【any%RTA】UNDERTALE『二人の地下世界』モード【自殺チャート】 作:波津木 澄
強いわけでもなく、弱いわけでもなく。けれど確かな力を持った光が辺りを満たす。
結界の向こう側から、地上の光が差し込んでいる。
きっと、この戦いで
この戦いが終わればボクは二度と世界を巻き戻したりなんてしない。
――――違う。きっと、できなくなるんだ。
けれど、そのためにはこの戦いを切り抜けなければならない。
そう思えば、ボクの胸の中でケツイがまた光を灯した。
「ニンゲンよ……」
重々しい口調でAsgoreが語りかける。
「君に会えて本当に良かった」
さようなら、と。そう言ってAsgoreは顔をうつ向かせる。それはボクの中の『
許すなんて優しいことをいうことができないような、余裕のない完全な戦いの場を作るための物。
けれど、今回は違った。
ボクの目の前で音を立てて炎が現れる。
その炎はボクではなくAsgoreに向いて飛んでいき、そして彼を突き飛ばしてしまった。
まるで、この地下世界に初めて落ちてきた時と同じことが起きていた。
ボクがどうしようもなくなってしまって。そして、そんな状況を彼女は二度も打ち払ってくれた。
「なんて恐ろしい魔物なんでしょう。罪のない子供を、傷付けるなんて……」
懐かしい声だ。
最後に聞いたあの時から何も変わっていない。とても優しくて、暖かい声。
振り返れば、そこには見覚えのある彼女がいた。
「ああ、怖がらないでいいのよ。私よ、Torielよ。あなた達の味方で保護者だわ」
その声に安心を覚えるよりも先に、その言葉にボクは固まってしまう。
彼女は、Victimがどうなったのかを知らないんだ。だから"あなた達"って、そう言った。
「……あら? もう一人の我が子はどこかしら……」
きょろきょろとTorielさんは首を回して辺りを見回す。けれどどこにもVictimの姿はない。
話題を変えるためにもどうしてここにいるのか、そんな何にもならない質問をする。帰ってくる答えはボクの予想通りに、ボク達を心配したから付いてきた、という事らしい。
本当に、優しいMonsterだ。
「――ここから抜け出すのに誰かが犠牲になる必要なんてないんだわ」
その通りだ。犠牲なんて必要ない。
必要は、無いはずなんだ。
……。Victimは、どう思っているのだろうか。思わずそう思って顔を伺ってしまう。
するとすぐにボクの視線に気づいて、ため息をつかれてしまう。
『必要がないことと、選択しちゃいけないってことは同一じゃない。必要がなくたって、選べる道ってことに違いはないんだから』
そう言って、Victimは空中で体を反転させて上空を見上げる。
話は終わりだって、そう言われてるみたいだったからもう一度前を見ようとしたら、追加で言葉が聞こえてきた。
『まぁ、私は自分で選ばなかったからこんなことになったんだよ。――キミは、自分で後悔しない道を選べばいい』
「…………こんなこと、か」
これまでの自分の行動の結果を、そうやって貶せるくらいにはなったみたいだ。
そのことが、どことなく嬉しくなってしまう。
「ンガアアアアア!!!」
ボクが嬉しさを噛み締めている間に、聞き覚えのある声がボクの耳に届く。
今度はUndyneが叫びながら部屋の中へと入ってきた。
「Asgore! ニンゲン! お互い争うことはない!!!」
ハッキリと自分の正義を主張する、Undyneらしい豪快な入り方だ。
「誰でも友達同士になれるんだ、なんならあたしが……!! あたしが……」
きっと、戦いを止めようとしてくれたのだろう。けれど戦いなんて起きていないことに気付いてしまったらしく、なんだか語尾が小さくなっていく。
「こんにちは。私はTorielよ。この子のお友達かしら? 初めまして」
「うん、あぁ……?」
急に自己紹介をされたことで混乱が加速したのか、Undyneは曖昧な笑顔を浮かべている。
けれど少し悩んだ後ではあったけれど挨拶にはちゃんと返事を返していた。
