【any%RTA】UNDERTALE『二人の地下世界』モード【自殺チャート】   作:波津木 澄

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この先の展開に悩んでいるので初投稿です。
アンケぶら下げとくんで協力してクレメンス。


Neutral-6 RTAパートが使えなくなるまで《八人目くんちゃん視点のみ》

《八人目くんちゃん》

 

 

「よお、ニンゲン」

 

 静かに、しかし確かにボクたちの耳へ届くその声は低いものだった。

 間違ってもTorielさんが追いかけてきたという事はない。絶対に、これまでに会ってきたMonster達とはまるで違う声だ。

 

「初めて会うのに挨拶もなしか? こっちを向いて握手しろ」

 

 言葉は命令をするようなものだ。

 何も知らない存在相手に、急に握手を強要される。その事実に抑えようのない恐怖がボクを襲う。

 けれど、ここで何もしないわけにはいかない。後ろにいるであろうMonsterは少なくとも、ボクたちにあのわざとらしい足音以外何も悟らせないままに近づいてきたんだ。

 きっと逃げてもすぐに追いつかれてしまう。それに目の前にある橋はどうやっても二人で渡ることはできそうにない。

 

 そう思って、何もわからないという恐怖を抱きながらも振り返って見えた手袋に包まれた手を握る。

 するとあたりには何度も形容のしずらい汚らしい音がけたたましく響いた。

 ……どうやら、ブーブークッションを仕組まれていたらしい。

 楽しそうにそう種明かしをされる。……なんだか、恐怖を感じていた自分が馬鹿らしく思えてくる。

 

「オイラはSans。見ての通りスケルトンさ」

 

 さっきのボクたちの反応がまだ後を引いているのか、クツクツと笑いながら自己紹介をされる。

 そのことに腹を立てるわけではないが、何とも言えない気持ちになっているとSansは白い光だけの眼をVictimへと向ける。

 ボクもつられて見てみるとVictimは話も聞かずにボーっとどこかを見ているようだった。

 

「あー、どうやらそっちのニンゲンはオイラの退コツ(タイクツ)な話には聞く耳を持たないみたいだな。スケルトンだけに」

 

 ……何と言うか、無理やりと言う他ないギャグだ。

 しかし、Sansはなにかに満足したようで橋の先へ案内してくれる。橋を渡ったところで弟が来るようでランプに隠れるようにと言われたが、

 このランプがどういうわけかボクたちにピッタリのサイズの物が置いてあった。

 未だにどこかを見ているような様子のVictimの手を引いてランプの後ろに隠れる。少しすると同じように骨だけのMonster、スケルトンが奥から歩いてきた。

 しかし、弟と言われたが随分と背の高いスケルトンだ。鎧のようなものを着ていたり、Sansよりもよっぽどしっかりとしていそうな印象を受ける。

 少し様子を伺っていると、ヒヤッとした場面もあったが後から来たスケルトン――Papyrusは来た道を戻っていった。

 

 そのことにほっとして、声をかけられてランプから出るとVictimも続いて出てきた。

 けれど、その様子がおかしい。

 まるで、何かに突き動かされるみたいにボクたちの事を見ているのだ。

 その様子に違和感があって、何があったのかを聞こうとする。けれど、それよりも早くVictimは口を開いた。

 

「これで、みんなを助けてあげて」

 

 ただそれだけのことを言って、意味ありげに口を広げて、舌を突き出してくる。

 何をするつもりなのかはすぐにわかった。だからこそそれを止めたくて、ボクは気が付けば口を開いていた。

 

「なんで、急にそんなことを……」

 

 けれど出てきたのは制止の声ではなくて、もっと別の……理由を追求するための物だった。

 なぜかわからない、けれどボクの言いたいことではないことに違いはなない。

 

「カミサマがそう言ったもの」

 

 ボクが後悔している間にVictimはそう言って、すぐに舌を噛み千切ってしまった。

 今更止めることも、やめて欲しいと説得することも出来なくて何もできなかった自分に対して怒りが沸き上がる。

 見ていたはずだ。それなのにボクは何も行動をすることができなかった。きっと、声をかけることなくただ動いていれば間に合ったかもしれないのに、ボクは動けなかった。

 

「なんで、オイラに言うんだよ」

 

 Sansはそう言って未だに血の出ているVictimに近づく。そして手を胸の中に入れ、引き出した。

 その手に握られていたのはこれまでに何度か見たことのあるVictimのソウルだった。

 それを見た途端、ボクの頭の中にFloweyのセリフが過る。

 

『そのハートはねきみのソウルさ。きみという存在そのものと言ってもいい』

 

 ……あのSansの持つソウル。それがVictimそのものというのなら、ボクは――

 

「Sans、ごめん!」

 

