【any%RTA】UNDERTALE『二人の地下世界』モード【自殺チャート】   作:波津木 澄

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Pacifist-7

 ――――何かが、空を切る音がした。

 

 誰も彼もが反応することも許されないほどの一瞬。ただその一瞬で先端に手のようなものが付いた太い蔓が皆を縛り上げる。

 その蔓は見覚えがあるどこかで見た気がする。

 辺りを見回して探すまでもなく、犯人はすぐに表れた。

 

 地面から顔を出す花。

 

「バーカ。オマエたちがよろしくやってる間に……ニンゲンのソウルをいただいちゃったもんね!」

 

 ボクたちを嘲笑うその顔は、酷く歪んでいる。

 

「そして今、そのパワーだけじゃない……オマエのお友達のソウルも、ボクの物となるのさ!」

 

「Flowey……ッ!!」

 

 歯を食い縛る。

 一度陥れられて、そしてその存在を忘れていたボクが言えたことじゃない。

 

「へへへ……一番面白いのは何かわかるかい?」

 

 Floweyが嗤う。

 今の今までこれでいいって思っていたボクを。警戒も何もせずにただ笑っていただけのボクを。

 

「全部オマエのせいだってことさ」

 

 言葉がボクを殴りつける。

 

「皆にオマエを愛させたせいなんだよ」

 

 そんなことはないって言ってやりたい。

 

「皆の話に耳を貸して……応援したり……心配したり……」

 

 けれど、それも事実の一面だ。

 …………否定することは、できない。

 

「そうもしなければ、コイツらはここには来なかっただろうからね」

 

 Floweyは、ボクのケツイを折ろうとしている。

 

 ――ボクの中で感情が暴れ出す。

 ……いや、落ち着け。まだ抑えるんだ。

 

「オマエには……! 何が何でもここにいてもらうからね!」

 

 無数の蔓がボクを押さえつける。そうして逃げ道を失ったボクに向けてFloweyは魔力でできた弾を飛ばしてくる。

 ずっと、避けてばかりいたから感じなかった痛みだ。

 

 それがどうした。

 

 Floweyは何度も何度もボクを弾幕で貫く。ボクの体は確かに傷ついていく。

 けれど、こんなことじゃボクのケツイは折れはしない。

 

 はっきりと、Floweyを見据え続ける。迫りくる弾丸なんて無視して、じっと。

 そしてボクの命を奪うのだろう弾丸が迫って……。

 見覚えのある炎が弾幕を跳ね退けた。

 

「えっ?」

 

 Floweyが困惑したような声をあげる。

 

「恐れないで、我が子よ……」

 

 声のした方を見てみればTorielさんがボクを優しく見つめていた。

 

「どんなことが起こっても……私たちはいつでもあなたのことを守るから!」

 

 それは、Torielさんのニンゲンの子供を守るっていう、優しさの表れだった。

 

 Floweyの弾丸が迫る。

 今度は大きな骨と槍が防ぐ。

 

「そうだぞ、ニンゲン! お前なら勝てる!!」

 

「なぁ! ニンゲン! あたしを超えた貴様ならば、何だって出来る筈だろ!」

 

 PapyrusとUndyneが、ボクを真っ直ぐ見つめる。

 

「オレ様はお前を信じる、だから……お前もお前を信じろ!!」

「くよくよすんな! あたしたちがどこまでもついていくぞ!!」

 

 PapyrusとUndyneが、ボクの背中を押してくれる。

 

「ん? オマエ、コイツをまだ倒してないのか?」

 

 Sansがいつも通り余裕そうに笑っている。

 

「おいおい、こんなやつがオマエに敵うはずないぜ」

 

 Sansからの、確かな信頼を感じることができる言葉だ。

 段々と、ボクの中にある想いも大きくなっていく。

 

 ボクの様子に気付いたFloweyがまた弾幕を飛ばす。

 今度は雷と炎がそれを防いだ。

 

「科学的には、この状況であなたが勝つのは不可能だけど……」

 

 Alphysが、笑う。そして叫ぶ。

 

「で、でも……絶対に、あなたならできるってわかるの!!」

 

 Alphysの確かな本心がボクに伝わってくる。

 

「ニンゲンよ、ニンゲンとモンスターの未来の為に……!」

 

 Asgoreが、ボクに語り掛ける。

 

「ケツイを抱き続けるんだ!!」

 

 みんなの想いが、ボクに伝わって……そして、ボクを満たしていく。

 そんなボクたちを見ていたFloweyの顔が歪む。

 けれど、彼らだけじゃない。ボクがこれまでに出会ったみんなが、この場に現れてはボクに想いを託してくれる。

 

 改めて、ボクの中を……。

 ボク一人だけのものじゃない。みんなと同じ『想い(ケツイ)』を抱く。

 

「そんなバカな!! こんなことあり得ない……!!」

 

 Floweyが動揺して声を震わせている。

 すべてがキミの想定通りになんて行くもんか。そう笑ってやる。

 

「オマエ…………オマエらが……!」

 

 

 

 

 

 

 

「――そこまでバカだったなんてな」

 

 顔を上げたFloweyの顔は凶悪なものだった。

 

「本当ならここにいるMonster達のソウルを奪って、ニンゲンのソウルの代わりにするつもりだったんだけど……」

 

 不穏な空気が辺りを満たす。

 

「――――そういえば、そこに七つ目があったよねぇ?」

 

 Floweyがボクの胸の中を見通す。そこにはVictimがいる。

 ニンゲンのソウルが、ある。

 

「キミの持つあのニンゲンのソウル、ボクが貰うよ!!!」

 

 Floweyのその叫び声が聞こえて、急に体を引っ張られる。

 ――いや、違う。引っ張られているのは体じゃない。Victimのそれと一緒に、ボクのソウルまで引っ張られているんだ。

 持っていかれてたまるものかと対抗する。けれどボクが踏ん張ればその分Victimが持っていかれそうになってしまう。

 

『……なんでそう、誰かの為に頑張ろうとするかな』

 

 Victimが、ボクの目の前であの時の見覚えのある顔をする。

 止めてくれと言おうとしても、言葉を口にするだけの余裕がない。

 

『じゃあね、楽しかったよ――』

 

 するりと、Victimがボクの中から抜け出してしまう。

 途端にボクにかかっていた力が抜けて、ボクの中から飛び出たソウルがFloweyに吸収される。

 そして、途端にボクらの視界を闇が閉ざした。

 

 

 闇の中で、見覚えのない影が見える。

 影の主が振り返る。そこにいるのはきっと――

 

「ぼくだよ、君の一番の友達――」

 

 閃光が迸る。

 

「ASRIEL DREEMURRさ!!」

 

 閃光の先にいるのは七つのソウルを取り込んで【神】となった存在。

 Floweyの蔦から解放されたTorielさんとAsgoreが唖然としている。

 目の前で人間のソウルを取り込んだ存在が自分の息子の名前を呼んだんだ、きっとそれも仕方ないのだろう。

 けれど、今目の前にいるMonsterはボクの友達を取り込んで、利用する存在だ。

 

 

 ……。

 

 

 …………。

 

 

 ………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    

 

 

 

「しんじつのラボ」を飛ばすか否か

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