【any%RTA】UNDERTALE『二人の地下世界』モード【自殺チャート】 作:波津木 澄
手にした木の枝を握り込む。ボクの周りにはたくさんの友達がいる。
闘いなんかじゃない、意地のぶつけ合い。
互いに認めることが、諦めることができないから二人して馬鹿みたいに殴る。
……もっとも、この場にいるのは二人なんかじゃないけれど。
最初に感じていた圧倒的な差はもう感じない。
ボクも、Asrielも。結局のところは一緒だったんだ。だから、もう何も関係なんてない。
――ただ、できることなら。
――Asrielも含めた、皆を。
Asrielが魔力で作られた剣を構える。
ボクはその剣をギリギリで躱す。
そして拳で殴りこもうとして、Sansによって引き戻される。
「Sans、急に何するの!?」
「おいおい、Monsterの体ってのはニンゲンの持つ『ケツイ』の力に弱いんだ。それなのにそんな『ケツイ』にあふれた拳で殴ってみろ。一瞬で"骨"抜きにされちまうっての」
「……あ、ごめん」
『はぁ……。抜けてるというか、なんというか……』
アハハと誤魔化すように笑ってみればVictimとSansのため息が重なる。
……なんというか仲がいいな。
でも、行ける。
「おいニンゲン、そんなところで止まってるんじゃない!」
「そうだそうだ! 兄ちゃんもそんなところで突っ立ってたらやられちゃうよ!」
UndyneとPapyrusがボクに向けて苦言を突きつける。
そりゃあ確かに立ち止まっていはいたけれども……。まぁいいや。気を取り直して、と。
「キミたちみたいな弱いやつらに、ボクが負けるはずがない!!」
「ハハハ、弱い、弱い……か。確かにそうかもしれないね」
「あら、意外とあっさり認めるのね、Dreemurrさん」
「うん、確かに個々の力は弱いかもしれないからね。けれど」
Asrielのその言葉、ボクは否定する。
みんなは弱くなんてない。それは意図せずとも戦うことになってしまったボクがよく知っている。
そしてそんなみんなが同じ目的の為に手を組むんだ。そんなの、強いに決まってる。
「――みんなで手を取り合うなら、どうかな」
ボクの想いと似たことをAsgoreが宣言する。
神となっていたAsrielも、Asgoreのオーラに圧倒されて、一瞬気圧される。
「クソッ、クソッ、クソッ!」
「さぁ、反撃だ!!」
みんなが一斉に自分の魔法を飛ばす。炎が、光線が、電気が、槍が、骨が。全部バラバラのはずなのに一つに纏まって飛んでいく。
さすがの皆の想いを込めた一撃は確かにAsrielに届いた。けれど、それは決定的なダメージではなかった。
決定的なダメージではなかったが、確かに神に傷をつけた。
うん、皆いつも通りだ。いつも通り、自分の想いを魔法に載せている。
何も知らなかった時にはそんなことを考える間もなく、ただの脅威としか映っていなかった。
けれどもう知っている。みんなの想いを。だからこそ、もう怖くはない。なぜならそれは、とても優しい魔法なのだから。
――このままでいいのか?
良いはずがない。
このままボクだけ何もしないで、皆に任せっきりなんて許せるはずがない。
だから、こうするんだ。
ボクの中で作られた新しい
「なんだよ、それ……」
「ボクの『決意』だよ」
「そんなもの、ボクは知らない!!」
Asrielが現実を否定するように叫ぶ。しかしボクには関係ない。
「知らないの?」
「知らない、知らない!! そんなもの、この世界にはなかったはずだ!」
「――想いは、時として現実を凌駕するんだよ」
ボクのソレじゃない言葉がボクの口から飛び出していく。
けれど、なにも不思議とは思わない。だって、その子はずっといたから。
なんとなく、そう感じる。
「――さぁ、決着だ。Asriel」
「なんで、何で諦めないのさ! なんでそんなものを創り出してまで抵抗しようとするの!!」
「――ハ、そんなの、決まっているだろう。」
そんなの、決まっている。
「――それがコイツの」
それがボクの――
『
そして、そのボクの決意は今、極点に到達した。
この地下世界の皆を助ける為に。世界そのものを『上書き』していく。
ボクの決意が、塗り替えていく。このAsrielの世界を、ボクの世界に。
――――目を開けばそこには輝かしい未来がある。
七色に淡く光る、光にあふれた世界。
希望ばかり見ている理想主義者じゃないと思うけれど、こうなってしまったらしい。
「なんだよ、これ。神であるボクの力を上回ったっていうの!? ただのニンゲンが!?」
「……こいつはたまげたな。どうやらソイツは平ボーンってわけじゃなかったみたいだ」
「なんでだよ! なんでみんなボクを勝たせてくれないのさ!! ボクはただ、ボクの親友と一緒に居たいだけのなのに!」
Asrielが大きくわめく。
"ボクは、親友の想いを成し遂げるんだ"って、大きな声で。
「キミの親友は、自分の目的を誰かに背負わせるなんてしないよ」
「ボクの親友はニンゲンを憎んでた。だからボクが代わりに殺すんだ!」
ボクの中の誰かが力なくAsrielの名前を呟く。
「――もう、終わりにしよう」
誰かが『ケツイ』する。
ボクが『決意』を重ねる。
みんなが『想い』を紡ぐ。
もう一度、ボクの中にあるその選択肢が大きく輝く。
Asrielの攻撃を少し受けながら、ボクの中でその選択肢が再び輝いた。
輝いて、光に呑まれて。
一瞬だけ。
一瞬だけ、緑と黄色のボーダーシャツを着た子供たちが見えた気がしたけれど、それもすぐに白に呑まれた。
そして、目が覚めるとボクの顔を見覚えのある友達がのぞき込んでいた。
「……終わったんだ」
「いいえ。これからが始まりですよ、我が子よ」
「ああ、そうだね。これから始まるんだ」
「これからオレさまたちの物語がようやく始まるんだ!」
「外の世界、どんなところなのかしら」
「どんな所でも私が守るから安心しろ!」
「――行こうぜ、▲〇◆☆。ちょうど今から始めるんだ。"地上世界の暮らし"を」
みんながボクを見て、Sansがボクに手を差し伸べてくれる。
あの時は、皆は居なかったけれど。それでもあの時とは違って、Sansはボクをちゃんと見てくれている。
こんどはきっと手にブーブークッションなんて仕込んではいないだろう。だからこそ、ボクはその手袋に包まれた手を握り返した。
なんだかじんわりと登ってくる嬉しさを静かに噛み締める。
『ねぇ、一つだけ、お願いがあるの』
「おねがい……?」
ボクは多分、そのお願いの中身を知っていたと思う。
Victimの『想い』、『
『私は、ここに置いて行って欲しい』
だからボクは、その言葉に素直に、微笑んで返すことができた。
「―――――」
地上に出て、ボクたちを迎えたのは今まさに天へと登ろうとする太陽だった。
太陽の光が地下に暮らしていた彼らを祝福していた。ボクもまた、その光を受けて静かに感慨にふける。
この地下世界で、いくつものことがあった。
いろんな場所を回った。
きっと、地上にいただけではできない体験をあの地下世界はさせてくれた。
だからきっと、ボクらはずっとずっと、前へ進める。
「しんじつのラボ」を飛ばすか否か
-
飛ばしてヨシ!
-
飛ばすな書け