「ふふっ、そうかしら」
Aチーム時代、チームのリーダーは間違いなくキリシュタリアだった。だが、チームの和を保つことに一番貢献していたのはペペだった。彼には不思議とそういう力があり、それを彼自身もわかっているのだろう。彼も率先して、色々な人間に話しかけているようだ。
「芥ちゃんはだいぶ変わったわ」
「それは前に聞いた」
「そうね……でもね、変わるのはアナタだけじゃないのよ?」
ペペはそう言って、チラリと息子を見る。あの戦いを経ても変わらずあの子は無邪気に笑っていた。
「魔術は覚えさせるの?」
「……悩んでいるわ」
護身用にと、気軽に覚えられる程、魔術は甘くない。相当の年数と相当の努力を積み重ねて、漸く一つの魔術ができる。当然、今までの生活のようにはいかない。日本の日常に慣れた息子が今更、その道を行くのは余りに酷だとも思う。
だがこの先、息子が再び襲われる可能性だって大いにあり得る。その点で見れば魔術を覚えることは合理的と言えた。
「何にせよ、ちゃんと話さないと。まだ、ちゃんと話していないんでしょ」
昨日から、のんびりと息子と話す時間はなかった。飛行機は息子がぐっすり眠っていたし、車はペペがいた。
「そうね、私たちがどう言おうが結局はあの子次第だし」
「そうだけど、願うなら私は彼に魔術の世界に関わらせたくないわ……神秘が身近にあるのは控えるべきよ」
「既に神秘の塊の私が保護者だけどね」
「そうだったわ……これは一本取られたわね!」
たまに思う。私という存在自体がイレギュラーな存在がいることで息子にどれだけ影響を与えるのかということを。イレギュラーに関わり続ければ、いずれ息子の感性はイレギュラーをノーマルと感じ始める。
それはいつしか人間社会と齟齬を来たす。小さい綻びはやがて大きな穴となり息子の心を社会から逸脱させるだろう。
正体を隠していたのは正体を知られるのも怖かったこともあるが、息子が私の正体を知ることで彼の心を変えてしまうんじゃないかということもあったからだ。
だから、私の意見としてはこれ以上、魔術に関わらせたくはないのだ。息子には日常を生きて欲しい。それが私の願いだ。
「今日、少し話してみるわ」
「えぇ、そうしなさい」
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その日の夜、ゴルドルフの開いたパーティーに参加した息子と私は大いに楽しんだ。以前のカルデアの職員たちも大きくなった息子を見て、笑ったり、泣いたりしていた。ちなみに、ムニエルは息子に半径5メートルの領域に近づかせなかった。焼かないだけ感謝しなさい。
︎
そして、23時。パーティを終え、用意された部屋に向かう。途中、酔っ払ったカドックに絡まれたので目潰しをお見舞いしてやった。
部屋は二人にしてはとんでもなく大きく、かえって落ち着かなかった。息子に着替えるよう促して、私も部屋着へと着替え、寝る準備を済ます。精霊の時は睡眠なんて必要なかったが、今となってはもう習慣となっている。
二人で大きすぎるベッドに寝転がり、天井を見上げる。
「ねぇ、ぐっちゃん起きてる?」
「えぇ……あんたは眠くないの?」
「うん、飛行機でたくさん寝たからね」
「そ……」
息子と話さなければいけないことはわかっているがどこで切り出していけば一向にわからない。昔からこういうのは苦手だ。相手の気持ちを考えなさいと本には書いてあるができたら苦労しない。
「……魔法って本当にあったんだね」
意外にも切り出したのは息子からだった。魔法というのは間違いだが、素人からしたら同じようなものだろう。
「まあね。隠していてごめんなさい。隠さないといけないものなの」
「うん。気にしてないよ。人間じゃないのを言ってくれなかったのは怒ってるけど」
「う……それはごめん」
「フフッ……ぐっちゃんが素直に謝るなんて珍しいね」
「……この部屋が広すぎるせいよ。調子が狂うわ」
誤魔化して、息子とは反対側に寝返りを打つ。暗くて赤くなった顔を見られる心配はないだろうが、何となく落ち着かなかったのだ。その状態で息子に話し続ける。
「あんたは魔法を使えるようになりたい?」
遠回しに聞いても仕方ないので、単刀直入に聞くことにする。それに私の話術を考えたら、胡乱な言い方じゃ違う意味に思われかねない。反対側を向いているから息子の顔を伺うことはできないし、息子は暫く無言のままだ。
でも、経験から知っている。息子が何も言わないときはもう答えが決まっているときだ。
「……僕にも魔法が使えるの?」
「えぇ、ちゃんと練習すればね」
「……そうなんだ」
