学戦都市アスタリスクin黒の剣士   作:小説大工の源三

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桐ヶ谷和人と事件の終結

三人称side

 

綾斗「今の俺はユリスの力になりたい。それだけだよ」

 

綾斗はユリスの顔をじっと見つめる。

それに照れたのかユリスは逃げるように顔を背けそのまま和人に質問する。

 

ユリス「な、なら桐ヶ谷お前はどうなのだ!///」

 

和人「俺?そうだな……お前の数少ない友人として、それとお前の大切な友人に頼まれたからな」

 

ユリス「桐ヶ谷……おい……まさかそいつの名前は……」

 

サイラス「お話は終わりましたか?いやはや、まったく思わぬ飛び込みゲストですね──天霧綾斗くんに生徒会副会長」

 

その声に視線と意識を戻せば、サイラスが芝居がかった仕草で肩をすくめる。

しかし純星煌式武装(オーガルクス)の使い手が二人いるとさすがに余裕がないようだ。若干の焦りの表情が浮かぶ。それでもまだ優位が崩れないという自信が残っているのか。落ち着いている。

 

サイラス「今のが黒炉の魔剣の力ですか……なるほど、少しばかり厄介ですね」

 

綾斗の右手に握られている黒炉の魔剣はとても大きく片手では振るえそうにない。

 

サイラス「しかし使い手が二流ではせっかくの純星煌式武装も宝の持ち腐れというものです。綾斗くん、あなたの闘いぶりは何度か拝見しましたが、凡庸の極み。副会長の足を引っ張らないのがせいぜいでしょう。それに百体を超える僕の人形達相手に何ができると──」

 

綾斗「──黙れ。不意打ちしかできないのはあなただろう、サイラス・ノーマン」

 

彼らしからぬ、底冷えするような声だった。

 

和人「星導館学園にお前の居場所はもうない。アルルカントを手引きし、レヴォルフの不良に協力を仰ぎ、さらに俺の大切な人の友人をも傷つけた、例え無事に戻れたとしてもまともに生活できないと思え……!」

 

和人の声色に強い怒気が溢れる。その中には殺気も混ざっている。

二人の迫力に気圧されるように、サイラスが一歩後ずさる。

怯えた自分に気がついたのか、忌々しげに顔をしかめる。

 

サイラス「言ってくれますね。ならば試してみましょう」

 

サイラスが指を鳴らすと、居並ぶ人形達が一斉に煌式武装を構える。

 

サイラス「これだけの数をどうにかできるというのならやってみるがいい!」

 

四方から光弾が乱れ飛び、その合間を縫って剣や斧などの煌式武装を持った人形たちが襲いかかる。

 

和人「ふっ……」

 

しかし和人がその光弾を切り落とす。

 

綾斗「──内なる剣を以って星牢を破獄し、我が虎威を解放す!」

 

綾斗の顔に苦悶の表情が浮かび、それと同時に星辰力が爆発的に高まったかと思うと、複数の魔方陣が周囲に浮かび上がり、光の火花を散らし砕け散る。圧倒的な星辰力が解放され、光柱のように立ち上がる。

まるで固く縛り付けていた枷が外れたように。

次の瞬間、綾斗の姿はその場から消えていた。

 

サイラス「は……?」

 

サイラスが唖然として間抜けな声を漏らすと同時に、襲いかかった人形たちがバラバラになっていく。

ぽかんとした顔で和人の隣を見つめる。

 

サイラス「……なっ、ば、馬鹿な!?」

 

何が起きているのかすらわからないサイラス。しかしすぐに我に帰り、綾斗を探す。

 

サイラス「ど、どこに消えた──!?」

 

綾斗「ここだよ」

 

サイラス「ひっ!」

 

綾斗はサイラスの後ろに立っていた。ユリスを抱えたまま、一瞬で回り込んだのだ。それも人形たちを一振りで薙ぎ払って。

 

和人「余所見してていいのか?」

 

さらに残りの人形を和人が破壊する。

 

サイラス「な、な、な……!」

 

サイラスはあわてて逃げるように後ずさる。

 

しかし綾斗が回り込み、振り替えれば和人が純星煌式武装を構えて立っている。

 

ユリス「私を下ろせ!足手纏いになるつもりはない!」

 

和人「そのまま抱き抱えられとけお姫様。あいつの狙いはお前だから確実に狙ってくるぞ」

 

和人の一言にユリスの顔は真っ赤に染まる。

それが羞恥なのか照れなのかは本人だけが知ることだが。

もっとも綾斗がユリスを下ろしても和人がガードすればいい話なのだが。和人はちょっとしたいたずら心でそれを提案しない。

 