 そのことに行き当たった途端にボクは動き出していた。

 気が付けばSansの手に持っていたVictimのソウルを奪って、走り出した。

 Victimはきっと、本当に"カミサマ"って言う存在の言うとおりに死ぬつもりだったのだろう。

 イケニエだからって、そう言って。けれど、ボクはそんなこと許せない。ボクは自分のことをイケニエだっていて、全部諦めていたVictimにこの世界は美しいってことを見せてあげたい。

 生きていてもいいんだって、思わせてあげたい。

 

 もう、すでにソウルだけの存在になってしまったし、もしかしたらVictimの意識はここにないのかもしれない。

 それでも、ボクは絶対に離さない。

 確かなケツイがボクを満たす。そのケツイは想いを伴って、ボクを突き動かす。

 

『離して!』

 

 ――!!

 その声は、確かにボクの耳に聞こえてきた。

 もしかしたら、そんな一抹の幻想を見てしまってボクはあたりを見回す。けれどどこにもVictimの姿はない。

 当たり前のことだし、ついさっき見えていたはずの物をボクが信じていないってことの証明だ。

 けれど、確かに聞こえてきたはずだった。

 そう思っていると、もう一度聞こえてくる。今度も確実にVictimの声だ。今度こそ見つける為に首を回してみると、ボクの後ろのちょっと上の方……そこにVictimはフワフワと浮いていた。

 

 空中にいる半透明のVictimを見据えてボクはもう一度首を横に振る。

 もうキミを離さないって言うケツイはボクの胸にあるんだ。絶対に離さない。

 

「ボクは、キミを外に出してあげるって決めたんだ。だから絶対に……キミには、外の美しい世界を知ってほしい。…………それに、"Victim(イケニエ)"なんて悲しいじゃないか」

 

 そう言うと、Victimはもう一度、はっきりとボクを拒絶する。

 

『私はカミサマの指示に従うためだけに生まれて、生きてきたんだ。それなのに急に君みたいなやつに横からかっさらわれて"自由に生きろ"なんて無茶だ』

 

 確かに、外ではVictimはずっとそうして生きてきたのかもしれない。自由なんて微塵も与えられずに、ただ死ぬためだけに生まれて来たって、そう思ってしまっても仕方のないのかもしれない。

 けれど"死ぬために生まれてきた"なんてことは絶対にありえない。Victimは生きてよかったはずなんだ。イケニエなんて名前じゃなく、もっと別の名前で……幸せに生きていてよかったはずなんだ。

 それなのに、どうしてこうして死ぬことを受け入れてしまうのか。きっと、Victimが"カミサマ"って呼ぶ存在のせいなんだろう。

 だとしたらボクはその"カミサマ"を許せない。

 

 だから、離してと声に上げるVictimの言葉を聞かずに、歩き始める。

 これはボクの選んだ道だし、ボクの自己満足にすぎないのかもしれない。けれど、ボクはVictimにはせめて美しいものを知って欲しい。

 ああ、これは……他の誰でもない、ボクが満足するためだけの行動だ。

 ボクがVictimに美しい世界を知って欲しいだけっていう、Victimの意見を無視した想いだ。

 間違っても、誰かのためなんてものじゃない。だからこそ、宣言しようじゃないか。

 一度、Victimを否定していた口と足を止める。そうして、はっきりともう一度Victimを真正面から見つめる。ボクの真剣さが伝わるように、真っ直ぐ、Victimの眼を見る。

 

「ボクにとっては、誰かと一緒に居られて……楽しくお話ができたら幸せって感じる」

 

『そんなのは君の事情だ。私には関係ない』

 

 ああ、確かにそうだ。けれど、はっきりとそう言われるのは少し……覚悟していても辛い。

 けれど、ここでへこたれていては何にも始まらないんだ。だからボクは口に出す。

 

「そうだね。これはボクのわがままだ。だから……()()()()()()()()()()()キミのソウルをSansから奪ったんだ」

 

 ボクはキミともっと楽しくお話がしたい。もっとキミのことを知りたい。

 だからこそ、ボクは絶対に離さない。

 そんな、ボクのケツイを言葉に乗せて伝えようとしてみる。

 ボクの、どうしようもなく自分勝手な想いで、Victimの意見を変えられるのかはわからない。けれど、そうしなければいけないって、ボクが想ったから。

 

『そこまで言われたら、しょうがない』

 

 本当にしょうがないって言いたげにVictimはほんの少しだけ、笑ってくれた。

 笑って、ボクを許して。そうして、ソウルをボクに預けてくれた。

 ――ありがとう、Victim。

 心の中でしっかりとそう口にして、改めて先を見る。

 

 ああ、きっとボクは諦めたりなんてしないし、迷いもしない。

 

 ――だって、一人なんかじゃないんだから。




※ケツイ
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