【any%RTA】UNDERTALE『二人の地下世界』モード【自殺チャート】 作:波津木 澄
ケツイを決めたボクたちの前に現れたその怪物は、これまで出会ってきたMonster達の比じゃない明確な殺意をボクに向ける。
ギラリと目玉がボクを睨む。すると白い魔力の塊がボクに向けて飛んでくる。慌てて避けようとするけれど、前にも弾幕を張られてしまうせいで急ぎすぎるわけにはいかない。
撃ち止めになったことに安心して怪物の方に目を向ける。
今度は、ボクの番――
『右、危ない!!』
考えを巡らせ始めた所でVictimの叫び声が聞こえてきた。
何のことだかわからずに右を向けば、ピンク色の塊がボクに強かに撃ちつけられる。けれど一度では終わらず、大量に飛んでくるピンク色の塊をVictimの助言を受けながらもなんとか避ける。
どうやら、まだ目の前の怪物は攻撃の手を止める気はないらしい。
そうしてピンクの弾幕も止まり、今度は警戒を緩めずに前を向く。すると大きな金属の塊から炎が噴き出て襲ってくる。
交互に火を噴くその穴から逃げながら、どうにか一手だけ攻撃を与える。
Asgoreとの戦い以上に余裕がなくて、全力で殴りにかかったにも関わらず目の前の怪物はとても余裕そうだ。
「あれれ? その程度なの?」
「うるさいッ!!」
目の前の憎たらしい顔をした存在の攻撃はどんどんと激しさを増す。
段々と避けることが難しくなってきた所でけたたましいアラートが鳴り響いた。大きな攻撃でも来るのかと前を見れば、
その文字の下には水色をしたハートが描かれている。
『一体何――』
「Victim!?」
途中で途切れた声に驚いて周りを見渡せば、そこはさっきまでいた場所とはまるで違っていた。
同じように暗闇に支配されてはいるけれど、そこにあるのは水色のハートの描かれた画面と遠くから迫ってくる沢山のナイフしかない。
「――――ッ!」
どうにかナイフを避けるけれど、それしかする余裕がない。Victimを探すために周りを見るどころか攻撃をするような余裕なんて見当たらない。
Victimがいないという事実に焦りながらも、どうにか隙間を見つけてそこに潜り込む。そして周りを見て、
すると、どういうわけか沢山あったはずのナイフがガタガタと震えたかと思えばそのまま絆創膏に置き換わる。
余りにも予測のできない変化に目を白黒させていたせいでその絆創膏に触れてしまう。しかし痛みはなく、むしろ負っていたはずの傷が治っていく。
前の方を見れば、水色のソウルがボクを見つめていた。
託されたそれを胸に秘める。すると今度は目の前の景色が切り替わってさっきまでいた怪物がボクを見る。
『ねぇ、急に立ち止まってどうしたの……?』
「……少し、話をしてたみたい」
攻撃だって激しくなっている。けれど、耐えられる。
耐えている内にまたアラートが鳴り響いて、今度はオレンジ色のソウルがボクを見る。頷いて返せば、今度は遠くからたくさんの拳がボクに迫ってきた。
避けて、避けて、避けて――そして、声をあげる。
するとオレンジ色のソウルがボクをしっかりと見つめて、さっきまで襲ってきたはずの拳がボクの背中を押すものに変わる。
また景色が切り替わって怪物が現れる。攻撃の間を勇気を持って走り抜けて、握りしめた武器を振るう。
すぐにまた攻撃が飛んでくるからどうにか避けている合間にVictimがボクに向けて叫ぶ。
『立ち止まったりしたら危ないって!』
「大丈夫だよ。ボクは――」
言葉が掻き消える。
頭の中を揺らされるような感覚に思わず足を止めそうになるけれど、どうにか攻撃を避ける。
『立ち止まったりしたら――って大丈夫!?』
「何、今の」
とてもじゃないが、愉快とは言えない感覚だ。全部をなかったことにされて、かと思えば無理やり元の状態に
頭を振って嫌な感覚を振り払おうとしている内に、もう一度頭の中を揺らされる。
一度経験したから、何が来るのかはわかる。けれどなれることの無さそうな感覚に襲われて、どうにもうまくいかない。
『ちょっと、本当に大丈夫!?』
「うん、もう――」
言葉をアラートに塗りつぶされる。前を見れば青色のソウルがボクを見る。
心構えを新たにすれば、星が頭上に敷き詰められて、目の前からはバレエシューズがボクを踏みつぶそうと列をなして襲ってくる。
