和人side
襲撃事件会議から2日経ち、未だに犯人のしっぽを捕まえることができないままでいる状況に少し苛立ちを覚える中、昨日のことを思い出す。昨日は試作品の煌式武装を持って帰ったことと、綾斗がレスター達にまた絡まれただとかくらいの連絡があったくらいだ。
俺は珍しく朝早く教室に到着し事件のことを考える。
そろそろ犯人のしっぽを掴みたいところだ。
すでに犯人がわかっていながら何も出来ないのはもどかし過ぎる。
しばらくして綾斗と夜吹が教室に到着し、綾斗がユリス話しかける。
ユリスはなにやら手紙に目を通しており、反応が遅れる。
綾斗「ユリス、おはよう」
ユリス「……」
綾斗「ユリス?」
ユリス「あ、ああ、おはよう」
焦った様子で手紙をしまい、視線をそらす。
綾斗「?」
谷津崎「おらおらー、席につけお前らー!出席取るぞー!」
谷津崎先生が殺気を振り撒きながらやってきたため綾斗はそれ以上の話ができなかった。
授業中も集中していなく、何処か上の空だ。
綾斗「ユリス、どうかした?」
放課後になり綾斗がようやく話ができるかと思ったが、ユリスは綾斗の方を見ず席を立ち上がる。
ユリス「すまないが、今日は用事がある」
綾斗「え?ちょ、ちょっとユリス?」
綾斗の制止の声も聞かず、足早に教室から出て行くユリスを俺は見送ってしまった。
こいつは無理にでも止めた方が良かったか?
綾斗「どうしたんだろう……?」
夜吹「あらら、なんだか昔に戻っちまったみたいだな」
綾斗「昔?」
夜吹は首をすくめて綾斗の質問に答える。
夜吹「あのお姫さん、お前さんが来る前まではいつもあんな感じだったんだよ。頑なに『私に関わるな』ってオーラ振り撒いてる感じでさ。せっかく雪解けしてきた感じだったのに、もったいないなぁ」
綾斗「……」
夜吹の言う通り、ユリスの様子は昔に逆戻りしている。
しかし突然あんな風に人を寄せ付けないオーラを振り撒くようになったんだ?
まさか綾斗がユリスの機嫌を損ねるようなことを何かやらかしたのか?
思考の海から意識を戻し綾斗に生徒会室へ向かおうと一言告げてから、俺はクローディアの所へ向かった。
─────────────────────────
クロ「あら、ごきげんよう。どうかしましたか?」
生徒会室に入るとクローディアはいつものように笑顔で、こちらを迎える。
綾斗「昨日、また連中がちょっかい出して来てさ」
クロ「ええ、話だけは聞いています。レヴォルフの不良連中を使ったみたいですね」
和人「さすがに耳が早いな」
やはりレヴォルフの連中は一枚岩じゃないか。
昨日ディルクから『うちの不良連中が星導館に迷惑をかけた。きつく絞っておく』という連絡が来たのはそれなのだが。
ディルクも大変だな。
綾斗「……それとは別に犯人のしっぽを掴めたんだ」
クロ「本当ですか?」
和人「マジか」
綾斗「実は昨日レスター達に絡まれた時──が犯人じゃないと知り得ないことを話したんだ」
和人「ほうほう。……綾斗、お前よくそんな腹芸やってのけたな」
綾斗「まぁね」
クロ「では、こちらでも調べてみるとしましょう。これでうまく解決できればいいのですが……」
クローディアはいまいち浮かない顔だ。
綾斗「なにか気がかりが?」
クロ「この事はユリスも気がついているのですよね?」
綾斗「口に出して確認してないけど、ユリスも気づいてると思う」
てことはまさか……!
和人「おい、ユリスは今どこにいる……!」
俺は綾斗の肩を掴み問い詰めるように聞いた。
綾斗「用事があるって言ってそのまま帰っちゃったけど……って、まさか!」
綾斗も思い至ったようだ。
そう、彼女の性格からして、犯人の目星が付いたならば他人に任せず自分で行くはずだ。
クロ「……これは少々まずいかもしれませんね」
綾斗「でもまさか本当に直接問い詰める気なのかな?向こうだって証拠がなければ白を切るに決まってるし……」
和人「いや、ここまできたら犯人もそんな悠長なことを考えてられんだろう。確実に口封じのために何かしらの接触を……」
ん?待てよ……朝の手紙って……
綾斗「っ!和人、まさか今朝の手紙って!」
和人「ああ、そのまさかだ」
クロ「手紙?」
綾斗「今朝ユリスが見てたんだ。隠すみたいにしてたからおかしいとは思ったけど」
クロ「何はともあれ、まずユリスを探しましょう」
和人「だが探すと言ったってどこを」
人工島とはいえアスタリスクはかなり広い。宛もなく探したところで見つかるとは到底思えない。
クロ「まず寮に戻っているか確認を取ります。犯人がユリスを呼び出したのだとしたら、当然できるだけ人目につかない場所にするでしょう。ならばある程度場所は限定できます」
俺はアスタリスクの地図を空間ウィンドウで表示させる。
綾斗「あ、ちょっと待って」
綾斗に連絡が入った。
誰だこんな時に。
『……綾斗、助けて』
綾斗「紗夜?どうしたのさ?」
どうやら写し出された相手は沙々宮のようだ。
紗夜『道に迷った』
綾斗は頭を押さえる。
綾斗「またかい、紗夜……ごめん。今はユリスの方で手一杯で──」
どうやら沙々宮は方向音痴のようだ。
紗夜『……リースフェルト?それなら、さっき見かけたような……』
綾斗「本当に?」
沙々宮はこくりと頷く。
綾斗「紗夜!どこで見かけたか詳しく教えて!いや、その前にまず今どこにいるの!?」
