刀藤と話しをした日の次の日、珍しく放課後に俺は教室でうたた寝をしていた。
すると周りがざわついてきて目を覚ます。いったい何があったんだ?また綾斗が何かやったのか?
すると肩を後ろから叩かれ振り向く。そこには男子生徒がいた。
「桐ヶ谷君、君と天霧君にお客さんだって。応接室にいるからいった方がいいぞ」
和人「了解。教えてくれてサンキュ」
俺は綾斗と一緒に向かう。
誰かに呼び出されることでもしたか……?
昨日あったことを振り替えると一人の人物が浮かぶ。
刀藤か?
そうこうするうちに応接室に到着。
隣の綾斗が扉をノックする。すると「あ……ど、どうぞ」と、予想通りの声のが聞こえた。
扉を開くと、やや緊張気味にソファに座っている
綺凛「天霧先輩!せ、先日は大変失礼しました!」
入るなり、刀藤はあたふたとソファから立ち上がり、綾斗に謝罪の言葉を口にする。
綾斗「ああ、いや、君が謝ることは何も……」
綾斗はいきなりの謝罪に戸惑う。おそらく昨日刀藤鋼一郎に突っかかったのだろう。
綺凛「それと桐ヶ谷先輩に天霧先輩、昨日はありがとうございました!」
こんどはこっちに感謝の気持ちを伝える。俺は何もしてないのだが……
和人「いや、俺は何もしてないんだが……」
綾斗「俺も……」
綺凛「いえ、お二人は伯父様から庇っていただいたり、相談する相手になってくれました……!その、あまりそのような人がほとんどいなかったので、ほ、本当に嬉しかったのです!」
綾斗「いいよ。結局、君の力にはなれなかったしね」
和人「俺も手札が無いから何も出来てないぞ?」
綺凛「そんなことは……」
俺は扉の後ろからかなり多めのの星辰力を感じ取ったので自分の口の前に人差し指を立ててみせる。
刀藤と綾斗はすぐに察したのか息を潜めて、視線だけで了解の意を示す。
俺は静かに扉に近づき、扉に重量がかかるタイミングに合わせて勢いよく開く。
「おわあ!?」
扉に張り付いていた連中が雪崩れて混んできた。
そのまま神聖術お手製の
綾斗「ずいぶんと取材熱心だね、特に夜吹」
夜吹「ははは……ま、まあな」
ひきつった顔をする夜吹。少し後ろめたい心があるのか。
綾斗や俺は予想通りだが、刀藤にとっては違うらしい。呆気にとられたような顔をしていた。
和人「刀藤、とりあえず話は外でするか。寮まで送る」
綺凛「あ、はいっ!」
和人「綾斗は……無理か」
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和人「暑いな……」
夕暮れ時の夏空はとても濃い赤。まるであの日の赤い……赤い血の色を思い出す。
俺は忘れるように頭をブンブンと振る。
綺凛「大丈夫ですか?」
和人「ああ、大丈夫だ。少し考え事を、な」
俺は今少し苦笑いをしているのだろう。うまく頬が動いていない気がする。
綺凛「桐ヶ谷先輩も何かあるのでしたら、その……わたしに相談して欲しい……です」
こちらのことを心配するように覗きこんだ刀藤の顔はほんのり朱色に染まっていた。もっともこれは夕暮れの赤ではなく彼女自身が赤く染まっていたのだった。
和人「ありがとな。あと刀藤、お前の方こそ大丈夫か顔が赤いぞ」
綺凛「えっ?あ、は、はい……!」
和人「もしかして──緊張してる?」
刀藤はその問いに照れたような笑みを浮かべる。
綺凛「ご、ごめんなさいです。その……家族以外の男の人と一緒に歩くことが初めてでして……」
和人「そうなのか……」
綺凛「お父さ──父が厳しかったものですから」
さすがは刀藤流宗派。厳格な家庭のようだ。
和人「そっか、刀藤流は稽古も厳しいと聞くが、公私にわたってってことなのか」
綺凛「うちの流派をご存知なのですか?」
和人「俺だって剣士の端くれだからな。『鶴を折るが如し』と謳われる刀藤流を知らないわけないさ」
その何気ない一言に、刀藤の表情が花が咲いたようにぱぁっと明るくなる。
少しかわいいと思ったしまった。
綺凛「桐ヶ谷先輩の流派は西洋の剣術ですよね?確か……『アインクラッド流』でしたよね?」
