「女神様じゃないですかッ」
突然、アクアのことをそう呼んだのは茶髪の好青年だった。俗にいうイケメンというやつだ。
アクアのことを女神と呼んだからにはこいつも転生者なのだろう。
見た所、結構高そうな装備で体を守っている。
そして青年は一応ブルータルアリゲーターの攻撃でも壊れたりしなかった檻を自らの腕力で捻じ曲げてアクアを中から出そうとする。
「えぇっ」
「マジですか」
カズマとめぐみんの二人はゴリラ以上の腕力を持つであろう青年を見て引き攣っている。
青年がアクアと接触しようとした瞬間、いつものド変態なダクネスとは違うかっこいいダクネスが現れた。
「おい、私の仲間になれなれしく触れるな」
こういうとこだけは、ほんとカッコいいなと思ってしまう。これで言動がしっかりしていれば・・・
「おい、あれってお前の知り合いだろ?女神とかいってたし」
「女神?・・・そうよ、私は女神よ」
この駄女神と言う奴は、自分でもすっかり女神ということを忘れてたんじゃねぇかッ。
先ほどの廃人のような雰囲気から一転し、いつものアクアに戻った。
うるさいが、こちらのほうがアクアらしくて安心する。
「それで、女神である私に何の用かしら、ってあなた誰?」
「ミツルギ・キョウヤです。あなたにこの魔剣グラムをいただき、この世界に転生したミツルギ・キョウヤです」
「えっ・・・」
まさか知らないのか?
「そ、そういえばそんな人もいたわね。ごめんね、結構な人数をこちらに送ったから」
ま、まぁ、それは仕方ないだろう。俺だって忘れられてたっぽいし。
「あなたに選ばれし勇者として日々頑張っていますよ。ところで何故檻のなかにいたのでしょうか?」
かくかくしかじかと理由を説明する。
「はァァァッ、アクア様をこの世界に轢きづりこんで、その上アクア様を湖に漬けたッ」
うん、滅茶苦茶怒ってる。
これはアレだな。キョウヤは激怒した。必ず、かの邪知暴虐の冒険者から女神を救わねばとって言う奴。
「ちょ、ちょっと、私は結構楽しんでるし」
「あなたは女神ですよ、ちなみにアクア様はどこに寝泊まりをしているのですか?」
「馬小屋だけど」
そして、更にカズマに殴りかかろうとするミツルギ。
「おい、礼儀知らずにもほどがあるぞッ」
「ちょっと撃ちたくなってきました」
ダクネスはともかく、めぐみんよ、貴様はやめい。
二人を見たミツルギはべた褒めする。
確かにこいつらはアークウィザードとクルセイダーだ。
それも、一発屋と攻撃が当たらないというところを抜けば結構すごいだろう。
「君達もこれからはソードマスターである僕と一緒に行動すればいい」
なんかちゃっかり勧誘してるし。
俺もそろそろ止めようかなと行動にでるが、三人がミツルギにドン引きしており、俺もドン引きしていた。
ナルシストかコイツ。ティアマトの試練をクリアした後の俺みたいだ。いや、流石にここまでひどくはないな。
三人とも勧誘を断った。
「えぇと、この通り、満場一致であなたのパーティにはいきたくないらしいので、ではこれで」
結局最後まで何も言わなかったが、俺も面倒ごとは嫌なのでソロリソロリとついて行く。
「ちょっと待て」
しかし、簡単に行かせてもらえるわけもなく、ミツルギは再び俺達の前に立ちはだかる。
「勝負をしないか?僕が勝ったらアクア様を譲ってくれ。君が勝ったらなんでも一ついうことを聞こうじゃないか」
「よし、乗った。行くぞっ」
ミツルギの提案に即決したカズマは突然ミツルギに襲い掛かる。
「スティール」
でた、カズマの必殺。
今回カズマが奪ったのは魔剣グラム。魔剣グラムを振り下ろす?というか、重さに耐えきれずそのまま振り下ろしたみたいだが、剣の腹がミツルギの脳天に直撃した。
案の定、ミツルギは目を回して倒れる。
「ったく、言いたい放題いいやがって」
「卑怯者」
「卑怯者卑怯者卑怯者ッ」
ミツルギのパーティメンバーと思わしき二人の女性が文句をいう。まぁ、確かに少し卑怯だと思うがよく考えろ。魔剣持ちのチーターが駆け出し冒険者と決闘しようだなんておかしいだろう。
「魔剣グラムを返しなさいッ。その剣はキョウヤにしか使えないんだから」