紗夜『……それがわかってたら迷わない』
そりゃそうだ。
クロ「失礼、沙々宮さん、周辺の景色を写してもらえないでしょうか?」
紗夜『……こう?』
沙々宮は周りの景色を写す。
和人「再開発エリアの外れか。ここからならかなり絞り込める」
綾斗「ありがとう、紗夜!おかげで助かった!」
紗夜『……まだ私が助かってない』
綾斗「ああ、そっか。えーと……」
クロ「沙々宮さんの方はこちらで誰か迎えを手配します。お二人はユリスを」
綾斗「ごめん、頼むよ」
クロ「いえ、おきになさらず」
二人が話している間に俺は該当箇所を地図上にピックアップしていく。
もどかしく感じるのは、俺に余裕がないのだろう。
綾斗「それにしても、どうしてユリスは何も言わなかったんだろう……やっぱり信用されてないのかなぁ」
クロ「逆だと思いますよ」
綾斗のぼやきに、目線は地図に残したままのクローディアが小さく苦笑する。
綾斗「え?どういうこと?」
クロ「以前に言ったでしょう?あの子は、自分の手の中のものを守るのに精一杯なのだと。きっとあなたもその中に含まれてしまったのでしょうね」
以前オーフェリアから聞いたが。
自分が買い取られた時、とても悔やんでいるということを。
そのことも関係してるのだろう。
和人「うし!出来た!」
俺は二人に地図を送る。
和人「まずは近い所から虱潰しに当たって行こう」
綾斗「うん!」
クロ「ああ、綾斗少しお待ちください。──
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ユリスside
私は今再開発エリアの廃ビルを訪れていた。
解体工事中のそこは逢魔が時の薄闇を支配している。すでに一部の壁や床が打ち壊されているので広く感じられる。が。あちこちに廃材が積まれているため死角は多い
それでも私はためらうことなく奥へと進んでいった。
傾いた日が不気味な影模様を作り出す中、険しい顔で黙々と歩みを進める。
もちろん、警戒は怠らずに。
が、一番奥の区画へ足を踏み入れた途端、吹き抜け状になっている上部分に視線も向けずに私は呟く。
ユリス「咲き誇れ、『
彼女を守るように五角形の花弁が出現し、落下してきた廃材をはね除ける。
それはまるで炎の傘のようだった。
ユリス「今更この程度で私をどうにかできるとは思っていないだろう?いい加減、出てきたらどうだ──
屋上まで貫いた吹き抜けの更に向こうにはうっすらとした月が浮かんでいるのが見える。
弾かれた強化鉄骨が床に突き刺さり、廃材が巻き上げた土埃がもうもうと立ち込める中、一人の少年がゆっくりと姿を現した。
サイラス「これは失敬。余興にもなりませんでしたか」
痩せた少年──サイラスは、芝居がかった仕草で頭を下げる。
サイラス「それにしても驚きましたよ、よく僕が犯人だとわかりましたね?」
ユリス「昨日、貴様が口を滑らせたおかげでな」
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三人称side
和人「くそっどこだ!」
和人達はピックアップした場所を探すがなかなか見つからない。
綾斗「次が最後だ。和人急ごう!」
和人「ああ!」(頼む無事でいてくれ!)
二人は最後のポイントへ向かう。
綾斗「和人!いた!」
和人「先に行け!綾斗!」
綾斗は和人にそう告げユリスの所へ飛んでいった。
和人「夜空の剣及び青薔薇の剣起動」
和人は純星煌式武装を起動しサイラスとユリスの所へ飛ぶ、すると黒炉の魔剣を起動していた綾斗が偽形体を両断していた。
ユリス「お、お前たち、何故ここに……」
綾斗「紗夜とクローディアと和人のおかげだよ」
ユリス「沙々宮たちが……?」
和人「そういうこった」
和人は二人の前に着地する。
ユリス「まさか私を助けにきたなどぬかすなよ?」
綾斗「……いや、助けに来たんだけど?」
和人「つーかこんなこと知ってて見捨てるほど腐ってないから」
困ったように言う綾斗と呆れた表情の和人の二人に、かっと頭血が上る。
ユリス「これは私の問題で、お前たちとはなんの関係もないはずだ!それなのにわざわざ危険な目に遭いにきたと言うのか!」
綾斗「ユリスはさ。自分の意思で、自分のために闘っているんだって言ってたよね。孤児院の子供たちを守るのも、全部自分がやりたいからやっているだけだって」
ユリス「……ああ、その通りだ」
綾斗「それは確かにすごいと思うけど、でも──」
綾斗はじっとユリスを見つめて続ける。
「──ユリスのことは誰が守ってくれるのさ?」
ユリス「誰、が……?」
綾斗「俺はね、ユリス。ずっと探してたんだよ。自分に何ができるのか、何をやりたいのか、何をするべきなのか──成すべきことはなんなのか。大切な人が俺を置いてきぼりにしていったあの日から、ずっと。でも、ここに来て、ユリスと出会って、ようやくわかった」
綾斗の言葉は懐かしむようで、それでいて何かと決別するようでもあった。
綾斗「今やりたいことがあって、それができるだけの力があるなら──それが俺の成すべきことなんだって」
ユリス「成すべきこと……」
綾斗「今の俺はユリスの力になりたい。それだけだよ」
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