シューズが上がった瞬間を狙って潜り抜けて、一息ついたところで声をあげる。
すると今度はバレエシューズが空に消えて、星がきれいな音を奏でる音符に変わる。
青色のソウルに認められたことをはっきりと認識して、絶対に約束を守るという誠実さを思い出した。
――Monsterとはお話をすれば分かり合える。
ボクが一番最初に聞いたことだ。それを忘れるなんて、ボクはダメだな……。
前を向く。目の前にいる怪物はボクが未だに立っていることにどうにも不満があるみたいだ。そんな顔をしている。
けれど、ここで倒れるようなことは絶対にない。絶対に、Floweyと話をして、ちゃんとお友達になるって決めたから。
『――急に何もしなくなるの怖いからやめてよ!!』
「アハハ、ごめんね」
どうやらあのソウルたちと会っている間に随分と心配をさせてしまっているらしい。けれど、これでようやく半分なんだ。
まだまだボクはやることを終えていない。
前を見れば、アラートが鳴り響いて紫色のソウルに見つめられる。
視界が切り替わって、今度は左右から本に挟まれてその本から聞いているだけで嫌になってくるような言葉が聞こえてくる。
そんな言葉たちを聞かないようにして、そしてボク自身の声で掻き消す。
紫色のソウルがボクを認めてくれて、胸の内にある熱をより大きなものにする言葉を贈ってくれる。
その言葉を胸にしまって、怪物を――Floweyを見つめる。
Floweyはボクに向けてなんで死なないんだってボクに文句を垂れる。
そんな言葉には絶対に屈さない!!
攻撃を続ける。何度も何度も頭の中を掻き乱されるけれど、そんなことに構っている暇はない。
目の前にあるものをどうにかすることだけ考えていれば、少しマシになる。だったらそうして進んでしまえばいい!
『さっきからなんだか変なんだけど……』
「みんなの想いを汲んでるんだよ」
訳の分からなそうな顔をしているVictimについ笑ってしまいそうになるけれど、アラートが鳴り響いて気を引き締める。
今度は緑色のソウル。なんだかボクを心配そうに見ているような雰囲気を感じる。
目の前に広がるのはただ真っ暗な空間。けれどなにかの焼けるような音がする。
おかしいな、なんて思っている間に目の前に炎が落ちてきた。慌てて上を見れば熱されたフライパンから炎が降ってきている。
慌てて避けていれば、どうにか一呼吸おける場所を見つけることができた。そして、叫ぶ――
すると緑色のソウルは決心した様子でボクに卵焼きをフライパンに乗せて差し出してくれる。
どうやら、認められたようだ。
ボクの胸の内を緑色のソウルが差し出してくれた優しさが包む。
視界が戻れば、ついに残りは一つだ。
真っ直ぐとFloweyを見つめれば、少したじろいだ。どうやらここまでの勢いに少し押されているらしい。
『もう好きにしなよ……』
「あー……こればっかりはどうしようもないかな。ごめんね」
ちょっとふてくされてしまったらしいVictimに謝るけれど、それだけの
けれどそんな考えもひときわ大きなアラートに上書きされてしまう。
ボクを見てくるのは黄色のソウルだ。これまでで一番ハッキリと見られている。
視界が切り替われば、目の前でボクに向けて銃口を向けられていた。
そのことにぎょっとしながらも反射神経だけで避ける。そして一度鳴り響いた空砲の間にボクの胸の内を叫ぶ。
黄色のソウルが少し微笑んだかと思えば、ボクに向けて銃口からクローバーを贈ってくれる。
確か……"幸運"のほかに、"希望"の意味のあるものだ。
ボクの中に秘められた確かな信念が更に固いものになる。
そして、ボクを認めてくれたソウルたちがボクの周りを回って、それぞれがボクに想いを託してくれる。
その思いを改めて受け取って、ボクの内側で更なるケツイが沸き上がる。
――――さぁ、前に進もう。
どこからともなく聞こえたその声を聞いたところで、ボクはまた戻される。
けれど、目の前のFloweyは確かにおかしくなっていた。
攻撃がさっきよりも深く刺さるし、攻撃そのものは激しくなっているけれど、重みがまるで違う。
こんなもので、ボクの想いが。ボクのケツイが、負けるはずがない!!
ボクの全てを込めて、最後の一撃を振るう。そして目の前でFloweyが崩れ落ちて――