和人「そうだな。結構昔の流派でね……よくわかったな」
うちの流派はかなりマイナーであり天霧辰明流とどっこいどっこいなくらいだ。今は桐ヶ谷家が伝えていて、伝わったのは大分昔のことだ。
綺凛「伯父様から渡された戦闘映像を見たことがありまして、桐ヶ谷先輩の動きがとても日本の物ではなく外国の動きと酷似していて、流派は桐ヶ谷先輩が口にしていたのでそうではないかと」
和人「よくわかったな……あと口にするのは癖だな」
直葉がかっこいいからという理由で俺は技名を口にしながら振るっている。
綺凛「桐ヶ谷先輩の剣技は決まった体の型がありません。さらに二刀流の時は片手の剣技を右左と交互に放っていたり、一刀流の時は刀藤流の連鶴のように剣の切り返しがとても速く素晴らしいです。まだ剣を交えたことがないのでいつか交えたらもっとアインクラッド流を理解出来たのですが……それと桐ヶ谷先輩の純星煌式武装はすごいです!二本でしかも相性がとてもよくて桐ヶ谷先輩と一体化してるように見えて、とても──」
刀藤はキラキラとした瞳で、ぐっと身を乗りだしそのまま喋っていたが、途中ではっとしたかのように口をつぐむ。見る間にかぁっと赤面して、ちょこちょことした足取りで後ずさる。
綺凛「す、す、すみません。わたし、つい……」
俺はさっきのギャップについ噴き出してしまった。
それにその仕草は小動物のようで、かわいらしい。
綺凛「ふぁ……」
和人「悪い!つい妹にやるように撫でて……」
俺はいつの間にか刀藤の頭を撫でていた。
綺凛「あの……もう少し撫でていただけませんか?」
上目遣いで彼女はお願いする。
当然俺はシルヴィやオーフェリアの上目遣いに逆らえないのでしばらく頭を撫でた。
和人「君は本当に剣術が好きなんだな」
綺凛「は、はいっ!」
きっぱりと答えた後少し寂しそうに何処かを見つめる。
綺凛「わたしは剣術以外才能がありませんから……」
和人「それは──」
俺は否定しようとしたが、刀藤が首を振って制する。
綺凛「いえ、本当のことなのです。わたしは頭も良くはないですし、ドジで、臆病で、家事だって満足にできません……それでも、そんなわたしでも剣を握っている間は誰かの役に立てるのです。だから、それは楽しくて、大好きなんです」
明確な意思と答え。
俺は彼女に口を挟む余地がなかった。
それでも彼女の志と行動の間に、何か微妙なズレのようなナニかがあるように感じる。
それがとても引っ掛かる。
綺凛「それにわたしにはかなえずなければならない願いがあります。」
和人「それは……?」
綺凛「父を助けることです」
和人「そのために、伯父の言うことをきいてるのか?」
綺凛「……伯父様はわたしと違ってとても有能な方です。わたしの望みを叶えるために、最良の道を示してくださいました。序列一位もこの肩書きもわたし一人では手にすることが出来なかったはずです。伯父様には……とても感謝しています」
俺は納得いかなかった。彼女が道具のように利用されていて、それを許容していることを。そして彼女の先ほどの物言いは自分の力を否定しているように聞こえたのだ。
和人「刀藤」
綺凛「は、はい!」
和人「俺は君が自分の力を否定しているように聞こえた。それは違う。序列一位だって疾風迅雷という肩書きだって全部君の実力で勝ち取ったものだ。元々君には前序列一位を倒す実力だってある。それは俺が保証する」
綺凛「桐ヶ谷先輩……そう言っていただきありがとうございます」
刀藤は儚い笑みを浮かべる。
俺はその顔が悲痛に歪むのを隠しているように見えた。
綺凛「話が変わるのですが桐ヶ谷先輩は普段どのようなトレーニングをしてるのでしょうか?」
和人「トレーニングか……基礎トレが多いな。走り込みして素振り、そのあとは直葉と模擬戦だけど最近は綾斗達の特訓に付き合ってるかな」
綺凛「ふむふむ」
さらに詳しく聞いてくる。
どうやら話題を変えたいのではなく本当に興味があるようだ。
