冬将軍到来
一面真っ白な雪のカーペットが広がる世界にの一ヶ所に真っ赤な液体の水溜まりができていた。
そしてその傍らには首から上を失った俺のパーティのリーダーであるカズマ。
少し離れた位置には目の光を失っているカズマの頭があった。
「カズマアアアアアア」
一気に全身の血液が沸騰するかのような感覚に襲われる。
しかし、俺は落ち着いて冷静になる。怒りに任せて行動してもなにもできない。
そう、わかっているから冷静になる。
なぜこうなったのかと、ことのはじまりは少し前まで遡る。
あの宴会から数日後、俺たちのパーティはとんでもない危機に襲われていた。
「金がほしいッ」
「そりゃ誰だってほしいわよ。というかあんた甲斐なさすぎでしょ。仮にも女神である私を転生特典に選んでおきながらこの有り様よ。少しはバサラを見習ってほしいわ」
カズマの悲痛な心の叫びはアクアの言葉によって一蹴されてしまう。
「はぁ~、なんで俺たちだけに借金がかかるんだよ」
「悪いな、あそこで俺が完全にあいつを倒してたら借金なんてなかったはずなのに」
二人の会話にバサラが加わる。
バサラの表情はいつもとは違って心の底から申し訳なさそうだ。
それもそのはず、カズマたちに背負わされた借金はもとをたどればアガレスがやったことではあるが、さらに遡るとバサラとの因縁から始まったことなのだ。
「お前だけが悪いわけじゃねぇよ。ったくここの領主はちゃんと仕事してるのか?」
カズマの愚痴は領主へと矛先を変える。
「全く、お前らは朝から何を騒いでいるのだ?」
そんな三人を見たダクネスとめぐみんが頭を抱えながらやって来る。
「クエストを受けましょう」とめぐみんが提案する。
「そうだな、先程ちらっとみたがどのクエストも報酬がいいものばかりだ」
「よし、いつまでもウジウジしてられねぇな」
そういって掲示板を眺めたのはいいのだが・・・
「どれも高難易度クエストしか残ってねぇじゃねぇか」
「なんだったら俺一人でやってこようか?」
「いや、それだと大変だろ?昨日の疲が完全にとれたってわけじゃなさそうだし」
俺がカズマにそう提案するが却下された。
「こ、これなんかどうだ?」
そういってダクネスが手に取った依頼は
牧場を襲う白狼の群れの討伐。
「獣たちに蹂躙される・・・いい」
いつものド変態ぶりを見せるダクネスにバサラ以外がドン引きしている。
「却下だ却下。おっ、なんだこれ?」
そう呟いたカズマが目につけたのは
「機動要塞デストロイヤー接近中につきその偵察?なんだよデストロイヤーって」
「デストロイヤーはデストロイヤーだ。高速で移動する要塞」
「ワシャワシャ動いて全てを蹂躙する子供達に妙に人気のある奴です」
「いや、そういわれてもわからねぇよ」
「まぁ、簡単に説明するなら坊ハ○ルの動く城が辺り全てを殲滅するようになった危険な要塞といえばいいか?」
「へぇ~、却下」
偵察くらいなら大丈夫だとは思うがめぐみんあたりが「わが爆裂魔法を受けてみよ」とかいいだして面倒なことになりそうだ。
「雪精ってなんだ?」
そしてカズマが選んだこの雪精討伐のクエストがあの悲劇を産み出すことを俺たちはまだしらない。
そして場所は変わり、とある平原へと俺たちは来ていた。
そこはまだ冬ではないはずだが辺り一面が真っ白な雪でおおわれている。この白いのが雪精なのだろう。
「それでお前らその格好はなんだ?」
カズマがそういいたいのもよくわかる。
なぜならアクアとダクネスの格好がおかしかったからだ。
アクアは虫取網に小瓶を持っている。どこかに虫でも捕まえにいくつもりだろうか?