ユリス「だが、片手では……!」

 

綾斗「ああ、それなら大丈夫。これ案外軽いから」

 

綾斗は黒炉の魔剣を振るう。彼のいう通り軽いのだろう。楽々そうだ。

 

綾斗「まあ、正直言うとあんまり長く持たないんだけど──この程度ならどうとでもなる。それに和人がいるし」

 

その一言に和人はサムズアップする。

 

サイラス「ぐっ……!た、多少はできるようですが、あまり侮らないでいただきたいテですね!」

 

サイラスは冷静さを取り戻そうとしているが、明らかに動揺している。

 

サイラス「ならばこちらも本気でいかしてもらいますよ……!」

 

と、今まで乱雑に並んでいた人形たちが整然と隊列を組始める。

前衛は槍や戦斧といった長柄武器、後衛は遠距離武器、その間に剣や手斧を持った人形が埋め、そのもの最後列にはサイラスが鎮座している。

 

サイラス「これが我が《無慈悲なる軍団(メルツエルコープス)》の精髄!一個中隊にも等しいその破壊力凌げるものなら凌いでみろ!」

 

前衛の人形たちが猛然と突っ込んでくる。それを綾斗は跳躍でかわし、和人は夜空の剣で悠々と弾く。しかし綾斗を、和人の弾き上げた手を光弾が叩き込まれる。それを互いの純星煌式武装の腹で防ぐ。さらに着地地点に、その後ろを剣を構えた人形が飛びかかる。

 

綾斗「よっと」

 

和人「とんかつ」

 

だが二人は身をかがめて掻い潜り、大きく後ろに跳び距離を取る。

綾斗に抱えられているユリスはようやく息をつく。

 

綾斗「しりとりしたいなら後にしてくれないかな……」

 

和人「聞こえてたんだ」クスクス

 

綾斗は呆れ、和人は少し笑っている。先の攻撃を避けるさいの一言が原因だろう。

そんな中ユリスは顔が赤くなっている。何しろあまりにも綾斗に密着してしまってためだ。

 

サイラス「ふ、ふふふ……よくかわしますね。ですが、逃げてばかりでいいのですか?」

 

二人が防戦に回ったことでようやく少し余裕を取り戻したのか、サイラスが挑発するように笑う。

 

綾斗「そうだね、今ので十分わかったし」

 

サイラス「……わかった?」

 

綾斗「あなたの能力で個別に動かせる人形は、せいぜい六種類までってところだろう?」

 

サイラス「はぁ?」

 

サイラスの眉が怪訝そうに寄る。

 

サイラス「まったくなにを言い出すかと思えば……一体どこに目をつけているのですか?現に僕はこうして百体以上の人形を……」

 

和人「見ればわかるだろ。完全に自由に動く人形は六種類、あとはある程度パターン化した動きしかしちゃいない。それも十六体ぐらいだな。残りは全部同じように引き金を引いたり腕を振るうだけの単純な動き」

 

サイラス「……!」

 

綾斗「ハッタリにはいいかもしれないけど、あなたが不意打ちしかできない理由もよくわかったよ。こんなお粗末な能力、普通に闘えばすぐにネタが割れてしまうからね」

 

サイラスの顔が青ざめ小刻みに震える。

それが二人の言葉が真実だと告げていた。

 

和人綾斗「「ああ、六種類十六体ってことは、もしかして(ひょっとして)チェスのイメージなのか」」

 

ユリス「チェス──そうか!」

 

魔女や魔術師の能力は、自分なりに具体的なイメージを構築しているのが普通だ。ユリスは花、和人は素因、直葉は風のように、サイラスはチェスの駒なのだろう。

 

和人「ま、ゲームプレイヤーを気取っていただろうけど──あんまり腕がいいとは言えないな。なんならコンピューターにすら負けるレベル」

 

サイラス「くそがああああああああああ!」

 

和人の最後の一言にサイラスがぶちギレた。

 

サイラス「潰れろッ!潰れてしまえッ!」

 

再び人形が襲いかかるも二人は無造作に剣を歩きながら振る。

ただそれだけで三体同時に両断される。恐ろしい剣速だ。

羽虫を払うように、次々と人形が沈む。

 

綾斗「無駄だよ。そもそも一体一体はたいして強くもないんだ。動きが読めればただの木偶にすぎない」

 

和人が死角の人形を切り落とし、綾斗が見ずに差し出した剣先に、人形は自分から突っ込むように飛びかかる。

二人は次の動きを把握し対応しているのだ。

 

和人「さてと──そろそろ終わらせるか。咲け!青薔薇!」

 