綺凛「ありがとうございます。参考になりました」
和人「ずいぶん熱心だな」
綺凛「はい。強い片の訓練方法は勉強になりますから。それに今は自分でメニューを決めないといけないのですが、やっぱり不安で……。一人だと組太刀も出来ませんし」
和人「なら、綾斗達の訓練に参加するのは?もちろん君がいいならだけど」
綺凛「い、いいのですか?」
和人「まあユリスに聞かないとだけど」
頭の片隅にユリスが「勝手に安請け合いするな!」なんて言っている姿が浮かぶ。事情を話せば納得してくれるだろう。
しかし刀藤は一瞬顔を綻ばせたが、すぐにうつむく。
綺凛「ごめんなさいです……お誘いはとても嬉しいのですが、リスト入り特に《
和人「なるほどな……手の内を晒さないようにか」
綺凛「はい……」
なんとも用心深いな。なんだか刀藤鋼一郎が小心者に思えてきたぞ……
和人「なら朝練に付き合うってのはどうだ?それも綾斗のだ」
綺凛「天霧先輩の……?」
和人「ああ、あいつは『
綾斗に後で連絡すればいいだろう。あいつは断らないはずだ。
それに変装すれば非星脈世代にはほぼバレない。
綺凛「わかりました。お言葉に甘えて……」
和人「まずは綾斗に連絡しないとな……」
俺は綾斗の携帯端末に電話を入れる。
綾斗『もしもし?』
和人「よう綾斗。実は相談したいことがあってな」
俺は綾斗に要件を伝え、出来るか聞く。
綾斗『問題ないよ。それじゃあ細かい連絡は後で教えて。俺もそれに合わせるから』
和人「ありがとな……というわけだとりあえず連絡先を交換しておかないとな」
綺凛「わかりました……」
交換したあとはメニューを話し合い、そのうちに女子寮に着く。
綺凛「あの、今日は色々ありがとうございました」
和人「また、何か力になれることがあったら言ってくれよ」
綺凛「じゃ、じゃあ、また明日よろしくお願いいたします」
女子寮に入ろうとした刀藤を引き留める。
和人「刀藤、考えておいてくれ。お前の伯父さんから独立するかそのまま従い続けるか」
そう言って俺は女子寮から立ち去る。とても意地が悪いが気がするがこうでもしないと刀藤は考えないだろう。
女子寮から歩いてしばらくするとなにやら上から気配を感じ、飛びかかってくる気がするのでタイミングを見計らって振り向く。
「とぅ」
和人「誰だ!ってオーフェリア!?」
飛びかかってきたのはオーフェリアだった。
変装はしているが昔の写真を見せてもらった栗色の髪だったのですぐにわかった。
そのまま俺は彼女をキャッチする。
オフェ「……いまのこは誰かしら?」
じっとこちらの瞳を覗き込む。
近い近い。
和人「近いって!」
オフェ「いいから答えて。さっきのは誰かしら?」
和人「うちの序列一位の刀藤綺凛だ。それといつここに?」
オフェ「クローディアが入れてくれたわ」
クローディアお前の仕業かっ!
和人「そろそろ帰るけど、どうする?」
オフェ「今日は寮の人とちょっとしたパーティーをするから遠慮するわ。それと一つ気になったことなんだけど」
オーフェリアは一呼吸置き続ける。
オフェ「ずっと聞かなかったけれど何故貴方は序列一位にならないのかしら?」
和人「興味がないからな。この序列三位も少し優遇を受ける為だし」
オフェ「フフッ……和人らしいといえば和人らしいわね……あと浮気じゃないかからシルヴィアに報告はしないわ」
和人「浮気って……俺をなんだと思ってるんだ……」
オフェ「女たらしだけどわたしとシルヴィアの大切でかっこいい彼氏」
和人「そう、真っ正面からきっぱり言われると……///」
さすがにそれは照れるからやめて……
オフェ「それじゃあわたしは寮に戻るわ」
オーフェリアはレヴォルフの寮へ帰る。
そういえばなんで彼女は
ここでキリトの過去が少し明らかに
一体何があったんだ……(すっとぼけ)
カフェにいたエミヤ&槍ニキの番外編読みたい?
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