「雪精を捕まえればいつでもキンキンに冷えたしゅわしゅわがのめるでしょ」
そしてダクネスはというと
「鎧はどうした?」
「修理中だ。なに、安心しろ多少寒いとは思うがそれが我慢大会のようでこうふ・・・なんでもない」
「風邪引くなよ」
防具も着けないで剣を背負うダクネスに俺は軽くいっておく。まぁ、こいつが風邪を引くかどうかは知らんが・・・というかコイツって頑丈すぎて風邪ひかないんじゃ・・・
そして雪精討伐が始まったのだが蓋を開けてみると雪精を討伐するのは簡単だった。
雪精自体こちらに攻撃することがないのでこちらは思う存分雪精を討伐することができた。
一匹倒すことに春が半日早く来るといわれており、一匹討伐するだけで十万エリスも報酬が出る。
俺はすでに機攻殻剣で五十に届きそうなほど雪精を討伐していた。
ちなみにカズマは三匹、めぐみんは爆裂魔法を放って八匹。ダクネスはいつもながら攻撃があたらず一匹も討伐できていない。アクア?あぁ、あいつなら用意した小瓶に雪精を詰めてるよ。
「見てみて四匹目よッ」
ほら、こいつに至っては討伐するんじゃなくて捕獲目的だからな。
「むっ、来たな」
そのときだった、突然俺の鍛えられたセルフ気配探知にとんでもなくヤバい存在が引っ掛かった。
「カズマに教えてあげるわ。何故冒険者がこのクエストを受けないのか。それはね、あなたも一度は聞いたことあるかもだけど、冬将軍が出るからよ」
そしてアイツが現れた。
真っ白い雪の鎧武者。冬将軍が・・・
めぐみんは死んだふりをし、カズマはアクアと逃げている。ダクネスは・・・って何やってんだ。
ダクネスは防具を付けていないにも関わらず冬将軍へと切りかかっていた。
攻撃は勿論空を切り、冬将軍にはかすり傷一つついていない。
「馬鹿ッ」
そして冬将軍はダクネスへ攻撃を放つが、その瞬間、俺がダクネスを抱きかかえて離脱する。
「何考えてんだお前はッ」
「バ、バサラ、いまいいところだったのに・・・これがお預けと言う奴か」
「お前なッ性癖についてはなにもいわないが死ぬところだぞ」
「わ、私は死なない」
「はぁ~、あとで覚えてろよ。そんなにお仕置きされたいなら俺がしてやる。だから今は逃げるぞ」
そういってその場から逃げ出したが冬将軍に追いつかれてしまう。
「冬将軍は寛大よ、きちんと謝れば許してくれるわ。さぁ、みんなで土下座するわよ」
逃げられないことを悟ったアクアはその場に倒れるようにして綺麗な土下座をした。
死んだふりをしていためぐみんもいつの間にかこの場におり、土下座をする。
「き、騎士が頭を下げられるかッ」といってダクネスは断るが、俺が全力で地面に叩きつける。
「はうっ」と嬉しそうな声をだして顔を埋もれさせる。
そして俺がカズマの方を見て瞬間だった・・・
「カズマッ」
「えっ?」と間抜けな声を出した瞬間、カズマの頭と体はお別れグッバイをし首からおびただしい量の鮮血を巻き上げる。
真っ白だった雪のカーペットは一瞬で真っ赤なレッドカーペットへと変わり、カズマも物言わぬ死体となった。
「カズマアアアアアア」
そして冒頭へと戻る。
俺は来ていたコートをダクネスに掛け空間魔法で短剣の機攻殻剣を取り出し詠唱符を唱えた。
「始動せよ。星砕き果て穿つ神殺しの巨竜。百頭の牙放ち全能を殺せ、《テュポーン》」
そして現れた紫の神装機竜は即座に冬将軍へ向けてワイヤーを射出すると冬将軍の体に突き刺さる。
「喰らえッ《
その直後、冬将軍に刺さっていたワイヤーを巻き取りその体を掴むことに成功した俺は、《テュポーン》の特殊武装の能力である爆破の能力を使い冬将軍へ大ダメージを負わせる。
雪の塊である冬将軍は流石に爆破には堪えたらしくところどころ雪が解けていた。
「カズマッ、カズマッ」
背後ではアクアがカズマを蘇生する声が聞こえる。
アクアならカズマを生き返らせれると分かってはいたが、アクアが頑張っている声を聞いて更に冷静になれた。
そこからは特殊武装での攻撃のオンパレードだった。
ワイヤーで近づいて爆破、近づいて爆破、一度離れて、背後から回り込み、爆破・・・
そんなこんなで冬将軍の刀を避けながら爆破を続ける。
「ぐはっ」
しかし、その攻撃もいつまでも続く事は無く冬将軍の能力だとは思うが、横からつららが飛んできた。
回避しようにも回避できず直撃した俺は吹き飛ばされた。
「ま、だだ」
溝内を強く打ち呼吸困難となったが、なんとか声をだす。
すぐに体制を整えて冬将軍へと攻撃を行う。
