学戦都市アスタリスクin黒の剣士   作:小説大工の源三

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桐ヶ谷和人と大砲

和人side

 

ユリス「ほほう、これはまた珍しい組み合わせの来客だな」

 

そう言いつつもどこか面白がっているような顔で、トレーニングルームの入り口に立つ二人を見た。

一人は二メートル近くもある長身のレスター、もう一人は対照的に小学生と間違われかねない低身の沙々宮。巨人と小人を体現しそうな二人だ。

どちらもムスッとした表情で、リースフェルトを睨んでいる。

 

綾斗「紗夜に……レスター?どうして二人がここに?」

 

直葉「お兄ちゃんマクフェイル先輩の隣にいる小さい子誰?」

 

耳打ちして質問される。完全に年下と思っているみたいだが我が妹よ、俺と同い年だぞ。

その事を伝えると、すごく驚いた顔をして、焦る。

 

直葉「えっ……!本当に!?」

 

和人「ああ、本当だ」

 

俺は視線を戻す。

沙々宮はズイッと一歩前に出て、リースフェルトに向かって人差し指を突きつけた。

 

紗夜「ずるい」

 

ユリス「は?」

 

ユリスはぽかんとしたまま目をぱちくりさせる。

まあ唐突にそんなこと言われても、なにがなんだかわからないし。ただ予想としては、ユリスが綾斗と特訓してることについてだろうか。

 

ユリス「ずるいって……いったいなにがだ?」

 

紗夜「ここのところリースフェルトは綾斗を独占しすぎ。これは明らかに私的独占の禁止及び公正取引に関する法律違反。改善を要求する」

 

ユリス「……こいつの取り扱いが独占禁止法に接触するとは知らなかったな」

 

呆れたように言うが、沙々宮は顔色一つ変えずにさらに一歩前に出る。

 

紗夜「とぼけてもだめ。ネタは上がっている。ここしばらく綾斗とリースフェルトが放課後二人きりで密室にこもって公言できないような行為に耽っていたことはすっかり調べがついてる」

 

事実無根すぎる。俺とスグがいる時点でそんなことがあり得ないのに……いったい誰から聞いたんだ。

 

ユリス「ひ、人聞きの悪いことを言うな!私たちは《鳳凰星武祭(フェニクス)》に向けて訓練を積んでいただけだ!それより誰から聞いたんだ!」

 

紗夜「情報源は秘密……情報通のE・Y氏からとだけ伝えておこう」

 

ユリス「おのれ夜吹!」

 

夜吹ェ……

それと沙々宮、バレバレだろ……ほぼ言ってるからそれ……

 

紗夜「大体リースフェルトは普段から綾斗とくっつきすぎ。この前も昼食で偶然席が一緒になった風を装っていたけど、不自然きわまりない」

 

ユリス「なっ!あ、あれは本当に偶然に……」

 

紗夜「偶然は五日も続かない。無理がある」

 

ユリス「ぐぬっ……な、ならば私からも言わせてもらうがな、沙々宮だって幼馴染みだからと言って──」

 

二人は言い争いを続ける。あれは止めろと言っても止まらないな……

 

綾斗「はぁ……向こうはとりあえず放っておくとして」

 

直葉「はい、そうしましょう」

 

和人「おめでと、レスター。退院したんだな」

 

レスター「……まぁな。あの程度でやられるオレ様じゃねぇよ」

 

ぶっきらぼうに、眉を寄せて答えた。

先日の一件で治療院に運ばれたと聞いたが、まぁレスターみたいなやつが偽形体(パペット)ごときに重傷にされる訳がないのだが。

 

綾斗「で、今日はどうしたのさ?それも紗夜と一緒だなんて」

 

レスター「このちんちくりんは道中で拾っただけだ。道に迷ってたみたいだし、目的地が同じだからな。まあ、ついでだ」

 

と、耳ざとくそれを聞きつけたのか、ユリスと言い争いをしていた沙々宮がふいにこちらへ顔を向ける。

 

紗夜「誰がちんちくりんだ。でも連れてきてもらって助かった。ありがとう」

 

頭をペコリと下げた沙々宮は、再びユリスと不毛な言い争いへと戻る。

マイペースだなぁ。

そもそもこのトレーニングルームは公式序列戦などが行われる総合アリーナにあってほぼ一本道なのだが、彼女はどうやって道に迷ってのだろう。

 

直葉「行き先が同じなら、マクフェイル先輩もあたしというかお兄ちゃんたちに用があったんですよね?」

 

するとレスターは眉間の皺をさらに深めて視線を逸らす。

 

レスター「あー……その、なんだサイラスの件だが……一応アレだ、結果的にとはいえ──助けてもらったことには違いねぇようだから、な。礼っつーかケジメっつーか、とにかく世話になった、それだけだ!邪魔したな!」

 

綾斗「わっ!ちょ、ちょっと待ってよレスター!」

 

小さく頭を下げて、そのまま去ろうとするレスターを綾斗が引き留める。

 

綾斗「そうだ!ちょうどタッグ戦の訓練相手を探してたんだ。レスター、よかったら、手伝ってくれないかな?紗夜も一緒に」

 

レスター「訓練相手だと?」

 