和人は左手に握られていた青薔薇の剣を逆手に持ち、地面に突き刺す。すると氷でできた薔薇の蔓が人形に絡み付き動きを封じる。

 

和人「綾斗そっちの耐熱型よろしく。俺は重いの殺るから」

 

綾斗「了解」

 

互いに一言を告げ、動きを封じられた人形を蹴散らす。

 

サイラス「……馬鹿な……こんな馬鹿なことが……ありえない……ありえるはずがない……」

 

その光景にサイラスは絶望といった表情を浮かべる。和人が剣を向けると悲鳴を上げて尻餅をつく。

 

和人「王手(チェックメイト)だ。サイラス」

 

サイラス「……ま、まだだ!まだ僕には奥の手がある!」

 

背後にある瓦礫の山が吹き飛び、中から巨大な人影が二つ姿を表す。

他の人形の五倍はある。

 

和人「ゴリラじゃねえか……」

 

サイラス「は、ははは!さあ僕のクイーン!やってしまえ!」

 

しかし二人は動揺するどころかため息をつく。

 

和人「的がデカイと楽だなっ!アインクラッド流中伝『ファイトブレイド』!」

 

綾斗「五臓を裂きて四肢を断つ──天霧辰明流中伝『九牙太刀(くがたち)』!」

 

巨大な人形は二人の剣技になすすべもなく崩れ落ちた。

 

ユリスは二人がなにをしたのか理解できておらず。

サイラスにいたってはもはや言葉すら出てこない。

そして和人が近づくと、顔を引きつらせて逃げ出した。

 

サイラス「ひ、ひいぃ!」

 

ころかるように残骸の中逃げ惑うサイラス。近くにある人形の残骸にすがりつきその前ふわりと上へ飛んでいった。

 

綾斗「往生際が悪いなぁ」

 

ユリス「逃げられるぞ」

 

和人「問題ない。あとは副会長に任せておけ」

 

和人は突き刺してあった青薔薇の剣を引き抜き、星辰力を剣に込める。すると和人の背中から竜翼が現れそのまま上へ飛んでいった。

 

ユリス「桐ヶ谷!あの卑怯者に一発かましてやれ!」

 

綾斗「……それお姫様の台詞じゃないよね」

 

和人は一気に加速しサイラスを追い抜き反転する。

 

和人「逃げ場はないぞ終わりだ、サイラス・ノーマン」

 

サイラス「や、やめ、やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!

 

すれ違い様に、一閃。

人形の残骸は粉々に砕け散り、サイラスは絶叫を残して廃ビルの谷間に落ちていった。

 

和人「ま、腐っても星脈世代だ、このくらいで死にはしないだろうし。それにクローディアが待ち構えているだろうし」

 

和人は周囲見渡す。

 

和人「これは見事な絶景だな。そうだ何人かに写真撮って送ろう」

 

和人は写真を撮り送ろうとすると、下から綾斗の絶叫が木霊する。さらに誰とも知れない星辰力を感じ取る。

和人はそのまま下へ急降下する。

 

和人「おい、綾斗に何があった!」

 

そこにはぐったりと倒れている綾斗と呼び掛けるユリスがいた。

 

ユリス「わからない。突然魔方陣と鎖が現れて綾斗を縛り付けていったのだ……」

 

和人「原因不明、か……」

 

 

─────────────────────────

和人side

 

 

綾斗が倒れてから小一時間ようやく目を覚ました

 

ユリス「ああ、やっと気がついたか。やれやれ、一時はどうなるかと思ったぞ」

 

綾斗「ええっと、ここは……ぅぐっ!」

 

綾斗はからだを起こそうとするも激痛が身体の中を走り、顔をしかめる。

 

綾斗「そっか──やっぱり気を失っちゃったか」

 

和人「あんま無理はするな。ここは廃ビルの屋上だ。クローディアには連絡したから、直に迎えもくる」

 

綾斗「ああ、ありがとう二人共。助かるよ」

 

和人「どういたしまして」

 

ユリス「れ、礼はいい。助けてもらったのはこちらこそだからな」

 

俺は普通に返し、ユリスはぷいっと顔をそむける。

綾斗はユリスを見つめていたが、今自分がユリスに膝枕をされている状況に気づく。

あわてて身体を起こそうとするも再び激痛が走る。

 

ユリス「い、いいからじっとしていろ、馬鹿!まだ動くと辛いのだろう?」

 

綾斗「い、いや、でも──」

 

ユリス「わ、私がいいと言っているのだから、いいのだ!わかれ!」

 

ぺちんと綾斗のおでこを叩く。

 

綾斗「う、うん……」

 