「そうなのか・・・まぁいいや。せっかくだし貰っとこう」
「こんな勝ち方認めないわ」
「真の男女平等主義者たる俺は女子相手でもドロップキックを喰らわせることができる男だ。手加減してもらえると思うなよ」
ニヤリと黒い笑みを浮かべるカズマが指を触手の様に動かす。
「まぁ、待てよ。さっきから人が黙ってれば俺の大切な仲間を引き抜こうだぁ?」
流石に俺も一言二言・・・十言くらい言いたくなったので入る。
「三人とも嫌だっていってるのに無理強いをするのは勇者っていえるのか?」
「な、何よ」
「それに、そのミツルギとか言う奴はソードマスターなんだろ?しかも魔剣グラムとかいう神器も持ってる。そんな奴が駆け出し冒険者であるカズマと戦おうだなんてなんだ?新手のいじめか」
「ち、違うわよ」
俺の言葉に二人の女性がたじろぐ。
「それに、こんな坊ちゃんだから知らねぇだろうが、普通の冒険者っていうのは馬小屋生活から始まるもんなんだよ。お前みたいに最初から難しいクエストを受けて大金を貰えるわけじゃねぇんだ」
俺は気絶しているミツルギの顔にカズマにクリエイトウォーターを掛けてもらう。
「もしもぉ~し、ミツルギ君よ。聞こえてるか?」
「あ、あぁ、聞こえる。そうか、負けたのか」
「あぁ、だが、お前の仲間二人は納得してないみたいだ。そこでだ、もう一度だけチャンスをやろう」
上から目線な言い方だが、いいだろうこれくらい。
「ほんとうかいッ」
「あぁ、今度は俺と一騎打ちだ。安心しろ、今回俺は魔法を使わない。純粋な剣技だけでお前を相手にする」
「そ、そうか。見た所君は僕と同じくソードマスターってところかい?」
「まぁ、そんなとこだ。それでいいだろ?」
「あぁ、感謝する」
こうして、俺とミツルギの決闘が始まる。
「ダクネス、開始の合図を頼む」
「任せろ・・・始めッ」
「はぁっ」
ダクネスが開始の合図を出すと同時にミツルギは剣を前に突き出しながら飛んでくる。
「ほいっ」
右に避けながらミツルギの足に機攻殻剣の鞘を引っかける。
つまずいたところを俺は機攻殻剣を鞘ごと振りぬき転倒させる。
この程度で終わるはずはなく、すぐに立ちなおしたミツルギがこちらを睨む。
「なかなかやるじゃないか」
「まぁな、そういうお前は熱くなり過ぎだ。しっかり周りを見ろ」
「ッ、た、確かに少し頭に血が上っていた」
落ち着きを取り戻したミツルギは深呼吸を繰り返す。
「一ついっておくが、アクアは俺達の大切な仲間だ。いくら酒癖が悪く、借金ばっかりで宴会芸ばかり上達している自称女神だとしても、うちのパーティにはかかせないムードメーカーなんだ。引き抜くのはやめてもらおう」
「し、しかし、アクア様をこのままにしておけない」
「他の二人だってそうだ。めぐみんは一発しか魔法を使えないかもしれないが、その一発が盤上をひっくり返す逆転の一手なんだ。ダクネスだって攻撃が当たらないという弱点があるが、アイツほど攻撃を受け止めてくれると信頼できるクルセイダーはいないだろう。カズマも卑怯な手を使うが、最弱職であるアイツの工夫だ。現に、アイツは初級魔法を工夫して使うことにたけている」
「・・・・・・」
ミツルギは俺の言葉を静かに聞いている。
「ここまでいえば、分かるだろ。俺のパーティメンバーを引き抜くのは止めてもらおう」
「し、しかし」
「しかしもくそもねぇんだよ。あんまりしつこいと沈めんぞゴラッ」
「ならば、次の一撃で決めよう」
『あれぇ~今のいい感じにすまなかったってなるとこじゃない?』
「まぁいい、分かった。次で決めよう」
「・・・喰らえッ」
瞬間移動するかの如く俺の正面に現れたミツルギがグラムを横一線する。
しかし、俺には効かない。
「ベルディアと比べるとおせぇんだよ」
グラムを機攻殻剣で受け止め心臓を全力で殴ってやる。
「グハッ」
いい感じに決まった拳はミツルギの身に着けていた鎧に綺麗な拳型を残す。
「これぞハートブレイクショットってな」
白目をむいて気絶するミツルギを放って俺は先にギルドへ戻る。
理由は恥ずかしいからだ。今思い出すと俺ってば恥ずかしいことばかりいっている。
感想欲しいなぁ。
次回、サトウ・カズマ僕の魔剣は?