そうして一先ず戦いは起きていないと理解したらしく、今度はAsgoreに近寄って何かを聞いたみたいだ。
その言葉を受けてAsgoreがなんだか微妙な表情を浮かべた。……あまり良くない質問だったみたいだ。
「えーと。とにかく頑張れ、お前さん」
結局なんだか空回りしていたという事に気が付いたのか、勢いを失くしたUndyneがボクにそう声をかけてくれる。
……なんというか、気の抜ける状況だ。
「ね、ねぇ!」
変な状況になり始めたことに何となくボクまで微妙な顔をしていると、また後ろから聞き覚えのある声の主が入ってくる。
今度はどうやらAlphysが止めに入ろうとしてくれたらしい。
引っ込み思案な彼女が戦いの場に出てきて止めようとするなんて、とっても勇気が必要なことだろう。けれど、それでも来てくれたことが嬉しい。
……何と言うか、こうしてみんなが戦いを止めに来てくれるなんて思ってもみなかった。
もしも、もしも一回目の時にもっと時間がかかっていたら、ボクたちを止める為に来てくれていたのだろうか。
みんなで地上に出る為に一緒に頭を悩ませてくれただろうか。
「よし! いますぐ闘いを止めるんだ!」
そんなことを考え始めてしまったボクに、また聞き覚えのある声が届く。
今度は赤いスカーフを靡かせるPapyrusがボクたちを止めに来てくれたみたいだ。
「Undyneも手伝ってくれ!!」
Papyrusが元気よく戦いを止めるための準備を進めようとしたところでTorielさんが彼に声をかける。
「こんにちは!」
「あっ! こんにちは、国王陛下!」
……国王陛下?
Asgoreが国王なのだから、Torielさんは違うはずなのだけれど……。
「ちょっと! なぁ、ニンゲン……」
Papyrusに呼ばれて近づいてみれば、静かに耳打ちをしてくれた。
「Asgoreは髭を剃ったのか……? そのうえ……クローンを作ったのか???」
……? どういうことだろうか。
AsgoreはAsgoreだし、クローンを作ったなんて話は聞いたことがない。髭についても……、はっきりと立派なものが残っている。
……???
『……キミ、時々察しがいいのか悪いのかよくわかんなくなるよね』
……?
ボクの頭の中を疑問符が支配していると、今度はボクの真後ろに唐突に気配が現れる。
……この感覚にも覚えがある。
「ようお前達……何かあったか?」
いつかの時の焼き増しのようにボクの後ろに立って見せた彼はニヤニヤと笑いながらこの
……個性豊かなMonster達が集まって、なんだか本当に収集が付きづらくなってきた。
そんなこと思っている間にもSansとTorielさんは知り合いだったらしく、話がはずんでいる。
それを見ているAsgoreが悲しそうで、UndyneとAlphysはそれを慰めようとして……。
さらにはMettatonまでやってきて、さらに混沌は加速していく。
「……本当に、収拾がつきそうにないね」
『顔、笑ってるよ』
「……なんだか、嬉しくって」
いつの間にかこうして知り合ったみんなで集まって、笑いあって……。
当たり前のことであるはずなのに、それがとっても嬉しい。
「ね、ねぇ、そう言えば」
……? 唐突にAlphysが声をあげる。
何か、気になったことでもあったのだろうか。
「Papyrus……あなたが皆をここに呼び寄せたの、よね? その、彼女の、ええと、他の皆を。で、その……もし、私が先にここに来ていたら……どうやってみんなを呼んで回るつもりだったの?」
……確かに、そうだ。
これだけタイミングよくみんなが集まるなんて、それこそとんでもない偶然でしか起こらないことだろう。
なんだか嫌な予感がするなかでPapyrusが口を開く。
「ああ、それなら……。
ボクの中にある何かが特大の警報を掻き鳴らす。
「小さい…………花ですって?」
ボクの中で警報がこれ以上ないほどに大きく鳴り響く。
――――何かが、空を切る音がした。
「しんじつのラボ」を飛ばすか否か
-
飛ばしてヨシ!
-
飛ばすな書け