マシュの母体から生まれてきた子だ。きっと凄まじい才能を持っているに違いない。相応の教育をすれば、優秀な魔術師に慣れるだろう。
だが、その才能を開花させてしまえば二度と今までの日常には戻れない。強さには常に責任が求められるのだ。何でもかんでも好き放題にしてはいけない。私の数千年の人生で学んだことの一つだ。
そのことをあえて話すことはしない。ちゃんと考えて欲しかったからだ。今ここでそのことを説明してしまえば子供の彼には選択肢がなくなってしまう。ちゃんと、選ばなければならないのだ。自分の人生を。
だから、彼がどちらを選択しようと私は尊重するつもりだし、口出しする気もなかった。だけど、できるなら少しだけ私もペペと同じ考えを持っていた。だって、それが藤丸とマシュが望んだ事だからだ。
「それが聞けて良かったよ……ぐっちゃん、僕は魔法を習わない。これからもぐっちゃんと一緒に暮したいよ」
だから、息子がそう言ってくれた事に私は心のどこかでホッとしてしまった。
「……本当に良いの?」
「うん! 今更、日本での暮らしを変える何て考えられないし、それに……」
「それに?」
「……お父さんとお母さんもそっちの方が良いって思ってる気がしたから」
「……そうね、きっとそう」
もう一度寝返りを打ち、息子の顔を見て、手を繋ぐ。とても温かい。藤丸とマシュには決して感じる事のできない温もりを感じている事に一抹の罪悪感を今更ながらに覚えるが、あの二人の分まで、とそのまま抱き寄せる。
この小さな身体には未来がたくさん詰まっている。
スポーツ選手になるかもしれない。
医者になるかもしれない。
料理人になるかもしれない。
発明家になるかもしれない。
平凡なサラリーマンになるかもしれない。
この子は何にでもなれる。なりたい自分になれるのだ。
だから、私は彼の歩む道を守ろう。どんな、恐怖も絶望も跳ね除ける盾となろう。それが私にできる事であり、藤丸たちへの恩返しだ。
息子が眠りにつくまで私は彼を優しく抱きしめていた。
✳︎*******************************
お、やっと目が覚めたか、全く心配したぜぇ、薬嗅がせすぎたかと思ったよ。どうだい、調子は? ハハッ! 決まってるか! 最悪だよなあ!
目が覚めたらアイマスクつけられてて、何も見えねぇ上に手足は枷で動きやしないんだ。俺だったら漏らしてるよ。その点で言えばあんたは俺より優れてるぜ、良かったじゃねぇか。まぁ、最も俺は捕まるようなヘマをしないんだけどな。
で、お前、俺に捕まった理由に心あたりはあるか? あったら、10秒数える前に言ってくれ。俺は手間を省きたいんだ。あんただって痛い思いはしたくないだろう?
……あぁあ、そんな必死に首振っちゃって。知らないぜ? どうなっても。え? もうどうにでもしろって? いい心掛けなのは賞賛してやるけど、意味ないと思うぜ。だって、俺、心読めるし。お、その顔は信じてねぇな? まぁ、いいさ、どのみち、俺は直接口にしたことしか信じねぇからな。あんたのその口から聞きたい言葉が出てくるまで気長に働くとするよ。
俺が質問するからイエスかノーかだけで答えてくれよ。あぁあ、こりゃ、今夜はサービス残業かねぇ……
ハハハッ! やるなぁ! こんだけ痛めつけて口を割らねぇとはいい根性だ! それに免じて拷問はやめてやるよ。もう、目的は果たしなしな。
お、漸く驚いた顔してくれたな! そうそう、その顔だ! その顔が見たかったんだよ。実は、さっき心を読めるって言ったの本当なんだよ。俺の仲間にそういうのに長けたやつがいてな。もうあんたを捕まえた時点でとっくに知りたい事はわかってたんだよ、残念ながら。
おっと、舌を噛もうとしたって無駄無駄、自殺防止の呪詛くらいちゃんとかけてるよ。
いやいや、それにしても、傑作だなぁ、あんたの顔! 写メで撮ってやるよ! ほら、ハイチーズ! なんだよ、全然笑ってねぇぜ! 写真は嫌いか? わかった、わかった。よすって、そんなに怒るなよ……全く、唾が顔についたじゃねぇか……
え? 何で、最初から答えを知っていたのに拷問したのかって?
そんなの、お前、ハハッ! 楽しいに決まってるからじゃねぇか!
何言ってんだよ、お前……あれ?
お前、泣いてんのか? オーイ、もしも〜し? 聞こえてるか〜?
あ、ダメだこれ、完全に壊れた。
しゃぁねぇなぁ、全く。じゃあ、次、行ってみよう!
なんつって。
読んで頂きありがとうございました。
最後のはベリルが虞美人たちを襲撃した組織のメンバーを拷問している一部始終です。
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ありがとうございました!