ある日の帰り道。
「何でこいつと毎日帰んなきゃいけないんだ?」
「わざと私に聞こえるように言ってるよね?」
「もちろん」
「……いっそ清々しいぐらいの即答っぷりね」
「好意的に受け取っておくよ」
「褒めてない。ていうか、部活で一緒で、しかもこっちに帰る人がいないから私と帰ってるんでしょ」
ちなみに、葉月の家は俺の家の二つ右隣で、家出る時間も同じぐらい。(遅刻にギリギリならないぐらいの時間)
なんて話をしながら毎日帰っている。まあ内容はあれだが。
信号待ちが終わり、歩き始める。
その瞬間、
ブオオオオオオン!!!
と音が聞こえ、
「危ない!」
誰かがそう言った。その瞬間に自然と彼女を突き飛ばし…
「………ねえ、あのシーンは私を助けるところじゃないの?」
「……仕方ねえだろ。あのトラックが速すぎて気付いた時には遅かったんだよ…」
「折角格好よく見えたのにね。それで私が助かってたら泣いてあげたかもしれないのに」
「それ以上は止めろぉ!精神的に来るだろ!…いや、そもそも何で助けられるのが当然みたいに言ってんだよ。お前完全に気付いてなかっただろ」
「女の子が守られるのは当たり前じゃないの?最後のは黙秘する」
「お前も大概だな…」
格好よくあれで助けられていたら心残りはなかったと思う。あれは一生の不覚…いやもう死んでたわ。
…何故俺達が死んでる事が分かっているのか。それは、まず身体に傷や痛みが無い事。次に周りの景色が真っ暗である事。そして最後は、
「あの…そろそろ終わりましたか…?」
羽の生えた天使?みたいな人が居るからだ。
「あっはい、終わりました」
「……そうですか。では話しますね」
そうですかの前の間はなんだったんだろ。まあいっか。
「…貴方達は、先程亡くなりました。もう既に気付いているみたいですが…」
「はい。あと、わざわざこんな感じで天使さんが迎えると言う事は、この後何かあるんですよね?」
「話が早くて助かります。そうです、貴方達にある事を頼みたくてここに呼んだのです」
さっすが葉月、理解が早い。ラノベ読んでたりしてるから俺も大方予想は出来てたけど。…嘘じゃないよ?
「異世界に行けみたいな感じですよね?それなら行きますよ」
「いえ、そうではないと言うかなんと言うか…まあ大体そうですね」
何かよくわからない答えられ方されたんだけど…。
「えっと、つまり?」
「…このままの状態ですとその世界に送って一日も経たずに死んでしまうので、その世界で通用するぐらいの力を得てから送り出すという形を取ろうとなりまして。なので、天界の方で少しばかり手助けするのでなるべく早く強くなってください」
急に命令形!?てか最初らへんに聞き捨てならない事を言ってた気が……。気のせいだよね?
そう思って隣に目をやると、こっちの方を見る葉月と目が合った。
顔を引き攣らせ、泣きそうな表情をしていた。俺の顔も引き攣ってるだろう。
それに気付いていない(ふりをしている)ようで、その続きを話してくる。
止めろ!もう聞きたくない!と声に出そうとしているのに出ない。
…これを本物の恐怖って言うんですね。知りたくありませんでした。
結局ほとんどの内容を覚える事は出来なかった。
「…では訓練場まで行きましょうか」
「「………はい……」」
もう始まる前から心が死にかけな件。この状態で何とかなるのか…?
一、二週間に一投稿となります。
次回からは2000~4000字程度になると思います。