紗夜「う?」

 

ここにいる全員が綾斗を見た。

 

ユリス「こ、こら綾斗!何を勝手に……!」

 

綾斗「だって訓練相手が必要なのは本当じゃないか。それにこの二人なら事情を説明しても問題ないでしょ?」

 

確かにレスターは事件の関係者である程度綾斗の事情を聞いている、沙々宮はそもそもの綾斗の実力を知ってる

 

ユリス「そ、それはそうだが」

 

綾斗「どうかな、二人とも?引き受けてくれると助かるんだけど」

 

やや強引にユリスの了承を取った気もしなくもないが、それは確かに問題もない。

しかし綾斗も綾斗で少々マイペースな気がする。

沙々宮はあっさりうなずく。すると必然的に余ったレスターに視線が集中する。

レスターは面食らったような表情が浮かべたが、一つ質問をした。

 

レスター「そこにいる桐ヶ谷兄妹でもいいと思うが」

 

和人「俺達だけだと変な癖がつくと思うからお前ら二人と戦ってもらって欲しいな」

 

レスターは頬を掻きながらぼそっと答えた。

 

レスター「……し、仕方ねぇな」

 

 

 

─────────────────────────

 

綾斗が沙々宮に経緯を説明し、沙々宮が抱きつくとユリスがわざとらしく咳払いをする。

 

ユリス「そろそろ始めたいのだが……」

 

綾斗「ああ、うん。ごめん」

 

ユリスは微妙に不機嫌そうな顔をする。

あ~これはどうだ?まだ完全には惚れてはいないが少し意識してるくらいか?まぁなんにせよ良い変化と言えるな。

 

選手準備中~

 

和人「んじゃ試合開始ィ!」

 

俺の宣言と同時に、レスターが綾斗へ向かって猛然と突っ込む。

やはり力強い戦い方だ。だが力の使い方に無駄を感じる。

 

レスター「行くぜぇ!」

 

気合いとともに薙ぐ戦斧の一撃を、綾斗は剣で受けるも大きく後ろへ吹っ飛ぶ。

とんでもない膂力だ。流星闘技(メテオアーツ)を使えば対抗可能だが、綾斗は流星闘技が使えない。

俺もレスターと何度かやり合ったが、最初は綾斗のように吹き飛ばされた。

アレはまじでびびった、受け止めたはずなのに飛んでる。恐怖でしかない。

 

レスター「まだまだぁ!」

 

さらに第二撃が綾斗を襲うが。なんとか紙一重でかわしたようだ。

綾斗はその隙にレスターの懐に潜り込む。しかしそれはレスターもわかっているので、攻撃の勢いをそのままに肩から突撃する。

 

綾斗「くっ!」

 

綾斗が離れると、さらに第三撃が襲う。さすが序列九位は伊達じゃない。

 

レスター「そらそらどうしたどうしたぁ!その程度かよ!」

 

するとユリスの九輪の舞焔花(プリムローズ)が二人の間に割って入り、レスターの回りを纏わりつくように牽制している。

 

レスター「ちっ!いいところで!」

 

綾斗「ふぅ……助かったよユリス」

 

レスター「くそっ!相変わらずちょこまかと……!おい、ちんちくりん!てめえもちゃんと仕事しやが……」

 

レスターが背後の沙々宮に視線をやるとピタリと固まる。それはそうだ、彼女が構えていた銃が大砲だったからだ。

 

紗夜「……仕事なら今からやる」

 

すでに流星闘技の発動準備をしているのか、煌々とマナダイトが輝いている。

 

直葉「お兄ちゃんあれなに!?」

 

和人「この前はグレランみたいなの持ってたけど違うみたいだな」

 

直葉「グレネードランチャー持ってたの!?」

 

我が妹も驚いている。いや、驚かない方がおかしいのだが。あの身長でグレネードランチャーを撃つことは俺も驚いた。今回の銃はどんなのだ……?

 

紗夜「三十九煌型光線砲(レーザーカノン)ウォルフドーラ──掃射」

 

実に緊張感のない声でつぶやく。

ってこのまま撃ったら壁が!

俺はすぐさま沙々宮の射線に移動し夜空の剣を起動する。

 

レスター「ちょっ、待て!」

 

レスターはうろたえた声を出し、綾斗は伏せている。

 

和人「エンハンスアーマメント!」

 

俺が叫ぶと夜空の剣から黒杉が放たれ、沙々宮の光線とぶつかりそしてそのまま相殺して消えていった。

すると後ろからものすごい音が響く。

恐る恐る後ろを見ると壁に大きくヒビが入っていた。

 

和人「………………は?」

 

俺は機能解放で受け止めたはずなのに後ろにはヒビ。

 

直葉「なにこれぇ……」

 

和人「俺が聞きたいよ……」

 

レスター「やり過ぎだ、馬鹿!オレごと吹き飛ばすつもりか!」

 

紗夜「かわせない方が悪い。昔の綾斗なら余裕で避けてた」

 

ユリス「沙々宮、お前な……」

 

ユリスは怒る気力もないようだ。

 

「──あらあら、これはまた派手にやりましたね」

 

扉が開き、クローディアの声が聞こえた。

 

 

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