【any%RTA】UNDERTALE『二人の地下世界』モード【自殺チャート】 作:波津木 澄
《Victim》
……戦いが、始まろうとしている。
目の前にいるMonsterはその手に明らかなまでの"何か"を漂わせている。
隣にいた子供も、すでに構えを取っている。カミサマからの指示も届く。だから、怖いモノなんてない。
――――手を振る攻撃には当たって、後は避けて全力で見逃して。
……これまでの中で、一番曖昧な指示だ。
けれど、関係はない。私がただカミサマの指示に従うだけだという事実に変わりはない。
まずは何もする気はないという事を示すために手を広げて、ハグをするような姿勢を取ってみる。
少しMonsterが止まった気がするが、気のせいのような一瞬だった。
攻撃は手を動かさずに炎を出してくるものだ。だから避ける。
また、見逃す。
手を振る攻撃じゃない。躱す。
見逃す。
手を振ってきた。当たる。すぐにMonsterは攻撃をやめた。
ああ、これが狙いなのだろう。また、見逃す。
何度も何度も見逃して、何度か攻撃に当たって。そうして、ようやくMonsterは諦めたようだった。
すぐに子供の手を取って歩き始める。
外は雪の降っていて、木々の間を切り開かれたような道が続いていた。
隣の子供は寒さに震えていた。私は
「よ、よくそんなに歩けるね……」
"ボクはこのとおり寒すぎて……"そう付け加えらる。けれどそんな事はどうだっていい。
ボクの感じられるカミサマが明らかにボクを急がせようとし始めていた。
「とにかく――」
口を開いて、どうにか急がせようとしている時だった。
急に何かが派手に壊れるような音がしたのだ。顔だけを後ろに向けてみればそこでは木の枝がバキバキに折れていた。
何度も踏まなければああはならないはずなだろうことは遠目でもわかる。それなのにその場には何もない。
それこそ、まるで"折ってから瞬間移動で消えた"みたいな……。
いや、考えても何もわからないんだ。少し急ぐくらいが精々だ。
「急ごう」
「そ、そうだね……」
子供もこれには素直に賛成してくれて、すぐに足を動かす。
早く、早く。少しでも早くする。そうしたら、カミサマは褒めてくれるはずだから。
そう思っていると、後ろから何かの気配が近づいてきた。きっと、Monsterだろうから逃げられるだけの準備をしておく。
「――よお、ニンゲン」
《八人目くんちゃん》
Torielさんは、確かにボクたちを止めるつもりでそこに立っていた。
その目は真剣そのものだし、油断なんてどこにもないように見える。
手に漂わせるそれは、きっとほかのMonster達と同じような攻撃が飛んでくるってことだろう。
痛いのも怖いのも、きっと誰もが嫌いだ。なのに隣にいたはずのVictimはいつの間にか前に出て両手を広げていた。
言葉ではなく行動で、Torielさんの言う
"ボクも、争うつもりなんてない!"
そう口にすることはできなかったけれど、同じように握っていた拳をほどく。争うつもりはないと言葉だけではなくて、行動で訴えかける。
一瞬、Torielさんが苦しそうな表情を浮かべた。彼女は優しすぎるほどに心の温かいMonsterだ。きっと本当は、誰かを傷つけるなんてしたくないのかもしれない。
それでもこうして立ちふさがっているのは、本当にボクたちを守るためなのだろう。
――――それでも、ボクたちは
ボクの胸の中で改めてケツイがみなぎってくる。
何度もボクらは彼女を許した。けれど、彼女は決して攻撃の手を緩めることはなかった。
彼女の手が振るわれるたびにVictimはその手に向けて歩いていた。その手は攻撃するための
そんなVictimも、絶対に限界はあった。塵も積もれば山となるなんて言うように、攻撃を受けすぎて体はボロボロになっていたのだ。
それでもTorielさんは決して譲らなかった。攻撃をしようとして。でも向かってくるVictimを避けるような攻撃しかできなくて……。
ついに、硬い意志を抱いていた彼女が折れた。
そうして扉を開けられると同時にボクの腕を大怪我をしているはずのVictimが力強く掴んで歩き始める。
怪我についてとかいろいろと言いたいことはあったけれど、それよりも体の震えるような寒さの中で普通な顔して歩いているVictimについ声をかけてしまった。
文句のような形になってしまったことを少し心配していると、少し悩んだような素振りの後でVictimが口を開く。
けれど、Victimの言葉は後ろから聞こえてきた派手な音にかき消されてしまった。
振り返って見れば、少し前に通ったはずの丈夫そうだった木の枝がバキバキに折れてしまっている。
それなのに、周りにはなにかがいるような気配はない。まるで、ひとりでに木の枝が割れたような雰囲気を醸し出している。けれどそれはあり得ない。
だって、あれだけ丈夫そうな枝だったのだから、勝手に折れるなんてまずないはずなんだから。
「急ごう」
改めてなされた提案になんとか頷いて、歩きから早歩きへとなって速度を上げる。
後ろに何かがいる気がするのがとても恐ろしくて、さらに早く動こうとしても積もった雪が邪魔をしてそれ以上に早く歩くことができない。
そしてついに、後ろにあった気配がボクたちに追いてしまった――
「よお、ニンゲン」
次回?
さぁ……。