そしてどれくらい経ったか分からないが気が付くと冬将軍は消えており、一面雪だらけだった平原はまだ少し雪は残っているがほとんどなくなっていた。
《テュポーン》を解除したあと、すぐにカズマの元へと向かう。
「アクアッ、カズマは?」
「えぇ、大丈夫よ。もうすぐ目を覚ますと思うわ」
「はぁ~、流石女神だな」
「えぇ、というかバサラもボロボロじゃない・・・ってあんたその怪我」
アクアが悲鳴を上げて指を指す方を見ると俺の太ももに大きな穴が空いていた。
「あぁ、これも治療を頼む」
今はアドレナリンのおかげで少し痛むくらいだがもうそろそろ痛み出す頃だろう。いつ喰らったのかは覚えていないが冬将軍のつららが俺の太ももを貫通していたのだろう。
アクアがすぐに治療してくれたおかげで完治した。
そしてこのときめぐみんがカズマに何をやっているのかは気が付かなかった。
「・・・う、うんぅ」
「カズマッ」
「・・・チェンジで」
「上等よクソニートッ」
カズマが目を覚ますとアクアの姿を見た瞬間「チェンジ」といった。一体何のことだろうか?と思いつつも、今は生き返ったカズマを見て「ほっ」と一安心した。
「バ、バサラ・・・」
無事《アクセルの街》に戻った俺達だったが、色々あって疲れたため報酬を貰わずに宿へ戻ったのだが・・・
何故か俺の部屋にダクネスが来ていた。
「なんでここにいるんだ?」
風呂から帰ってきたら俺の借りていた部屋にいるもんだからびっくりしたことこの上ない。
「いや、さ、先ほどの約束・・・」
「約束って・・・ま、まさか」
そこで俺は思い出す。
冬将軍へ攻撃していたダクネスに向かって俺は「はぁ~、あとで覚えてろよ。そんなにお仕置きされたいなら俺がしてやる。だから今は逃げるぞ」といってのを・・・
「そうだ。まさか忘れたとはいわさないぞ」
「あのなぁ~カズマが死んだんだぞ。分かってるのか?」
「わ、わかっている。そうだな、不謹慎だった。すまない」
流石のダクネスも分かってくれたみたいでしょんぼりとする。
「はぁ~、そんなしょんぼりするなよ。俺が悪者みたいだろ?」
「私が悪いのだ。変なプライドで叶わないと分かっていたのだが、気が付くと冬将軍へと向かっていたのだ」
するとダクネスは自然に俺の部屋のベッドへ座り小声で自分の反省を口に出す。
「仲間を守ることはいいことだと思うぞ。だがな、お前の場合は、そ、その、ドMだからだろ?」
「あぁ、全くその通りだ」
こ、こいつなぁ。先ほどまでしょんぼりしていたと思えば一転して今度はなんの悪びれもなく自信満々にそう言い放つダクネスを見て少し殴りたいと思ってしまった。
「はぁ~、お前は自分がされたいからいいかもしれないがな、目の前でパーティメンバーがモンスターとかに、その、や、やられてるところとか見せられてみろ。そいつをすぐに切り殺したくなるぞ」
「へっ?」
「お前だって俺の大切なパーティメンバーなんだ。そんな奴が自分の目の前でやられているところを見て何も思わないなんてことはないんだからな」
「そ、そうか」
なんか様子のおかしいダクネスを前に俺の口は止まらなかった。
「ベルディアにしろ、今回の件にしろ・・・」
永遠と口から洩れる言葉に俺自身もビックリする。
「お、おい、バサラ」
「んだよ、まだまだいいたいことはあるんだぞ」
「わ、私の求めるものとは方向性がだな違う」
「うるせっ!ったく、いくらアクアが死んでも蘇生できるからって目の前でパーティメンバーが死ぬのなんて御免だ。お前ももっと自分の身を大切にしろ・・・あっ、そうだ。いっそのことお前を縛れば・・・ブツブツ」
「バ、バサラ?わ、私が悪かった。いや、しかし、縛られるのも魅力て・・・なんでもない」
そして何をトチ狂ったのか俺は《テュポーン》のワイヤーを使ってダクネスを縛った後、ベッドに放置し、俺は固い床で寝ることにした。
「はぁ、はぁ、はぁ、バ、バサラの奴、こんな積極的だったなんて・・・はぁ、はぁ」
縛られて放置されたダクネスはというと・・・もちろん興奮していた。ミノムシ状態でベッドの上でクネクネ動く。
「なっ」
さてさて、やっと本格的にメインヒロインにしたダクネスとバサラの絡みが始まる・・・かも
最後「なっ」で終わりましたがダクネスに一体、何があったのでしょうか?
あっ、一ついっておきますけどバサラ君は変態ではなくちょっとした事情があるのです。
決して、この時点でダクネスに恋愛感情は持ってない・・・はず。
感想くれてもええんやで