綾斗も顔を赤く染めたまま、小さくうなずく以外になかった。

 

和人「おーい。そこいちゃついてるところ悪いけどさ、そろそろ話進めてもいいか?」

 

ユリス「な、別に私たちはいちゃついてなどいない///」

 

綾斗「ユリス落ち着いて。和人はただからかってるだけだよ」

 

ユリスは一度咳払いをし、落ち着きを取り戻し半眼で和人を睨む。

 

和人「悪かったって。綾斗さっきの魔方陣やら鎖のこと聞いてもいいか?」

 

綾斗「うん。大丈夫だよ」

 

ユリス「お前を抑え付けているその能力──魔女か魔術師のものだな?誰にかけられたものだ?」

 

綾斗「あー、それはその……」

 

綾斗はしばらく目を泳がせていたが、ずいっとユリスが顔を寄せると観念したように息を吐いた。

 

綾斗「……俺の姉さんだよ。姉さんの能力は万物を戒める禁獄の力なんだ」

 

ユリス「そう、か……。ということは、やはりあれがお前本来の実力なのだな?」

 

綾斗「そうとも言えるし、違うとも云える、かな」

 

ユリス「なんだそれは。煮え切らん答えだな」

 

綾斗「だって満足に扱えないものを『本当の実力』なんて言うのはおかしいでしょ」

 

和人「十分に使いこなしていたけど?」

 

綾斗「制限時間以内なら、ね。それに五分以上持ったのと今回が初めてなんだよ?しかもその後はこうして身動きすらままならなそうなっちゃうんだから、とてもじゃないけど偉そうなことは言えないよ」

 

和人「五分以上持ったのが初めてならなにかしらの条件を達成したんじゃないのか?」

 

綾斗「どう……だろう?わかんないや」

 

和人「そうか……」

 

ユリス「……お前の姉はなぜそんなことを?」

 

綾斗「できれば俺も聞いてみたいんだけどね。なにしろ五年前に失踪しちゃってるからなぁ」

 

ユリス「っ──」

 

綾斗「いいんだ。きっと姉さんには姉さんの事情があったんだろうし、これにもきっとなにか意味があるんだと思う」

 

気まずそうなユリスにそう言って手を振る。

 

和人「一つ質問がある。お前の姉の名前を聞いてもいいか」

 

綾斗「いいよ。天霧遥。それが俺の姉さんの名前だ」

 

和人「へぇ、やっぱりか。使用者履歴に書いてあったけどやっぱ弟だったのか」

 

綾斗「ああ、そうだ。ユリス俺からも一つ聞いていいかな?」

 

ユリス「私にか?なんだ?」

 

綾斗「《鳳凰星武祭(フェニクス)》のタッグパートナーってもう決まったの?」

 

ユリス「うぐ……!」

 

和人「まだなのかよお前……」

 

和人は呆れたように頭を押さえる。

 

綾斗「ええっと、その……俺じゃダメかな?」

 

ユリス「なに?」

 

こいつの理想のパートナーってかなり望み高だった気が……

 

綾斗「清廉潔白ではないけど真っ黒ってわけでもないし、頭の回転もまあ人並みくらいの早さはあると思う。強い意志と高潔な精神には多少目をつむってもらうとして……」

 

やっぱこいつ望み高いわ。

 

ユリス「……お前、それは全部の条件をまけろと言っているようなものだぞ」

 

ユリスは呆れながらも穏やかな苦笑を浮かべる。

 

ユリス「申し出はありがたい。だが無理をするな。《星武祭(フェスタ)》ともなれば普段のお前の力では太刀打ちできない。お前だって試合の度にこんなことになるのはごめんだろう」

 

綾斗「いや、全然構わないよ」

 

しかし綾斗はケロリと言った。

 

綾斗「言ったじゃないか、今の俺の成すべきことは──ユリス、キミの力になることだよ」

 

その言葉に、ユリスの顔をがぼっと染まる。

 

ユリス「い、いや、だがしかしだな、こういうことはもっとちゃんと……」

 

綾斗「……ひょっとして照れてる?顔、真っ赤だよ?」

 

ユリス「ば、馬鹿、そんなわけあるか!というか、み、見るな!」

 

再び綾斗の顔をぺちんと叩き、そのまま綾斗の視界を封じる。

 

二人共俺がいること絶対忘れてる。

 

和人「ま、いっか。このままユリスのパートナーは綾斗に決まりそうだし」

 

俺は気づかれないよう純星煌式武装を起動しそのまま自宅へ帰った。

後日ユリスのパートナーに綾斗が選ばれたと、綾斗から連絡がきた。

 

 

 

 

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